61 / 431
第一章 大陸編
第61話 転生者、厄災を圧倒する
翌日になって、俺は魔王軍の訓練場に姿を見せる。すると、そこでは一人の男が大暴れする姿が見えた。
魔王軍屈指の強者であるヴォルフ……ではなく、最近とっ捕まえてきたデザストレだった。そういえば、魔王軍の訓練に参加しろって命令しておいたんだっけか。
「おらぁ、どうした。その程度で魔王を守れるというのか? 魔族どもを守れるというのか?」
一応命令で殺さない程度にやってくれといってはおいたが、うん、見事に死屍累々になってるな。
これはちょっと止めておいた方がいいだろう。放っておくと脱落者が出て、魔王軍の層がぺらっぺらになっちまう。
「もう少し手加減してやれ、デザストレ」
「おう、魔王か。何だこいつらは。いつもよりも歯ごたえがねえじゃねえか。もっと鍛えてやれよ」
首を鳴らしながら文句を言うデザストレ。
そうはいっても、毎度のごとく屈強な魔王軍を壊滅させてきたドラゴンからすれば、魔族がどんなに強くても歯ごたえがないだろう。
そういう文句を思い浮かべながらも、俺はぐっと言葉を飲み込んでおいた。
「さてと、今日は俺も参加させてもらうからな。というわけでデザストレ、お前が最初の相手な」
「はあっ?!」
その代わりに、特訓の最初の相手に選んでやった。
魔族たちの目の前でこてんぱんにしてやれば、いくらこいつとて静かになるだろうと考えたからだ。
「ぐぐぐ……、いくら魔王とはいえ、二度も負けるものか。単独ならば我の方が強い!」
あっ、こいつ、自分で一度負けたことバラしやがったぞ。直接は誰にも言ってないんだがな。頭悪いのかよ、こいつ。
いろいろともうところはあるけれど、いちいちツッコミを入れるのも疲れるので黙っておく俺である。
改めて、訓練場の真ん中で対峙する俺とデザストレ。双方ともに武器を持たない素手による格闘である。
「一応、魔法は禁止な。魔法使いたかったら、ここじゃないところでやろう」
「まあ仕方あるまい。肉弾戦とはいえ、我の方が強いに決まっている」
デザストレも大した自信である。
まあ確かに、先日勝ったとは言っても、キリエとピエラのアシストあっての勝利だからな。てか、俺単独だったら襲い掛かってこなかったじゃないか。
そんな事情があるので、まともにやり合うのは今回が実に初めてだ。
心からうきうきしている俺に対して、デザストレの表情はかなり嫌そうである。
こいつ、魔王がいる間は眠って逃げてたからな。魔王とは相当戦いたくないって気持ちがにじみ出てきてるのがよく分かる。
だが、今回ばかりは逃げられない。互いに勝負をけしかけたんだからな。
「ヴォルフ、合図を頼むぞ」
「はっ、お任せを」
魔王軍に所属する魔族たちが見守る中、ヴォルフの合図で俺とデザストレの戦いが始まる。
周りへの被害を考えて、互いの肉体以外攻撃手段は一切禁止である。俺は魔法、デザストレはブレス攻撃が封印されるということだ。
周りの関心はほとんど俺に集まっていた。というのも、デザストレにことごとくぼっこぼこにされてきたし、それに伴って罵倒まで食らったらしいからな。
つまり、みんなの俺への関心はというのは、俺の強さよりもデザストレをぎゃふんと言わせてくれという比重が多いようだった。
魔族のトップとして仇は取ってやるが、なんだかそういう期待のされ方はあんまり嬉しくないな。
「ふん、戦いの最中に考え事とは余裕だな」
俺の様子を見ていたデザストレが攻撃を強めてくる。
それにしても距離感に違和感を感じると思ったら、こいつ爪を鋭く伸ばしてやがる。ドラゴンクロウってやつか。目立たないとはいえ、姑息な事をしてくれるもんだ。
「はははっ、手も足も出ないか。今代の魔王も大した事がないな!」
俺がほとんど手を出さないものだから、デザストレが調子に乗っている。
だが、頭がよろしくないのがよく分かる行動だ。
確かに俺は攻撃をほとんど仕掛けていない。だが、デザストレの攻撃もまったくといっていいほど当たっていないのだ。
まったく、こんな事も分からないとはな……。こいつ、単純に力だけでのさばってただけじゃないか。
というわけで、俺はもう遊ぶのをやめた。こいつのバカ笑いに付き合ってられないくなったのだ。
パシッ!
