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第一章 大陸編
第272話 転生者、緩衝地帯で話をする
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魔王領と北方聖国との間にある、国境の緩衝地帯。
そこには、聖国の結界を挟んで聖国側と魔王領側とでそれぞれが治める街がある。
聖国の君主である聖王が展開する結界の前では、すべての魔族がその能力を大幅に下げてしまう。それゆえ、魔族たちは結界の南側でしか生活ができない状況になっていた。
まあ、魔族自体は聖国の地に踏み入ることはしたくないらしいので、これで問題はないみたいだがな。
バフォメットに確認してみた結果、たとえ結界がなくても、聖国の地には魔族が苦手とする魔力があふれている。そのために、踏み入れただけで消滅しかねない魔族もいるらしい。
魔族を滅する聖なる力がそれだけ満ちあふれてるってわけだな。ならば、魔族を守るためには現状維持が一番というわけだ。
緩衝地帯にやって来た俺とピエラは、魔王領側の責任者であるスコールとリールの二人と会う。
現状は問題がないということらしく、軽く雑談をしていた。
だが、その中ではどうして触れないといけないことがあったので、気は進まないながらも話をさせてもらった。
「そうですか、ヒョウム様はやはりそのようなことをなさっていたのですね」
「驚かないんだな」
「はい、以前から魔王様に対して不満を仰られておりましたからね。ですが、まさか負けておとなしく言うことを聞いているというのは驚きましたね」
スコールはヒョウムの企みについては気が付いていたようだ。だが、緩衝地帯の責任者を言い渡されてからというもの、言う機会を失っていたらしい。
いや、忙しいとかそんな理由で伝えないでいいようなことかとツッコミを入れたくなった。だが、決着のついた今となってはもうどうでもいいことか。
「ヒョウムはとりあえず自分の威厳が示せればいいらしい。だから、俺の今回の依頼をすんなりと受け入れたようだな」
「そうでしたか、なるほど」
「スコール、納得するのはいいけれど、魔王様にちゃんと謝罪しておきなさいよ。気付いていながら黙ってたんですから」
俺たちが話をしていると、リールがやって来て口を挟んできた。やっぱりそこははっきりさせておくべきだよな。
「あ、いや、リール。わ、私としては主であった方を売るような真似は、その、あの……」
「魔王様の方が立場は上です。しっかりと謝罪して反省して下さい」
「は、はい……」
リールにきつく言われて、スコールは凹んでいた。尻に敷かれてるな。
というわけで、スコールからはしっかりと謝罪を受けたので、この件はとりあえず終わりにした。俺との間ではな。
スコールには巻き込まれた純魔族たちにも謝罪をしておくように言い渡して、リールへと話を振る。
「そういえばクルクーの世話をしてたはずだよな。なんで、ここに来てるんだ?」
「そうでした。お連れの方、ピエラ様を止めて頂けませんかね」
「……あいつ、ケモナーの血が爆発したか」
思い出したように話すリール。俺はやっぱりかと、スコールに断って外へと飛び出していく。
クルクーの住む小屋までやって来ると、やっぱりピエラがクルクーをひたすらもふっていた。
「う~ん、この手触り、感触、たまらないわ~」
「おい、ピエラ」
「ひうっ!」
聞こえて来た俺の声に、ピエラは体を跳ねさせて反応している。
「せ、セイ……。早かったわね、もう話は終わったの?」
「ああ、終わったさ。リールからヘルプがあって駆けつけたら、お前がクルクーをもふりまくってたってわけだよ」
「あは、あはははは……」
この時ばかりは、普段とは逆の立場だな、ピエラ。
「とりあえず、クルクーを放してやってくれ。羽毛に卵を利用させてもらってるんだからな。もっと大事にしてやれよ」
「ごめんなさい……」
俺が耳としっぽをピンと立てて叱ると、ピエラはその場に正座をしてしゅんと縮こまっていた。
時折こういう可愛い姿を見せるもんだから、扱いには困るってもんだな。だが、元婚約者で今は部下だからな、ちゃんと叱る時は叱ってやらないとな。
「お前たちも悪かったな。ピエラはちゃんと見張っておくべきだったよ」
俺が撫でてやると、クルクーは俺に頭をこすりつけてきた。
