異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第一章 大陸編

第221話 転生者、食事の場に呼ばれる

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 客間が用意されると、俺たちはそこへと案内される。

「他の者への配慮もありますゆえ、三名で一部屋を使って頂きます。魔族を迎え入れること自体、異例なのですからな」

「いや、正直牢屋も覚悟してたから、部屋があるだけマシさ。小さな皇帝殿には感謝を伝えておいてくれ。あとで自分からも言うがな」

「はっ、分かりました」

 ケンソウはそういうと、さっさと皇帝のところに戻っていった。
 皇帝はまだ子どもというのはあるが、ケンソウもそこそこ柔軟な考えを持つ人物のようだな。
 とりあえず夕食までは自由時間だろうから、俺たちは部屋の中を確認する。

「意外とちゃんとした部屋のようですね」

「そうですね。普段野宿の私からすると、豪華すぎます」

「コモヤって、隠密活動だからかそんな生活してたのか……」

 コモヤの発言に、思わずびっくりしてしまう。
 いや、魔族だからそれなりに生きてはいるんだろうけど、やっぱり女性にそんな生活をさせてはと思ってしまうものだよ。

「これで東方帝国との関係が改善できれば、コモヤは隠密の生活から解放されるな。そうなったら、キリエやカスミと同じような生活をしてもらおうかな」

「魔王軍参謀というのは、かなり重責なのですが?」

 俺が話す内容に、キリエが真面目にツッコミを入れてきた。相変わらずの堅物っぷりだな。

「カスミの名前が入っている時点で、なんでそっちになるんだよ。上の姉妹と同じ職場で働いてもらいたいなっていうだけじゃないか」

「ああ。これは失礼しました」

 キリエは淡々とした声で反応していた。

「まあ、これが実現するかは、この後の交渉次第ってところなんだがな。東方帝国とも和平を結べれば、大陸の人間四国との和平が実現するわけだからな。そうすれば、諜報活動の出番も減るってわけだよ」

「それはそうですね。私たちも、末妹であるコモヤにずいぶんと危険を押し付けてきましたからね。これは反省すべき点ですよ」

「キリエ姉さん……」

 キリエの考えを聞いて、コモヤはちょっと感動しているようだった。
 とりあえず俺たちは、次に呼びに来るまでの間ゆっくりと体を休めたのだった。

 どのくらい経っただろうか。

「失礼します。間もなく夕食でございます。それに伴い、皇帝陛下がお呼びでございます」

 部屋の外から女性の声が聞こえてくる。
 どうやら、あの幼い皇帝は、俺たちを夕食の席に招くつもりのようだ。つまり、あの時に言っていた時と方針を変えていないということだろう。

「分かった、すぐに出る」

 俺は返事をして、キリエとコモヤと一緒に部屋を出る。不在の間に何かあっても困るので、人が入れないように魔法をかけておく。
 魔族というのは人間には嫌われているからな。最悪、致命的な嫌がらせが考えられるんだよ。
 使用人に連れられて案内されたのは、謁見の間にも劣らない豪華な飾りつけの部屋だった。

「こちらが皇帝陛下が食事をなされる食堂でございます。ここに入れることを光栄にお思い下さい」

「まぁそうだな。他国の重鎮が入るような部屋だろうからな」

 使用人が扉を叩いて中に知らせると、ゆっくりと扉を開いて俺たちを中へと案内する。
 中ではすでに幼い皇帝とケンソウ、それと見たことのない人物が三人ほど座っていた。
 その中の一人は女性なので、おそらくは皇帝の母親あたりだろう。

「よく来てくれたな。今日は普通の晩餐会だ。ゆっくり話をお聞かせ願いたい」

「分かりました。両国の友好のためにも、しっかりと話をさせてもらいましょう」

 皇帝の言葉に俺がこう返すと、幼い皇帝は笑みを浮かべていた。
 まだまだ幼いというのに、全身からその野心っていうのが透けて見える。ただ、それが覇気として見えるだけあって、これほどの威厳を保っていられるのだろう。
 まったく、十歳くらいの子どもとはまったくもって思えないな。

「まずは、こちらの方たちを紹介したい。宰相のエイラー、財務大臣のクレカネ、そして、余の母上だ」

 皇帝が紹介すると、俺たちに向かって頭を下げる。

「魔王領の領主であり、現在の魔王であるセイだ。こっちは参謀のキリエ、その妹のコモヤだ。本日は、わざわざ俺たちに会いに足を運んで下さり、感謝する」

 俺が挨拶をすると、三人揃って驚いた顔をしていた。やっぱり魔族、特に魔王に対して露骨に悪いイメージしか持ってないんだな。

「魔王……。まさか、こんな丁寧な挨拶をするなんて」

 まぁそうだろうな。
 人間を下に見て、蹂躙することしか考えていないというのが、一般的な魔王のイメージだからな。俺だってそうだったし。
 皇帝やケンソウ以外の人間が戸惑う中、外からバタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。

「にゃーっ! 人が昼寝をしている間に、なんてことが起きてるいるんだにゃ!」

 なんだ、この独特な語尾は……。なんとも嫌な予感しかしない。

「皇帝陛下、エイミーでございますにゃ。遅れて申し訳ないですにゃ!」

「やっと来たか、入れ」

「失礼しますにゃ!」

 扉が開いて、一人の女性が入ってくる。
 食堂の入口に現れたのは、赤茶色の髪がくるっと内側に巻いたのが特徴的な十代後半くらいの女性だった。
 肩で呼吸をするその姿を見た瞬間、俺はひと目で何かに気が付いたのだった。
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