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第一章 大陸編
第153話 転生者、聖国での会合に臨む
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北方聖国に滞在して二日が経過する。
さすがに純粋な魔族であるデザストレとコモヤは、少し弱っているような印象を受けた。
「二人とも大丈夫か?」
「大丈夫だ。あの女の言っていた通り、普通に比べれば弱体化の影響は小さい。二日も結界に閉じ込められれば、大抵の魔族は立つことするできなくなるからな」
「う、うちも大丈夫です」
気にかかって声を掛けてみると、二人からはまだまだ余裕そうな返事があった。
確かに少々呼吸が荒いように見えるだけで、動作などには大した影響はないようだった。
「二人にはもう少し我慢を強いることになるな。とりあえず今日が勝負だから耐えてくれよ」
「分かっている」
俺はピエラたちを連れて、神殿内の会議室へと向かっている。
聖国の神殿で魔族が堂々と歩く姿は、神殿の職員たちにとっては恐怖でしかない。一部の者は武器を構えようとしているが、聖王の客人であるがために手を出せずに歯がゆい様子を見せている。
アウェイ中のアウェイ。そんな雰囲気をひしひしと感じていた。
会議室に姿を見せると、聖王ルミネシアの姿はなかった。
会議の円卓に座るのは見たことのない人物ばかり。年齢はばらばらだが、多くは男性のようだ。
会議室に入ってきたばかりの俺たちに、円卓に座る唯一の女性が立ち上がって近付いてくる。
「今代の魔王でございますね。席に案内します」
「ああ、すまない」
女性の案内で、俺たちも円卓の席に移動する。
椅子の間隔を見ると、無理やり席を増やしたのがよく分かる。俺たちの辺りだけ明らかに間隔が詰まっているからな。想定外の参加者だし、人数も多いからからしょうがないところだろう。今回ばかりは我慢だ我慢。
ひとまず、弱体化が見られるデザストレとコモヤは守らなきゃいけない。なので、俺とピエラで挟み込むように席に着く。
そして、案内してくれた女性の隣にピエラ、いかにも怪しそうなおっさんの隣に俺が座る。目つきが怪しすぎるからな、ピエラを隣にやるわけにはいかない。
デザストレが本調子なら隣を任せたんだが、今はしょうがない。
しかしなぁ、隣のおっさんは俺が獣人であってもお構いなしという感じだな。胸がでかいからか、ちらちらとこっちを興奮した様子で見てきやがる。
あとでピエラとコモヤから指摘されたが、俺のしっぽは垂れ下がったまま動いてなかったらしい。前世で犬を飼っていたからよく分かるが、これは警戒状態のサインだ。つまり、俺は隣のおっさんをずっと警戒していたというわけだな。気にしていないふりをしていても、しっぽは正直だったぜ。
いろいろと落ち着かない要素はあるものの、俺たちは聖王が登場するまでじっと待機し続ける。
どのくらい待っただろうか、ようやくルミネシアが登場する。
「申し訳ございません、大変お待たせ致しました」
入ってくるなり、謝罪の言葉が出てくる。待たされた時間を考えれば仕方のないことかもしれないが、南方王国で育った俺やピエラからしたら、なかなかに衝撃的な場面だった。なにせあの王様は一切謝らなかったからな。
謝罪をしたルミネシアが席に着くと、ようやく会合が始まる。
急な招集の上に、魔族と同席、さらには待たされたとあって、会合の参加者の一部は既に不穏な空気を醸し出していた。平気そうなのは俺たちの案内をしてくれた女性と、俺の隣に座るおっさんくらいだ。てか、その視線をやめろ。
「今回の会合ですが、議題はそちらの魔族たちについてです」
「魔族など滅ぼしてしまえばよいではないですか。何を話すというのです」
ルミネシアが告げれば、早々に文句をつける参加者がいた。まぁ予想通りだろうな、この反応は。
特に気にしないで、俺は黙って会合の様子を見守っている。
「みなさんの認識ではそうでしょう。ですが、今は状況が変わりました」
「どう変わったというのですか」
またルミネシアの発言に即異議を唱えようとしている。いくらなんでも早すぎだろうが。
「実は、魔王が代替わりしています」
「なん……だと……」
ルミネシアからの衝撃発言に、ようやく参加者の怒号がやんだ。
まぁそうだろうな。聖国が一番魔王討伐に躍起になってるんだからな。そもそも魔族を滅ぼしてしまえな連中だし、当然の話だ。
「そこにいる獣人が、今現在の魔王です。彼女は元は南方王国の貴族令息でした」
「令息?!」
「バカな、どう見ても女ではないか」
「聖王様、一体何を仰られているのですか」
参加者たちは一様に混乱しているようだ。いろいろな事実を一気に叩きつけられれば、誰だってそうなるだろうな。女になった事自体、俺が一番信じられないんだからな。
それにしても、会合だっていうのにこいつら好き勝手に話をしすぎだろうが。こいつらの姿を見ていると、俺の中で苛つきが増幅していく。
気が付くと、俺は円卓を強く叩いていた。
「お前ら、いい加減にしろ。俺は話し合いに来てるんだ、ぎゃーこらうるせえんだよ」
不機嫌マックスの状態で睨みを利かせると、ようやく参加者どもが静かになった。俺にいやらしい視線を向けていたおっさんもようやく視線を外したぜ。
「聖王、続きを」
