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第一章 大陸編
第35話 転生者、勝負を挑まれる
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気が付いたら、俺は魔王城の訓練場に立たされていた。周りには訓練中だった兵士たちが、俺たちの戦いを見守ろうとずらっと並んでいる。
目の前にはぴょんぴょんとその場で飛び跳ねるキリエの妹であるコモヤの姿がある。
どうやら本当に決闘することになったようだった。何がどうしてこうなったのか、俺は詳しく状況を知りたいぜ。
「魔王様」
俺に対してキリエが声を掛けてくる。
「コモヤは私たちの末妹ではありますが、実力は侮れません。隠密を得意とするだけあって、小物の武器の扱いにはとても長けております」
「姉様、あまり事前情報入れるんじゃありませんよ。まあもっとも、知られてたからといって、うちの攻撃を凌げるとは思っていませんけれどね」
キリエが俺にコモヤの紹介をしていると、コモヤがそれを遮ってくる。
態度から察するに、とっとと戦いたがっているようだ。柔軟体操まで始めてしまって、相当に待ちわびているように見える。
この分では、どうあがいても断れそうにない。わけも分からずに流れでこうなってしまったが、俺は仕方なく諦めて決闘を受け入れることにした。下手に断るとうざ絡みされそうだしな。
「まったく、コモヤにも困ったものです。いいですか、あくまでも実力を試すための戦いです。そこを弁えるのですよ、コモヤ」
「分かっていますよ、姉様」
両手にナイフを持って、その場で軽く跳躍をするコモヤ。どう見てもやる気満々じゃねえかよ。
俺はピエラが心配そうに見つめてくる中、腹を括る。さっきまで左右に揺れていたしっぽもぴたりとその動きを止めた。
(とりあえず、こういう分からず屋は実力で黙らせるのが一番だ。前魔王を討った俺の力を、存分に見せつけてやろうじゃないか)
俺が眉間にしわを寄せて気合いを入れていると、コモヤはにたーっと喜びにあふれた表情を見せつけてくる。
まったく、この姉妹たちはそれぞれにキャラが濃いな……。コモヤは戦闘狂かよ。
とはいえ、この体の身体能力を測るいい機会だ。この体になってから戦闘の経験がないからな。
「武器は要りませんか?」
「必要ないかな。獣人って徒手が基本なんだろ?」
「まあそうですね。確かに、武器を使わない事が多いですね」
質問に俺が答えると、コモヤは納得したような様子を見せていた。そして、キリエの方に視線を向けると、姉妹が揃って首を縦に振っていた。
その様子を見た俺は、いつでも来いと言わんばかりに身構える。
「では……始め!」
双方の準備ができたことで、キリエが開始の合図をする。
それと同時に、コモヤが目の前から消えた。
そもそも忍びっぽい衣装を着ていた時点で予測はできたが、ここまで動きが速いとは思ってもみなかった。
(目で追うだけなら、おそらく捉えるのは不可能……。だが、今の俺は獣人だ。コモヤ、お前のにおいはしっかりと覚えさせてもらってるぜ)
パシッという音が響き渡る。
「なっ……」
完全に背後を取ったと思ったのか、コモヤが驚きの表情を見せている。
俺は攻撃を受け止めただけだが、コモヤには予想外過ぎる一手のようだった。
「た、たまたまです。魔王軍隠密筆頭たるうちの攻撃、何度もまぐれで防げると思わないで下さいよ!」
慌てるコモヤだったが、さすがは隠密。次の瞬間には冷静さを取り戻していた。
だが、何回やっても何回やっても、俺にその攻撃が通じることはなかった。全部直接攻撃しに来てくれるおかげで、全部受け止めてしまったのだ。
距離を取ったコモヤは、すべて防がれてしまったことに焦りを禁じえなかった。
「そんな……ありえない」
「もう終わりか? だったら今度は俺から行くぜ」
「くっ!」
さっきまで棒立ちだったせいか。無性に体を動かしてたまらくなった俺は、コモヤからの攻撃が途切れた事をいいことに、攻勢に打って出る。
だが、単純なスピード勝負であれば、俺の方が劣ってしまうらしい。さすが隠密といったところだな。
「ぬっ?」
俺が違和感を感じて空中を蹴り上げると、ばらばらと投げナイフが散らばる。直接攻撃を入れに行っても止められるから、攻撃パターンを変えてきたようだ。
ところが、そんな工夫をしてみたものの、それすらもあっさり俺は防いでみせていた。
これをしばらく繰り返していると、コモヤはついに動く事をやめたようだった。
「おい、どうしたんだよ」
動きを止めたコモヤに問い掛ける。すると、コモヤは肩肘を張りながら俺を睨み付けてきた。よく見ると、目には涙が溜まっている。
(げっ、泣かしちまったか?!)
