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第一章 大陸編
第110話 転生者、クローゼと企む
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無事に交渉を終えて、俺とデザストレは魔王城へと戻ってくる。
さすがにドラゴンでの移動は速いというものだ。たったの1日で西方王国から魔王城まで戻ってこれるんだからな。とはいえ、乗り物扱いをしたらこいつは怒るだろうがな。
魔王城に戻って来た俺たちだが、実は客人も迎え入れていた。交渉が成功するきっかけとなった大臣だ。
現状を見せてくれと土下座までして懇願してきたので、根負けして連れてきたのだ。
(正直、薬草で釣ったのは失敗だったかな……)
今さらながらに俺は後悔していた。
ピエラにも言われてたんだよな。魔法使いや薬師は薬草に目がないって。どうやらこの大臣もその類だったようだ。
「魔王様、お帰りなさいませ。いかがでしたでしょうか」
「ああ、西方王国は無事に投降したよ。今後は攻めてくる事はないだろう」
「おお、さすがでございます。して、そちらの人物は……?」
魔王を出迎えた門番が、顔を覗き込むようにして大臣を見ている。魔族から視線を向けられて、思わず固まってしまう大臣。自分から懇願したものの、魔族に対する偏見というものは簡単に抜けるものではないのである。
そんな大臣に対して、俺は肩に手を置く。驚いて俺の方に顔を向ける大臣。安心させるように俺は優しく笑顔を見せて首を横に振っておいた。
「キリエ、戻ったぞ」
「お帰りなさいませ、魔王様」
魔王城に入って大声で叫ぶと、どこからともなくキリエが現れる。
「客人をもてなすから、食堂の支度をしておいてくれ」
「畏まりした。準備ができ次第お呼び致します」
俺の指示に返事をすると、キリエはすぐさま行動を開始していた。本当に行動が早い。うちの参謀はいつでも頼りになるな。
次に俺はバフォメットを呼び、デザストレと西方王国の大臣の相手をさせる。
俺はなぜ一人になるかって?
これから俺は湯浴みだ。カスミに手伝ってもらうことにはなるがな。
さすがに西方王国との往復の間は風呂に入れなかったからな。元日本人として、数日間風呂に入れないのは拷問なんだよ。
というわけで、俺は自分専用の風呂場へと向かった。
さすがに戻ってきた時が遅かったので、話題の中心になるだろうウネの管理する庭園へは連れていけなかった。真っ暗で何も見えないからな。
そういえば庭園といえば、あそこの薬師たちはどうなんだろうな。俺は大臣の案内ついでに見てみることに決めた。
というわけで、いろいろと考えながら湯浴みを終えた俺は、服を着替えてくつろいでいる。食事ができればキリエが呼びに来るので、それまで待機だ。
「ふぅ、これで南方王国と西方王国とは、一定の和解を見たかな。ただ、まだまだどちらも安心できないのは事実なんだが……」
「そうですね。人間なんて簡単に信用していいものではありませんよ」
「ははっ、カスミは相変わらず手厳しいな」
「魔王様が甘すぎるんです」
カスミと適当に話をしながら待っていると、キリエが部屋にやって来た。
「魔王様、食事の準備が整いました」
「おう、分かった。すぐに向かうよ」
そんなわけで、西方王国の大臣一人だけを迎えての晩餐会が始まった。
周りが魔族だらけでアウェイ感が半端ない大臣は、食事の最中は終始緊張した様子だった。まぁ無理もない話だよな。
俺が魔王城にやって来た当初も同じような感じだったからなぁ。獣人になったばかりで、周りからの評価は悪かったもんよ。魔王だからってやむなく従っているようなものだったからな。
俺たちのように、これから時間をかけてでも互いに理解していくしかないよな。カスミもまだあんな事言ってるくらいだからよ。
結局、食事はほとんどのどを通らなかったみたいで、かなりの量が残っていた。もったいないが、食べられなかった分はスライム行きだ。無理強いをして考えを改められても困る。
その後も、大臣の対応はバフォメットがしてくれた。さすがは城一番の紳士だ。このままバフォメットに任せておけば、西方王国の大臣のことはまず安心だろう。
俺は休む前に、クローゼの部屋を訪れる。俺の服を作ってからというもの、クローゼは城に軟禁状態だ。
最初の頃は嫌がっていたようだったが、今ではすっかり魔王城に居ついてしまっていた。なんでこうなった。
「クローゼ、こんな時間だがちょっといいか?」
「あら、魔王様。一体どうしたのかしら」
俺がクローゼの部屋に入ると、ちょっとぞっとした。
「おい、部屋中糸だらけじゃないか」
「仕方ないでしょう? 糸は吐いておかないと体に変調をきたしてしまうもの」
「アラクネってそんなものなのか?」
「ええ、そんなものなのですわよ」
俺の質問に、クローゼは淡々と答えていた。
しかし、これだけ糸があるとなると、俺の考えたことはすぐに実現できそうな気がした。
「ちょうどいい。ちょっと相談はいいかな」
「何かしら。無茶なことでなければいつでもいいわよ」
クローゼは興味ありげに俺の方を見ている。
「実はだな……」
俺が話を始めると、クローゼは静かに俺の話に耳を傾けている。
話を聞き終わったクローゼは、とてもにやついた顔をしている。相当興味を持ったようだ。
