37 / 431
第一章 大陸編
第37話 転生者、いろいろ気にする
しおりを挟む
夜が明け、いよいよ魔王領の視察を再開させる事になる。
目を覚ました俺たちは、キリエとラビリアの手によって服を着替えさせられる。
「なんか、いつもと違った感じの服装だな」
「わ、私にも服があるんですか」
俺とピエラはそれぞれに違った反応を見せていた。
というのも、俺が着ている服は今までとは違った感じの服装だったからだ。なんというか軍服に近い感じのデザインになっている。
ピエラの方も、魔法使いっぽい格好ではあるものの、今まで着ていた服とはなんとも雰囲気が違ったものになっている。
「今回向かう先が純魔族の方々の領域ということで、わたくしができる限りの腕を振るわせてもらいましたわ。どちらも2着ずつございますからね」
ひょっこりと顔を出すクローゼである。面識がないはずのピエラの服まで作っているとは、なんとも恐ろしいアラクネだな。
「ふふん、わたくしを誰だと思っていますの? そちらのお嬢ちゃんの情報もちゃーんと仕入れてあるのよ」
ものすごく自慢げである。
まあ、ものすごく似合っているから、深く追及するのはやめておこうと思う。どうも話が長くなりそうな感じがするからな。獣人としての勘がそう告げているのである。
なので、俺はクローゼとは話をしないで、ピエラの方を向いて話をしている。
「ピエラ、すごく似合ってるぞ」
「あ、ありがとう、セイ……」
俺が褒めると、照れくさそうにするピエラだった。
それはともかくとして、なんだか俺もピエラもスカート短くないかな。正直言うと、そこだけが気になるところだ。
くるりとクローゼの方を振り返る俺だが、クローゼはにこにことしたを見せていた。
「魔族の間では、スカートは短い方が流行っていますからね。そこらへんは人間たちとは感覚が違うというやつでしょうね」
「いい加減にその顔やめてくれないかな。なんでそんなに嬉しそうなんだよ……」
「スカートが短いからじゃなくて、作った服がとても似合っているからよ。仕立て屋として、それほど喜ばしい事はないのではなくて?」
「確かにそうですね」
クローゼの言葉に納得するピエラである。その姿を見せられては、俺も納得せざるを得なかった。
だが、元男としては短いスカート着るのはなんとも心もとないんだよ。見るのと着るのとじゃえらい違いなんだ。
そう声に出して叫びたいところだが、さすがにピエラにドン引きされそうなので心の中でだけ思っておく俺だった。
「よし、これ以上服の事を気にしても仕方ないな。純魔族たちに会いに出発するぞ」
もうやけくそだ。
気にするくらいなら、他の種族たちにも会って確認してみればいいんだ。本当にこういう格好が魔族の間の流行りなのかどうなのかをな。嘘だったら承知しないからな、クローゼ。
俺がそう思った瞬間、クローゼの笑顔が凍り付いた気がした。
「クローゼの戯言は聞き流す方がいいですよ、魔王様。メイド服を着ている私を見ても分かりますが、みんながみんな短い方を好むわけがないんですよ」
「そ、そうだな。もうスカートの話題は終わりにしようぜ……」
「そうよ。さっさと出発しましょう。早く魔族たちに会ってみたいもの」
魔王領に住む気満々のピエラは、魔族たちに出会えることをとても楽しみにしているようだ。そのせいでものすごく急かしてくる。
これを受けて、キリエとラビリアは顔を向き合わせてこくりと頷いた。
「それでは、馬車を正面へと回して来ますので、魔王様たちはラビリアと一緒にお向かい下さいませ」
キリエはそう言うと、一足先に部屋を出ていった。……クローゼの耳を引っ張りながら。
「い、痛い。やめろキリエ、離してくれ、ちぎれてしまう」
あまりの痛さにいつもの口調が崩れているクローゼだった。その姿に、俺たちは心配すればいいのか笑えばいいのか分からずに、しばらく立ち尽くしていた。
しばらくして我に返った俺は、ピエラに向かって声を掛ける。
「とりあえず、城の正面の入口に行こうか」
「そ、そうね」
「では、ご案内致します」
俺たちはラビリアの案内で、魔王城の正面の入口へと向かう。その中で俺は、クローゼに対してご愁傷さまと、一応気遣った。自業自得なので気持ち半分だけどな。
正面の入口で待つことしばらく、見慣れた馬車が正面の入口に姿を見せた。
「お待たせ致しました、魔王様、ピエラ様」
馬車の中からバフォメットが降りてくる。
「それでは、早速参りましょうか、魔王様」
続いて姿を見せたキリエだが、その姿は見慣れたメイド服ではなく王国で一度だけ見せた参謀スタイルだった。
「キリエ、そっちの姿なのか」
「はい。こちらの姿でないとお父様やお母様たちを納得させられませんから……」
淡々と答えているように見えるキリエだが、獣人となったせいか気持ちの機微にも敏感になった俺は、その胸中を見抜いていた。
そういえばキリエはエリート魔族だとか言っていた。だから、メイド服の状態では実家へと戻れないのだろう。
「うわあ、キリエさん、かっこいいですね」
ピエラが正直な感想をぶつけると、キリエはちょっと照れているようだった。
「それでは、早速出発すると致しましょう。ささっ、魔王様こちらへ」
「ああ」
バフォメットに言われて俺たちは馬車へと乗り込む。
そして、準備が整うと、馬車は純魔族たちの住む街へと向けてゆっくりと動き出したのだった。
