異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第416話 転生者、貫かれる

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――グッ……、ヤルナ。

 俺の攻撃は侵略者に命中したようだ。だが、なんとも手ごたえがない。やつには実体がないということか?

「お前、魔力の塊か。殴った感じがまったくしねえ……」

――フン、ダカラ ドウシタト イウノダ。

 その言葉の直後、俺は何かを感じ取る。
 足元から暗黒の魔力襲い掛かってきた。だが、俺の勘が働いたので、どうにか躱すことができた。
 死角からの攻撃とは、まったくいやらしい限りだぜ。

――ワレハ カミ。スベテノ セカイヲスベル チョウエツシタ カミトナルノダ。

 神様になるとはでかく出やがったな。
 だが、この世界を手に入れるのに手間取っているとは、大したことのない奴だぜ。

――ウルサイ! ドコマデモ ワレニ ハムカイオッテ! オマエタチヲ コロシ、コノセカイノ スベテノイノチヲ クチハテサセテクレル!

 俺の思考でも読みやがったのだろうか。侵略者は力を爆発させると、俺たちへと襲い掛かってきた。

――ワレノマエデハ オマエタチナド ムリョクダ! チカラノサヲ オモイシレ!

 侵略者がさらに力を、魔力を爆発させる。

「きゃあっ!」

「ぬおおっ!」

「ピエラ、みんな!」

 侵略者の魔力の爆風に、みんなが耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
 くそっ、この世界の地核を乗っ取っただけのことはあるってもんだな。とんでもない力だぜ。

――サア、コレデ ワレト イッタイイチダ。ワレヲ ジャマスル イマイマシキモノヨ。ソノチカラ ミセテミルガイイ!

 侵略者はそう宣言すると、体を膨張させて俺へと襲い掛かってくる。
 ゆらゆらと揺れる炎のような体にでかい目玉がぽつりと浮かぶという姿なだけに、なんとも不気味な感じがするぜ。
 だが、俺は逃げるわけにはいかない。こいつを倒すためにここまで来たんだからな。

「これでも、食らいやがれ!」

 俺はデザストレのうろこからレーヴェンの樹の種を数粒取り出すと、侵略者に向けて投げつける。

――フン。ワガシトニハ キイタダロウガ、コノワレニモ ツウジルト オモッテイルナラ、ジツニ アサハカナ コトダ!

「くそっ! やはりダメか……」

 投げつけたレーヴェンの樹の種は、奴の体に届く直前にボロボロに腐ってしまった。地上で種を植えようとした時と同じ現象が起きたのだ。

「だったら、これならどうだ!」

 俺はレーヴェンの樹の種を握り込むと、神聖魔力で全身を覆って殴りかかる。

――ムダナコトヲ!

「うおおおっ!」

 俺は侵略者に向けて突進していく。
 思い出していたのだ。こいつは俺たちの体を触れたくらいで腐らせることはできないと。
 地上で種を埋めたデイジーも、よく思えばまったくの無傷だった。
 さっきも俺が思いっきり殴りつけたというのに無傷だった。
 つまり、俺たちの体に関しては、こいつは簡単に腐らせられないってことだ。

「どっせい!」

 俺はやつの攻撃よりも早く、拳を体に叩きつける。

「さあ、レーヴェンの樹の種よ。その力を見せてみろ!」

 握っていた手を開き、俺はレーヴェンの樹の種を奴の体の中で解放する。

――ナニ、ソレハ。ソレハ……、ソンナバカナ!

 体の中でレーヴェンの樹の種を解放すると、侵略者がかなり慌てている。
 どうやら、種を腐らせることができるのは体の表面だけで、内部は弱点だらけのようだな。

「いけっ、レーヴェンの樹の種!」

――サセル、モノカァッ!

 俺が魔力を乗せてレーヴェンの樹の種の力を解放させようとする。
 その時だった。

「うぐっ……!」

 俺の体にたくさんの衝撃が走った。

「く……そ……」

 侵略者の攻撃が、俺の体を貫いていたのだ。
 あまりにも一斉に行われた攻撃に、俺はまったく避けることもできなかった。

「かはっ!」

 痛みのせいで俺は血を吐いてしまう。

――ユダンシタナ。タシカニ、コノコウゲキハ カナリキイタ。ダガ、ソレデ アンシンスルトハ マッタク オロカナコトヨ……。

 侵略者は俺の体に漆黒のとげを突き刺したまま、持ち上げて振り回そうとしている。

――キサマハ ヨクヤッタ。ホウビニ ワレノ ゼンリョクデモッテ シマツシテヤロウ。

「く……っ。やられて、たまるかよ……」

――マダ シャベレルカ。アキラメロ。オマエハ モウ ワレノイチブト ナルノダ。シネッ!

 くそっ、このままやられてたまるかよ。
 この世界を取り戻すために、俺は、俺は死ねないんだ!

「せ、セイ!」

「セイーッ!」

「いやあ、お姉様ーっ!」

 どうにか起き上がってきたピエラ、セイ太、デイジーたちが、俺の姿を見て悲鳴を上げている。
 悪い、どうやら俺はここまでみたいだ。
 死ねないという気持ちはあるが、段々と意識が遠くなっていくのを感じて、弱気になってきてしまうぜ。
 ああ、魔王城に戻れば、あいつらがうまそうな飯を作って待っていてくれるんだろうな。
 そういえば、皇帝ともまた手合わせの約束してたっけか……。
 俺の頭の中に、いろんな思いが巡り始めている。

――ハハハッ、トドメダ!

 侵略者がそう叫んだ時、俺の体の前方から、侵略者の鋭い闇の魔力が迫ってくる。
 そして、俺はまったく抵抗することなく、前後から奴の魔力に貫かれたのだった。
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