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第一章 大陸編
第47話 転生者、要望を飲む
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夕食の席には、今日やって来たばかりのウネも同席している。
キリエやカスミたちがちゃっちゃと食卓の準備をする中、ピエラがウネに質問をしていた。
「ウネって名前だから、植物系のアルラウネなのかしら」
「違う。わちはドライアド族なのだ。名前のせいで間違われるけど、ドライアド族なの」
「あら、ごめんなさい。早とちりでしたね」
ウネに否定されると、間違いを素直に謝罪するピエラだ。貴族の中には間違っても謝らないのは多いけれど、こういうところでピエラは好感が持てるってもんだよな。
「頭か首に花の部分があればアルラウネ。なければドライアド。覚えておいて」
「そうなのね。うん、覚えたわ」
ウネから教えてもらった特徴を復唱しながら頷くピエラ。その様子を見ていたウネは、親指を立てて突き出していた。
どうやら本気で魔王領で生きていくつもりらしい。
それにしても、俺が魔族化して魔王になったからって、よくここまで思い切れるもんだよな。魔王を倒した英雄として王国に留まることもできただろうに、ピエラの気持ちはよく分からないものだ。
「魔王様」
「なんだ、キリエ」
参謀として夕食に参加しているキリエから声を掛けられる。
「獣人から出されていた要望書はいかがでしたでしょうか」
「ああ、その事か……」
どうやらキリエが気にしていたのは、ピエラが持ってきたとんでもない量の要望書のようだった。
一応全部に目を通しはしたが、まあなんていうか、ただ疲れただけだったな……。
「9割がたどうでもいい話ばかりだったよ。自分たちでどうにかできるような事ばかりだ」
「左様でございますか。やはり、獣人たちの多くは頭がよろしくないようですね。いえ、魔王様は別でございますよ?」
口に拳を当てながら呟くキリエ。俺が獣人なので、不敬になるといけないからと慌てて言い訳を挟んでいた。俺は気にしないんだが、キリエは気にするんだろうな。長く魔王に仕えているから当然か。
「私も正直驚いたわ。まったく、書類に目を通す私の身にもなってもらいたいものだわよ」
ピエラもピエラでちょっとご立腹のようだ。
「ピエラ、お返しに撫で倒してやったらどうだ。身をもって知れば、多少なりと反省するだろうからさ」
「そうね。そうさせてもらおうかしら」
なんだか今、ピエラの目が光った気がする。ちょっと待て、今のは失言だったのか?
思わず全身の毛が逆立った気がした。
「こほん。とりあえず、俺たち二人で見てみた結果、残った中で優先度の高い要望はそのふたつだと思ったんだけど、キリエの目から見るとどうだろうか」
「拝見致しますね」
キリエは俺が差し出した要望書を受け取ると、それをじっくりと眺め始めた。拝見というより拝読といった感じだが、そこはとりあえずどうでもいいか。前世が社畜だった俺からすると、どうしてもそういう言葉が気になるんだけどな。
俺たちがキリエに最終的な判断を任せたのは、俺たちが魔界に対しての理解が浅いためだ。こういったことは、キリエやバフォメットの方が適切に判断してくれるだろうと考えたというわけだ。
読み終わったキリエは、大きく深呼吸をしていた。
「そうですね。私としてもこれはよしとしましょう。魔王様がご許可下さいましたら、私が必要なものを手配致します」
キリエの判断も、必要という結果となった。
俺たちが必要と判断したのは、先日の視察の事があったからだ。
「獣人たちの中にもそれなりに頭の回る方がいらっしゃるのは助かります。お父様たちが見下しているのも、十分理解できたとも思いますよ」
「まあ、あの要望書の内容じゃなぁ……」
「ええ、まったくね……」
すべてに目を通した俺とピエラは、ただただ顔を引きつらせるばかりだった。
「わちの力も必要かな」
話を聞いていたウネが、鼻息を荒くしている。どういうわけか俺の方を見ながら目を輝かせているのが気になるところだ。
「そうですね。ピエラ様、ウネも連れていって下さい。現状獣人たちの居住区は手狭ですし、要望通りに広げるとなると、植物を操るウネは役に立つと思いますから」
「わ、分かりました」
キリエに言われて返事をするピエラ。
そう、俺たちが了承した要望のひとつはこれだ。領地の拡大ってやつだ。
そもそも獣人というのは魔族の中でも立場がよろしくない。そのために、狭い土地に無理やり押し込められているような状態だったのだ。
獣人となった俺が魔王に就いたことで、今だと言わんばかりにこの要望を出してきたというわけだ。
狭い土地に多くの種族の獣人が集まっているので、何かといさかいが起きやすい。だからこその居住地の拡大というわけである。
「どうなさいますか。明日にでも出られると仰るのでしたら、今夜にでも準備を致しますが」
キリエはやる気十分のようだ。
ここまで参謀がやる気になっているのだから、俺は決断を下す。
「明日にでも向かおうか」
「承知致しました。食事後すぐに準備を始めます」
