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第一章 大陸編
第104話 転生者、結果に満足する
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町長の部屋を抜け出し、屋敷の裏手に出てきた俺とペタル。町長の部屋からは賑やかな声が聞こえてくる。昔話や近況で盛り上がっているのだろうか。
俺たちは町長の部屋に視線を送ると、改めてペタルと話を始める。
「改めて思ったけど、ペタルはずいぶんとウネの事を毛嫌いしているな」
「……昔、いろいろございましたのでね」
俺の問い掛けに、遠い目をするペタル。様子を見る限り、本当に思い出したくもないような事があったようだ。
あのハナに仕えている時点で、相当の苦労人なのはうかがい知れるというもの。そこに自由人であるウネが加われば、確かにシャレにならない事態になることは想像に易かった。
とはいえ、懐かしそうに話すハナのことは放っておけなかったし、こうやって会わせたのはいい事なんだと俺は自分に言い聞かせていた。
そうして、しばらくの間、俺はペタルと一緒に夕方の風に当たっていた。
「魔王様、どこにいってらしたのですかー」
部屋に戻るなり、俺はウネから怒られた。
どうやら俺に話を振ろうとした時にいないことに気が付いて困っていたらしい。友人同士の会話だから邪魔をしないようにという気遣いが、ちょっと空振りしたようだった。
「いや、友人同士の語らいだから、邪魔しちゃいけないと思ったんだよ。悪かったな、ウネ」
「むう、魔王様がそういうのなら仕方ないのー」
ウネはあっさりと怒りを収めていた。
その様子を見ていたハナがくすくすと笑っている。
「ふふっ、いい主を見つけたようですわね、ウネ」
「うん、魔王様は最高なのよー」
満面の笑みで言い放つウネ。この言葉に思わず俺は真っ赤になってしまう。ウネからそんな言葉が出てくるとは想像もしていなかったからだ。不意打ちはやめろ。
「魔王様ってば、照れてますね」
「ええ、照れていらっしゃいますわ」
ハナもペタルも態度こそ違うものの、同じ反応をしている。その表情を向けられて、俺は顔を真っ赤にしたまま叫ぶ。
「照れてないぞ、俺は!」
町長の屋敷に、俺の叫び声がこだましていたのだった。
その後も、食事の時も含めてハナとウネは楽しそうに話をしていた。この二人は相当に仲のいい友人のようだ。ただ、その目の前には大量の緑精の広葉と赤霊草が積み上げられていた。その様子を見る限り、ウネが以前主食だと言っていたのは本当らしい。あの山盛り具合はさすがにどうかと思う。
「魔王様も食べるのー」
ウネはそう言いながら、自分たちの皿に乗った薬草を勧めてくる。食べていいものかとペタルの方に顔を向けると、ぶんぶんと首を横に振っていた。やっぱりドライアドとアルラウネ以外は食べちゃダメなやつらしい。
なので、俺はウネから勧められた薬草を丁重に断らせてもらった。まあ、今の俺は獣人なせいか肉が特に食べたいからな。薬草はノーサンキューだ。
俺が断ると落ち込む姿を見せるウネだったが、俺に何かあったら困るのだから仕方がないだろう。
いろいろとあったものの無事に食事を終えた後、俺は獣人の身体能力を使って町長の屋敷の屋根まで上がる。
すっかり辺りは宵闇に包まれてはいたが、街の明かりはしっかりと灯っている。
「うん、街はちゃんと機能しているようだな」
先日から正式に運用が始まった宿場町は、早速冒険者や商人といった利用者たちの姿がちらほらと見えるようになっていた。さすがに魔王領の中にあるのでどうなるか心配だったのだが、いざ始めてみたらそれは杞憂だったようだ。
ペタルに確認してみたところ、冒険者も商人も魔王領に眠る珍しいものを求めてやって来ているらしい。
当然ながら街の中には魔族がたくさん居るので、その時点で既にトラブルは起きかけていたそうだが、それはハナやペタルが直接出て鎮めたらしい。アルラウネはそれほど強くはないとはいえ、本気を出すとすごいらしい。さすが町長とその補佐だなと思った。
「ふぅ、こうやって見ていると、ようやく動き出したって感じだな」
町長の屋敷の屋根で、風に吹かれながら俺は街の様子を見下ろしている。
ただ、このアルラウネが治める宿場町は人間の住む領域から最も近いところだ。なにせ人間たちの使う馬車でもたったの1日で到着する場所だからな。
ここは元々はうっそうとした森が広がっていて、人もあんまり近寄らないような場所だった。アルラウネもその森の奥でひっそりと暮らしていて、こうやって表に出てくる事もなかった。魔王城へ向かう俺たちともまったく出くわさなかったくらいだよ。
そんな隠れ住んでいたアルラウネたちも表に出てきて交流する光景。こういう平和な光景は、俺が魔王として目指している世界の姿のひとつに違いなかった。
「こうやって平和になってくれるなら、俺の望む隠遁生活もぐっと近づいてくるな。頑張ったかいがあるってもんだ」
俺は屋根から足を放り出すような状態で座り込む。そして、夜を照らす明かりが見せる人々の行き交う姿をしばらく眺めていた。
