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第一章 大陸編
第93話 転生者、町長と話をする
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扉をくぐり、俺は魔王城から最も近い宿場町の町長といよいよ対面する。
たが、扉を開けた先の部屋は狭かった。扉だけがやたらでかい状態で、広さ自体は俺の執務室とあまり変わらない感じだった。拍子抜けもいいところだな。
そして、椅子に座っている人物を見て、さらに拍子抜けてしまう。
「もしかして、コボルトか?」
そう、俺と同じ犬系の獣人がそこに座っていたのだ。俺と比べても背が小さいので、子犬の獣人系の魔族であるコボルトだと見たわけだ。
「はい、その通りです。今回、ライネス様とピエラ様の推薦を受けて、こちらの宿場町の町長を務めることになりました」
椅子から立ち上がり、俺の方へと歩いてくる。そして、スカートをつまんでぺこりと頭を下げてきた。
って、スカート?!
「お、女なのか?」
「はい、コボルト族のティコと申します。以後お見知りおきを下さいませ、魔王様」
挨拶を終えたティコはにこっと微笑んでいた。
思わず顔が赤くなる。なんというか可愛い感じの女性だ。
「おやおや、魔王様。なにを照れていらっしゃるのですか。まあ、コボルト族は獣人の中でも可愛らしい容姿の方が多いですから、気持ちは分からなくはないですね。わたくしめは興味ございませんが」
バフォメットがからかってくる。
よく見れば、その真横でカスミも大笑いをしている。こいつら、揃いも揃ってなんなんだよ。
「まったく、いつまで笑ってるんだよ」
俺が強く踏みしめながら怒ると、バフォメットとカスミは揃って咳払いをしながら状態を整えていた。本当に、笑い過ぎなんだよ。恥ずかしいじゃねえか。
二人が落ち着くと、改めて俺はティコを見る。
本当に小さい。とはいっても、俺の胸の位置くらいまではあるんだがな。近くに寄られると自分の胸で顔が見えないじゃないか。
「とりあえず、席に着いてゆっくりと話をしようじゃないか」
俺は冷静になるために咳払いをして、ティコに対して提案をする。
「分かりました。ルネ、みなさまにお飲み物とお菓子を用意して下さい」
「畏まりました、ティコ様」
ティコに命じられて、ルネはゆっくりと部屋を出ていった。
飲み物が運ばれてくるのを待つ間、テーブルを囲んで座る。
俺たち三人に対してティコは一人。しかも体の小さな少女とあっては、まるで俺たちが尋問しているようにも見えなくはない。
「なあ、ティコ」
「なんでしょうか、魔王様」
「そっちは一人で大丈夫なのか?」
俺の質問に、きょとんと目を丸くしている。そして、にこりと微笑んで俺の方を見てきた。
それにしてもなんて破壊力のある笑顔なのだろうか。思わず引き込まれそうになる。
「魔王様、ご心配なく。私はこれでも成人していますし、長であるライネス様と補佐のピエラ様の双方から認められてここに来ているのです。ルネは補佐官でもありますから、一人ではございません」
堂々と答えてくるティコ。なんとも芯の強い表情としっかりとした発言なのだろうか。
それよりも成人という言葉に驚いた。魔族にも成人という概念はあったんだな。
しばらくすると、ルネが戻ってきて話に加わる。
「おやおや、私を待っていましたかね」
「いえ、ちょうど今から話を始めるところです。紅茶を淹れましたら、資料を持ってきて下さいますか?」
「はい、よろしいですよ。補佐として当然の仕事ですからね」
粛々と紅茶を淹れ終えたルネは、部屋の本棚から資料を持ってくる。まだできたばかりの町長の屋敷とあって、本棚の中はほぼ空っぽだった。
「ルネに持ってきていただいた資料は、この街の基本的な情報ですね。施設の配置、人員の配置といった基本的な情報が書かれています。これから説明致しますね」
見た目は小さいながらにも、態度は実に堂々としている。
魔王である俺、重鎮であるバフォメット、参謀であるキリエの妹のカスミを相手にしても、まったく気おくれをしていない。町長として抜擢されたのはよく分かる。
ひとまず今は、ルネが広げた資料を見ながら、ティコの説明を聞いている。
聞いている限り、言葉がはっきりしていて聞き取りやすい。説明も非常に分かりやすい。
バフォメットを見てみても、同じように静かにティコの説明を聞き入っていた。
「という感じです。いかがでしょうか」
説明を終えたティコは、じっと俺たちを見つめている。よく見ると背中でしっぽが激しく揺れている。まるで褒めてといわんばかりの激しさである。
「わたしくめが感じたところでは、現状は問題はないと思います。むしろ、実際に運営してみないことには分からないでしょうね」
「というと?」
「魔族と人間の両方が関わるからです。種族が違うとそれだけ衝突の確率は高まりますし、何が起こるかまったく想像がつきません」
「なるほど分かった。じゃあ、これでいくとするか」
バフォメットの言い分がよく分かったので、俺はそれに従うことにした。同じような考えだしな。反対する意味もない。
俺たちの反応を見て、ティコはほっと安心したように胸を撫で下ろしていた。
基本的な計画を確認したところで、次は実際に街の中の確認となるだろう。書面と実物が違うなんて事はよくある話だ。
だが、さすがにちょっと時間が遅くなってきたので、ひとまず今日のところは休んで日を改めることにしたのだった
たが、扉を開けた先の部屋は狭かった。扉だけがやたらでかい状態で、広さ自体は俺の執務室とあまり変わらない感じだった。拍子抜けもいいところだな。
そして、椅子に座っている人物を見て、さらに拍子抜けてしまう。
「もしかして、コボルトか?」
そう、俺と同じ犬系の獣人がそこに座っていたのだ。俺と比べても背が小さいので、子犬の獣人系の魔族であるコボルトだと見たわけだ。
「はい、その通りです。今回、ライネス様とピエラ様の推薦を受けて、こちらの宿場町の町長を務めることになりました」
椅子から立ち上がり、俺の方へと歩いてくる。そして、スカートをつまんでぺこりと頭を下げてきた。
って、スカート?!