目を覚ました俺たちは、キリエとラビリアの手によって服を着替えさせられる。
「なんか、いつもと違った感じの服装だな」
「わ、私にも服があるんですか」
俺とピエラはそれぞれに違った反応を見せていた。
というのも、俺が着ている服は今までとは違った感じの服装だったからだ。なんというか軍服に近い感じのデザインになっている。
ピエラの方も、魔法使いっぽい格好ではあるものの、今まで着ていた服とはなんとも雰囲気が違ったものになっている。
「今回向かう先が純魔族の方々の領域ということで、わたくしができる限りの腕を振るわせてもらいましたわ。どちらも2着ずつございますからね」
ひょっこりと顔を出すクローゼである。面識がないはずのピエラの服まで作っているとは、なんとも恐ろしいアラクネだな。
「ふふん、わたくしを誰だと思っていますの? そちらのお嬢ちゃんの情報もちゃーんと仕入れてあるのよ」
ものすごく自慢げである。
まあ、ものすごく似合っているから、深く追及するのはやめておこうと思う。どうも話が長くなりそうな感じがするからな。獣人としての勘がそう告げているのである。
なので、俺はクローゼとは話をしないで、ピエラの方を向いて話をしている。
「ピエラ、すごく似合ってるぞ」
「あ、ありがとう、セイ……」
俺が褒めると、照れくさそうにするピエラだった。
それはともかくとして、なんだか俺もピエラもスカート短くないかな。正直言うと、そこだけが気になるところだ。
くるりとクローゼの方を振り返る俺だが、クローゼはにこにことしたを見せていた。
「魔族の間では、スカートは短い方が流行っていますからね。そこらへんは人間たちとは感覚が違うというやつでしょうね」
「いい加減にその顔やめてくれないかな。なんでそんなに嬉しそうなんだよ……」
「スカートが短いからじゃなくて、作った服がとても似合っているからよ。仕立て屋として、それほど喜ばしい事はないのではなくて?」
「確かにそうですね」
クローゼの言葉に納得するピエラである。その姿を見せられては、俺も納得せざるを得なかった。
だが、元男としては短いスカート着るのはなんとも心もとないんだよ。見るのと着るのとじゃえらい違いなんだ。
そう声に出して叫びたいところだが、さすがにピエラにドン引きされそうなので心の中でだけ思っておく俺だった。
「よし、これ以上服の事を気にしても仕方ないな。純魔族たちに会いに出発するぞ」
もうやけくそだ。
気にするくらいなら、他の種族たちにも会って確認してみればいいんだ。本当にこういう格好が魔族の間の流行りなのかどうなのかをな。嘘だったら承知しないからな、クローゼ。
俺がそう思った瞬間、クローゼの笑顔が凍り付いた気がした。
「クローゼの戯言は聞き流す方がいいですよ、魔王様。メイド服を着ている私を見ても分かりますが、みんながみんな短い方を好むわけがないんですよ」
「そ、そうだな。もうスカートの話題は終わりにしようぜ……」
「そうよ。さっさと出発しましょう。早く魔族たちに会ってみたいもの」
魔王領に住む気満々のピエラは、魔族たちに出会えることをとても楽しみにしているようだ。そのせいでものすごく急かしてくる。
これを受けて、キリエとラビリアは顔を向き合わせてこくりと頷いた。
「それでは、馬車を正面へと回して来ますので、魔王様たちはラビリアと一緒にお向かい下さいませ」
キリエはそう言うと、一足先に部屋を出ていった。……クローゼの耳を引っ張りながら。
「い、痛い。やめろキリエ、離してくれ、ちぎれてしまう」
あまりの痛さにいつもの口調が崩れているクローゼだった。その姿に、俺たちは心配すればいいのか笑えばいいのか分からずに、しばらく立ち尽くしていた。
しばらくして我に返った俺は、ピエラに向かって声を掛ける。
「とりあえず、城の正面の入口に行こうか」
「そ、そうね」
「では、ご案内致します」
俺たちはラビリアの案内で、魔王城の正面の入口へと向かう。その中で俺は、クローゼに対してご愁傷さまと、一応気遣った。自業自得なので気持ち半分だけどな。
正面の入口で待つことしばらく、見慣れた馬車が正面の入口に姿を見せた。
「お待たせ致しました、魔王様、ピエラ様」
馬車の中からバフォメットが降りてくる。
「それでは、早速参りましょうか、魔王様」
続いて姿を見せたキリエだが、その姿は見慣れたメイド服ではなく王国で一度だけ見せた参謀スタイルだった。
「キリエ、そっちの姿なのか」
「はい。こちらの姿でないとお父様やお母様たちを納得させられませんから……」
淡々と答えているように見えるキリエだが、獣人となったせいか気持ちの機微にも敏感になった俺は、その胸中を見抜いていた。
そういえばキリエはエリート魔族だとか言っていた。だから、メイド服の状態では実家へと戻れないのだろう。
「うわあ、キリエさん、かっこいいですね」
ピエラが正直な感想をぶつけると、キリエはちょっと照れているようだった。
「それでは、早速出発すると致しましょう。ささっ、魔王様こちらへ」
「ああ」
バフォメットに言われて俺たちは馬車へと乗り込む。
そして、準備が整うと、馬車は純魔族たちの住む街へと向けてゆっくりと動き出したのだった。
10
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる