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第一章 大陸編
第39話 転生者、強気に出る
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俺たちが通されたのは、応接間だった。つまり、一般的な来客と同じ扱いを受けたのである。
普通に思えば屈辱的なものだろうが、ひとまず話さえできるのであれば俺は特に気しなかった。
他のみんなも、どちらかといえば落ち着いた態度だ。落ち着いていないのは一人だけ。純魔族の長の娘であるキリエだけだった。
おもてなし自体は普通に受けているので、俺たちは紅茶を頂きながらキリエの父親がやって来るのを待った。
しかし、キリエの父親がやって来ることはなかった。その代わり、代理人というやつがやって来て対応にあたっていた。
ふーん、話をする価値もないってことか。
いくら見下す獣人相手だからといっても、俺の肩書は魔王なんだよな。その魔王をないがしろにするって、ずいぶんな対応じゃないか。
「仕方ありませんよ。お父様は純魔族至上主義ですから。歴代の魔王様に仕えていたのも、その魔王様たちが純魔族出身者だったからなんです」
「なるほどなぁ……」
なんとなく納得がいってしまう俺だ。
今まで従ってきたのは魔王が純魔族出身だったからか。自分たちが見下す獣人だからこそ、俺たちにはこの対応でいいという判断なんだな。
「申し訳ございませんね。私も魔王様であるなら今までと同じように接するべきだと進言はしたのですが、ヒョウム様は聞き入れて下さいませんでした。あっ、私は対応を任された執事のガースと申します」
表情を見る限り、このガースの言うことは本心なのだろう。
同じ純魔族であっても、キリエとカスミのように対応に差が出るってわけか。こうやって見ると純魔族も一枚岩じゃないってわけだな。なるほどな。
「旦那様はプライドの高い方ですから、獣人というものを認められないのでしょう。私は分かりますよ、魔王様がとてもお強い方だということは、漏れ出る魔力から容易に想像できます」
対応してくれている執事は、柔軟な思考の持ち主だったようだ。これにはちょっと安心しちまうな。
「そういう状況でございますので、純魔族の領土に関してのお話は、私が代わってお受け致します。答えられる範囲であるならば、包み隠さずにお答え致します」
ガースはそのように話している。
どうも長であるヒョウムが対応してくれなさそうなので、俺たちは仕方なくガースから純魔族たちの現状を聞き出すことにしたのだった。
ガースは宣言した通りに分かる範囲の事について、俺たちの質問に答えてくれた。さすが長の屋敷で働いていて、代理を任されるだけの事はある。バフォメットが唸るくらいには大したものだった。
「純魔族たちの態度はひとつに決めかねている状態でございますね。魔王様が誕生なさったのでおとなしく従う者たちと、旦那様のように認めようとしない者たちとの派閥に分かれております。これは実に由々しき事態だと思われます」
話の終わる頃に、ガースは個人的な見解を交えながら、現状を話してくれた。
なまじ獣人状態となった俺が魔王に就いたために、純魔族は実質真っ二つということらしいのだ。
純魔族たちの支配する地域は、魔王城のある地域と隣接しているだけに、これはなかなかに軽んずべき内容ではなかった。
「なかなか頭が痛い話ですよね。私のお父様が原因なだけに、なんだか責任を感じてしまいますね」
身内として責任を感じるキリエは、申し訳なさそうに頭を抱えている。
あまりにもキリエの様子が痛々しく感じた俺は、ガースに対して質問をする。
「なあ、どうやったらキリエの父親は俺の事を魔王として認めてくれると思う?」
俺からの質問に、ガースは驚きのあまり言葉を失っていた。
だが、すぐに目を泳がせながらも真剣に考え始めた。どうやらこの展開は予想していなかったようだ。
「そうですね……。魔族たち全般に言えることですが、戦って力を示すのが手っ取り早いかと存じます」
いろいろ考えを巡らせたガースだったようだが、結局は単純な答えしか導き出せなかった。
戦って力を示す。
単純ではあるが、最も分かりやすい方法だな。
「分かった。じゃあそれでいこうか」
「本気なの?」
俺の判断に、ピエラががたりと立ち上がって叫んだ。
「仕方ないだろう。魔王といえば魔族の頂点だ。だというのに、下っ端を相手にするような対応を取られて、このままおめおめと立ち去れるかっていうんだ。だったら、力を示して鼻を明かしてやろうっというんだよ」
俺がはっきりと告げると、ピエラは複雑な表情をしながらも、納得したのかおとなしく座り直していた。
「というわけだ。早速キリエの父親に取り次いでくれないか?」
「しょ、承知致しました。少々お待ち下さいませ」
慌てた様子で部屋を出ていくガース。
俺をただの獣人だと思ってバカにした事を、はっきりと後悔してもらおうかな。
しばらくすると、ガースが戻ってくる。その口から告げられたのは、俺からの申し入れを了承したという返事だった。
「ど、どうなっても知りませんからね?」
ガースは激しく動揺した様子を見せている。だが、俺は負ける気なんてしていない。
「大丈夫だから、落ち着いてくれ。これでも前魔王を打ち倒したんだからな。獣人だと思ってなめてかかった事を後悔させてやるよ」
俺はにやりとほくそ笑む。
その姿を見たガースは震え上がり、ピエラは額に手を当てて呆れていた。