「お、女なのか?」
「はい、コボルト族のティコと申します。以後お見知りおきを下さいませ、魔王様」
挨拶を終えたティコはにこっと微笑んでいた。
思わず顔が赤くなる。なんというか可愛い感じの女性だ。
「おやおや、魔王様。なにを照れていらっしゃるのですか。まあ、コボルト族は獣人の中でも可愛らしい容姿の方が多いですから、気持ちは分からなくはないですね。わたくしめは興味ございませんが」
バフォメットがからかってくる。
よく見れば、その真横でカスミも大笑いをしている。こいつら、揃いも揃ってなんなんだよ。
「まったく、いつまで笑ってるんだよ」
俺が強く踏みしめながら怒ると、バフォメットとカスミは揃って咳払いをしながら状態を整えていた。本当に、笑い過ぎなんだよ。恥ずかしいじゃねえか。
二人が落ち着くと、改めて俺はティコを見る。
本当に小さい。とはいっても、俺の胸の位置くらいまではあるんだがな。近くに寄られると自分の胸で顔が見えないじゃないか。
「とりあえず、席に着いてゆっくりと話をしようじゃないか」
俺は冷静になるために咳払いをして、ティコに対して提案をする。
「分かりました。ルネ、みなさまにお飲み物とお菓子を用意して下さい」
「畏まりました、ティコ様」
ティコに命じられて、ルネはゆっくりと部屋を出ていった。
飲み物が運ばれてくるのを待つ間、テーブルを囲んで座る。
俺たち三人に対してティコは一人。しかも体の小さな少女とあっては、まるで俺たちが尋問しているようにも見えなくはない。
「なあ、ティコ」
「なんでしょうか、魔王様」
「そっちは一人で大丈夫なのか?」
俺の質問に、きょとんと目を丸くしている。そして、にこりと微笑んで俺の方を見てきた。
それにしてもなんて破壊力のある笑顔なのだろうか。思わず引き込まれそうになる。
「魔王様、ご心配なく。私はこれでも成人していますし、長であるライネス様と補佐のピエラ様の双方から認められてここに来ているのです。ルネは補佐官でもありますから、一人ではございません」
堂々と答えてくるティコ。なんとも芯の強い表情としっかりとした発言なのだろうか。
それよりも成人という言葉に驚いた。魔族にも成人という概念はあったんだな。
しばらくすると、ルネが戻ってきて話に加わる。
「おやおや、私を待っていましたかね」
「いえ、ちょうど今から話を始めるところです。紅茶を淹れましたら、資料を持ってきて下さいますか?」
「はい、よろしいですよ。補佐として当然の仕事ですからね」
粛々と紅茶を淹れ終えたルネは、部屋の本棚から資料を持ってくる。まだできたばかりの町長の屋敷とあって、本棚の中はほぼ空っぽだった。
「ルネに持ってきていただいた資料は、この街の基本的な情報ですね。施設の配置、人員の配置といった基本的な情報が書かれています。これから説明致しますね」
見た目は小さいながらにも、態度は実に堂々としている。
魔王である俺、重鎮であるバフォメット、参謀であるキリエの妹のカスミを相手にしても、まったく気おくれをしていない。町長として抜擢されたのはよく分かる。
ひとまず今は、ルネが広げた資料を見ながら、ティコの説明を聞いている。
聞いている限り、言葉がはっきりしていて聞き取りやすい。説明も非常に分かりやすい。
バフォメットを見てみても、同じように静かにティコの説明を聞き入っていた。
「という感じです。いかがでしょうか」
説明を終えたティコは、じっと俺たちを見つめている。よく見ると背中でしっぽが激しく揺れている。まるで褒めてといわんばかりの激しさである。
「わたしくめが感じたところでは、現状は問題はないと思います。むしろ、実際に運営してみないことには分からないでしょうね」
「というと?」
「魔族と人間の両方が関わるからです。種族が違うとそれだけ衝突の確率は高まりますし、何が起こるかまったく想像がつきません」
「なるほど分かった。じゃあ、これでいくとするか」
バフォメットの言い分がよく分かったので、俺はそれに従うことにした。同じような考えだしな。反対する意味もない。
俺たちの反応を見て、ティコはほっと安心したように胸を撫で下ろしていた。
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