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第一章 大陸編
第256話 転生者、すべてを打ち明ける
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「う……ん……」
なんだろうか。長い夢を見ていた気がする。
「魔王、大丈夫ですか!」
「セイお姉ちゃん!」
目を覚ました俺の隣には、聖王とデイジーの二人が立っていた。二人揃って、泣きそうな顔をしている。
どうしたというのか。俺は冷静になって何があったのか思い出そうとしている。
……そうだ。俺は突然痛みに襲われて倒れたんだった。
それにしても、まさか俺の中にセイ太がいるとは思わなかったな。今でもこの手に残ってるぜ、セイ太のぬくもりが。
「どうしたんですか。急に倒れたので、少しまだ混乱しているのですか?」
「それは大変、治癒士を呼ばなきゃ」
聖王とデイジーが慌てふためいている。
おっと、セイ太との余韻に浸るのも大事だが、こいつらをとりあえず落ち着かせないとな。このままじゃ何を言い出すか分かったもんじゃないぞ。
「落ち着いてくれ、二人とも。俺は大丈夫だから」
ひとまず横になっていた体をしっかりと起こす。
上半身を起こしただけで、二人は泣きそうな顔をしていた。いや、どういう反応なんだよ、これ……。
二人の行動に、ただただ戸惑うだけだった。
「みゃあん……」
二人に気を取られていた俺の耳に、ミーアドッグの鳴き声が聞こえてくる。
ベッドの上からくるりと振り返ると、そこには聖都までやってきたミーアドッグたちが集まっていた。
俺が倒れた緊急事態ということで、聖王が許可を出してここまで俺を運んできたらしい。
俺がまじまじとミーアドッグを眺めていると、ズキンと再び鋭い痛みが走る。
「うっ!」
「魔王?!」
「セイお姉ちゃん?!」
俺が痛みにうめき声を出すと、聖王とデイジーがまた慌てた様子を見せている。
「いや、大丈夫だ。どうも妙な能力が目覚めたみたいだな……」
「妙な能力、ですか?」
俺がつい口走った言葉に、聖王が首を傾げている。
「ああ、ミーアドッグたちの状態がよく見える。鑑定魔法を使っているわけでもないのに、状態がよく見えるぜ」
そう、俺の目にはまるでゲームのステータス画面のように、ミーアドッグの状態が見えているのだ。
「ははっ、セイ太の使徒……か。最後に大きな置き土産をしていったな、あいつは……」
「魔王、どうされたのですか」
大きな声の独り言に、聖王が困惑している。
心配をかけたお詫びということもあるので、俺はさっき気を失っている間に見た夢のようなことを含めて、いろいろすべてを聖王たちに打ち明けた。
「……別の世界から来た存在、ですか」
さすがに聖王もこの事実には驚かざるを得なかった。
「ああ、俺は別の世界で死んでこの世界へやって来た人間だ。その時に授かった能力に加えて、仲間であるピエラやマールンの協力を得て先代の魔王を倒したんだ」
「なるほど、魔王という魔族の長にありながら、この聖国の結界を平然と通り抜けられるのも、その恩恵というわけですか」
「おそらくな。実はプリンとかあの辺の食べ物も、実は俺の前世の世界にあったものなんだよ。あの世界はおいしいものがあふれていたからな」
俺が笑みをこぼしながら話していると、デイジーがよだれを垂らしながら話に聞き入っていた。
俺がその姿を指摘すると、デイジーは慌てた様子でよだれを拭っていた。隣では聖王はくすくすと笑っている。
「ついでにいうと、先日話した水中洞窟のことも、おそらくそこに影響されてるんじゃないかな。この世界の理から外れたところがあるから、見ることができるんじゃないかってな」
「考えられる話ですね。魔王以外にそれを見ることができた人物がいないというのは、十分な証拠といえるでしょう」
さすがは聖王、理解が早いな。
「で、俺がこんな姿になったことも、実はその転生が関わっていたみたいなんだ」
「……とても興味がありますね。お聞かせ願えますか?」
聖王が真剣な表情になる。その顔を見た俺はこくりと静かに頷いた。
デイジーも食い入るように聞いている。俺に対して憧れがあるみたいなのか、本当に真剣そのものだったよ。
長い話が終わると、二人とも信じられないといった顔をしていた。
「なるほど、前世で飼っていた犬の魂が同居していたと。その魂が転生の際に得た力で、魔王は呪いからすぐに目覚められたと」
「ああ、しかもその影響でこの通り女性の獣人になっちまったがな。最初はそりゃ混乱したものさ、元は男だったんだからな」
「それは、そうでしょうね。性別が突然変わるなんていうのは、そう起こることではないですから」
どことなく違和感のある言い方だな。
とはいえ、今の状況でそれを聞くのはやめておいた方がいいか。長くなりそうだしな。
「前世とか元はとか関係ありません。私にとってセイお姉様は憧れのお姉様です!」
少ししんみりしかけたところで、デイジーの力強い叫びが響き渡る。うん、少し落ち着こうか。
「よし、すべて話したらすっきりしたな。ちょうど前世の話もしたところだし、社畜をやる前の一人暮らしの時に作ってた料理でも作ってみるか」
「いけませんよ、倒れていたばかりなんですから」
「いや、今は作りたい気分なんだ。やらせてくれ」
俺が真剣な表情を向けると、聖王は仕方なく料理の許可を出していた。
長くもやもやとして横たわっていたものが晴れ渡ると、本当に気分爽快だな。
セイ太、本当にありがとうな。
