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第二章 外側の世界
第394話 転生者のいない戦い
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ピエラたちは突如として現れたリッチと名乗る人物との戦いに突入する。
見た感じからまったくもって不気味な存在のようで、ピエラたちも警戒を強めるばかりだ。
「あいつはセイが戦ってるやつと違って、私たちと同じような魔法の使い手よ」
「おやおや、分かりますかな」
「……ふざけてるの?」
ピエラは怒りをにじませている。
先程の不意打ちといい、今の態度といい、魔法を得意とするハミングウェイ伯爵家の者の神経を逆なでしているのである。
「いえいえ、我は別にバカにしているわけではありませんよ。貧弱な存在であるお前たちの実力をある程度認めたというだけです」
「それをバカにするというのよ」
リッチの言葉にますます逆上していくピエラである。
「ピエラ、あいつの口車に乗るのではないですよ」
セイ太が冷静になるように呼び掛ける。
人型となっているセイ太のしっぽがゆらゆらと揺れている。落ち着けといっている割には、セイ太もあまり落ち着けていないようだった。
「まったく、呪いの使い手とは穏やかではありませんね」
キリエが前に出ていく。
「それにその気配、こっそりと魔法を使っているようですね」
「ほう……。それが分かったとて、お前たちにはどうすることもできますまい?」
「確かに、あなたの魔法はかなり上位のもの。私とて敵わないのは事実でしょう」
リッチの言葉を、キリエは素直に認めている。魔王軍の参謀であるために、その手のことはすぐに察してしまうのだ。だからこそ、魔王軍は今まで存続できたといってもよいのである。
だが、今まで勝てない戦いから引いてきたキリエも、今回ばかりはそうはいかなかった。
魔王であるセイがヘルプワゾンとの死闘を繰り広げているのだ。魔王軍の参謀であるキリエには、主君たる魔王を見捨てて行動するということはできないのである。
最優先で守るべきはセイ太以外の三人だ。特にデイジーは目の前のリッチに対する有効な攻撃手段を持ち、レーヴェンの樹を植樹する上でも重要な人物。最優先で守るべき相手なのである。
「くくくっ、さあ、踊るがいいぞ」
「ぐっ!」
ネラールの様子がなんだかおかしい。
剣を握ると、近くにいたキリエへと襲い掛かる。
「傀儡の魔法、やはり仕掛けてましたか!」
「か、体が勝手に、くそっ!」
「さあ、もっと踊るのですよ。我に素晴らしい人形劇を見せて下さい」
リッチは高らかに笑っている。
ところが、ネラール以外にまったく魔法が通じていないことにまだ気が付いていないようだ。
「それっ!」
デイジーが叫ぶと、リッチの足元から勢いよく何かが飛び出てきた。
「な、なんだ?!」
地面から勢いよく飛び出てきたのは、なんとレーヴェンの樹だった。
元々植える予定でセイから種を受け取っていたのだが、先程、ターンアンデッドの魔法を使う際にこっそりと仕掛けておいたのである。
「くそっ、このようなことで」
地面から勢いよく飛び出てきたレーヴェンの樹に完全に打ち上げられてしまったリッチは、慌てて魔法で体勢を立て直す。
だが、その隙だらけの状態を見逃すピエラたちではなかった。すぐさまリッチへと追撃を仕掛ける。
「くそっ、我が傀儡よ。我を守れ!」
自分だけでは対処が無理だと判断したのか、リッチはネラールを護衛に呼びつける。
だが、ネラールはキリエの相手で精一杯だった。一千年の引きこもりと現役の魔王軍参謀である。鍛え直したとはいえ、実力の差は明らかだった。
「この役立たずがっ!」
やむなく魔法で空中に留まり、地上への落下を阻止する。
「ちっ、さすがに一筋縄じゃ行かないわね」
「完全に不意を突けたと思いましたのに!」
ピエラとデイジーが悔しそうだった。
「くはははっ、甘いわ! 我は異界の神の三使徒の一人ぞ?」
リッチは高らかに笑っているが、明らかに状況は劣勢である。
思った以上にピエラたちの実力が高くなっていて、自分の呪い系の魔法が効かなくて焦っているのだ。
「以前と比べて明らかに実力が高まっているのは褒めましょう。我の呪いを受け付けぬとは、正直驚きました」
「それはどうも。あんたになんか褒められても嬉しくないんだけどね」
ピエラは舌を突き出してやなこったといわんばかりの表情をしている。
このバカにしたような態度に、リッチはついにキレてしまったようである。
「仕方ありません。本当は穏便に皆殺しにしたかったのですが、こうなればやむをえません」
空中で留まった状態で、リッチは両手の人差し指を立てて魔力を込め始める。
段々と集まっていく魔力に、ピエラが青ざめた表情を浮かべる。
「まさか、そんな魔法を使うというの?」
「くくくっ、そこの女はこの魔法が何か分かるようですね。だが、お前たちと違って我は神に近い存在。お前たちのような貧弱な者と一緒にしてもらっては困るというものです」
にやりと笑う骨だらけのリッチ。
その間にも、リッチの人差し指には段々と魔力が集まり始めている。
「我を愚弄した罪を、ここで味わうといいのです。そこの傀儡よ、奴らをこの場に縛り付けなさい!」
