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第一章 大陸編
第262話 転生者、厄災に呆れる
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俺が懸念した通り、ミーアドッグに会ったピエラは暴走した。
以前から思っていたが、ピエラは本当に重度のケモナーである。もふもふが目の前にあると、我を忘れてじゃれ合おうとする。
おかげで、人間時代に婚約者であった俺からも恐れられている状況だ。
そして、困ったことにもふもふに囲まれた生活をしながらも、おさまるどころか重篤さを増していっている。頭が痛すぎる。
「本当にピエラさんって、獣が好きなのですね」
「はい、大好きですよ。魔王領の馬だって乗りこなせますからね」
「それは普通にすごいな。俺ですら懐かれるのには結構かかったんだがな」
「へっへ~ん」
俺が感心すれば、ピエラはものすごく自慢げに胸を張っている。俺ほどではないが、そういえばこいつもそこそこあったな。
って、俺はどこを見てるんだ。
妙なことを思ってしまい、俺は頭を激しく左右に振った。
「セイお姉様、どうなさったのですか?」
「いや、なんでもないよ。うん」
デイジーに不思議そうな顔をされて、俺ははぐらかしておいた。
だが、何かの視線に気が付いて顔を向ければ、そこにはピエラがものすごくにやついた顔で俺を見てるじゃないか。
「ふ~ん。セイってばやらしいんだ」
「なにを言ってるんだよ、おい」
からかうピエラに怒る俺。
俺たちの姿を見て、聖王は呆れたように笑い、デイジーはあたふたしていた。
「まあ、そういうわけでな。ミーアドッグは全部で二十匹くらいで、全部俺の眷属となったんだ。今神殿にいるのはそのうちの五匹だな」
「ということは、他にも十五匹はいるってわけね」
「まあ、そういうことだな。ここから東へ数日間移動した場所がミーアドッグの生息地だ」
ピエラと話をしていると、聖王が口を挟んでくる。
「私もこのミーアドッグのことは知りませんでしたね。聖国内のことはほとんど把握しているつもりでしたが、まだまだ知らないことがあるのですね」
「まあ、自分の国だからって完全に分かっている奴なんてのは少数だ。俺だって出身の南方王国も、魔王として治める魔王領のこともまだ把握しきってないからな」
自分に知らないことがあったということが相当ショックなようだった。
「おい、なんで俺様はまた避けられてるんだよ」
「なんだよ、デザストレ。真剣な話をしてるの邪魔するな」
突如としてデザストレの声が聞こえてくる。
顔を向けた先にはミーアドッグを捕まえようとしているデザストレの姿があった。
どうやらクルクーの時と同様に、デザストレはミーアドッグにも避けられているらしい。こいつってばとことん動物たちから避けられてるよな。
まぁそれしょうがないな。デザストレは元々厄災という魔族を滅ぼすための存在だ。魔物にとっても脅威なのは変わらないからな。
「諦めろ。魔王領の馬に気に入られているだけでもマシだと思え」
「バカ言え。お前らが触っている様子を見て、俺様が羨ましがらないとでも思ったか!」
なんか馬鹿正直に話してるぞ、こいつ。
意外と可愛いところがあるんだよな、デザストレ。
普段はずいぶんとつんけんしたイメージがあるんだが、他人とは張り合いたがる負けず嫌いだし、見た目の割に可愛いものが好きだったりするんだ。
こうやって魔物たちにも避けられて凹んでいる姿は、俺たちを十分和ませてくれている。
そんなデザストレにも、唯一懐いたのが魔王領の馬。気性は人間の国の馬に比べて格段に荒い。
気の荒い者同士だからこそ、どこか通じ合ったんだろうな。まったく、それだけでも十分だろうに、こいつときたら他の魔物たちとも交流を図ろうとしているんだよ。
だったら、常に解き放っているその魔力をどうにかしろというものだ。
魔族たちならそのうち慣れるが、魔物たちは最初に危険と感じると慣れることはほぼないからな。
「さてと、デザストレ、そろそろお暇するぞ。もう諦めろ」
ミーアドッグにピエラを会わせるという目的を達したので、俺たちは魔王城に戻ることにする。
ところが、デザストレはミーアドッグに触れようとまだ必死になっているようだ。
「まだだ、まだ諦めんぞ!」
往生際が悪いな。
仕方ないので、デザストレが満足するか諦めるかするまで待つことにした。
その間に、聖王やデイジーといろいろな取引の話をしていた。
悪戦苦闘することおおよそ前世の感覚で一時間。
「やったぞ!」
デザストレはようやくミーアドッグに触れていた。
がっちりと首をつかまれたミーアドッグは大暴れをしている。
バリッ!
