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第一章 大陸編
第219話 転生者、帝都に入る
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中に入ってしまえば、帝国の人間たちも今まで会ってきた人間たちとはそう大差がないようだった。
俺とキリエとの間の空気は意外と和やかで、談笑しながら帝都へと向かって行く。
「さて、見えてきたぞ。あれが帝国の中心地である帝都だ」
ケンソウの声で、俺たちはしっかりと前を見る。
そこにあったのは大きな城塞都市だ。今まで見てきた都とは一線を画すような物々しさのある都だった。
「さすが帝国だな。防衛戦に向いたしっかりとした作りをしているようだな」
「おや、分かりますかな」
俺が思わずこぼした感想に、ケンソウがにやりと笑みを浮かべている。
「この帝都は、古の時代に築かれた堅固な砦。その昔、魔王軍の進軍を受けながらも跳ね返したという逸話を持つ砦なのですぞ!」
「下っ端魔族なら、十分跳ね返せるのは実際っぽいな。この都を建設するにあたって、ずいぶんと考えた配置になっているからな」
「なっ!?」
得意になって話を続けるケンソウだったが、俺からのひと言でその言葉が急に止まる。
それは俺が帝都を鑑定にかけた結果のせいだ。
「悪いと思ったんだが、帝都を鑑定させてもらった。街の形自体が、破邪とまではいかなくても魔族に対して有利に働く魔法陣にしてあるようだ」
「なんと、それは初耳ですな」
俺の話を聞いてケンソウがかなり驚いた表情をしていた。
「まっ、詳しい話は皇帝に出会ってからだな。俺が魔王になったことで、少しはこの陸地の状況を好転させたいんだ。東方帝国以外とは、一応話はついてるしな」
「ほう、興味深い話ですな」
これまたケンソウは興味津々といったところだろう。だが、俺は先程と同じことを言ってきっぱりと断っておいた。
俺が話をおあずけにすると、ケンソウは非常に残念そうな顔をしていた。
うん、犬じゃないんだから、そんな顔をしても無駄だぞ。それに、同じ話を何回もするのは疲れるんだ。一回で済むのなら、その方がいいに決まってるっていうんだよ。
俺と同じ意見だろうキリエは、俺の後ろで激しく同意するように首を縦に振っていた。
ところが、いよいよ帝都の防壁の中へ入ろうとする時だった。
とある気配に、俺とキリエが反応する。
「うん、どうした」
「いや、潜入を命じていた部下がいたようだ。手を出さないでくれ」
「コモヤ、出てきなさい」
ケンソウが分かったと返事をする中、正面の茂みから見慣れた魔族の女性が現れた。潜入を命じて先に行かせていたコモヤだった。どうやら無事にあの地獄の国境警備を抜けてきたらしい。
「魔王様、キリエお姉様、どうしてこちらに?」
驚きの表情を浮かべるコモヤ。それもそうだろうな。あの雨あられの酷い攻撃をかいくぐってきたんだからな。コモヤでも苦戦しただろう国境警備を、俺たちが無傷で抜けてくれば驚くに決まっている。
「まあ、それは中で話すさ。とりあえずこっちに来いよ。これから帝都に入るんだからな」
俺がこういうものの、コモヤは戸惑っているようだった。
「コモヤ、私たちは本物の私たちです。安心してこちらにいらっしゃい」
キリエにこう言われてしまえば、コモヤは従うしかない。なにせ自分が慕う姉なのだから。
コモヤは一度深呼吸をして、心を落ち着けてから俺たちに近付いてきた。
ケンソウのおかげで無事に帝都に入ることができた。
人間と魔族の仲は悪いとはいっても、ケンソウが認めたといえば、帝都の人間たちは俺たちを簡単に受け入れてくれた。この男、かなり民から慕われているようだ。
帝都の中に入ってみると、外からの印象とがらりと変わってくる。
