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第一章 大陸編
第86話 転生者、気分転換に体を動かす
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家庭菜園に養鶏もどきと、俺のスローライフも着実に叶いつつある。
しかし、やっぱり牛が欲しい。新鮮なミルクを毎朝飲みたいものだ。忙しいながらも毎朝のパンとミルクは欠かさなかったからな。まあ、社畜の最後の頃はそれすら厳しかったがな。
だが、そうなってくると魔王城内のどこに飼うかという問題が出てくる。
魔王城は現在俺の持ち物だからといっても、さすがにやっていい限界というものはあるだろう。
現在は畑もクルクーもドライアドに任せっきりだ。顔を出すのはいいが素人だからやれることにも限界があるからな。
なんだかんだと考えているとどんどんと気が滅入ってくるので、俺は気分転換に訓練場へと向かうことにした。
訓練場に到着すると、デザストレは相変わらず暴れているものの、ヴォルフとうまく連携しながら訓練をしているようだった。
魔族には厄災をもたらす存在として恐れられていたのに、それを思うとなかなかに考えられない姿だな。
「おらぁ、しっかり狙え。そんな甘い攻撃じゃ魔物だって倒せやしねえ」
「は、はい!」
デザストレのでかい声が訓練場に響き渡っている。
なんだかんだといってずいぶんと魔族との生活に馴染んでしまっているな。
「おう、誰かと思えば魔王じゃねえか。ちょっとやってかねえか?」
俺に気が付いたデザストレが声を掛けてくる。
また、ずいぶんと自信たっぷりな物言いだな。ずいぶんとにやついた表情をしてやがる。
まったく、魔族を相手に訓練をしていて、強くなったつもりでいるんだろうな。ちょうど気分転換にやって来たから、相手をしてやるか。
俺は、訓練場の中へと足を運ぶ。すると、何も言っていないのに、ヴォルフをはじめ、その場に居る魔族が全員場所を空け始めた。空気読み過ぎだろう。
「さて、我がどれだけ力をつけたか、その身に思い知らせてやろうではないか」
「おう、それは楽しみだな。俺もちょうど体を動かしたかったところだ。たっぷり相手になってやるよ」
首を鳴らしているデザストレに対して、俺は両手の拳をがっちり合わせて向かい合う。
俺たちが戦った結果は、結局前と一緒だった。
「くっそうっ! なぜ勝てないんだ!」
毎回魔王城の壁画になっていたデザストレが、今回は地面に埋まっていた。顔が下を向いているのに、ものすごく周りに響いている。どんだけでかい声なんだよ。
「敗北という結果は変わらなかったが、今回はずいぶんと成長したと思うぞ、俺は」
俺に負けた結果はどうあがいても変わらない。だけど、問題はその内容だ。
いつもならほとんど俺に一方的に攻められて終わっていたデザストレだが、今回は俺に攻撃を掠めさせていた。
デザストレはドラゴン形態がデフォルトなので、人間形態に慣れていないということもあったのだろう。それでも、他の魔族たちにはほぼ圧勝。ヴォルフだけに苦戦するという状況だったのだ。さすが魔族特効の厄災というところだろう。
そんなデザストレでも、魔王である俺は別格の相手だった。なにせ、今まで一度も魔王と戦ったことがないんだからな。
元々転生で少々チート気味だった俺だが、魔王として覚醒したことで余計に手の付けられない存在になっていたようだ。
歴代の魔王たちでもおそらく似たようなものだったと思われる。それにしてもそんな魔王という存在に勝つ人間って何なんだよな……。
「ずいぶんとその姿にも慣れてきたみたいだしな。もう何回か戦ってたら、もしかしたら勝てるようになるかもな」
俺がはにかみながらそう言ってやると、デザストレは埋まっていた地面から飛び出てきた。
「それは本当か?」
目を輝かせながら俺に顔を近付けてくるデザストレ。やめろ、男の目がしいたけなんて見たくないんだよ。
俺がちょっと引いていると、ヴォルフがデザストレの首根っこを掴んで引き離してくれた。
「やめろ。魔王様が困っているではないか」
「何をする、離せ」
デザストレはじたばたと暴れてヴォルフから逃れようとしている。
「だったら、次は俺と勝負ですね。いくら厄災相手とはいえ、いつまでも後れを取るわけには参りませんからね」
「けっ、いい根性をしてやがる。いいだろう、こてんぱんにしてやるぜ」
というわけで、今度はデザストレとヴォルフの戦いが始まった。
だが、これがまたいい勝負をしてくれる。魔王軍のトップクラスの実力を持つヴォルフゆえに、デザストレと戦いを重ねている間にだいぶ力をつけてきたようだ。
「けっ、犬っころのくせにやりやがるな」
「同じ相手に何度も負け続けるのは、俺のプライドが許しませんのでね。それに……」
デザストレの頬にヴォルフの拳がまともに入る。
「魔王様に失礼な態度を取るあなた自身が許せないのですよ」
「てめえ、よくもやりやがったな?」
まともな攻撃を俺以外から食らって、デザストレの頭に血が昇っていく。
そのせいでただのケンカになって被害が大きくなりそうだったので、俺が間に入って仲裁をしておいた。
「おいおい、稽古なんだろうが。熱くなりすぎだ」
二人の拳をしっかりと受け止めて、まとめて説教である。
止められたことに納得しないデザストレは、今回も壁画になってもらった。まったく、稽古をしてるんであってケンカをしてるんじゃないんだよ。