「いてえ!」
当然ながら爪で引っかかれてしまっていた。
逃げ出したミーアドッグは、デイジーの後ろに隠れて怯えたようにデザストレを睨んでいた。
「触れたから満足だろう。帰るぞ」
「も、もうなのか? もう少し触れさせてくれ、頼む!」
デザストレが土下座をしているが、さすがにこれ以上は無理だ。とっとと帰ろうじゃないか。
「では、また次の取引の時にでも来るぜ」
「はい、いつでもお待ちしておりますとも」
俺は往生際の悪いデザストレを引きずって、無理やり帰路に就いたのだった。
まったく、困ったもんだな。
以前から思っていたが、ピエラは本当に重度のケモナーである。もふもふが目の前にあると、我を忘れてじゃれ合おうとする。
おかげで、人間時代に婚約者であった俺からも恐れられている状況だ。
そして、困ったことにもふもふに囲まれた生活をしながらも、おさまるどころか重篤さを増していっている。頭が痛すぎる。
「本当にピエラさんって、獣が好きなのですね」
「はい、大好きですよ。魔王領の馬だって乗りこなせますからね」
「それは普通にすごいな。俺ですら懐かれるのには結構かかったんだがな」
「へっへ~ん」
俺が感心すれば、ピエラはものすごく自慢げに胸を張っている。俺ほどではないが、そういえばこいつもそこそこあったな。
って、俺はどこを見てるんだ。
妙なことを思ってしまい、俺は頭を激しく左右に振った。
「セイお姉様、どうなさったのですか?」
「いや、なんでもないよ。うん」
デイジーに不思議そうな顔をされて、俺ははぐらかしておいた。
だが、何かの視線に気が付いて顔を向ければ、そこにはピエラがものすごくにやついた顔で俺を見てるじゃないか。
「ふ~ん。セイってばやらしいんだ」
「なにを言ってるんだよ、おい」
からかうピエラに怒る俺。
俺たちの姿を見て、聖王は呆れたように笑い、デイジーはあたふたしていた。
「まあ、そういうわけでな。ミーアドッグは全部で二十匹くらいで、全部俺の眷属となったんだ。今神殿にいるのはそのうちの五匹だな」
「ということは、他にも十五匹はいるってわけね」
「まあ、そういうことだな。ここから東へ数日間移動した場所がミーアドッグの生息地だ」
ピエラと話をしていると、聖王が口を挟んでくる。
「私もこのミーアドッグのことは知りませんでしたね。聖国内のことはほとんど把握しているつもりでしたが、まだまだ知らないことがあるのですね」
「まあ、自分の国だからって完全に分かっている奴なんてのは少数だ。俺だって出身の南方王国も、魔王として治める魔王領のこともまだ把握しきってないからな」
自分に知らないことがあったということが相当ショックなようだった。
「おい、なんで俺様はまた避けられてるんだよ」
「なんだよ、デザストレ。真剣な話をしてるの邪魔するな」
突如としてデザストレの声が聞こえてくる。
顔を向けた先にはミーアドッグを捕まえようとしているデザストレの姿があった。
どうやらクルクーの時と同様に、デザストレはミーアドッグにも避けられているらしい。こいつってばとことん動物たちから避けられてるよな。
まぁそれしょうがないな。デザストレは元々厄災という魔族を滅ぼすための存在だ。魔物にとっても脅威なのは変わらないからな。
「諦めろ。魔王領の馬に気に入られているだけでもマシだと思え」
「バカ言え。お前らが触っている様子を見て、俺様が羨ましがらないとでも思ったか!」
なんか馬鹿正直に話してるぞ、こいつ。
意外と可愛いところがあるんだよな、デザストレ。
普段はずいぶんとつんけんしたイメージがあるんだが、他人とは張り合いたがる負けず嫌いだし、見た目の割に可愛いものが好きだったりするんだ。
こうやって魔物たちにも避けられて凹んでいる姿は、俺たちを十分和ませてくれている。
そんなデザストレにも、唯一懐いたのが魔王領の馬。気性は人間の国の馬に比べて格段に荒い。
気の荒い者同士だからこそ、どこか通じ合ったんだろうな。まったく、それだけでも十分だろうに、こいつときたら他の魔物たちとも交流を図ろうとしているんだよ。
だったら、常に解き放っているその魔力をどうにかしろというものだ。
魔族たちならそのうち慣れるが、魔物たちは最初に危険と感じると慣れることはほぼないからな。
「さてと、デザストレ、そろそろお暇するぞ。もう諦めろ」
ミーアドッグにピエラを会わせるという目的を達したので、俺たちは魔王城に戻ることにする。
ところが、デザストレはミーアドッグに触れようとまだ必死になっているようだ。
「まだだ、まだ諦めんぞ!」
往生際が悪いな。
仕方ないので、デザストレが満足するか諦めるかするまで待つことにした。
その間に、聖王やデイジーといろいろな取引の話をしていた。
悪戦苦闘することおおよそ前世の感覚で一時間。
「やったぞ!」
デザストレはようやくミーアドッグに触れていた。
がっちりと首をつかまれたミーアドッグは大暴れをしている。
バリッ!
「いてえ!」
当然ながら爪で引っかかれてしまっていた。
逃げ出したミーアドッグは、デイジーの後ろに隠れて怯えたようにデザストレを睨んでいた。
「触れたから満足だろう。帰るぞ」
「も、もうなのか? もう少し触れさせてくれ、頼む!」
デザストレが土下座をしているが、さすがにこれ以上は無理だ。とっとと帰ろうじゃないか。
「では、また次の取引の時にでも来るぜ」
「はい、いつでもお待ちしておりますとも」
俺は往生際の悪いデザストレを引きずって、無理やり帰路に就いたのだった。
まったく、困ったもんだな。
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