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第93話 トレイズ遺跡
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翌日、ステラはアンペラトリスたちと一緒にトレイズ遺跡に向けて出発をする。
「挨拶くらいはしておいてもよかったのではないのかな?」
アンペラトリスがステラに話し掛けている。
こう話す理由は、ベルオムとリューンに黙ってきた事を後悔していないのかと、確認するためだ。
「師匠は別にいいんですよ。研究さえできれば問題ないような人ですからね」
ベルオムの話を頬を膨らませながらするステラ。ベルオムはいろんな師匠ではあるけれど、どこか好きになれないのである。
「リューンくんはちょっとだけ話をしてきましたよ。しばらく出かけてくるけど、しっかり剣の腕を鍛えておくようにと。剣を持っているのにその腕前がなまくらではもったいないですからね」
「確かにそうだな。私ほどとは言わないが、今のステラリアくらいまでには腕を上げてもらわねばな」
ステラと話をしながら笑うアンペラトリスである。
「彼は幼いだけですからね。今の年齢ならばちゃんと教え込めば、数年後にはきっと立派な剣士になっています」
「私もそれを願う限りだな。彼の教育係に据えた騎士は少し厳しいが信頼はできる男だ。ふっ、帰ってきた時が楽しみだな」
トレイズ遺跡に向かう間、なぜか時折リューンの話で盛り上がるステラとアンペラトリスなのであった。
時折現地調達をしながら、ようやくトレイズ遺跡のある辺りまでやって来る。
小高い場所にあるコリーヌ帝国の中でも、さらに高い場所にあるトレイズ遺跡は、すっかり木々に覆い尽くされてしまっていた。本当に遺跡があるのか信じがたい光景である。
「もはや森ですね。ここに本当に遺跡があるのですか?」
「エルミタージュ王国の遺産だからな。500年も経てば、管理されていなければこうなるのは必然だ。むしろ他の遺跡の方が異様だろう」
ステラの言葉に、淡々と答えるアンペラトリス。
「それも……そうですね」
その答えに納得して考え込んでしまうステラ。
それというのも、先程からなにやら不思議な感覚に襲われているからだ。
「ステラリアも、ここに何かを感じるのか。……実は私もなのだよ」
「皇帝陛下も?」
驚いて顔を上げたステラの言葉に、笑顔を向けて頷くアンペラトリス。
この反応に、首を傾げてしまうステラ。エルミタージュ王国の関係する場所である以上、王家の血筋であるステラが何かしら感じ取るのは分かる。だが、そういった関係がなさそうなアンペラトリスがそんな感覚を覚えるのは、違和感しかなかった。
謎の多い女性であるアンペラトリスに新たな謎が生まれた瞬間だった。
しかし、今はそれを気にしている場合ではなかった。
ここからは森の中を進むので、馬車から降りなければならない。それに加えて、うっそうとした森の中では何が起こるか分からない。一気に緊張感が高まる。
馬車の面倒を見る兵士たちを除いて、トレイズ遺跡を取り囲む森の中へと入っていく。
先行して入った兵士たちのおかげか、ある程度道のようなものができているので、ステラたちは進むことにあまり苦労せずにすんでいる。
とはいっても、さすがにその幅はあまり広くないために、ほぼ隊列は一本線だ。横から襲われれば対処が難しい状況である。
「陛下」
「なんだ」
突然前方の兵士から声を掛けられるアンペラトリス。
「まもなくトレイズ遺跡に到着致します」
どうやら、遺跡が近付いてきた報告のようだ。
「そうか。ならば少し急ごうか」
「はっ、承知致しました」
アンペラトリスの命令で、行軍の進みが速くなる。
遺跡に到着すれば、少し足場が広くなるというのもあるし、単純にアンペラトリスが少しでも早く遺跡を見てみたいというのが理由だった。
しばらく進むと、ようやく開けた場所に出る。
「おお、ここがトレイズ遺跡か」
そこで見た光景に、アンペラトリスがつい感動の声を漏らしてしまう。
崩れた石造りの建物に一面に広がる石畳。おそらくそこには大きな建物が建っていたのだということが、ひと目でよく分かる。
崩れ落ちた大きな建物と周りに生い茂った草木。それが年月の経過というものをいやというくらいに物語っているのである。
「陛下、少し休憩なさいますか?」
到着したばかりということもあって、兵士がアンペラトリスに問い掛けている。
「いや、報告にあった地下を見せてもらおうか」
「はっ、畏まりました。おい、陛下を案内致すのだ」
「承知致しました」
現地で働いている兵士と作業員に連れられて、ステラとアンペラトリスは、最近発見されたという謎の地下空洞へと案内される。
しばらく歩いて到着したその場所の光景に、ステラは思わず口を覆ってしまう。
「どうした、ステラリア」
「い、いえ。なんでもありません」
アンペラトリスの質問に、首を横に振ってごまかすステラ。だが、その態度はあからさまに怪しかった。
それだというのに、アンペラトリスはステラの気持ちを慮ってか、追及してくることはなかった。
「中へと案内してもらう事はできるか?」
「いえ、中はまだ調査を始めたばかりで安全が確認できておりません。我々としては、陛下を案内するわけには参りません」
「そうか。ならば今のところは一度退こう。引き続き調査を頼むぞ」
「はっ!」
アンペラトリスはステラを連れて、一度入口付近のキャンプへと戻っていく。
