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第一章 大陸編
第73話 転生者、薬師の環境を整える
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キリエが魔族の薬たちを連れてきた翌日、ようやく魔王城の改築が終わる。庭園の一角に薬師たちの詰所が完成したのだ。
ちょうど改築したあたりは魔王城の中でも稼働率の低かった場所らしく、今回の改築による影響は出ないらしい。一応、庭園と魔王城内とを結ぶ通路もできていた。
はっきり言って、庭園を通った方が城の中の移動は早いんだがな。まぁ移動経路は多いに越したことはないな。
そんなわけで、できたばかりの薬師の詰所に、キリエが集めてきた薬師たちを案内する。家具に関しては客間のやつを移動させようかな。
部屋ができ上がってからというものの、あれやこれやといろいろ浮かんでくる。なんで用意している間に思いつかなかったんだろうな。まったく、間の悪い話だな。
「というわけで、設備としてはまだまだ不十分だが、使ってくれ。足りないものとかがあったら遠慮なく伝えてほしい」
「ありがとうございます。では、問題があればすぐにお伝え致しますね」
薬師たちは頭を下げている。
昨日も見て思ったんだが、意外なことに獣人の薬師が居たんだな。
「獣人でも薬師ってできるんだな」
俺は、つい思ったことを滑らせてしまう。しかし、その獣人の薬師は怒ることなく、むしろ笑いながら答えてくれた。
「獣人は鼻が利きますから。毒かそうでないかとか、細かいことがよく分かるんです」
獣人の薬師はその鼻をひくひくとさせていた。
なるほど、においに敏感な獣人の特性を活かしてるってわけか。俺はなんとなく理解した。
とりあえず、設備を見てもらわないといけないので、俺は薬師たちを詰所の中に案内する。
中に入るとできたばかりの場所らしく何にもない。
今はキリエの指示で薬師の研究室から薬草類や器具類を、バフォメットの指示で家具類の移動が行われ始めたところだ。なので、詰所の中には何もないのである。
「……悪い。今ちょうど荷物の移動をしているところだから、間取りだけ確認しておこうか」
俺が苦笑いをしながら話し掛けると、薬師たちは素直に了承してくれた。怒る姿も見せなかったので、本当にいい連中なのだろう。
ひとまずある程度間取りを確認したところへキリエがやって来た。
「魔王様、もう中を見せられていたのですか」
「ああ、彼女たちの使いやすいように配置してもらうためにもな。部屋と道具の大きさが分かれば、適切な配置くらいは思い浮かぶだろうよ」
キリエの反応に、俺はそのように説明しておいた。
俺が話した内容に、どうやらキリエは納得したのか数回頷いていた。
「さすがは魔王様。そのような気配りができるとは……。メイドでもある私も見習わなければなりませんね」
なんだかものすごく褒められてしまった。なんとなくむずがゆくなるな……。
「それはそうとキリエ。運んできたものを運び込んでくれ」
「承知致しました。あなたたち、運び込んで下さい」
キリエが外に呼び掛けると、魔王城で働いている兵士や使用人たちがぞろぞろと入ってくる。その手には作業台や戸棚、それに薬草の入ったツボなど様々なものが持たれていた。
そして、俺たちが見守る中てきぱきと配置していく。その手際の良さと仕事の速さに、俺たちは思わず目を丸くしてしまうほどだった。
10分もかかっただろうか。あっという間に作業部屋がある程度形になってしまっていた。
「すごいな……。こんなに早くできちまうもんなんだな」
「はい。私たちの手にかかればこの程度わけございません」
俺が感心していると、キリエは淡々としていた。自分たちの仕事にそれだけ誇りを持ってるんだろうな。
キリエたちの作業が終わったかと思えば、今度はバフォメットたちがやって来る。こっちも結構な人数の兵士と使用人たちが家具を抱えて立っていた。
「魔王様、家具を持って参りました」
「あ、ああ。中に運び込んでくれ。配置は薬師のみんなに聞いて微調整してくれないか」
「畏まりました。さあ、運び込みましょうぞ」
バフォメットの号令で、家具が詰所の中へと運び込まれていく。
ベッド、テーブルと椅子、衣装タンスと、薬師たちが細かく要望を伝えながら配置されていき、これも20分かかったかどうかというくらいで終わってしまった。空き部屋にも意見を参考に家具が運び込まれていた。
「あっという間だったな……」
ものすごく短時間で運び込みが終わってしまって、思わず放心状態になってしまう。
「魔王様は運び込みはなさってられないではありませんか」
「そうだけどな……。みんなの作業スピードが速いから、驚きすぎて疲れちまったってわけだよ」
「ああ、なるほどですね」
俺の言い分をキリエは理解してくれたようだ。
「魔族って、意外と勤勉なのでございます。魔王様もそろそろ慣れて下さいませ」
「ああ、そうだな……」
キリエがお小言を言ってくるものだから、俺は呆然としながらもこくりと頷いた。
その後は、薬師たちの話を聞きながら、必要な設備を追加していく。これだけあれば、あとは食事の問題くらいだろう。
ひと通り形になったことで、俺たちはひと安心する。