俺はセイ太の力を受け継いだミーアドッグたちを撫でて回ると、料理を作るために厨房へと向かったのだった。
なんだろうか。長い夢を見ていた気がする。
「魔王、大丈夫ですか!」
「セイお姉ちゃん!」
目を覚ました俺の隣には、聖王とデイジーの二人が立っていた。二人揃って、泣きそうな顔をしている。
どうしたというのか。俺は冷静になって何があったのか思い出そうとしている。
……そうだ。俺は突然痛みに襲われて倒れたんだった。
それにしても、まさか俺の中にセイ太がいるとは思わなかったな。今でもこの手に残ってるぜ、セイ太のぬくもりが。
「どうしたんですか。急に倒れたので、少しまだ混乱しているのですか?」
「それは大変、治癒士を呼ばなきゃ」
聖王とデイジーが慌てふためいている。
おっと、セイ太との余韻に浸るのも大事だが、こいつらをとりあえず落ち着かせないとな。このままじゃ何を言い出すか分かったもんじゃないぞ。
「落ち着いてくれ、二人とも。俺は大丈夫だから」
ひとまず横になっていた体をしっかりと起こす。
上半身を起こしただけで、二人は泣きそうな顔をしていた。いや、どういう反応なんだよ、これ……。
二人の行動に、ただただ戸惑うだけだった。
「みゃあん……」
二人に気を取られていた俺の耳に、ミーアドッグの鳴き声が聞こえてくる。
ベッドの上からくるりと振り返ると、そこには聖都までやってきたミーアドッグたちが集まっていた。
俺が倒れた緊急事態ということで、聖王が許可を出してここまで俺を運んできたらしい。
俺がまじまじとミーアドッグを眺めていると、ズキンと再び鋭い痛みが走る。
「うっ!」
「魔王?!」
「セイお姉ちゃん?!」
俺が痛みにうめき声を出すと、聖王とデイジーがまた慌てた様子を見せている。
「いや、大丈夫だ。どうも妙な能力が目覚めたみたいだな……」
「妙な能力、ですか?」
俺がつい口走った言葉に、聖王が首を傾げている。
「ああ、ミーアドッグたちの状態がよく見える。鑑定魔法を使っているわけでもないのに、状態がよく見えるぜ」
そう、俺の目にはまるでゲームのステータス画面のように、ミーアドッグの状態が見えているのだ。
「ははっ、セイ太の使徒……か。最後に大きな置き土産をしていったな、あいつは……」
「魔王、どうされたのですか」
大きな声の独り言に、聖王が困惑している。
心配をかけたお詫びということもあるので、俺はさっき気を失っている間に見た夢のようなことを含めて、いろいろすべてを聖王たちに打ち明けた。
「……別の世界から来た存在、ですか」
さすがに聖王もこの事実には驚かざるを得なかった。
「ああ、俺は別の世界で死んでこの世界へやって来た人間だ。その時に授かった能力に加えて、仲間であるピエラやマールンの協力を得て先代の魔王を倒したんだ」
「なるほど、魔王という魔族の長にありながら、この聖国の結界を平然と通り抜けられるのも、その恩恵というわけですか」
「おそらくな。実はプリンとかあの辺の食べ物も、実は俺の前世の世界にあったものなんだよ。あの世界はおいしいものがあふれていたからな」
俺が笑みをこぼしながら話していると、デイジーがよだれを垂らしながら話に聞き入っていた。
俺がその姿を指摘すると、デイジーは慌てた様子でよだれを拭っていた。隣では聖王はくすくすと笑っている。
「ついでにいうと、先日話した水中洞窟のことも、おそらくそこに影響されてるんじゃないかな。この世界の理から外れたところがあるから、見ることができるんじゃないかってな」
「考えられる話ですね。魔王以外にそれを見ることができた人物がいないというのは、十分な証拠といえるでしょう」
さすがは聖王、理解が早いな。
「で、俺がこんな姿になったことも、実はその転生が関わっていたみたいなんだ」
「……とても興味がありますね。お聞かせ願えますか?」
聖王が真剣な表情になる。その顔を見た俺はこくりと静かに頷いた。
デイジーも食い入るように聞いている。俺に対して憧れがあるみたいなのか、本当に真剣そのものだったよ。
長い話が終わると、二人とも信じられないといった顔をしていた。
「なるほど、前世で飼っていた犬の魂が同居していたと。その魂が転生の際に得た力で、魔王は呪いからすぐに目覚められたと」
「ああ、しかもその影響でこの通り女性の獣人になっちまったがな。最初はそりゃ混乱したものさ、元は男だったんだからな」
「それは、そうでしょうね。性別が突然変わるなんていうのは、そう起こることではないですから」
どことなく違和感のある言い方だな。
とはいえ、今の状況でそれを聞くのはやめておいた方がいいか。長くなりそうだしな。
「前世とか元はとか関係ありません。私にとってセイお姉様は憧れのお姉様です!」
少ししんみりしかけたところで、デイジーの力強い叫びが響き渡る。うん、少し落ち着こうか。
「よし、すべて話したらすっきりしたな。ちょうど前世の話もしたところだし、社畜をやる前の一人暮らしの時に作ってた料理でも作ってみるか」
「いけませんよ、倒れていたばかりなんですから」
「いや、今は作りたい気分なんだ。やらせてくれ」
俺が真剣な表情を向けると、聖王は仕方なく料理の許可を出していた。
長くもやもやとして横たわっていたものが晴れ渡ると、本当に気分爽快だな。
セイ太、本当にありがとうな。
俺はセイ太の力を受け継いだミーアドッグたちを撫でて回ると、料理を作るために厨房へと向かったのだった。
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