「いいわねぇ、楽しそうじゃないの。ぜひともやらせてもらうわ」
「じゃ、決まりだな」
俺はクローゼと拳をこつんとぶつけ合う。
こうして、クローゼを巻き込んだ俺の野望が動き出そうとしていたのだった。
さすがにドラゴンでの移動は速いというものだ。たったの1日で西方王国から魔王城まで戻ってこれるんだからな。とはいえ、乗り物扱いをしたらこいつは怒るだろうがな。
魔王城に戻って来た俺たちだが、実は客人も迎え入れていた。交渉が成功するきっかけとなった大臣だ。
現状を見せてくれと土下座までして懇願してきたので、根負けして連れてきたのだ。
(正直、薬草で釣ったのは失敗だったかな……)
今さらながらに俺は後悔していた。
ピエラにも言われてたんだよな。魔法使いや薬師は薬草に目がないって。どうやらこの大臣もその類だったようだ。
「魔王様、お帰りなさいませ。いかがでしたでしょうか」
「ああ、西方王国は無事に投降したよ。今後は攻めてくる事はないだろう」
「おお、さすがでございます。して、そちらの人物は……?」
魔王を出迎えた門番が、顔を覗き込むようにして大臣を見ている。魔族から視線を向けられて、思わず固まってしまう大臣。自分から懇願したものの、魔族に対する偏見というものは簡単に抜けるものではないのである。
そんな大臣に対して、俺は肩に手を置く。驚いて俺の方に顔を向ける大臣。安心させるように俺は優しく笑顔を見せて首を横に振っておいた。
「キリエ、戻ったぞ」
「お帰りなさいませ、魔王様」
魔王城に入って大声で叫ぶと、どこからともなくキリエが現れる。
「客人をもてなすから、食堂の支度をしておいてくれ」
「畏まりした。準備ができ次第お呼び致します」
俺の指示に返事をすると、キリエはすぐさま行動を開始していた。本当に行動が早い。うちの参謀はいつでも頼りになるな。
次に俺はバフォメットを呼び、デザストレと西方王国の大臣の相手をさせる。
俺はなぜ一人になるかって?
これから俺は湯浴みだ。カスミに手伝ってもらうことにはなるがな。
さすがに西方王国との往復の間は風呂に入れなかったからな。元日本人として、数日間風呂に入れないのは拷問なんだよ。
というわけで、俺は自分専用の風呂場へと向かった。
さすがに戻ってきた時が遅かったので、話題の中心になるだろうウネの管理する庭園へは連れていけなかった。真っ暗で何も見えないからな。
そういえば庭園といえば、あそこの薬師たちはどうなんだろうな。俺は大臣の案内ついでに見てみることに決めた。
というわけで、いろいろと考えながら湯浴みを終えた俺は、服を着替えてくつろいでいる。食事ができればキリエが呼びに来るので、それまで待機だ。
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「そうですね。人間なんて簡単に信用していいものではありませんよ」
「ははっ、カスミは相変わらず手厳しいな」
「魔王様が甘すぎるんです」
カスミと適当に話をしながら待っていると、キリエが部屋にやって来た。
「魔王様、食事の準備が整いました」
「おう、分かった。すぐに向かうよ」
そんなわけで、西方王国の大臣一人だけを迎えての晩餐会が始まった。
周りが魔族だらけでアウェイ感が半端ない大臣は、食事の最中は終始緊張した様子だった。まぁ無理もない話だよな。
俺が魔王城にやって来た当初も同じような感じだったからなぁ。獣人になったばかりで、周りからの評価は悪かったもんよ。魔王だからってやむなく従っているようなものだったからな。
俺たちのように、これから時間をかけてでも互いに理解していくしかないよな。カスミもまだあんな事言ってるくらいだからよ。
結局、食事はほとんどのどを通らなかったみたいで、かなりの量が残っていた。もったいないが、食べられなかった分はスライム行きだ。無理強いをして考えを改められても困る。
その後も、大臣の対応はバフォメットがしてくれた。さすがは城一番の紳士だ。このままバフォメットに任せておけば、西方王国の大臣のことはまず安心だろう。
俺は休む前に、クローゼの部屋を訪れる。俺の服を作ってからというもの、クローゼは城に軟禁状態だ。
最初の頃は嫌がっていたようだったが、今ではすっかり魔王城に居ついてしまっていた。なんでこうなった。
「クローゼ、こんな時間だがちょっといいか?」
「あら、魔王様。一体どうしたのかしら」
俺がクローゼの部屋に入ると、ちょっとぞっとした。
「おい、部屋中糸だらけじゃないか」
「仕方ないでしょう? 糸は吐いておかないと体に変調をきたしてしまうもの」
「アラクネってそんなものなのか?」
「ええ、そんなものなのですわよ」
俺の質問に、クローゼは淡々と答えていた。
しかし、これだけ糸があるとなると、俺の考えたことはすぐに実現できそうな気がした。
「ちょうどいい。ちょっと相談はいいかな」
「何かしら。無茶なことでなければいつでもいいわよ」
クローゼは興味ありげに俺の方を見ている。
「実はだな……」
俺が話を始めると、クローゼは静かに俺の話に耳を傾けている。
話を聞き終わったクローゼは、とてもにやついた顔をしている。相当興味を持ったようだ。
「いいわねぇ、楽しそうじゃないの。ぜひともやらせてもらうわ」
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