「なっ!?」
「捕まえたぜ。まったく、そんな実力でよく威張り散らせたもんだな」
「くそっ、放せ!」
俺の手を振りほどこうとするデザストレだが、俺の手はまったくもってびくともしなかった。
「お望みなら、見せてやるよ、魔王の力。……その身にたっぷりな!」
俺がギンとデザストレを睨みつけると、俺の体中の体毛が逆立っていく。
その魔力の高まりに、デザストレの顔が青ざめていく。そして、仰け反りながら首を左右に激しく振っていた。
「やめろ、やめてくれ。魔法はなしだっただろう?」
「禁止にしたのは周りに被害が出る魔法だ。俺自身の体に使う身体強化なら、何も問題はないんだよ」
半ば屁理屈ではある。
「や、やめろ、死にたくない……」
「だったら、もうちょっと謙虚になるんだな。壁にでも埋まって反省してろ!」
「うわあぁぁっ!!」
次の瞬間、俺の拳でデザストレは壁画となっていた。
「いててててて……。ちょっとやり過ぎたか」
拳を思い切り振り抜きすぎたせいか、肩が外れそうになっていた。
あまりの強烈さに静まり返っていた訓練場だったが、俺の勝ちを確認して一気に湧き上がったのだった。
魔王軍屈指の強者であるヴォルフ……ではなく、最近とっ捕まえてきたデザストレだった。そういえば、魔王軍の訓練に参加しろって命令しておいたんだっけか。
「おらぁ、どうした。その程度で魔王を守れるというのか? 魔族どもを守れるというのか?」
一応命令で殺さない程度にやってくれといってはおいたが、うん、見事に死屍累々になってるな。
これはちょっと止めておいた方がいいだろう。放っておくと脱落者が出て、魔王軍の層がぺらっぺらになっちまう。
「もう少し手加減してやれ、デザストレ」
「おう、魔王か。何だこいつらは。いつもよりも歯ごたえがねえじゃねえか。もっと鍛えてやれよ」
首を鳴らしながら文句を言うデザストレ。
そうはいっても、毎度のごとく屈強な魔王軍を壊滅させてきたドラゴンからすれば、魔族がどんなに強くても歯ごたえがないだろう。
そういう文句を思い浮かべながらも、俺はぐっと言葉を飲み込んでおいた。
「さてと、今日は俺も参加させてもらうからな。というわけでデザストレ、お前が最初の相手な」
「はあっ?!」
その代わりに、特訓の最初の相手に選んでやった。
魔族たちの目の前でこてんぱんにしてやれば、いくらこいつとて静かになるだろうと考えたからだ。
「ぐぐぐ……、いくら魔王とはいえ、二度も負けるものか。単独ならば我の方が強い!」
あっ、こいつ、自分で一度負けたことバラしやがったぞ。直接は誰にも言ってないんだがな。頭悪いのかよ、こいつ。
いろいろともうところはあるけれど、いちいちツッコミを入れるのも疲れるので黙っておく俺である。
改めて、訓練場の真ん中で対峙する俺とデザストレ。双方ともに武器を持たない素手による格闘である。
「一応、魔法は禁止な。魔法使いたかったら、ここじゃないところでやろう」
「まあ仕方あるまい。肉弾戦とはいえ、我の方が強いに決まっている」
デザストレも大した自信である。
まあ確かに、先日勝ったとは言っても、キリエとピエラのアシストあっての勝利だからな。てか、俺単独だったら襲い掛かってこなかったじゃないか。
そんな事情があるので、まともにやり合うのは今回が実に初めてだ。
心からうきうきしている俺に対して、デザストレの表情はかなり嫌そうである。
こいつ、魔王がいる間は眠って逃げてたからな。魔王とは相当戦いたくないって気持ちがにじみ出てきてるのがよく分かる。
だが、今回ばかりは逃げられない。互いに勝負をけしかけたんだからな。
「ヴォルフ、合図を頼むぞ」
「はっ、お任せを」
魔王軍に所属する魔族たちが見守る中、ヴォルフの合図で俺とデザストレの戦いが始まる。
周りへの被害を考えて、互いの肉体以外攻撃手段は一切禁止である。俺は魔法、デザストレはブレス攻撃が封印されるということだ。
周りの関心はほとんど俺に集まっていた。というのも、デザストレにことごとくぼっこぼこにされてきたし、それに伴って罵倒まで食らったらしいからな。
つまり、みんなの俺への関心はというのは、俺の強さよりもデザストレをぎゃふんと言わせてくれという比重が多いようだった。
魔族のトップとして仇は取ってやるが、なんだかそういう期待のされ方はあんまり嬉しくないな。
「ふん、戦いの最中に考え事とは余裕だな」
俺の様子を見ていたデザストレが攻撃を強めてくる。
それにしても距離感に違和感を感じると思ったら、こいつ爪を鋭く伸ばしてやがる。ドラゴンクロウってやつか。目立たないとはいえ、姑息な事をしてくれるもんだ。
「はははっ、手も足も出ないか。今代の魔王も大した事がないな!」
俺がほとんど手を出さないものだから、デザストレが調子に乗っている。
だが、頭がよろしくないのがよく分かる行動だ。
確かに俺は攻撃をほとんど仕掛けていない。だが、デザストレの攻撃もまったくといっていいほど当たっていないのだ。
まったく、こんな事も分からないとはな……。こいつ、単純に力だけでのさばってただけじゃないか。
というわけで、俺はもう遊ぶのをやめた。こいつのバカ笑いに付き合ってられないくなったのだ。
パシッ!
「なっ!?」
「捕まえたぜ。まったく、そんな実力でよく威張り散らせたもんだな」
「くそっ、放せ!」
俺の手を振りほどこうとするデザストレだが、俺の手はまったくもってびくともしなかった。
「お望みなら、見せてやるよ、魔王の力。……その身にたっぷりな!」
俺がギンとデザストレを睨みつけると、俺の体中の体毛が逆立っていく。
その魔力の高まりに、デザストレの顔が青ざめていく。そして、仰け反りながら首を左右に激しく振っていた。
「やめろ、やめてくれ。魔法はなしだっただろう?」
「禁止にしたのは周りに被害が出る魔法だ。俺自身の体に使う身体強化なら、何も問題はないんだよ」
半ば屁理屈ではある。
「や、やめろ、死にたくない……」
「だったら、もうちょっと謙虚になるんだな。壁にでも埋まって反省してろ!」
「うわあぁぁっ!!」
次の瞬間、俺の拳でデザストレは壁画となっていた。
「いててててて……。ちょっとやり過ぎたか」
拳を思い切り振り抜きすぎたせいか、肩が外れそうになっていた。
あまりの強烈さに静まり返っていた訓練場だったが、俺の勝ちを確認して一気に湧き上がったのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?
秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。
※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。
※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。