これで残りはピエラが連れてくる人間たちの薬師たちの到着を待つばかりとなった。
新しくなった薬師たちの環境。今度はうまくいくことを祈るばかりだな。
ちょうど改築したあたりは魔王城の中でも稼働率の低かった場所らしく、今回の改築による影響は出ないらしい。一応、庭園と魔王城内とを結ぶ通路もできていた。
はっきり言って、庭園を通った方が城の中の移動は早いんだがな。まぁ移動経路は多いに越したことはないな。
そんなわけで、できたばかりの薬師の詰所に、キリエが集めてきた薬師たちを案内する。家具に関しては客間のやつを移動させようかな。
部屋ができ上がってからというものの、あれやこれやといろいろ浮かんでくる。なんで用意している間に思いつかなかったんだろうな。まったく、間の悪い話だな。
「というわけで、設備としてはまだまだ不十分だが、使ってくれ。足りないものとかがあったら遠慮なく伝えてほしい」
「ありがとうございます。では、問題があればすぐにお伝え致しますね」
薬師たちは頭を下げている。
昨日も見て思ったんだが、意外なことに獣人の薬師が居たんだな。
「獣人でも薬師ってできるんだな」
俺は、つい思ったことを滑らせてしまう。しかし、その獣人の薬師は怒ることなく、むしろ笑いながら答えてくれた。
「獣人は鼻が利きますから。毒かそうでないかとか、細かいことがよく分かるんです」
獣人の薬師はその鼻をひくひくとさせていた。
なるほど、においに敏感な獣人の特性を活かしてるってわけか。俺はなんとなく理解した。
とりあえず、設備を見てもらわないといけないので、俺は薬師たちを詰所の中に案内する。
中に入るとできたばかりの場所らしく何にもない。
今はキリエの指示で薬師の研究室から薬草類や器具類を、バフォメットの指示で家具類の移動が行われ始めたところだ。なので、詰所の中には何もないのである。
「……悪い。今ちょうど荷物の移動をしているところだから、間取りだけ確認しておこうか」
俺が苦笑いをしながら話し掛けると、薬師たちは素直に了承してくれた。怒る姿も見せなかったので、本当にいい連中なのだろう。
ひとまずある程度間取りを確認したところへキリエがやって来た。
「魔王様、もう中を見せられていたのですか」
「ああ、彼女たちの使いやすいように配置してもらうためにもな。部屋と道具の大きさが分かれば、適切な配置くらいは思い浮かぶだろうよ」
キリエの反応に、俺はそのように説明しておいた。
俺が話した内容に、どうやらキリエは納得したのか数回頷いていた。
「さすがは魔王様。そのような気配りができるとは……。メイドでもある私も見習わなければなりませんね」
なんだかものすごく褒められてしまった。なんとなくむずがゆくなるな……。
「それはそうとキリエ。運んできたものを運び込んでくれ」
「承知致しました。あなたたち、運び込んで下さい」
キリエが外に呼び掛けると、魔王城で働いている兵士や使用人たちがぞろぞろと入ってくる。その手には作業台や戸棚、それに薬草の入ったツボなど様々なものが持たれていた。
そして、俺たちが見守る中てきぱきと配置していく。その手際の良さと仕事の速さに、俺たちは思わず目を丸くしてしまうほどだった。
10分もかかっただろうか。あっという間に作業部屋がある程度形になってしまっていた。
「すごいな……。こんなに早くできちまうもんなんだな」
「はい。私たちの手にかかればこの程度わけございません」
俺が感心していると、キリエは淡々としていた。自分たちの仕事にそれだけ誇りを持ってるんだろうな。
キリエたちの作業が終わったかと思えば、今度はバフォメットたちがやって来る。こっちも結構な人数の兵士と使用人たちが家具を抱えて立っていた。
「魔王様、家具を持って参りました」
「あ、ああ。中に運び込んでくれ。配置は薬師のみんなに聞いて微調整してくれないか」
「畏まりました。さあ、運び込みましょうぞ」
バフォメットの号令で、家具が詰所の中へと運び込まれていく。
ベッド、テーブルと椅子、衣装タンスと、薬師たちが細かく要望を伝えながら配置されていき、これも20分かかったかどうかというくらいで終わってしまった。空き部屋にも意見を参考に家具が運び込まれていた。
「あっという間だったな……」
ものすごく短時間で運び込みが終わってしまって、思わず放心状態になってしまう。
「魔王様は運び込みはなさってられないではありませんか」
「そうだけどな……。みんなの作業スピードが速いから、驚きすぎて疲れちまったってわけだよ」
「ああ、なるほどですね」
俺の言い分をキリエは理解してくれたようだ。
「魔族って、意外と勤勉なのでございます。魔王様もそろそろ慣れて下さいませ」
「ああ、そうだな……」
キリエがお小言を言ってくるものだから、俺は呆然としながらもこくりと頷いた。
その後は、薬師たちの話を聞きながら、必要な設備を追加していく。これだけあれば、あとは食事の問題くらいだろう。
ひと通り形になったことで、俺たちはひと安心する。
これで残りはピエラが連れてくる人間たちの薬師たちの到着を待つばかりとなった。
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