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第一章 大陸編
第106話 転生者、厄災を差し向ける
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魔王城から西方へ行ったところにある王国。
魔王領へと送り込んだ兵士や冒険者たちが、身ぐるみをはがされた状態で送り返されてくる事態に、いよいよ我慢の限界が来たようだった。
「おのれ魔族どもめ。我々をなめてくれるとは、思い上がった連中だ。今こそやつらに裁きを与えてくれようぞ!」
「おおーっ!」
国内がどうにか心をひとつにしたらしく、城に集まった兵士たちをいよいよ魔王領へと攻め入る運びとなった。
その集まった兵士たちの中に、コモヤの息のかかった間者がいることなどまったく知る由もなく、すべてが筒抜けの中で侵攻が開始されたのである。
魔王城で待機する俺たちの元には、コモヤが送り込んだ間者による報告がリアルタイムで入ってくる。
「魔王様、まもなく西の王国軍が魔王領との境に到達するようです」
「そうか。結構早いな」
コモヤから状況報告を受けて、俺は真剣に考え込んでいる。
「魔王よ、我が出ていこうか?」
デザストレが顔をにやつかせながら前に出てくる。その顔を見る限り、こいつの考えていることが透けて見えてくる。
そう、単純に暴れたいだけなのだ。
俺には簡単に負けるし、魔族相手では手加減をして戦いを挑まなければならない。デザストレの中には欲求不満というか消化不良というか、ふつふつとしたものが溜まってきているのだろう。
まぁどうなるかというのは想像に難くないが、俺はデザストレの申し出を受け入れる。
「ひと暴れしてこい。ただ、目的は戦意を失わせる事だ。死なない程度に全力で潰すんだぞ」
「ふん、加減は難しいかもしれんが、やってやろうではないか。こざかしい人間ごとき、この我が捻り潰してくれるわ!」
デザストレは外へと飛び出していくと、ドラゴンの姿に戻ってあっという間に飛び去っていった。
部屋に残った俺たちは、大きくため息を吐く。
「ピエラ、ライネス。獣人たちにも一応備えをさせておいてくれ。多分あいつは暴れるだけ暴れてろくに確認もしないだろうから、そのまま向かってくる可能性がある」
「分かったわ」
「承知致しました」
「ピエラはこっそり擬態して人間だと悟られないようにな。魔族に与する人間の存在が知れたら、どんな行動を起こされるか分かったもんじゃない」
俺が追加で指示を与えておくと、ピエラはこくりと頷いていた。
ピエラとライネスが出ていったのを確認すると、俺は魔王らしく腰を落ち着ける。
「まったく、やっと魔王領の中が落ち着いてきたと思ったらこれだよ……」
椅子に座ってすぐさま大きなため息を吐く。
「まったくでございますな。面倒事というのは見計らったかのように起きますからな」
バフォメットにもこう言われるくらいだ。どれだけタイミングが悪いんだよ。
俺の出身である王国ともまだまだわだかまりがあるというのに、このタイミングで仕掛けられてはそっちに悪影響が出る可能性がある。となれば、とっとと制圧する必要があるので、デザストレの言い分を受け入れたってわけだ。
ひとまず、デザストレを突撃させて、本体としてピエラたち獣人部隊を待機させた。これでしばらくは動きを見守るといった状況になるだろう。デザストレの動きはコモヤの部下が伝えてくれるだろうから、俺はゆっくりと旅の疲れを取るために椅子に座ったまま軽く仮眠をとることにした。
―――
「くはははは、この我に歯向かうなど、大した度胸だ。このデザストレ様が、お前たちのすべてを焼き払ってやろうぞ!」
あっという間に西の王国軍と接触するデザストレ。さすがドラゴンの機動力は常識の遥か外にあるようだ。
「ドラゴンだと?! 魔王領にはそんな化け物までいたのか。魔法隊、弓兵隊、奴を撃ち落とせ!」
人間の指揮官が命令を出すと、上空に浮かぶデザストレに向けて魔法と矢を一斉に放ち始める。だが、そんなへっぽこな攻撃がデザストレに通じるわけもなく、すべては届く前にその威力を失っていた。
「なんだ。やる気がまったく感じられない攻撃だな」
拍子抜けの攻撃に、デザストレは耳の辺りをいじっている。
まったく当たってもいないので、文字通り痛くもかゆくもないのである。
「ふん、その程度の実力で魔王領に攻め込むなど、片腹痛いわ。この程度なら魔族相手でも苦戦は免れんぞ!」
デザストレはそう叫ぶと、一気に息を吸い込む。得意とするブレス攻撃を放つつもりなのである。
「そ、総員退避ーっ!」
急激な魔力の高まりを感じたのか、指揮官は慌てて全軍を下がらせる。
「あやつの命令だから殺しはせぬが、これに懲りたら二度と攻めようなど考えぬ事だな!」
その言葉と同時に、デザストレから強烈な火炎のブレスが放たれる。地面に命中すると土すら燃え上がり、辺りをあっという間に火の海に変えていく。
「ひ、ひぃ~……」
早めに退避させたことで軍に被害はなかったものの、目の前ですさまじい攻撃を見せつけられて、軍の士気は著しく下がっていく。