「ステラリア、少し休むとしようか」
アンペラトリスはそう声を掛けて、ステラを自分に寄り添わせたのだった。
「挨拶くらいはしておいてもよかったのではないのかな?」
アンペラトリスがステラに話し掛けている。
こう話す理由は、ベルオムとリューンに黙ってきた事を後悔していないのかと、確認するためだ。
「師匠は別にいいんですよ。研究さえできれば問題ないような人ですからね」
ベルオムの話を頬を膨らませながらするステラ。ベルオムはいろんな師匠ではあるけれど、どこか好きになれないのである。
「リューンくんはちょっとだけ話をしてきましたよ。しばらく出かけてくるけど、しっかり剣の腕を鍛えておくようにと。剣を持っているのにその腕前がなまくらではもったいないですからね」
「確かにそうだな。私ほどとは言わないが、今のステラリアくらいまでには腕を上げてもらわねばな」
ステラと話をしながら笑うアンペラトリスである。
「彼は幼いだけですからね。今の年齢ならばちゃんと教え込めば、数年後にはきっと立派な剣士になっています」
「私もそれを願う限りだな。彼の教育係に据えた騎士は少し厳しいが信頼はできる男だ。ふっ、帰ってきた時が楽しみだな」
トレイズ遺跡に向かう間、なぜか時折リューンの話で盛り上がるステラとアンペラトリスなのであった。
時折現地調達をしながら、ようやくトレイズ遺跡のある辺りまでやって来る。
小高い場所にあるコリーヌ帝国の中でも、さらに高い場所にあるトレイズ遺跡は、すっかり木々に覆い尽くされてしまっていた。本当に遺跡があるのか信じがたい光景である。
「もはや森ですね。ここに本当に遺跡があるのですか?」
「エルミタージュ王国の遺産だからな。500年も経てば、管理されていなければこうなるのは必然だ。むしろ他の遺跡の方が異様だろう」
ステラの言葉に、淡々と答えるアンペラトリス。
「それも……そうですね」
その答えに納得して考え込んでしまうステラ。
それというのも、先程からなにやら不思議な感覚に襲われているからだ。
「ステラリアも、ここに何かを感じるのか。……実は私もなのだよ」
「皇帝陛下も?」
驚いて顔を上げたステラの言葉に、笑顔を向けて頷くアンペラトリス。
この反応に、首を傾げてしまうステラ。エルミタージュ王国の関係する場所である以上、王家の血筋であるステラが何かしら感じ取るのは分かる。だが、そういった関係がなさそうなアンペラトリスがそんな感覚を覚えるのは、違和感しかなかった。
謎の多い女性であるアンペラトリスに新たな謎が生まれた瞬間だった。
しかし、今はそれを気にしている場合ではなかった。
ここからは森の中を進むので、馬車から降りなければならない。それに加えて、うっそうとした森の中では何が起こるか分からない。一気に緊張感が高まる。
馬車の面倒を見る兵士たちを除いて、トレイズ遺跡を取り囲む森の中へと入っていく。
先行して入った兵士たちのおかげか、ある程度道のようなものができているので、ステラたちは進むことにあまり苦労せずにすんでいる。
とはいっても、さすがにその幅はあまり広くないために、ほぼ隊列は一本線だ。横から襲われれば対処が難しい状況である。
「陛下」
「なんだ」
突然前方の兵士から声を掛けられるアンペラトリス。
「まもなくトレイズ遺跡に到着致します」
どうやら、遺跡が近付いてきた報告のようだ。
「そうか。ならば少し急ごうか」
「はっ、承知致しました」
アンペラトリスの命令で、行軍の進みが速くなる。
遺跡に到着すれば、少し足場が広くなるというのもあるし、単純にアンペラトリスが少しでも早く遺跡を見てみたいというのが理由だった。
しばらく進むと、ようやく開けた場所に出る。
「おお、ここがトレイズ遺跡か」
そこで見た光景に、アンペラトリスがつい感動の声を漏らしてしまう。
崩れた石造りの建物に一面に広がる石畳。おそらくそこには大きな建物が建っていたのだということが、ひと目でよく分かる。
崩れ落ちた大きな建物と周りに生い茂った草木。それが年月の経過というものをいやというくらいに物語っているのである。
「陛下、少し休憩なさいますか?」
到着したばかりということもあって、兵士がアンペラトリスに問い掛けている。
「いや、報告にあった地下を見せてもらおうか」
「はっ、畏まりました。おい、陛下を案内致すのだ」
「承知致しました」
現地で働いている兵士と作業員に連れられて、ステラとアンペラトリスは、最近発見されたという謎の地下空洞へと案内される。
しばらく歩いて到着したその場所の光景に、ステラは思わず口を覆ってしまう。
「どうした、ステラリア」
「い、いえ。なんでもありません」
アンペラトリスの質問に、首を横に振ってごまかすステラ。だが、その態度はあからさまに怪しかった。
それだというのに、アンペラトリスはステラの気持ちを慮ってか、追及してくることはなかった。
「中へと案内してもらう事はできるか?」
「いえ、中はまだ調査を始めたばかりで安全が確認できておりません。我々としては、陛下を案内するわけには参りません」
「そうか。ならば今のところは一度退こう。引き続き調査を頼むぞ」
「はっ!」
アンペラトリスはステラを連れて、一度入口付近のキャンプへと戻っていく。
「ステラリア、少し休むとしようか」
アンペラトリスはそう声を掛けて、ステラを自分に寄り添わせたのだった。
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