デザストレが壁画となって静かになったので、俺はヴォルフたちに精進するように伝えると、そそくさと訓練場を後にしたのだった。
しかし、やっぱり牛が欲しい。新鮮なミルクを毎朝飲みたいものだ。忙しいながらも毎朝のパンとミルクは欠かさなかったからな。まあ、社畜の最後の頃はそれすら厳しかったがな。
だが、そうなってくると魔王城内のどこに飼うかという問題が出てくる。
魔王城は現在俺の持ち物だからといっても、さすがにやっていい限界というものはあるだろう。
現在は畑もクルクーもドライアドに任せっきりだ。顔を出すのはいいが素人だからやれることにも限界があるからな。
なんだかんだと考えているとどんどんと気が滅入ってくるので、俺は気分転換に訓練場へと向かうことにした。
訓練場に到着すると、デザストレは相変わらず暴れているものの、ヴォルフとうまく連携しながら訓練をしているようだった。
魔族には厄災をもたらす存在として恐れられていたのに、それを思うとなかなかに考えられない姿だな。
「おらぁ、しっかり狙え。そんな甘い攻撃じゃ魔物だって倒せやしねえ」
「は、はい!」
デザストレのでかい声が訓練場に響き渡っている。
なんだかんだといってずいぶんと魔族との生活に馴染んでしまっているな。
「おう、誰かと思えば魔王じゃねえか。ちょっとやってかねえか?」
俺に気が付いたデザストレが声を掛けてくる。
また、ずいぶんと自信たっぷりな物言いだな。ずいぶんとにやついた表情をしてやがる。
まったく、魔族を相手に訓練をしていて、強くなったつもりでいるんだろうな。ちょうど気分転換にやって来たから、相手をしてやるか。
俺は、訓練場の中へと足を運ぶ。すると、何も言っていないのに、ヴォルフをはじめ、その場に居る魔族が全員場所を空け始めた。空気読み過ぎだろう。
「さて、我がどれだけ力をつけたか、その身に思い知らせてやろうではないか」
「おう、それは楽しみだな。俺もちょうど体を動かしたかったところだ。たっぷり相手になってやるよ」
首を鳴らしているデザストレに対して、俺は両手の拳をがっちり合わせて向かい合う。
俺たちが戦った結果は、結局前と一緒だった。
「くっそうっ! なぜ勝てないんだ!」
毎回魔王城の壁画になっていたデザストレが、今回は地面に埋まっていた。顔が下を向いているのに、ものすごく周りに響いている。どんだけでかい声なんだよ。
「敗北という結果は変わらなかったが、今回はずいぶんと成長したと思うぞ、俺は」
俺に負けた結果はどうあがいても変わらない。だけど、問題はその内容だ。
いつもならほとんど俺に一方的に攻められて終わっていたデザストレだが、今回は俺に攻撃を掠めさせていた。
デザストレはドラゴン形態がデフォルトなので、人間形態に慣れていないということもあったのだろう。それでも、他の魔族たちにはほぼ圧勝。ヴォルフだけに苦戦するという状況だったのだ。さすが魔族特効の厄災というところだろう。
そんなデザストレでも、魔王である俺は別格の相手だった。なにせ、今まで一度も魔王と戦ったことがないんだからな。
元々転生で少々チート気味だった俺だが、魔王として覚醒したことで余計に手の付けられない存在になっていたようだ。
歴代の魔王たちでもおそらく似たようなものだったと思われる。それにしてもそんな魔王という存在に勝つ人間って何なんだよな……。
「ずいぶんとその姿にも慣れてきたみたいだしな。もう何回か戦ってたら、もしかしたら勝てるようになるかもな」
俺がはにかみながらそう言ってやると、デザストレは埋まっていた地面から飛び出てきた。
「それは本当か?」
目を輝かせながら俺に顔を近付けてくるデザストレ。やめろ、男の目がしいたけなんて見たくないんだよ。
俺がちょっと引いていると、ヴォルフがデザストレの首根っこを掴んで引き離してくれた。
「やめろ。魔王様が困っているではないか」
「何をする、離せ」
デザストレはじたばたと暴れてヴォルフから逃れようとしている。
「だったら、次は俺と勝負ですね。いくら厄災相手とはいえ、いつまでも後れを取るわけには参りませんからね」
「けっ、いい根性をしてやがる。いいだろう、こてんぱんにしてやるぜ」
というわけで、今度はデザストレとヴォルフの戦いが始まった。
だが、これがまたいい勝負をしてくれる。魔王軍のトップクラスの実力を持つヴォルフゆえに、デザストレと戦いを重ねている間にだいぶ力をつけてきたようだ。
「けっ、犬っころのくせにやりやがるな」
「同じ相手に何度も負け続けるのは、俺のプライドが許しませんのでね。それに……」
デザストレの頬にヴォルフの拳がまともに入る。
「魔王様に失礼な態度を取るあなた自身が許せないのですよ」
「てめえ、よくもやりやがったな?」
まともな攻撃を俺以外から食らって、デザストレの頭に血が昇っていく。
そのせいでただのケンカになって被害が大きくなりそうだったので、俺が間に入って仲裁をしておいた。
「おいおい、稽古なんだろうが。熱くなりすぎだ」
二人の拳をしっかりと受け止めて、まとめて説教である。
止められたことに納得しないデザストレは、今回も壁画になってもらった。まったく、稽古をしてるんであってケンカをしてるんじゃないんだよ。
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