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第82話 その重さの違い
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双剣を構えるステラ。その正面には剣を構えるアンペラトリスが立っている。
(くっ、なんて隙のない立ち姿……。これが一国を率いる者の覇気というものですか)
あまりの完璧な構えに、ステラが攻撃のタイミングを計れないでいる。さすがは帝国において、女性の身でありながらも光景に選ばれただけの事はあるというものだった。
「どうした、ステラリア。来ぬというのならこちらから行くぞ?」
構えたまま動けないでいると、アンペラトリスの方から動き始めた。
(速いっ!)
油断していたわけではないが、ステラは一気に距離を詰められていた。
そして、素早く振り出された剣に必死に対応する。
「くっ!」
ガキンという音が響き渡る。どうにかステラは剣を凌いだわけだが、双剣をクロスさせるようにして受け止めていた。そのくらいにアンペラトリスの一撃は速く、そして重かった。
「ほほう、受け止めるとは大したものだな。だが、考え事のし過ぎだな。反応が鈍かったぞ」
「くっ……」
すっかり自分の事を見透かされていた。なんという強者の余裕なのだろうか。
「この私とやり合うのに、考え事をしているとはずいぶん余裕よな」
「こっのぉ!」
剣を弾いてバックステップをするステラ。着地をしたステラの表情は、とても少女らしいとは言えないものだった。
一方のアンペラトリスは、あれだけ強引に弾かれたというのに、仰け反りすらしていない。なんという体幹と筋肉の持ち主なのだろうか。
「なんとも非力な……。長きを生きていたとしても、その体は貧弱な見た目相応の力しかないということか」
アンペラトリスは、嘆くように呟いている。
「ステラリア、魔法も使ってみせよ。この私に本気で勝ちたいと思っているのならな」
そして、挑発を繰り出すアンペラトリスである。だが、ステラはそんな挑発に乗るわけがなかった。
「嫌ですね。魔法を使わない相手に魔法を使うなんて、卑怯ですからね」
正々堂々を宣言するステラ。これにはアンペラトリスも思わず笑みを浮かべてしまっていた。
すると、剣をしっかりと構えてステラを見る。
「面白い。ならば、我が剣技、とくとその身に受けてみることだな」
再びアンペラトリスがステラに襲い掛かる。
だが、今度のステラは先程とは違う。考え事をしていて不意を突かれただけだと言わんばかりに、アンペラトリスの剣にしっかりと対応しているのだ。
「ほう、その小さな剣でよく捌けるものよな」
「だてに冒険者をやってはいませんからね」
ステラとアンペラトリスは激しく打ち合っている。その光景を騎士団は驚きの表情でもって眺めている。
「なんという少女だ。陛下の剣をあそこまできれいに対処できるとは……」
「我々とて、あそこまで捌けぬものだ。あの少女は、我々よりも強いということなのか?」
いろいろと思うところのある騎士たちだが、今は黙って二人の戦いを見守るしかないのだった。
それからもしばらくの間、二人の激しい剣の打ち合いが続いている。
長剣を扱うアンペラトリスに対して、短剣ほどの長さの双剣を扱うステラは、なかなか攻撃に転じられずにいた。リーチ差もそうだが、アンペラトリスにまったく隙がないのだ。
これだけ攻撃をいなしていれば、一瞬くらいは隙が生まれそうなものだ。だが、アンペラトリスにはその隙がまったく生じないのである。はっきり言って化け物だ。
(さすがは大陸統一を豪語する皇帝ってところですね。剣術だけでは対抗しきれません)
攻撃をどうにか凌ぐステラは、その実力を認めざるを得なかった。
(ですが、物理攻撃を行うだけの相手に魔法を使うのは、やっぱり卑怯でしかないです。どうにか、剣技で一矢報いなければ……)
「ふん、あくまで剣だけで私に立ち向かうつもりか。いい度胸なものだ」
ステラの考えをあっさり見抜くアンペラトリス。すると、今までの攻撃がさらに激しさを増す。これまで手を抜いていたらしい。
「なんて人なのですか。あれでもまだ、手加減をしていたと?」
「手の内を最初からすべて見せるのは、愚か者のする事だ。奥の手というものは、いざという時まで隠しておくものだよ」
一撃一撃の重さが、先程までの比ではない。なんとか捌いているとはいえ、ステラの両腕は痺れ始めていた。
その疲れが見え始めたステラの様子を、アンペラトリスが見逃すはずもなかった。
「あっ!」
ステラは双剣を両方とも弾かれてしまう。武器を失ったステラにアンペラトリスの剣が突きつけられる。
「勝負あったな。だが、ここまで粘れたことは十分誇ってよいぞ。我が騎士たちもここまで粘れたものは一握りなのだからな」
相変わらずの口調のアンペラトリスだ。
しかし、この言葉にステラはまったく言い返す事ができなかった。ほとんど何もできずに防戦一方だったのだから。なんとも、自分の500年が否定された気分になってしまう。
「私は皇帝になるために必死に努力を重ねてきたのだ。それこそ、血を吐くような努力をな。皇帝となる者、如何なるものにも負けるわけにはいかぬのだ」
そして、剣を収めながらアンペラトリスはこう告げる。
「おそらく、私とステラリアの間にある決定的な差は、覚悟だろう。もし思うところがあるのなら、しっかりと腹を括る事だな」
アンペラトリスの言葉に、ステラは悔しくて涙を流すのだった。
(くっ、なんて隙のない立ち姿……。これが一国を率いる者の覇気というものですか)
あまりの完璧な構えに、ステラが攻撃のタイミングを計れないでいる。さすがは帝国において、女性の身でありながらも光景に選ばれただけの事はあるというものだった。
「どうした、ステラリア。来ぬというのならこちらから行くぞ?」
構えたまま動けないでいると、アンペラトリスの方から動き始めた。
(速いっ!)
