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第一章 大陸編
第270話 転生者、お人好しを炸裂させる
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城に戻った俺たちは、ピエラも連れてヒョウムを送り込んだ獣人の集落を訪れる。
プライドが強い純魔族の中でも特にプライドが強い、それが純魔族の元長であるヒョウムだ。
「よう、すっかり参っているみたいだな」
「まがい物の魔王が何を言う」
口を開けばこの通りだ。ピエラの力で魔力を封印されているというのに、態度だけは変わらないんだよな。
「まあ、そういうなよ。魔族の中でも力の強い純魔族。その中でも最強といわれた男を見込んでの依頼があるんだ」
俺がこう言うと、ヒョウムの眉がぴくりと動く。これは釣れたかな?
「ふん、俺の力をようやく認めたか。それで、何を欲するというのだ」
俺が少し下手に出たら、見事に釣れやがった。お前、そんなお調子者でよく長をやってられたな。
「依頼はこれだ。このうろこの機能を再現してもらいたい。成功すれば、それこそ革命になる」
俺がヒョウムに差し出したのは、デザストレのうろこだ。
ところが、ヒョウムはこのうろこが何かすぐ分かったらしく、俺たちから飛び退いた。
「お前、これが何か分かって言っておるのか?」
「ああ、分かってるよ。そういうあんたは、もちろん分かっているんだよな?」
俺が聞き返すと、ヒョウムはぐぐっと黙り込んだ。
「当然だ。俺たち純魔族たちが総力を挙げて挑んでもかすり傷程度しか負わせられなかった相手のうろこだ。厄災のうろこと呼ばれるものだ」
さすがは純魔族の元長だな。よーく分かってるじゃないか。
「これは俺がデザストレ、厄災から直にもらったものになるんだよ。それで、こいつにはどんな効果があるかは分かってるんだよな」
「無論だ。強力な闇魔法とはいえ、俺が使ったあの魔法より少し高度なくらいだ」
だいぶおとなしく話をしてくれるな。屈辱的な毎日で少しは滅入っているのだろうかな。
「よし、あんたに任務を与える」
「純魔族の誇りが取り戻せるのなら、なんだってやってくれる。このままでは死んでも死にきれん」
ふっ、はっきりと言ってくれたな?
それじゃお望み通り任務を与えてやろうじゃないか。
「この厄災のうろことまではいわない。このうろこのように、道具を一時的に大量に保管できて、さらに持ち運びに困らないものを作ってくれ」
「この俺に魔道具師になれというのか?」
やはり、少しプライドが傷つくのを恐れたのだろうかな。表情がどことなく険しくなった気がするぜ。
だが、そういうところは別に嫌いじゃないぜ。
「まぁそういうことになるかな。このままじゃあんたは魔王に楯突いた裏切者という形で後世に伝えられることになる。だが、こんな形であれ魔王軍に貢献してその業績が伝えられるのなら、あんたはすごい魔族だという形で名を残せるんじゃないか?」
俺はヒョウムの考え方というものを試している。
ヒョウムの考え方がプライドが高いというのなら、自分のしたことに誇りを感じて拒否するところだろう。
だが、すでに軟化した態度を見せているので、この案を受け入れるものと確信している。
「ふん、敗者たる俺にはすでに拒否権はない。やってみせようではないか、一族の栄誉のためにもな」
うん、やっぱり意外とすんなり受け入れたよ。
「厄災は強力な闇属性の使い手。同じ闇属性の使い手である俺だからこそ、声を掛けたのだろう?」
「まあ、そうだな。さすがは元とはいえ純魔族の長だな。理解が早くて助かる」
「……ふん、野心を持っていたとて破れればただのいち魔族。敗者は勝者の言うことをただ聞き入れるのみというものだ」
ずいぶんと丸くなっちまったな。でも、その方が話を進めやすいから何も問題はないや。
俺の後ろではキリエもピエラも睨みをずっと利かせている。実の娘からこのような目を向けられるって、俺が父親だったら耐え切れないぜ。
西方王国からの帰り道でキリエと話をした際にはかなり警戒していたんだが、いざ話をしてみればこの通り。まったくもって拍子抜けだな。
「とはいえ、一度反逆を企てたことには違いない。妙な動きをしないように、ピエラにそのための魔法をかけてもらうし、監視もつけるからな」
「そのくらいなら受け入れよう。いや、拒否する権利などないか」
ヒョウムとの話はスムーズに終わった。
ひとまず、ヒョウムにも必要な材料の揃いやすい魔王城に来てもらう。
娘の職場に足を踏み入れるのだ。普通の父親ならさぞかし喜ぶことだろうな。
「まったく、魔王様は甘いのです。あのように話してはおりますが、父上はどのようなことを企んでいるのか分かりませんよ」
「だが、このうろこの能力を再現できる可能性が最も高い人物でもある。そのための魔王城への収監だ。危険人物ではあるが、あえて自分の懐に迎え入れる。実に諸刃の剣だが、これが現状最適解だと思うよ」
「はあ、セイってば昔っからお人好しだもんね。先代の魔王と戦いに向かう際も、命を狙ってきた魔族を返り討ちにして無力化するだけだったし、こちらとしては生きた心地がしなかったわよ」
「まぁ悪いな。やっぱり俺には簡単に命を奪うってのはできないみたいだからな」
呆れるピエラに、俺は笑いながら返しておいた。
こうして、魔王城に元純魔族の長であるヒョウムを連れてきた。
デザストレのうろこを参考にした、不思議な収納容器。はたしてこれが完成する日は来るのだろうか。
プライドが強い純魔族の中でも特にプライドが強い、それが純魔族の元長であるヒョウムだ。
「よう、すっかり参っているみたいだな」
「まがい物の魔王が何を言う」
口を開けばこの通りだ。ピエラの力で魔力を封印されているというのに、態度だけは変わらないんだよな。
「まあ、そういうなよ。魔族の中でも力の強い純魔族。その中でも最強といわれた男を見込んでの依頼があるんだ」
俺がこう言うと、ヒョウムの眉がぴくりと動く。これは釣れたかな?