「こいつは驚いたな。南方王国や西方王国、北方聖国とも大差がない」
「そうなのですな。我々は東方帝国以外へ出向いたことがないので、よそがどうなっているのかよく分からぬのです」
俺の素直な感想に、ケンソウは淡々と答えていた。
これは俺もよく分かる話だ。魔王の討伐以外で南方王国を、それどころか王都からも出た覚えがまったくというほどなかったからな。
人間は、思ったよりも自分の生まれた国の中に閉じこもりがちなんだよな。
それにしても、さすが魔族が三人もいると、帝都の人間からちらちら視線を向けられる。
一応、人間たちを安心させるために、俺たちの周りはケンソウの部下である兵士たちに囲ませてある。魔族を捕らえてきたように見せかけるためだ。
そうすることによって、あくまでも魔族に勝った人間たちという印象を周囲に与えることができるというわけだ。ここは人間が治める国だからな。
とはいえ、縛り付けられていない時点で普通は発覚すると思うんだがな……。
とまあ、白い目を向けられながらも俺たちは無事に宮殿に到着する。
「ケンソウ殿、その魔族たちは?」
「国内に侵入してきたところを捕らえた。これより陛下に報告に向かう」
「そうでしたか。それでは、その身柄はこちら……」
「いや、私が預かっておく。お前たちに渡すとどうなるか分からんからな。見ての通りこちらは全員女性なのだから、丁重に扱うのが普通であろう」
「は、はあ……」
ケンソウの言い分にどこか納得いかないようだが、さすが将軍職にある人間相手に逆らえないようだった。
俺たちはケンソウとその部下に囲まれながら、宮殿の中をどんどんと進んでいく。
やがて、俺たちの前に大きな扉が現れる。他の扉と比べても、明らかに装飾の具合が段違いだった。
「これから皇帝陛下にお会いする。先刻も話した通り、あまり驚かないでくれ」
ケンソウの忠告に、俺たちはこくりと頷いた。
いよいよ扉が開かれ、皇帝と見える。
さて、この東方帝国の皇帝は、どんな人物なのだろうな。
俺とキリエとの間の空気は意外と和やかで、談笑しながら帝都へと向かって行く。
「さて、見えてきたぞ。あれが帝国の中心地である帝都だ」
ケンソウの声で、俺たちはしっかりと前を見る。
そこにあったのは大きな城塞都市だ。今まで見てきた都とは一線を画すような物々しさのある都だった。
「さすが帝国だな。防衛戦に向いたしっかりとした作りをしているようだな」
「おや、分かりますかな」
俺が思わずこぼした感想に、ケンソウがにやりと笑みを浮かべている。
「この帝都は、古の時代に築かれた堅固な砦。その昔、魔王軍の進軍を受けながらも跳ね返したという逸話を持つ砦なのですぞ!」
「下っ端魔族なら、十分跳ね返せるのは実際っぽいな。この都を建設するにあたって、ずいぶんと考えた配置になっているからな」
「なっ!?」
得意になって話を続けるケンソウだったが、俺からのひと言でその言葉が急に止まる。
それは俺が帝都を鑑定にかけた結果のせいだ。
「悪いと思ったんだが、帝都を鑑定させてもらった。街の形自体が、破邪とまではいかなくても魔族に対して有利に働く魔法陣にしてあるようだ」
「なんと、それは初耳ですな」
俺の話を聞いてケンソウがかなり驚いた表情をしていた。
「まっ、詳しい話は皇帝に出会ってからだな。俺が魔王になったことで、少しはこの陸地の状況を好転させたいんだ。東方帝国以外とは、一応話はついてるしな」
「ほう、興味深い話ですな」
これまたケンソウは興味津々といったところだろう。だが、俺は先程と同じことを言ってきっぱりと断っておいた。
俺が話をおあずけにすると、ケンソウは非常に残念そうな顔をしていた。
うん、犬じゃないんだから、そんな顔をしても無駄だぞ。それに、同じ話を何回もするのは疲れるんだ。一回で済むのなら、その方がいいに決まってるっていうんだよ。