それぞれの思惑が交錯する中、俺たちはガースの案内で指定された場所へと向かったのだった。
普通に思えば屈辱的なものだろうが、ひとまず話さえできるのであれば俺は特に気しなかった。
他のみんなも、どちらかといえば落ち着いた態度だ。落ち着いていないのは一人だけ。純魔族の長の娘であるキリエだけだった。
おもてなし自体は普通に受けているので、俺たちは紅茶を頂きながらキリエの父親がやって来るのを待った。
しかし、キリエの父親がやって来ることはなかった。その代わり、代理人というやつがやって来て対応にあたっていた。
ふーん、話をする価値もないってことか。
いくら見下す獣人相手だからといっても、俺の肩書は魔王なんだよな。その魔王をないがしろにするって、ずいぶんな対応じゃないか。
「仕方ありませんよ。お父様は純魔族至上主義ですから。歴代の魔王様に仕えていたのも、その魔王様たちが純魔族出身者だったからなんです」
「なるほどなぁ……」
なんとなく納得がいってしまう俺だ。
今まで従ってきたのは魔王が純魔族出身だったからか。自分たちが見下す獣人だからこそ、俺たちにはこの対応でいいという判断なんだな。
「申し訳ございませんね。私も魔王様であるなら今までと同じように接するべきだと進言はしたのですが、ヒョウム様は聞き入れて下さいませんでした。あっ、私は対応を任された執事のガースと申します」
表情を見る限り、このガースの言うことは本心なのだろう。
同じ純魔族であっても、キリエとカスミのように対応に差が出るってわけか。こうやって見ると純魔族も一枚岩じゃないってわけだな。なるほどな。
「旦那様はプライドの高い方ですから、獣人というものを認められないのでしょう。私は分かりますよ、魔王様がとてもお強い方だということは、漏れ出る魔力から容易に想像できます」
対応してくれている執事は、柔軟な思考の持ち主だったようだ。これにはちょっと安心しちまうな。
「そういう状況でございますので、純魔族の領土に関してのお話は、私が代わってお受け致します。答えられる範囲であるならば、包み隠さずにお答え致します」
ガースはそのように話している。
どうも長であるヒョウムが対応してくれなさそうなので、俺たちは仕方なくガースから純魔族たちの現状を聞き出すことにしたのだった。
ガースは宣言した通りに分かる範囲の事について、俺たちの質問に答えてくれた。さすが長の屋敷で働いていて、代理を任されるだけの事はある。バフォメットが唸るくらいには大したものだった。
「純魔族たちの態度はひとつに決めかねている状態でございますね。魔王様が誕生なさったのでおとなしく従う者たちと、旦那様のように認めようとしない者たちとの派閥に分かれております。これは実に由々しき事態だと思われます」
話の終わる頃に、ガースは個人的な見解を交えながら、現状を話してくれた。
なまじ獣人状態となった俺が魔王に就いたために、純魔族は実質真っ二つということらしいのだ。
純魔族たちの支配する地域は、魔王城のある地域と隣接しているだけに、これはなかなかに軽んずべき内容ではなかった。
「なかなか頭が痛い話ですよね。私のお父様が原因なだけに、なんだか責任を感じてしまいますね」
身内として責任を感じるキリエは、申し訳なさそうに頭を抱えている。
あまりにもキリエの様子が痛々しく感じた俺は、ガースに対して質問をする。
「なあ、どうやったらキリエの父親は俺の事を魔王として認めてくれると思う?」
俺からの質問に、ガースは驚きのあまり言葉を失っていた。
だが、すぐに目を泳がせながらも真剣に考え始めた。どうやらこの展開は予想していなかったようだ。
「そうですね……。魔族たち全般に言えることですが、戦って力を示すのが手っ取り早いかと存じます」
いろいろ考えを巡らせたガースだったようだが、結局は単純な答えしか導き出せなかった。
戦って力を示す。
単純ではあるが、最も分かりやすい方法だな。
「分かった。じゃあそれでいこうか」
「本気なの?」
俺の判断に、ピエラががたりと立ち上がって叫んだ。
「仕方ないだろう。魔王といえば魔族の頂点だ。だというのに、下っ端を相手にするような対応を取られて、このままおめおめと立ち去れるかっていうんだ。だったら、力を示して鼻を明かしてやろうっというんだよ」
俺がはっきりと告げると、ピエラは複雑な表情をしながらも、納得したのかおとなしく座り直していた。
「というわけだ。早速キリエの父親に取り次いでくれないか?」
「しょ、承知致しました。少々お待ち下さいませ」
慌てた様子で部屋を出ていくガース。
俺をただの獣人だと思ってバカにした事を、はっきりと後悔してもらおうかな。
しばらくすると、ガースが戻ってくる。その口から告げられたのは、俺からの申し入れを了承したという返事だった。
「ど、どうなっても知りませんからね?」
ガースは激しく動揺した様子を見せている。だが、俺は負ける気なんてしていない。
「大丈夫だから、落ち着いてくれ。これでも前魔王を打ち倒したんだからな。獣人だと思ってなめてかかった事を後悔させてやるよ」
俺はにやりとほくそ笑む。
その姿を見たガースは震え上がり、ピエラは額に手を当てて呆れていた。
それぞれの思惑が交錯する中、俺たちはガースの案内で指定された場所へと向かったのだった。
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