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第一章 大陸編
第223話 転生者、猫と戯れる
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長くなると警戒していたのだが、エイミーは思ったよりも簡単に白状してくれた。
やっぱり、デザストレこと厄災と名乗るドラゴンと根源は同じらしい。
混沌を司る者から生まれながらも、こっちは真逆である調和の力を持った存在らしい。
元々はさっき見せた大きな猫であるらしいのだが、デザストレ同様に普段は人間の姿で行動しているそうだ。
「頼むから、命だけはお助け下さいにゃーっ!」
「いや、なんでそうなるんだよ。俺は別にそんなつもりはないぞ」
「にゃっ!?」
命乞いをするエイミーに対し、俺はすっぱり言い切っておく。
まったく、こいつも魔王に対してずいぶんと偏った考えを持ってやがるな。
「それよりももう少し教えてくれ。なんで厄災と同じ混沌を根本とするお前が、この東方帝国に居座っているのか」
「そ、それはですにゃ……」
エイミーは両手の人差し指を突き合わせてまごまごとしている。そんなに俺に言いづらいことなのかよ。
とはいえ、俺もあまり無理に聞くつもりはない。それよりも先にどうにかしなきゃいけないことがあるしな。
「言いにくいんだったら別に聞かねえよ」
俺が首の後ろを擦りながら言うと、エイミーはほっと安心したような表情をしていた。だが、これで終わりだと思うなよ?
「それよりもだ。国境のお前が使う魔法をどうにかしてくれ。まだ魔王領はいいんだ。南方王国や北方聖国に向けてまで同じ魔法を使うな」
「にゃにゃにゃ?!」
俺に怒鳴られて、エイミーは目を白黒とさせている。
そこを責められるとは思ってなかったんだろうな、こいつ。
「ええ、あれってそんなひどいことになってたかにゃ?」
あ、こいつ把握してなかったのか。
なんだろう。方向性は違うんだが、どっちもポンコツだな、おい。
ついつい頭が痛くなってくる。
「ああ、そうだぞ。国境に近付いただけで、問答無用で魔法射撃が飛んでくるんだからな。いい加減にしてくれよ、本当に」
「うう、分かったにゃ。すぐに確認に行くのにゃ」
「ちょっと待て」
部屋を出て行こうとするエイミーの手をがっちりと摑まえる。
「うにゃ、肉球がくすぐったいのにゃ!」
「猫に言われたかねえよ」
俺は苦笑いをしながらエイミーを引き留めている。
「向かうなら、俺の部下を連れていけ。あれでもこの手の類は得意な連中だからな。一度見本を見せてやれば対処できるはずだ」
「うう、分かったのにゃ。主様からは魔族を滅ぼせと言われているのに、どうして魔族に協力しなきゃいけないのにゃ!」
「お前らがポンコツだからだろう。魔族だけじゃなくて人間にまで危害を加えてるじゃねえか」
「ぐぬぬぬぬ……」
エイミーははっきり言われて、歯ぎしりをしそうな勢いで唇を噛みしめながら俺を見ている。
言われたくなければ最初からちゃんとしてくれよな……。
「分かりましたにゃ。全部解除しますから、いじめないで……」
「いじめないから。明日にでも行ってくれ」
エイミーは泣き始めていた。そんなつもりはなかったんだが、泣かれてしまってはまるで俺が悪者じゃないか。
まったくやれやれだぜ。
エイミーはようやく俺から解放されて、ほっとした表情で部屋を出ていった。
俺ってなんで怖がられてんだろうな。まったく失礼な連中だぜ。
エイミーを解放してからしばらくすると、キリエとカスミが戻ってきた。
「ただいま戻りました、魔王様」
「ただいまでございます」
「おう、お疲れ様」
戻ってきた二人を俺は労う。
「それにしても魔王様、一体何をなさったのですか?」
「うん、一体どうしたんだよ」
「いえ、皇帝陛下のところに戻ってきたエイミー殿が、なにやら泣きそうな顔をしてらっしゃいましたので、気になったまでです」
「ああ、そういうことか」
俺は思い切り顔を押さえている。
予想はできていた。だって、あいつは猫だもんよ。
「誤解はないようにしてもらいたいな。あいつ、かなりポンコツだ。デザストレと比肩できるぞ」
「……大体理解できました」
デザストレを例に出して理解できてしまうとは思わなかったぜ。
まぁ、有能ではあるけれどどこか抜けているっていうのは本当に共通してるからな。これならその親玉である混沌の存在っていうのもそういう感じなんだろうかな。
俺はついつい考え込んでしまう。
「とりあえず、明日は二人にはエイミーと一緒に魔法の解除に向かってもらう。東方帝国は広いから、何日かかるかは分からんがな」
「魔王様お一人で大丈夫でしょうか」
「俺だって元々人間だからな、そこらへんは安心してくれ。それよりも国境のあの妙な攻撃を止めないとな」
「確かに、そうですね。うちもあれにはずいぶん苦労させられましたから」
コモヤは潜入した時の状況を思い出して、表情を暗くしていた。相当苦戦したことが痛いほどに伝わってくる。
「よし、今日のところはもう休もうか。また明日に備えるとしようぜ」
「承知致しました。あの水中洞窟に入ってからというもの、ろくに休めておりませんでしたからね」
「うちも賛成。まったく気を緩められませんでしたから。もうへとへとです」
俺たちの意見が一致したので、念のために防護魔法を展開してゆっくり休むことにした。
さて、どうやって東方帝国との和解を引き出すか。
当面の課題を見据えて、俺はしっかりと眠ったのだった。
やっぱり、デザストレこと厄災と名乗るドラゴンと根源は同じらしい。
混沌を司る者から生まれながらも、こっちは真逆である調和の力を持った存在らしい。
元々はさっき見せた大きな猫であるらしいのだが、デザストレ同様に普段は人間の姿で行動しているそうだ。
「頼むから、命だけはお助け下さいにゃーっ!」
「いや、なんでそうなるんだよ。俺は別にそんなつもりはないぞ」
「にゃっ!?」
命乞いをするエイミーに対し、俺はすっぱり言い切っておく。
まったく、こいつも魔王に対してずいぶんと偏った考えを持ってやがるな。
「それよりももう少し教えてくれ。なんで厄災と同じ混沌を根本とするお前が、この東方帝国に居座っているのか」
「そ、それはですにゃ……」
エイミーは両手の人差し指を突き合わせてまごまごとしている。そんなに俺に言いづらいことなのかよ。
とはいえ、俺もあまり無理に聞くつもりはない。それよりも先にどうにかしなきゃいけないことがあるしな。
「言いにくいんだったら別に聞かねえよ」
俺が首の後ろを擦りながら言うと、エイミーはほっと安心したような表情をしていた。だが、これで終わりだと思うなよ?
