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第一章 大陸編
第24話 転生者、なんとなく気まずい
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ピエラまで魔王城にやって来てから数日が経過する。
バフォメットから聞いた情報を元にある程度組み立てたものの、ここは一度現地も見ておきたくなった。
いや、信じてないわけじゃないけど、やっぱり鵜呑みにするのもよろしくないかと思ってね。あと、ピエラがしばらく魔王領に居座るみたいだからな。見て回るにはちょうどいい理由というわけだ。
というわけで、ある夜のこと、俺はキリエに相談を持ちかけることにした。
「はあ、魔王領の中を実際に見て回りたい、そう仰られるのですね」
どういうわけか第一声がため息である。変な事を言ったつもりはないんだがな。
キリエの反応はどこか呆れたような感じだった。
「いやな。バフォメットの事を信用してないわけじゃないんだ。今はピエラもいるから、せっかくだし一緒に見て回っておこうと思うんだよ。以前来た時は当時の魔王を倒す事しか頭になかったから、魔王領の中を詳しく知らないわけだしな」
「なるほど、そちらの彼女さんが原因なのですね」
「か、彼女……」
キリエがどこか不機嫌そうな感じで漏らすと、ピエラは頬を押さえながら赤くなっていた。いや、一体どういうわけなんだ。
「まあ、現在の魔王領に住む魔族で魔王様たちに手を出すような愚か者は居ないでしょうけれど、一応ヴォルフを護衛としてお連れになって下さい」
「ああ、そうさせてもらうよ」
キリエが眉間にしわを寄せながら提案している。いや、どうしてそんなに不機嫌そうな顔なんだ?
俺はキリエの態度に疑問を持ちながらも、その提案は了承しておいた。
さて、魔王領の現地視察が決まったのはいいのだが、キリエからは準備に時間がかかると言われたので、翌日はピエラとのんびりと過ごす事になった。
ピエラと二人っきりになるのは、先日のピエラが魔王城にやって来た日以来だ。
実は昨日までのピエラは、カスミの付き添いで魔王城内の案内を受けていたのだ。そのためにこの数日間は食事以外で俺と顔を合わせなかったのだ。
キリエの話によれば、かなり広いらしいので1日や2日では終わらなかった上に、書庫では大はしゃぎをしていたらしい。
魔王城内には珍しい書物もあるらしいので、魔法使い系であるピエラにとっては宝の山に思えたことだろう。
ところがどっこい、視察に向かう準備をしている今日は、先日ぶりに俺とずっと一緒に居るという状況だ。
(うーん、気まずい……)
ひたすら笑っていたあの時のでき事が、お互いの脳裏をよぎっていた。
俺もピエラも、どうしたらいいのかと言葉を交わす事もなくただただ時間だけが過ぎていった。
しかし、さすがに沈黙に耐え切れなくなってきてしまう。俺は笑われる覚悟をして、ピエラに声を掛けることにした。
「あのさ、ピエラ」
「セイ、あのね」
すると、驚いたことにピエラと声を出すタイミングがかぶってしまった。なんてよくあるパターンなんだ。
「……セイ、ごめんね」
しばらくの沈黙が続いた後、ピエラが先に話し掛けてきた。というか、謝罪だった。
面食らいはしたものの、俺はピエラの話を黙って聞く事にした。
「この間、笑い過ぎちゃってごめんなさいね。女性になっちゃったのが受け入れられなくて、現実逃避しちゃったみたい。そのせいでセイを傷付けちゃったわ。本当にごめんね……」
ピエラは申し訳なさそうな表情をしながら、俺に頭を下げていた。
俺はそっとピエラの頭に手を置く。
「もう気にしてないよ。さすがにその時は傷付いたけどな。もう大丈夫だから頭を上げてくれ」
「セイ……」
俺が声を掛ければ、ピエラはゆっくりと頭を上げて笑っていた。ただ、目尻には涙が薄ら浮かんでいたので、泣くほどに反省しているのがよく分かった。
「それにしても、獣人というのも本当だというのが分かったわ。頭に触れた手がなんともふかふかしてたもの」
そう言って、ピエラは俺の手を突然握りしめる。
「うう、なんて心地よい手触りなのかしら……」
「お、おい、ピエラ……」
さっきまで泣きかけていたのが嘘のように、うっとりとした表情を浮かべるピエラ。これがもふもふの威力というやつか。
「肉球ってこんなにぷにぷにしてるの?!」
「おい、くすぐったいってば。とりあえず離してくれ」
肉球の感触を一心不乱に確かめているピエラ。さすがにくすぐったくて笑いそうになってしまう。
「おい、ピエラ、頼むから手を離してくれ」
さすがにしつこすぎてつい怒鳴ってしまう。
「あ、ごめんなさい……」
俺が怒鳴ると、ようやくピエラは手を離してくれた。
「ふぅ、くすぐったかったぜ……」
「そっか、触られる側ってそんなに風に感じるのね。次からは気を付けるわね」
本気で凹んでいるピエラの姿に、なんというかもう怒る気が失せてしまう。これって甘いんだろうかな……。
「とりあえず許すから、顔を上げてくれ……。まったく、何を話そうとしたのか忘れちまったよ」
前髪をかき上げながら、大きなため息をついてしまう。
でも、忘れてしまうくらいだから大した事じゃないんだろうなと、俺は気持ちを切り替える。
「明日からは魔王領の視察に向かうわけだし、この地をどう治めていくべきか、ピエラにも意見を聞いてみるとしようか」
「あ、うん。私でよければ……」
そんなわけで、ここまで俺がまとめた運営計画をピエラと一緒に考え直してみることにしたのだった。
バフォメットから聞いた情報を元にある程度組み立てたものの、ここは一度現地も見ておきたくなった。
いや、信じてないわけじゃないけど、やっぱり鵜呑みにするのもよろしくないかと思ってね。あと、ピエラがしばらく魔王領に居座るみたいだからな。見て回るにはちょうどいい理由というわけだ。
というわけで、ある夜のこと、俺はキリエに相談を持ちかけることにした。
「はあ、魔王領の中を実際に見て回りたい、そう仰られるのですね」
どういうわけか第一声がため息である。変な事を言ったつもりはないんだがな。
キリエの反応はどこか呆れたような感じだった。
「いやな。バフォメットの事を信用してないわけじゃないんだ。今はピエラもいるから、せっかくだし一緒に見て回っておこうと思うんだよ。以前来た時は当時の魔王を倒す事しか頭になかったから、魔王領の中を詳しく知らないわけだしな」
「なるほど、そちらの彼女さんが原因なのですね」
「か、彼女……」
キリエがどこか不機嫌そうな感じで漏らすと、ピエラは頬を押さえながら赤くなっていた。いや、一体どういうわけなんだ。
「まあ、現在の魔王領に住む魔族で魔王様たちに手を出すような愚か者は居ないでしょうけれど、一応ヴォルフを護衛としてお連れになって下さい」
「ああ、そうさせてもらうよ」
キリエが眉間にしわを寄せながら提案している。いや、どうしてそんなに不機嫌そうな顔なんだ?