自分の推し進める人間と魔族との和平のための活動。その一つの結果の姿に、俺は満足そうに微笑んでいた。
俺たちは町長の部屋に視線を送ると、改めてペタルと話を始める。
「改めて思ったけど、ペタルはずいぶんとウネの事を毛嫌いしているな」
「……昔、いろいろございましたのでね」
俺の問い掛けに、遠い目をするペタル。様子を見る限り、本当に思い出したくもないような事があったようだ。
あのハナに仕えている時点で、相当の苦労人なのはうかがい知れるというもの。そこに自由人であるウネが加われば、確かにシャレにならない事態になることは想像に易かった。
とはいえ、懐かしそうに話すハナのことは放っておけなかったし、こうやって会わせたのはいい事なんだと俺は自分に言い聞かせていた。
そうして、しばらくの間、俺はペタルと一緒に夕方の風に当たっていた。
「魔王様、どこにいってらしたのですかー」
部屋に戻るなり、俺はウネから怒られた。
どうやら俺に話を振ろうとした時にいないことに気が付いて困っていたらしい。友人同士の会話だから邪魔をしないようにという気遣いが、ちょっと空振りしたようだった。
「いや、友人同士の語らいだから、邪魔しちゃいけないと思ったんだよ。悪かったな、ウネ」
「むう、魔王様がそういうのなら仕方ないのー」
ウネはあっさりと怒りを収めていた。
その様子を見ていたハナがくすくすと笑っている。
「ふふっ、いい主を見つけたようですわね、ウネ」
「うん、魔王様は最高なのよー」
満面の笑みで言い放つウネ。この言葉に思わず俺は真っ赤になってしまう。ウネからそんな言葉が出てくるとは想像もしていなかったからだ。不意打ちはやめろ。
「魔王様ってば、照れてますね」
「ええ、照れていらっしゃいますわ」
ハナもペタルも態度こそ違うものの、同じ反応をしている。その表情を向けられて、俺は顔を真っ赤にしたまま叫ぶ。
「照れてないぞ、俺は!」
町長の屋敷に、俺の叫び声がこだましていたのだった。
その後も、食事の時も含めてハナとウネは楽しそうに話をしていた。この二人は相当に仲のいい友人のようだ。ただ、その目の前には大量の緑精の広葉と赤霊草が積み上げられていた。その様子を見る限り、ウネが以前主食だと言っていたのは本当らしい。あの山盛り具合はさすがにどうかと思う。
「魔王様も食べるのー」
ウネはそう言いながら、自分たちの皿に乗った薬草を勧めてくる。食べていいものかとペタルの方に顔を向けると、ぶんぶんと首を横に振っていた。やっぱりドライアドとアルラウネ以外は食べちゃダメなやつらしい。
なので、俺はウネから勧められた薬草を丁重に断らせてもらった。まあ、今の俺は獣人なせいか肉が特に食べたいからな。薬草はノーサンキューだ。
俺が断ると落ち込む姿を見せるウネだったが、俺に何かあったら困るのだから仕方がないだろう。
いろいろとあったものの無事に食事を終えた後、俺は獣人の身体能力を使って町長の屋敷の屋根まで上がる。
すっかり辺りは宵闇に包まれてはいたが、街の明かりはしっかりと灯っている。
「うん、街はちゃんと機能しているようだな」
先日から正式に運用が始まった宿場町は、早速冒険者や商人といった利用者たちの姿がちらほらと見えるようになっていた。さすがに魔王領の中にあるのでどうなるか心配だったのだが、いざ始めてみたらそれは杞憂だったようだ。
ペタルに確認してみたところ、冒険者も商人も魔王領に眠る珍しいものを求めてやって来ているらしい。
当然ながら街の中には魔族がたくさん居るので、その時点で既にトラブルは起きかけていたそうだが、それはハナやペタルが直接出て鎮めたらしい。アルラウネはそれほど強くはないとはいえ、本気を出すとすごいらしい。さすが町長とその補佐だなと思った。
「ふぅ、こうやって見ていると、ようやく動き出したって感じだな」
町長の屋敷の屋根で、風に吹かれながら俺は街の様子を見下ろしている。
ただ、このアルラウネが治める宿場町は人間の住む領域から最も近いところだ。なにせ人間たちの使う馬車でもたったの1日で到着する場所だからな。
ここは元々はうっそうとした森が広がっていて、人もあんまり近寄らないような場所だった。アルラウネもその森の奥でひっそりと暮らしていて、こうやって表に出てくる事もなかった。魔王城へ向かう俺たちともまったく出くわさなかったくらいだよ。
そんな隠れ住んでいたアルラウネたちも表に出てきて交流する光景。こういう平和な光景は、俺が魔王として目指している世界の姿のひとつに違いなかった。
「こうやって平和になってくれるなら、俺の望む隠遁生活もぐっと近づいてくるな。頑張ったかいがあるってもんだ」
俺は屋根から足を放り出すような状態で座り込む。そして、夜を照らす明かりが見せる人々の行き交う姿をしばらく眺めていた。
自分の推し進める人間と魔族との和平のための活動。その一つの結果の姿に、俺は満足そうに微笑んでいた。
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