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第一章 大陸編
第170話 転生者、デイジーを連れて獣人の集落へ行く
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翌日は、一度魔王領の他のところも見せてみようかということで、俺はデイジーを連れてピエラが滞在する獣人の集落へと向かう。
魔王領の馬はとにかく足が速い。街道も整備したとあっては、魔王城から獣人たちの集落へは前よりも圧倒的に早くたどり着けてしまった。
「こ、これが魔王領のお馬さんですか。私たちの乗る馬より速いですし、こんなに揺れないだなんて……」
「まぁ、魔族たちの技術ってのはすごいよな。馬車の構造自体に、揺れを吸収する仕組みが備えられてるんだよ」
「そ、そうなんですね。すごい……」
さっきからデイジーは驚きっぱなっしだな。
俺が集落の中に足を踏み入れると、ピエラがやって来た。
「あら、セイ。どうしたのよ今日は」
「やあ、ピエラ。調子はどうだい?」
「すこぶるいいわよ。私がもふもふ好きなのは知ってるでしょう? ここは天国みたいなものよ」
俺の質問に答えるピエラだが、近くには獣人族の子どもたちがくっついている。かなり好かれているようなのかべったりとした感じだ。
そう思ってピエラを見ている俺だったが、よく思えば俺も同じような状況にいるな。左側を見てみると、デイジーが俺に隠れるようにしてしがみついていた。
「それにしても、その子は誰よ」
っと、ピエラに気付かれてしまったか。
「ああ、紹介するよ。この子はデイジー・フラウゼル伯爵令嬢だ。北方聖国の聖王候補の一人で、今回聖王とこの子の父親に頼まれて預かってるんだよ」
「あらそうなのね。初めまして、南方王国出身のピエラ・ハミングウェイよ、よろしくね」
ピエラはデイジーに対して手を差し出す。
おどおどしながらも、デイジーは俺の前に出てきてピエラの手を握っていた。
二人の様子をにこやかに見ていた俺だったが、次の瞬間ピエラからの質問攻めが始まった。
「またセイってば女の子を連れてきて……。なんでそんなに女の子ばかりにもてるのかしらね」
「お、おい。ピエラ何を言っているんだよ。女性ばかりが集まってくるのはたまたま偶然だぞ。言いがかりはよしてくれ」
俺は必死に言い訳をする。だが、ピエラはどんどんと顔を近付けてきている。しかも、にこやかな笑顔でだ。まったく、怖いったらありゃしない。
「いいえ、ここは一回ガツンと言っておかなきゃいけないと思うの。あなた、私の婚約者だった自覚はあるわけ?!」
「おい、その話は俺が廃嫡された時点で立ち消えになっただろうが。まだ有効なつもりなのかよ」
「もちろんよ。セイの相手にふさわしいのは私よ。絶対逃すもんですか」
デイジーも見ている前で、ピエラは堂々と言い放っていた。こんなに気が強かったっけか。
「かっこいい……」
俺が焦っている横で、デイジーが予想外な反応を示していた。
「へ、かっこいい?」
あまりにも意外な反応だったので、俺の目は点となってしまっていた。
「うふふふ、いい子ね。セイは放っておいて、ここからは私がこの集落を案内してあげるわ」
「はい、お願いします。ピエラ様」
デイジーはピエラに手を引かれて、獣人たちの集落の見学へと出かけていった。
俺は一人でその場に取り残されてしまった。
「うーん、しょうがないな。ライネスのところにでも行って、現状を確認してくるか……」
一人でぼーっとしているのもなんなので、デイジーをピエラに任せたまま、俺は魔王らしく仕事をするために獣人たちのボスであるライネスのところへと向かった。
「これは魔王様、ようこそおいで下さいました」
「やあ、久しぶりだな。今日は客人の案内で来たんだが、ピエラに取られちまった。ちょうどいい機会だし、集落の現状の報告をしてもらおうか」
俺が話を切り出すと、ライネスは快く応じてくれた。俺の言い方だとそれなりに反発されそうなものだが、今の俺が獣人で魔王っていう立場にあるせいだろうな。獣人の扱いも以前に比べて改善したようで、気分がいいのだろう。
ピエラたちが戻ってくるまでの間、俺とライネスはいろいろと獣人たちの集落について話し合った。
その中には、西方王国との取引の話も出てきた。西方王国も魔王城まで足を運ぶ者はいないようで、魔王城で作られたものをこの獣人たちの集落で売りさばいてもらっている。
ライネスが俺の言い方にも文句を言わない理由は、この辺りにもあるだろう。
なにせ、羽毛布団やポーションの類は大人気商品になっているらしいからな。
だが、お金に関してはピエラがしっかり管理しているので、そこまで潤っているわけではない。やって来た商人たちとの間で交渉をして、いろいろと物を買い付けているようなのだ。
魔王領でしか手に入らないものがあるように、人間たちの国でしか手に入らないものあるんだよ。北方聖国の砂糖とかみたいにな。
ライネスに確認すれば、西方王国でしか手に入らないものの品目の一覧については、どうもピエラが持っているらしい。詳しい話はピエラが戻ってくるまでできそうになかった。
政治的な話はここまでしか無理だと判断したので、ピエラが戻ってくるまでの間、ライネスとは世間話に興じることにする。
聞けば、ライネスもまだ独り身らしい。俺も獣人になったとはいえ獣人の美的感覚というのは分からんものなので、なかなか話に共感はできなかった。