「は、はい。ありがとうございます」
ようやく静かになったことで、これで会合は進むだろう。
さて、どういった取引をしようか。俺はちらちらと様子を見ながら、その候補を絞り込んでいった。
さすがに純粋な魔族であるデザストレとコモヤは、少し弱っているような印象を受けた。
「二人とも大丈夫か?」
「大丈夫だ。あの女の言っていた通り、普通に比べれば弱体化の影響は小さい。二日も結界に閉じ込められれば、大抵の魔族は立つことするできなくなるからな」
「う、うちも大丈夫です」
気にかかって声を掛けてみると、二人からはまだまだ余裕そうな返事があった。
確かに少々呼吸が荒いように見えるだけで、動作などには大した影響はないようだった。
「二人にはもう少し我慢を強いることになるな。とりあえず今日が勝負だから耐えてくれよ」
「分かっている」
俺はピエラたちを連れて、神殿内の会議室へと向かっている。
聖国の神殿で魔族が堂々と歩く姿は、神殿の職員たちにとっては恐怖でしかない。一部の者は武器を構えようとしているが、聖王の客人であるがために手を出せずに歯がゆい様子を見せている。
アウェイ中のアウェイ。そんな雰囲気をひしひしと感じていた。
会議室に姿を見せると、聖王ルミネシアの姿はなかった。
会議の円卓に座るのは見たことのない人物ばかり。年齢はばらばらだが、多くは男性のようだ。
会議室に入ってきたばかりの俺たちに、円卓に座る唯一の女性が立ち上がって近付いてくる。
「今代の魔王でございますね。席に案内します」
「ああ、すまない」
女性の案内で、俺たちも円卓の席に移動する。
椅子の間隔を見ると、無理やり席を増やしたのがよく分かる。俺たちの辺りだけ明らかに間隔が詰まっているからな。想定外の参加者だし、人数も多いからからしょうがないところだろう。今回ばかりは我慢だ我慢。
ひとまず、弱体化が見られるデザストレとコモヤは守らなきゃいけない。なので、俺とピエラで挟み込むように席に着く。
そして、案内してくれた女性の隣にピエラ、いかにも怪しそうなおっさんの隣に俺が座る。目つきが怪しすぎるからな、ピエラを隣にやるわけにはいかない。
デザストレが本調子なら隣を任せたんだが、今はしょうがない。
しかしなぁ、隣のおっさんは俺が獣人であってもお構いなしという感じだな。胸がでかいからか、ちらちらとこっちを興奮した様子で見てきやがる。
あとでピエラとコモヤから指摘されたが、俺のしっぽは垂れ下がったまま動いてなかったらしい。前世で犬を飼っていたからよく分かるが、これは警戒状態のサインだ。つまり、俺は隣のおっさんをずっと警戒していたというわけだな。気にしていないふりをしていても、しっぽは正直だったぜ。
いろいろと落ち着かない要素はあるものの、俺たちは聖王が登場するまでじっと待機し続ける。
どのくらい待っただろうか、ようやくルミネシアが登場する。
「申し訳ございません、大変お待たせ致しました」
入ってくるなり、謝罪の言葉が出てくる。待たされた時間を考えれば仕方のないことかもしれないが、南方王国で育った俺やピエラからしたら、なかなかに衝撃的な場面だった。なにせあの王様は一切謝らなかったからな。
謝罪をしたルミネシアが席に着くと、ようやく会合が始まる。
急な招集の上に、魔族と同席、さらには待たされたとあって、会合の参加者の一部は既に不穏な空気を醸し出していた。平気そうなのは俺たちの案内をしてくれた女性と、俺の隣に座るおっさんくらいだ。てか、その視線をやめろ。
「今回の会合ですが、議題はそちらの魔族たちについてです」
「魔族など滅ぼしてしまえばよいではないですか。何を話すというのです」
ルミネシアが告げれば、早々に文句をつける参加者がいた。まぁ予想通りだろうな、この反応は。
特に気にしないで、俺は黙って会合の様子を見守っている。
「みなさんの認識ではそうでしょう。ですが、今は状況が変わりました」
「どう変わったというのですか」
またルミネシアの発言に即異議を唱えようとしている。いくらなんでも早すぎだろうが。
「実は、魔王が代替わりしています」
「なん……だと……」
ルミネシアからの衝撃発言に、ようやく参加者の怒号がやんだ。
まぁそうだろうな。聖国が一番魔王討伐に躍起になってるんだからな。そもそも魔族を滅ぼしてしまえな連中だし、当然の話だ。
「そこにいる獣人が、今現在の魔王です。彼女は元は南方王国の貴族令息でした」
「令息?!」
「バカな、どう見ても女ではないか」
「聖王様、一体何を仰られているのですか」
参加者たちは一様に混乱しているようだ。いろいろな事実を一気に叩きつけられれば、誰だってそうなるだろうな。女になった事自体、俺が一番信じられないんだからな。
それにしても、会合だっていうのにこいつら好き勝手に話をしすぎだろうが。こいつらの姿を見ていると、俺の中で苛つきが増幅していく。
気が付くと、俺は円卓を強く叩いていた。
「お前ら、いい加減にしろ。俺は話し合いに来てるんだ、ぎゃーこらうるせえんだよ」
不機嫌マックスの状態で睨みを利かせると、ようやく参加者どもが静かになった。俺にいやらしい視線を向けていたおっさんもようやく視線を外したぜ。
「聖王、続きを」
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