俺と同じ意見だろうキリエは、俺の後ろで激しく同意するように首を縦に振っていた。
ところが、いよいよ帝都の防壁の中へ入ろうとする時だった。
とある気配に、俺とキリエが反応する。
「うん、どうした」
「いや、潜入を命じていた部下がいたようだ。手を出さないでくれ」
「コモヤ、出てきなさい」
ケンソウが分かったと返事をする中、正面の茂みから見慣れた魔族の女性が現れた。潜入を命じて先に行かせていたコモヤだった。どうやら無事にあの地獄の国境警備を抜けてきたらしい。
「魔王様、キリエお姉様、どうしてこちらに?」
驚きの表情を浮かべるコモヤ。それもそうだろうな。あの雨あられの酷い攻撃をかいくぐってきたんだからな。コモヤでも苦戦しただろう国境警備を、俺たちが無傷で抜けてくれば驚くに決まっている。
「まあ、それは中で話すさ。とりあえずこっちに来いよ。これから帝都に入るんだからな」
俺がこういうものの、コモヤは戸惑っているようだった。
「コモヤ、私たちは本物の私たちです。安心してこちらにいらっしゃい」
キリエにこう言われてしまえば、コモヤは従うしかない。なにせ自分が慕う姉なのだから。
コモヤは一度深呼吸をして、心を落ち着けてから俺たちに近付いてきた。
ケンソウのおかげで無事に帝都に入ることができた。
人間と魔族の仲は悪いとはいっても、ケンソウが認めたといえば、帝都の人間たちは俺たちを簡単に受け入れてくれた。この男、かなり民から慕われているようだ。
帝都の中に入ってみると、外からの印象とがらりと変わってくる。
「こいつは驚いたな。南方王国や西方王国、北方聖国とも大差がない」
「そうなのですな。我々は東方帝国以外へ出向いたことがないので、よそがどうなっているのかよく分からぬのです」
俺の素直な感想に、ケンソウは淡々と答えていた。
これは俺もよく分かる話だ。魔王の討伐以外で南方王国を、それどころか王都からも出た覚えがまったくというほどなかったからな。
人間は、思ったよりも自分の生まれた国の中に閉じこもりがちなんだよな。
それにしても、さすが魔族が三人もいると、帝都の人間からちらちら視線を向けられる。
一応、人間たちを安心させるために、俺たちの周りはケンソウの部下である兵士たちに囲ませてある。魔族を捕らえてきたように見せかけるためだ。
そうすることによって、あくまでも魔族に勝った人間たちという印象を周囲に与えることができるというわけだ。ここは人間が治める国だからな。
とはいえ、縛り付けられていない時点で普通は発覚すると思うんだがな……。
とまあ、白い目を向けられながらも俺たちは無事に宮殿に到着する。
「ケンソウ殿、その魔族たちは?」
「国内に侵入してきたところを捕らえた。これより陛下に報告に向かう」
「そうでしたか。それでは、その身柄はこちら……」
「いや、私が預かっておく。お前たちに渡すとどうなるか分からんからな。見ての通りこちらは全員女性なのだから、丁重に扱うのが普通であろう」
「は、はあ……」
ケンソウの言い分にどこか納得いかないようだが、さすが将軍職にある人間相手に逆らえないようだった。
俺たちはケンソウとその部下に囲まれながら、宮殿の中をどんどんと進んでいく。
やがて、俺たちの前に大きな扉が現れる。他の扉と比べても、明らかに装飾の具合が段違いだった。
「これから皇帝陛下にお会いする。先刻も話した通り、あまり驚かないでくれ」
ケンソウの忠告に、俺たちはこくりと頷いた。
いよいよ扉が開かれ、皇帝と見える。
さて、この東方帝国の皇帝は、どんな人物なのだろうな。
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