結局、愚痴の垂れ流しをひたすら聞くだけに終始することになってしまった。
ええい、ピエラはまだ戻ってこないのか。
魔王領の馬はとにかく足が速い。街道も整備したとあっては、魔王城から獣人たちの集落へは前よりも圧倒的に早くたどり着けてしまった。
「こ、これが魔王領のお馬さんですか。私たちの乗る馬より速いですし、こんなに揺れないだなんて……」
「まぁ、魔族たちの技術ってのはすごいよな。馬車の構造自体に、揺れを吸収する仕組みが備えられてるんだよ」
「そ、そうなんですね。すごい……」
さっきからデイジーは驚きっぱなっしだな。
俺が集落の中に足を踏み入れると、ピエラがやって来た。
「あら、セイ。どうしたのよ今日は」
「やあ、ピエラ。調子はどうだい?」
「すこぶるいいわよ。私がもふもふ好きなのは知ってるでしょう? ここは天国みたいなものよ」
俺の質問に答えるピエラだが、近くには獣人族の子どもたちがくっついている。かなり好かれているようなのかべったりとした感じだ。
そう思ってピエラを見ている俺だったが、よく思えば俺も同じような状況にいるな。左側を見てみると、デイジーが俺に隠れるようにしてしがみついていた。
「それにしても、その子は誰よ」
っと、ピエラに気付かれてしまったか。
「ああ、紹介するよ。この子はデイジー・フラウゼル伯爵令嬢だ。北方聖国の聖王候補の一人で、今回聖王とこの子の父親に頼まれて預かってるんだよ」
「あらそうなのね。初めまして、南方王国出身のピエラ・ハミングウェイよ、よろしくね」
ピエラはデイジーに対して手を差し出す。
おどおどしながらも、デイジーは俺の前に出てきてピエラの手を握っていた。
二人の様子をにこやかに見ていた俺だったが、次の瞬間ピエラからの質問攻めが始まった。
「またセイってば女の子を連れてきて……。なんでそんなに女の子ばかりにもてるのかしらね」
「お、おい。ピエラ何を言っているんだよ。女性ばかりが集まってくるのはたまたま偶然だぞ。言いがかりはよしてくれ」
俺は必死に言い訳をする。だが、ピエラはどんどんと顔を近付けてきている。しかも、にこやかな笑顔でだ。まったく、怖いったらありゃしない。
「いいえ、ここは一回ガツンと言っておかなきゃいけないと思うの。あなた、私の婚約者だった自覚はあるわけ?!」
「おい、その話は俺が廃嫡された時点で立ち消えになっただろうが。まだ有効なつもりなのかよ」
「もちろんよ。セイの相手にふさわしいのは私よ。絶対逃すもんですか」
デイジーも見ている前で、ピエラは堂々と言い放っていた。こんなに気が強かったっけか。
「かっこいい……」
俺が焦っている横で、デイジーが予想外な反応を示していた。
「へ、かっこいい?」
あまりにも意外な反応だったので、俺の目は点となってしまっていた。
「うふふふ、いい子ね。セイは放っておいて、ここからは私がこの集落を案内してあげるわ」
「はい、お願いします。ピエラ様」
デイジーはピエラに手を引かれて、獣人たちの集落の見学へと出かけていった。
俺は一人でその場に取り残されてしまった。
「うーん、しょうがないな。ライネスのところにでも行って、現状を確認してくるか……」
一人でぼーっとしているのもなんなので、デイジーをピエラに任せたまま、俺は魔王らしく仕事をするために獣人たちのボスであるライネスのところへと向かった。
「これは魔王様、ようこそおいで下さいました」
「やあ、久しぶりだな。今日は客人の案内で来たんだが、ピエラに取られちまった。ちょうどいい機会だし、集落の現状の報告をしてもらおうか」
俺が話を切り出すと、ライネスは快く応じてくれた。俺の言い方だとそれなりに反発されそうなものだが、今の俺が獣人で魔王っていう立場にあるせいだろうな。獣人の扱いも以前に比べて改善したようで、気分がいいのだろう。
ピエラたちが戻ってくるまでの間、俺とライネスはいろいろと獣人たちの集落について話し合った。
その中には、西方王国との取引の話も出てきた。西方王国も魔王城まで足を運ぶ者はいないようで、魔王城で作られたものをこの獣人たちの集落で売りさばいてもらっている。
ライネスが俺の言い方にも文句を言わない理由は、この辺りにもあるだろう。
なにせ、羽毛布団やポーションの類は大人気商品になっているらしいからな。
だが、お金に関してはピエラがしっかり管理しているので、そこまで潤っているわけではない。やって来た商人たちとの間で交渉をして、いろいろと物を買い付けているようなのだ。
魔王領でしか手に入らないものがあるように、人間たちの国でしか手に入らないものあるんだよ。北方聖国の砂糖とかみたいにな。
ライネスに確認すれば、西方王国でしか手に入らないものの品目の一覧については、どうもピエラが持っているらしい。詳しい話はピエラが戻ってくるまでできそうになかった。
政治的な話はここまでしか無理だと判断したので、ピエラが戻ってくるまでの間、ライネスとは世間話に興じることにする。
聞けば、ライネスもまだ独り身らしい。俺も獣人になったとはいえ獣人の美的感覚というのは分からんものなので、なかなか話に共感はできなかった。
結局、愚痴の垂れ流しをひたすら聞くだけに終始することになってしまった。
ええい、ピエラはまだ戻ってこないのか。
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