俺はキリエの態度に疑問を持ちながらも、その提案は了承しておいた。
さて、魔王領の現地視察が決まったのはいいのだが、キリエからは準備に時間がかかると言われたので、翌日はピエラとのんびりと過ごす事になった。
ピエラと二人っきりになるのは、先日のピエラが魔王城にやって来た日以来だ。
実は昨日までのピエラは、カスミの付き添いで魔王城内の案内を受けていたのだ。そのためにこの数日間は食事以外で俺と顔を合わせなかったのだ。
キリエの話によれば、かなり広いらしいので1日や2日では終わらなかった上に、書庫では大はしゃぎをしていたらしい。
魔王城内には珍しい書物もあるらしいので、魔法使い系であるピエラにとっては宝の山に思えたことだろう。
ところがどっこい、視察に向かう準備をしている今日は、先日ぶりに俺とずっと一緒に居るという状況だ。
(うーん、気まずい……)
ひたすら笑っていたあの時のでき事が、お互いの脳裏をよぎっていた。
俺もピエラも、どうしたらいいのかと言葉を交わす事もなくただただ時間だけが過ぎていった。
しかし、さすがに沈黙に耐え切れなくなってきてしまう。俺は笑われる覚悟をして、ピエラに声を掛けることにした。
「あのさ、ピエラ」
「セイ、あのね」
すると、驚いたことにピエラと声を出すタイミングがかぶってしまった。なんてよくあるパターンなんだ。
「……セイ、ごめんね」
しばらくの沈黙が続いた後、ピエラが先に話し掛けてきた。というか、謝罪だった。
面食らいはしたものの、俺はピエラの話を黙って聞く事にした。
「この間、笑い過ぎちゃってごめんなさいね。女性になっちゃったのが受け入れられなくて、現実逃避しちゃったみたい。そのせいでセイを傷付けちゃったわ。本当にごめんね……」
ピエラは申し訳なさそうな表情をしながら、俺に頭を下げていた。
俺はそっとピエラの頭に手を置く。
「もう気にしてないよ。さすがにその時は傷付いたけどな。もう大丈夫だから頭を上げてくれ」
「セイ……」
俺が声を掛ければ、ピエラはゆっくりと頭を上げて笑っていた。ただ、目尻には涙が薄ら浮かんでいたので、泣くほどに反省しているのがよく分かった。
「それにしても、獣人というのも本当だというのが分かったわ。頭に触れた手がなんともふかふかしてたもの」
そう言って、ピエラは俺の手を突然握りしめる。
「うう、なんて心地よい手触りなのかしら……」
「お、おい、ピエラ……」
さっきまで泣きかけていたのが嘘のように、うっとりとした表情を浮かべるピエラ。これがもふもふの威力というやつか。
「肉球ってこんなにぷにぷにしてるの?!」
「おい、くすぐったいってば。とりあえず離してくれ」
肉球の感触を一心不乱に確かめているピエラ。さすがにくすぐったくて笑いそうになってしまう。
「おい、ピエラ、頼むから手を離してくれ」
さすがにしつこすぎてつい怒鳴ってしまう。
「あ、ごめんなさい……」
俺が怒鳴ると、ようやくピエラは手を離してくれた。
「ふぅ、くすぐったかったぜ……」
「そっか、触られる側ってそんなに風に感じるのね。次からは気を付けるわね」
本気で凹んでいるピエラの姿に、なんというかもう怒る気が失せてしまう。これって甘いんだろうかな……。
「とりあえず許すから、顔を上げてくれ……。まったく、何を話そうとしたのか忘れちまったよ」
前髪をかき上げながら、大きなため息をついてしまう。
でも、忘れてしまうくらいだから大した事じゃないんだろうなと、俺は気持ちを切り替える。
「明日からは魔王領の視察に向かうわけだし、この地をどう治めていくべきか、ピエラにも意見を聞いてみるとしようか」
「あ、うん。私でよければ……」
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