「警告はしたぞ? それでもやって来るというのなら、死すらも覚悟しておく事だな!」
怯える軍勢を見届けて、デザストレはその場から飛び去っていったのだった。
魔王領へと送り込んだ兵士や冒険者たちが、身ぐるみをはがされた状態で送り返されてくる事態に、いよいよ我慢の限界が来たようだった。
「おのれ魔族どもめ。我々をなめてくれるとは、思い上がった連中だ。今こそやつらに裁きを与えてくれようぞ!」
「おおーっ!」
国内がどうにか心をひとつにしたらしく、城に集まった兵士たちをいよいよ魔王領へと攻め入る運びとなった。
その集まった兵士たちの中に、コモヤの息のかかった間者がいることなどまったく知る由もなく、すべてが筒抜けの中で侵攻が開始されたのである。
魔王城で待機する俺たちの元には、コモヤが送り込んだ間者による報告がリアルタイムで入ってくる。
「魔王様、まもなく西の王国軍が魔王領との境に到達するようです」
「そうか。結構早いな」
コモヤから状況報告を受けて、俺は真剣に考え込んでいる。
「魔王よ、我が出ていこうか?」
デザストレが顔をにやつかせながら前に出てくる。その顔を見る限り、こいつの考えていることが透けて見えてくる。
そう、単純に暴れたいだけなのだ。
俺には簡単に負けるし、魔族相手では手加減をして戦いを挑まなければならない。デザストレの中には欲求不満というか消化不良というか、ふつふつとしたものが溜まってきているのだろう。
まぁどうなるかというのは想像に難くないが、俺はデザストレの申し出を受け入れる。
「ひと暴れしてこい。ただ、目的は戦意を失わせる事だ。死なない程度に全力で潰すんだぞ」
「ふん、加減は難しいかもしれんが、やってやろうではないか。こざかしい人間ごとき、この我が捻り潰してくれるわ!」
デザストレは外へと飛び出していくと、ドラゴンの姿に戻ってあっという間に飛び去っていった。
部屋に残った俺たちは、大きくため息を吐く。
「ピエラ、ライネス。獣人たちにも一応備えをさせておいてくれ。多分あいつは暴れるだけ暴れてろくに確認もしないだろうから、そのまま向かってくる可能性がある」
「分かったわ」
「承知致しました」
「ピエラはこっそり擬態して人間だと悟られないようにな。魔族に与する人間の存在が知れたら、どんな行動を起こされるか分かったもんじゃない」
俺が追加で指示を与えておくと、ピエラはこくりと頷いていた。
ピエラとライネスが出ていったのを確認すると、俺は魔王らしく腰を落ち着ける。
「まったく、やっと魔王領の中が落ち着いてきたと思ったらこれだよ……」
椅子に座ってすぐさま大きなため息を吐く。
「まったくでございますな。面倒事というのは見計らったかのように起きますからな」
バフォメットにもこう言われるくらいだ。どれだけタイミングが悪いんだよ。
俺の出身である王国ともまだまだわだかまりがあるというのに、このタイミングで仕掛けられてはそっちに悪影響が出る可能性がある。となれば、とっとと制圧する必要があるので、デザストレの言い分を受け入れたってわけだ。
ひとまず、デザストレを突撃させて、本体としてピエラたち獣人部隊を待機させた。これでしばらくは動きを見守るといった状況になるだろう。デザストレの動きはコモヤの部下が伝えてくれるだろうから、俺はゆっくりと旅の疲れを取るために椅子に座ったまま軽く仮眠をとることにした。
―――
「くはははは、この我に歯向かうなど、大した度胸だ。このデザストレ様が、お前たちのすべてを焼き払ってやろうぞ!」
あっという間に西の王国軍と接触するデザストレ。さすがドラゴンの機動力は常識の遥か外にあるようだ。
「ドラゴンだと?! 魔王領にはそんな化け物までいたのか。魔法隊、弓兵隊、奴を撃ち落とせ!」
人間の指揮官が命令を出すと、上空に浮かぶデザストレに向けて魔法と矢を一斉に放ち始める。だが、そんなへっぽこな攻撃がデザストレに通じるわけもなく、すべては届く前にその威力を失っていた。
「なんだ。やる気がまったく感じられない攻撃だな」
拍子抜けの攻撃に、デザストレは耳の辺りをいじっている。
まったく当たってもいないので、文字通り痛くもかゆくもないのである。
「ふん、その程度の実力で魔王領に攻め込むなど、片腹痛いわ。この程度なら魔族相手でも苦戦は免れんぞ!」
デザストレはそう叫ぶと、一気に息を吸い込む。得意とするブレス攻撃を放つつもりなのである。
「そ、総員退避ーっ!」
急激な魔力の高まりを感じたのか、指揮官は慌てて全軍を下がらせる。
「あやつの命令だから殺しはせぬが、これに懲りたら二度と攻めようなど考えぬ事だな!」
その言葉と同時に、デザストレから強烈な火炎のブレスが放たれる。地面に命中すると土すら燃え上がり、辺りをあっという間に火の海に変えていく。
「ひ、ひぃ~……」
早めに退避させたことで軍に被害はなかったものの、目の前ですさまじい攻撃を見せつけられて、軍の士気は著しく下がっていく。
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