その姿に思わずたじろいでしまう。
俺が隙を見せたことで、コモヤはチャンスとばかりに突っ込んでくる。だが、
「甘いぜ。通じないっての」
腕を掴んで後ろ手に回す俺。ちょっと可哀想だけど、完全に決着をつけるために仕方なかった。
「ううう、認めたくはないですけれど、うちの負けです!」
ようやくコモヤがギブアップをした。まったく、最後まで油断も隙もありゃしない。
「さすがは魔王様でございます。コモヤ、この任務、引き受けてくれますね?」
「仕方ありません。強者に従うのが魔族の掟、このコモヤ、しかと任務を遂行してみせましょう」
俺に跪いて宣言をするコモヤである。この瞬間、訓練場の中は大いに沸き上がった。
そして、敗北を認めたコモヤはすかさず準備をすると、早速王都に向けて出発していった。
帰ってくるなりいきなり勝負を仕掛けられたものの、これでようやくひと息つけると安心する俺なのであった。
目の前にはぴょんぴょんとその場で飛び跳ねるキリエの妹であるコモヤの姿がある。
どうやら本当に決闘することになったようだった。何がどうしてこうなったのか、俺は詳しく状況を知りたいぜ。
「魔王様」
俺に対してキリエが声を掛けてくる。
「コモヤは私たちの末妹ではありますが、実力は侮れません。隠密を得意とするだけあって、小物の武器の扱いにはとても長けております」
「姉様、あまり事前情報入れるんじゃありませんよ。まあもっとも、知られてたからといって、うちの攻撃を凌げるとは思っていませんけれどね」
キリエが俺にコモヤの紹介をしていると、コモヤがそれを遮ってくる。
態度から察するに、とっとと戦いたがっているようだ。柔軟体操まで始めてしまって、相当に待ちわびているように見える。
この分では、どうあがいても断れそうにない。わけも分からずに流れでこうなってしまったが、俺は仕方なく諦めて決闘を受け入れることにした。下手に断るとうざ絡みされそうだしな。
「まったく、コモヤにも困ったものです。いいですか、あくまでも実力を試すための戦いです。そこを弁えるのですよ、コモヤ」
「分かっていますよ、姉様」
両手にナイフを持って、その場で軽く跳躍をするコモヤ。どう見てもやる気満々じゃねえかよ。
俺はピエラが心配そうに見つめてくる中、腹を括る。さっきまで左右に揺れていたしっぽもぴたりとその動きを止めた。
(とりあえず、こういう分からず屋は実力で黙らせるのが一番だ。前魔王を討った俺の力を、存分に見せつけてやろうじゃないか)
俺が眉間にしわを寄せて気合いを入れていると、コモヤはにたーっと喜びにあふれた表情を見せつけてくる。
まったく、この姉妹たちはそれぞれにキャラが濃いな……。コモヤは戦闘狂かよ。
とはいえ、この体の身体能力を測るいい機会だ。この体になってから戦闘の経験がないからな。
「武器は要りませんか?」
「必要ないかな。獣人って徒手が基本なんだろ?」
「まあそうですね。確かに、武器を使わない事が多いですね」
質問に俺が答えると、コモヤは納得したような様子を見せていた。そして、キリエの方に視線を向けると、姉妹が揃って首を縦に振っていた。
その様子を見た俺は、いつでも来いと言わんばかりに身構える。
「では……始め!」
双方の準備ができたことで、キリエが開始の合図をする。
それと同時に、コモヤが目の前から消えた。
そもそも忍びっぽい衣装を着ていた時点で予測はできたが、ここまで動きが速いとは思ってもみなかった。
(目で追うだけなら、おそらく捉えるのは不可能……。だが、今の俺は獣人だ。コモヤ、お前のにおいはしっかりと覚えさせてもらってるぜ)
パシッという音が響き渡る。
「なっ……」
完全に背後を取ったと思ったのか、コモヤが驚きの表情を見せている。
俺は攻撃を受け止めただけだが、コモヤには予想外過ぎる一手のようだった。
「た、たまたまです。魔王軍隠密筆頭たるうちの攻撃、何度もまぐれで防げると思わないで下さいよ!」
慌てるコモヤだったが、さすがは隠密。次の瞬間には冷静さを取り戻していた。
だが、何回やっても何回やっても、俺にその攻撃が通じることはなかった。全部直接攻撃しに来てくれるおかげで、全部受け止めてしまったのだ。
距離を取ったコモヤは、すべて防がれてしまったことに焦りを禁じえなかった。
「そんな……ありえない」
「もう終わりか? だったら今度は俺から行くぜ」
「くっ!」
さっきまで棒立ちだったせいか。無性に体を動かしてたまらくなった俺は、コモヤからの攻撃が途切れた事をいいことに、攻勢に打って出る。
だが、単純なスピード勝負であれば、俺の方が劣ってしまうらしい。さすが隠密といったところだな。
「ぬっ?」
俺が違和感を感じて空中を蹴り上げると、ばらばらと投げナイフが散らばる。直接攻撃を入れに行っても止められるから、攻撃パターンを変えてきたようだ。
ところが、そんな工夫をしてみたものの、それすらもあっさり俺は防いでみせていた。
これをしばらく繰り返していると、コモヤはついに動く事をやめたようだった。
「おい、どうしたんだよ」
動きを止めたコモヤに問い掛ける。すると、コモヤは肩肘を張りながら俺を睨み付けてきた。よく見ると、目には涙が溜まっている。
(げっ、泣かしちまったか?!)
その姿に思わずたじろいでしまう。
俺が隙を見せたことで、コモヤはチャンスとばかりに突っ込んでくる。だが、
「甘いぜ。通じないっての」
腕を掴んで後ろ手に回す俺。ちょっと可哀想だけど、完全に決着をつけるために仕方なかった。
「ううう、認めたくはないですけれど、うちの負けです!」
ようやくコモヤがギブアップをした。まったく、最後まで油断も隙もありゃしない。
「さすがは魔王様でございます。コモヤ、この任務、引き受けてくれますね?」
「仕方ありません。強者に従うのが魔族の掟、このコモヤ、しかと任務を遂行してみせましょう」
俺に跪いて宣言をするコモヤである。この瞬間、訓練場の中は大いに沸き上がった。
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