「ふん、俺の力をようやく認めたか。それで、何を欲するというのだ」
俺が少し下手に出たら、見事に釣れやがった。お前、そんなお調子者でよく長をやってられたな。
「依頼はこれだ。このうろこの機能を再現してもらいたい。成功すれば、それこそ革命になる」
俺がヒョウムに差し出したのは、デザストレのうろこだ。
ところが、ヒョウムはこのうろこが何かすぐ分かったらしく、俺たちから飛び退いた。
「お前、これが何か分かって言っておるのか?」
「ああ、分かってるよ。そういうあんたは、もちろん分かっているんだよな?」
俺が聞き返すと、ヒョウムはぐぐっと黙り込んだ。
「当然だ。俺たち純魔族たちが総力を挙げて挑んでもかすり傷程度しか負わせられなかった相手のうろこだ。厄災のうろこと呼ばれるものだ」
さすがは純魔族の元長だな。よーく分かってるじゃないか。
「これは俺がデザストレ、厄災から直にもらったものになるんだよ。それで、こいつにはどんな効果があるかは分かってるんだよな」
「無論だ。強力な闇魔法とはいえ、俺が使ったあの魔法より少し高度なくらいだ」
だいぶおとなしく話をしてくれるな。屈辱的な毎日で少しは滅入っているのだろうかな。
「よし、あんたに任務を与える」
「純魔族の誇りが取り戻せるのなら、なんだってやってくれる。このままでは死んでも死にきれん」
ふっ、はっきりと言ってくれたな?
それじゃお望み通り任務を与えてやろうじゃないか。
「この厄災のうろことまではいわない。このうろこのように、道具を一時的に大量に保管できて、さらに持ち運びに困らないものを作ってくれ」
「この俺に魔道具師になれというのか?」
やはり、少しプライドが傷つくのを恐れたのだろうかな。表情がどことなく険しくなった気がするぜ。
だが、そういうところは別に嫌いじゃないぜ。
「まぁそういうことになるかな。このままじゃあんたは魔王に楯突いた裏切者という形で後世に伝えられることになる。だが、こんな形であれ魔王軍に貢献してその業績が伝えられるのなら、あんたはすごい魔族だという形で名を残せるんじゃないか?」
俺はヒョウムの考え方というものを試している。
ヒョウムの考え方がプライドが高いというのなら、自分のしたことに誇りを感じて拒否するところだろう。
だが、すでに軟化した態度を見せているので、この案を受け入れるものと確信している。
「ふん、敗者たる俺にはすでに拒否権はない。やってみせようではないか、一族の栄誉のためにもな」
うん、やっぱり意外とすんなり受け入れたよ。
「厄災は強力な闇属性の使い手。同じ闇属性の使い手である俺だからこそ、声を掛けたのだろう?」
「まあ、そうだな。さすがは元とはいえ純魔族の長だな。理解が早くて助かる」
「……ふん、野心を持っていたとて破れればただのいち魔族。敗者は勝者の言うことをただ聞き入れるのみというものだ」
ずいぶんと丸くなっちまったな。でも、その方が話を進めやすいから何も問題はないや。
俺の後ろではキリエもピエラも睨みをずっと利かせている。実の娘からこのような目を向けられるって、俺が父親だったら耐え切れないぜ。
西方王国からの帰り道でキリエと話をした際にはかなり警戒していたんだが、いざ話をしてみればこの通り。まったくもって拍子抜けだな。
「とはいえ、一度反逆を企てたことには違いない。妙な動きをしないように、ピエラにそのための魔法をかけてもらうし、監視もつけるからな」
「そのくらいなら受け入れよう。いや、拒否する権利などないか」
ヒョウムとの話はスムーズに終わった。
ひとまず、ヒョウムにも必要な材料の揃いやすい魔王城に来てもらう。
娘の職場に足を踏み入れるのだ。普通の父親ならさぞかし喜ぶことだろうな。
「まったく、魔王様は甘いのです。あのように話してはおりますが、父上はどのようなことを企んでいるのか分かりませんよ」
「だが、このうろこの能力を再現できる可能性が最も高い人物でもある。そのための魔王城への収監だ。危険人物ではあるが、あえて自分の懐に迎え入れる。実に諸刃の剣だが、これが現状最適解だと思うよ」
「はあ、セイってば昔っからお人好しだもんね。先代の魔王と戦いに向かう際も、命を狙ってきた魔族を返り討ちにして無力化するだけだったし、こちらとしては生きた心地がしなかったわよ」
「まぁ悪いな。やっぱり俺には簡単に命を奪うってのはできないみたいだからな」
呆れるピエラに、俺は笑いながら返しておいた。
こうして、魔王城に元純魔族の長であるヒョウムを連れてきた。
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