リッチは魔力を溜めながら、ネラールを操ろうとしている。
「うわあああっ! か、体が熱い!」
ネラールに恐るべき変化が起きようとしている。
リッチは一体何をしようとしているのだろうか。ピエラたちに強い緊迫感が漂い始めた。
見た感じからまったくもって不気味な存在のようで、ピエラたちも警戒を強めるばかりだ。
「あいつはセイが戦ってるやつと違って、私たちと同じような魔法の使い手よ」
「おやおや、分かりますかな」
「……ふざけてるの?」
ピエラは怒りをにじませている。
先程の不意打ちといい、今の態度といい、魔法を得意とするハミングウェイ伯爵家の者の神経を逆なでしているのである。
「いえいえ、我は別にバカにしているわけではありませんよ。貧弱な存在であるお前たちの実力をある程度認めたというだけです」
「それをバカにするというのよ」
リッチの言葉にますます逆上していくピエラである。
「ピエラ、あいつの口車に乗るのではないですよ」
セイ太が冷静になるように呼び掛ける。
人型となっているセイ太のしっぽがゆらゆらと揺れている。落ち着けといっている割には、セイ太もあまり落ち着けていないようだった。
「まったく、呪いの使い手とは穏やかではありませんね」
キリエが前に出ていく。
「それにその気配、こっそりと魔法を使っているようですね」
「ほう……。それが分かったとて、お前たちにはどうすることもできますまい?」
「確かに、あなたの魔法はかなり上位のもの。私とて敵わないのは事実でしょう」
リッチの言葉を、キリエは素直に認めている。魔王軍の参謀であるために、その手のことはすぐに察してしまうのだ。だからこそ、魔王軍は今まで存続できたといってもよいのである。
だが、今まで勝てない戦いから引いてきたキリエも、今回ばかりはそうはいかなかった。
魔王であるセイがヘルプワゾンとの死闘を繰り広げているのだ。魔王軍の参謀であるキリエには、主君たる魔王を見捨てて行動するということはできないのである。
最優先で守るべきはセイ太以外の三人だ。特にデイジーは目の前のリッチに対する有効な攻撃手段を持ち、レーヴェンの樹を植樹する上でも重要な人物。最優先で守るべき相手なのである。
「くくくっ、さあ、踊るがいいぞ」
「ぐっ!」
ネラールの様子がなんだかおかしい。
剣を握ると、近くにいたキリエへと襲い掛かる。
「傀儡の魔法、やはり仕掛けてましたか!」
「か、体が勝手に、くそっ!」
「さあ、もっと踊るのですよ。我に素晴らしい人形劇を見せて下さい」
リッチは高らかに笑っている。
ところが、ネラール以外にまったく魔法が通じていないことにまだ気が付いていないようだ。
「それっ!」
デイジーが叫ぶと、リッチの足元から勢いよく何かが飛び出てきた。
「な、なんだ?!」
地面から勢いよく飛び出てきたのは、なんとレーヴェンの樹だった。
元々植える予定でセイから種を受け取っていたのだが、先程、ターンアンデッドの魔法を使う際にこっそりと仕掛けておいたのである。
「くそっ、このようなことで」
地面から勢いよく飛び出てきたレーヴェンの樹に完全に打ち上げられてしまったリッチは、慌てて魔法で体勢を立て直す。
だが、その隙だらけの状態を見逃すピエラたちではなかった。すぐさまリッチへと追撃を仕掛ける。
「くそっ、我が傀儡よ。我を守れ!」
自分だけでは対処が無理だと判断したのか、リッチはネラールを護衛に呼びつける。
だが、ネラールはキリエの相手で精一杯だった。一千年の引きこもりと現役の魔王軍参謀である。鍛え直したとはいえ、実力の差は明らかだった。
「この役立たずがっ!」
やむなく魔法で空中に留まり、地上への落下を阻止する。
「ちっ、さすがに一筋縄じゃ行かないわね」
「完全に不意を突けたと思いましたのに!」
ピエラとデイジーが悔しそうだった。
「くはははっ、甘いわ! 我は異界の神の三使徒の一人ぞ?」
リッチは高らかに笑っているが、明らかに状況は劣勢である。
思った以上にピエラたちの実力が高くなっていて、自分の呪い系の魔法が効かなくて焦っているのだ。
「以前と比べて明らかに実力が高まっているのは褒めましょう。我の呪いを受け付けぬとは、正直驚きました」
「それはどうも。あんたになんか褒められても嬉しくないんだけどね」
ピエラは舌を突き出してやなこったといわんばかりの表情をしている。
このバカにしたような態度に、リッチはついにキレてしまったようである。
「仕方ありません。本当は穏便に皆殺しにしたかったのですが、こうなればやむをえません」
空中で留まった状態で、リッチは両手の人差し指を立てて魔力を込め始める。
段々と集まっていく魔力に、ピエラが青ざめた表情を浮かべる。
「まさか、そんな魔法を使うというの?」
「くくくっ、そこの女はこの魔法が何か分かるようですね。だが、お前たちと違って我は神に近い存在。お前たちのような貧弱な者と一緒にしてもらっては困るというものです」
にやりと笑う骨だらけのリッチ。
その間にも、リッチの人差し指には段々と魔力が集まり始めている。
「我を愚弄した罪を、ここで味わうといいのです。そこの傀儡よ、奴らをこの場に縛り付けなさい!」
リッチは魔力を溜めながら、ネラールを操ろうとしている。
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