「それよりもだ。国境のお前が使う魔法をどうにかしてくれ。まだ魔王領はいいんだ。南方王国や北方聖国に向けてまで同じ魔法を使うな」
「にゃにゃにゃ?!」
俺に怒鳴られて、エイミーは目を白黒とさせている。
そこを責められるとは思ってなかったんだろうな、こいつ。
「ええ、あれってそんなひどいことになってたかにゃ?」
あ、こいつ把握してなかったのか。
なんだろう。方向性は違うんだが、どっちもポンコツだな、おい。
ついつい頭が痛くなってくる。
「ああ、そうだぞ。国境に近付いただけで、問答無用で魔法射撃が飛んでくるんだからな。いい加減にしてくれよ、本当に」
「うう、分かったにゃ。すぐに確認に行くのにゃ」
「ちょっと待て」
部屋を出て行こうとするエイミーの手をがっちりと摑まえる。
「うにゃ、肉球がくすぐったいのにゃ!」
「猫に言われたかねえよ」
俺は苦笑いをしながらエイミーを引き留めている。
「向かうなら、俺の部下を連れていけ。あれでもこの手の類は得意な連中だからな。一度見本を見せてやれば対処できるはずだ」
「うう、分かったのにゃ。主様からは魔族を滅ぼせと言われているのに、どうして魔族に協力しなきゃいけないのにゃ!」
「お前らがポンコツだからだろう。魔族だけじゃなくて人間にまで危害を加えてるじゃねえか」
「ぐぬぬぬぬ……」
エイミーははっきり言われて、歯ぎしりをしそうな勢いで唇を噛みしめながら俺を見ている。
言われたくなければ最初からちゃんとしてくれよな……。
「分かりましたにゃ。全部解除しますから、いじめないで……」
「いじめないから。明日にでも行ってくれ」
エイミーは泣き始めていた。そんなつもりはなかったんだが、泣かれてしまってはまるで俺が悪者じゃないか。
まったくやれやれだぜ。
エイミーはようやく俺から解放されて、ほっとした表情で部屋を出ていった。
俺ってなんで怖がられてんだろうな。まったく失礼な連中だぜ。
エイミーを解放してからしばらくすると、キリエとカスミが戻ってきた。
「ただいま戻りました、魔王様」
「ただいまでございます」
「おう、お疲れ様」
戻ってきた二人を俺は労う。
「それにしても魔王様、一体何をなさったのですか?」
「うん、一体どうしたんだよ」
「いえ、皇帝陛下のところに戻ってきたエイミー殿が、なにやら泣きそうな顔をしてらっしゃいましたので、気になったまでです」
「ああ、そういうことか」
俺は思い切り顔を押さえている。
予想はできていた。だって、あいつは猫だもんよ。
「誤解はないようにしてもらいたいな。あいつ、かなりポンコツだ。デザストレと比肩できるぞ」
「……大体理解できました」
デザストレを例に出して理解できてしまうとは思わなかったぜ。
まぁ、有能ではあるけれどどこか抜けているっていうのは本当に共通してるからな。これならその親玉である混沌の存在っていうのもそういう感じなんだろうかな。
俺はついつい考え込んでしまう。
「とりあえず、明日は二人にはエイミーと一緒に魔法の解除に向かってもらう。東方帝国は広いから、何日かかるかは分からんがな」
「魔王様お一人で大丈夫でしょうか」
「俺だって元々人間だからな、そこらへんは安心してくれ。それよりも国境のあの妙な攻撃を止めないとな」
「確かに、そうですね。うちもあれにはずいぶん苦労させられましたから」
コモヤは潜入した時の状況を思い出して、表情を暗くしていた。相当苦戦したことが痛いほどに伝わってくる。
「よし、今日のところはもう休もうか。また明日に備えるとしようぜ」
「承知致しました。あの水中洞窟に入ってからというもの、ろくに休めておりませんでしたからね」
「うちも賛成。まったく気を緩められませんでしたから。もうへとへとです」
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