油断していたわけではないが、ステラは一気に距離を詰められていた。
そして、素早く振り出された剣に必死に対応する。
「くっ!」
ガキンという音が響き渡る。どうにかステラは剣を凌いだわけだが、双剣をクロスさせるようにして受け止めていた。そのくらいにアンペラトリスの一撃は速く、そして重かった。
「ほほう、受け止めるとは大したものだな。だが、考え事のし過ぎだな。反応が鈍かったぞ」
「くっ……」
すっかり自分の事を見透かされていた。なんという強者の余裕なのだろうか。
「この私とやり合うのに、考え事をしているとはずいぶん余裕よな」
「こっのぉ!」
剣を弾いてバックステップをするステラ。着地をしたステラの表情は、とても少女らしいとは言えないものだった。
一方のアンペラトリスは、あれだけ強引に弾かれたというのに、仰け反りすらしていない。なんという体幹と筋肉の持ち主なのだろうか。
「なんとも非力な……。長きを生きていたとしても、その体は貧弱な見た目相応の力しかないということか」
アンペラトリスは、嘆くように呟いている。
「ステラリア、魔法も使ってみせよ。この私に本気で勝ちたいと思っているのならな」
そして、挑発を繰り出すアンペラトリスである。だが、ステラはそんな挑発に乗るわけがなかった。
「嫌ですね。魔法を使わない相手に魔法を使うなんて、卑怯ですからね」
正々堂々を宣言するステラ。これにはアンペラトリスも思わず笑みを浮かべてしまっていた。
すると、剣をしっかりと構えてステラを見る。
「面白い。ならば、我が剣技、とくとその身に受けてみることだな」
再びアンペラトリスがステラに襲い掛かる。
だが、今度のステラは先程とは違う。考え事をしていて不意を突かれただけだと言わんばかりに、アンペラトリスの剣にしっかりと対応しているのだ。
「ほう、その小さな剣でよく捌けるものよな」
「だてに冒険者をやってはいませんからね」
ステラとアンペラトリスは激しく打ち合っている。その光景を騎士団は驚きの表情でもって眺めている。
「なんという少女だ。陛下の剣をあそこまできれいに対処できるとは……」
「我々とて、あそこまで捌けぬものだ。あの少女は、我々よりも強いということなのか?」
いろいろと思うところのある騎士たちだが、今は黙って二人の戦いを見守るしかないのだった。
それからもしばらくの間、二人の激しい剣の打ち合いが続いている。
長剣を扱うアンペラトリスに対して、短剣ほどの長さの双剣を扱うステラは、なかなか攻撃に転じられずにいた。リーチ差もそうだが、アンペラトリスにまったく隙がないのだ。
これだけ攻撃をいなしていれば、一瞬くらいは隙が生まれそうなものだ。だが、アンペラトリスにはその隙がまったく生じないのである。はっきり言って化け物だ。
(さすがは大陸統一を豪語する皇帝ってところですね。剣術だけでは対抗しきれません)
攻撃をどうにか凌ぐステラは、その実力を認めざるを得なかった。
(ですが、物理攻撃を行うだけの相手に魔法を使うのは、やっぱり卑怯でしかないです。どうにか、剣技で一矢報いなければ……)
「ふん、あくまで剣だけで私に立ち向かうつもりか。いい度胸なものだ」
ステラの考えをあっさり見抜くアンペラトリス。すると、今までの攻撃がさらに激しさを増す。これまで手を抜いていたらしい。
「なんて人なのですか。あれでもまだ、手加減をしていたと?」
「手の内を最初からすべて見せるのは、愚か者のする事だ。奥の手というものは、いざという時まで隠しておくものだよ」
一撃一撃の重さが、先程までの比ではない。なんとか捌いているとはいえ、ステラの両腕は痺れ始めていた。
その疲れが見え始めたステラの様子を、アンペラトリスが見逃すはずもなかった。
「あっ!」
ステラは双剣を両方とも弾かれてしまう。武器を失ったステラにアンペラトリスの剣が突きつけられる。
「勝負あったな。だが、ここまで粘れたことは十分誇ってよいぞ。我が騎士たちもここまで粘れたものは一握りなのだからな」
相変わらずの口調のアンペラトリスだ。
しかし、この言葉にステラはまったく言い返す事ができなかった。ほとんど何もできずに防戦一方だったのだから。なんとも、自分の500年が否定された気分になってしまう。
「私は皇帝になるために必死に努力を重ねてきたのだ。それこそ、血を吐くような努力をな。皇帝となる者、如何なるものにも負けるわけにはいかぬのだ」
そして、剣を収めながらアンペラトリスはこう告げる。
「おそらく、私とステラリアの間にある決定的な差は、覚悟だろう。もし思うところがあるのなら、しっかりと腹を括る事だな」
アンペラトリスの言葉に、ステラは悔しくて涙を流すのだった。
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