多くの要望を蹴飛ばす代わりと言わんばかりに、俺は2つの要望をすぐさま叶えることにしたのだった。
キリエやカスミたちがちゃっちゃと食卓の準備をする中、ピエラがウネに質問をしていた。
「ウネって名前だから、植物系のアルラウネなのかしら」
「違う。わちはドライアド族なのだ。名前のせいで間違われるけど、ドライアド族なの」
「あら、ごめんなさい。早とちりでしたね」
ウネに否定されると、間違いを素直に謝罪するピエラだ。貴族の中には間違っても謝らないのは多いけれど、こういうところでピエラは好感が持てるってもんだよな。
「頭か首に花の部分があればアルラウネ。なければドライアド。覚えておいて」
「そうなのね。うん、覚えたわ」
ウネから教えてもらった特徴を復唱しながら頷くピエラ。その様子を見ていたウネは、親指を立てて突き出していた。
どうやら本気で魔王領で生きていくつもりらしい。
それにしても、俺が魔族化して魔王になったからって、よくここまで思い切れるもんだよな。魔王を倒した英雄として王国に留まることもできただろうに、ピエラの気持ちはよく分からないものだ。
「魔王様」
「なんだ、キリエ」
参謀として夕食に参加しているキリエから声を掛けられる。
「獣人から出されていた要望書はいかがでしたでしょうか」
「ああ、その事か……」
どうやらキリエが気にしていたのは、ピエラが持ってきたとんでもない量の要望書のようだった。
一応全部に目を通しはしたが、まあなんていうか、ただ疲れただけだったな……。
「9割がたどうでもいい話ばかりだったよ。自分たちでどうにかできるような事ばかりだ」
「左様でございますか。やはり、獣人たちの多くは頭がよろしくないようですね。いえ、魔王様は別でございますよ?」
口に拳を当てながら呟くキリエ。俺が獣人なので、不敬になるといけないからと慌てて言い訳を挟んでいた。俺は気にしないんだが、キリエは気にするんだろうな。長く魔王に仕えているから当然か。
「私も正直驚いたわ。まったく、書類に目を通す私の身にもなってもらいたいものだわよ」
ピエラもピエラでちょっとご立腹のようだ。
「ピエラ、お返しに撫で倒してやったらどうだ。身をもって知れば、多少なりと反省するだろうからさ」
「そうね。そうさせてもらおうかしら」
なんだか今、ピエラの目が光った気がする。ちょっと待て、今のは失言だったのか?
思わず全身の毛が逆立った気がした。
「こほん。とりあえず、俺たち二人で見てみた結果、残った中で優先度の高い要望はそのふたつだと思ったんだけど、キリエの目から見るとどうだろうか」
「拝見致しますね」
キリエは俺が差し出した要望書を受け取ると、それをじっくりと眺め始めた。拝見というより拝読といった感じだが、そこはとりあえずどうでもいいか。前世が社畜だった俺からすると、どうしてもそういう言葉が気になるんだけどな。
俺たちがキリエに最終的な判断を任せたのは、俺たちが魔界に対しての理解が浅いためだ。こういったことは、キリエやバフォメットの方が適切に判断してくれるだろうと考えたというわけだ。
読み終わったキリエは、大きく深呼吸をしていた。
「そうですね。私としてもこれはよしとしましょう。魔王様がご許可下さいましたら、私が必要なものを手配致します」
キリエの判断も、必要という結果となった。
俺たちが必要と判断したのは、先日の視察の事があったからだ。
「獣人たちの中にもそれなりに頭の回る方がいらっしゃるのは助かります。お父様たちが見下しているのも、十分理解できたとも思いますよ」
「まあ、あの要望書の内容じゃなぁ……」
「ええ、まったくね……」
すべてに目を通した俺とピエラは、ただただ顔を引きつらせるばかりだった。
「わちの力も必要かな」
話を聞いていたウネが、鼻息を荒くしている。どういうわけか俺の方を見ながら目を輝かせているのが気になるところだ。
「そうですね。ピエラ様、ウネも連れていって下さい。現状獣人たちの居住区は手狭ですし、要望通りに広げるとなると、植物を操るウネは役に立つと思いますから」
「わ、分かりました」
キリエに言われて返事をするピエラ。
そう、俺たちが了承した要望のひとつはこれだ。領地の拡大ってやつだ。
そもそも獣人というのは魔族の中でも立場がよろしくない。そのために、狭い土地に無理やり押し込められているような状態だったのだ。
獣人となった俺が魔王に就いたことで、今だと言わんばかりにこの要望を出してきたというわけだ。
狭い土地に多くの種族の獣人が集まっているので、何かといさかいが起きやすい。だからこその居住地の拡大というわけである。
「どうなさいますか。明日にでも出られると仰るのでしたら、今夜にでも準備を致しますが」
キリエはやる気十分のようだ。
ここまで参謀がやる気になっているのだから、俺は決断を下す。
「明日にでも向かおうか」
「承知致しました。食事後すぐに準備を始めます」
多くの要望を蹴飛ばす代わりと言わんばかりに、俺は2つの要望をすぐさま叶えることにしたのだった。
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