うん、くすぐったいぞ。
ちなみにピエラは、俺がクルクーに戯れられる姿を指をくわえて羨ましそうに眺めていた。
お前、今年いくつだよ。
口に出すとビンタが飛んできそうなので、俺は心の中でツッコミを入れておいた。
再びスコールの屋敷に移動すると、改めて二人と話をする。
「なるほど、いよいよ魔王城と真っすぐここが街道で結ばれるのですね」
「ああ、最大の障害だった純魔族の集落が、ヒョウムの没落で賛成に回ったからな。今、魔王城の方から土木班が頑張ってくれてるところだよ」
「土木班ですか。所属していた頃が懐かしいですな」
「そういえば、スコールは土木班の出身だったな」
「はい、その通りですよ」
本当に懐かしそうに笑っている。
「あの面々ですと、もう四、五日もあるとここまで到達するんじゃないですかね」
「ああ、多分な。俺はこれからフラウゼル伯爵の方にも報告に行くところだ。スコールは受け入れ態勢を整えておいてくれ」
「承知致しました。リール、すぐに取り掛かろうか」
「承知致しました」
スコールが残り、リールは部屋を出ていく。
魔王城と緩衝地帯の間の街道が整備されれば、この大陸の交流はより活発になっていくだろうな。
まあ、まだ東方帝国が残っちゃいるが、いいことだ。
スコールとの話もそこそこに打ち切る。
ピエラを連れて、俺は北方聖国側の緩衝地帯に移動したのだった。
そこには、聖国の結界を挟んで聖国側と魔王領側とでそれぞれが治める街がある。
聖国の君主である聖王が展開する結界の前では、すべての魔族がその能力を大幅に下げてしまう。それゆえ、魔族たちは結界の南側でしか生活ができない状況になっていた。
まあ、魔族自体は聖国の地に踏み入ることはしたくないらしいので、これで問題はないみたいだがな。
バフォメットに確認してみた結果、たとえ結界がなくても、聖国の地には魔族が苦手とする魔力があふれている。そのために、踏み入れただけで消滅しかねない魔族もいるらしい。
魔族を滅する聖なる力がそれだけ満ちあふれてるってわけだな。ならば、魔族を守るためには現状維持が一番というわけだ。
緩衝地帯にやって来た俺とピエラは、魔王領側の責任者であるスコールとリールの二人と会う。
現状は問題がないということらしく、軽く雑談をしていた。
だが、その中ではどうして触れないといけないことがあったので、気は進まないながらも話をさせてもらった。
「そうですか、ヒョウム様はやはりそのようなことをなさっていたのですね」
「驚かないんだな」
「はい、以前から魔王様に対して不満を仰られておりましたからね。ですが、まさか負けておとなしく言うことを聞いているというのは驚きましたね」
スコールはヒョウムの企みについては気が付いていたようだ。だが、緩衝地帯の責任者を言い渡されてからというもの、言う機会を失っていたらしい。
いや、忙しいとかそんな理由で伝えないでいいようなことかとツッコミを入れたくなった。だが、決着のついた今となってはもうどうでもいいことか。
「ヒョウムはとりあえず自分の威厳が示せればいいらしい。だから、俺の今回の依頼をすんなりと受け入れたようだな」
「そうでしたか、なるほど」
「スコール、納得するのはいいけれど、魔王様にちゃんと謝罪しておきなさいよ。気付いていながら黙ってたんですから」
俺たちが話をしていると、リールがやって来て口を挟んできた。やっぱりそこははっきりさせておくべきだよな。
「あ、いや、リール。わ、私としては主であった方を売るような真似は、その、あの……」
「魔王様の方が立場は上です。しっかりと謝罪して反省して下さい」
「は、はい……」
リールにきつく言われて、スコールは凹んでいた。尻に敷かれてるな。
というわけで、スコールからはしっかりと謝罪を受けたので、この件はとりあえず終わりにした。俺との間ではな。
スコールには巻き込まれた純魔族たちにも謝罪をしておくように言い渡して、リールへと話を振る。
「そういえばクルクーの世話をしてたはずだよな。なんで、ここに来てるんだ?」
「そうでした。お連れの方、ピエラ様を止めて頂けませんかね」
「……あいつ、ケモナーの血が爆発したか」
思い出したように話すリール。俺はやっぱりかと、スコールに断って外へと飛び出していく。
クルクーの住む小屋までやって来ると、やっぱりピエラがクルクーをひたすらもふっていた。
「う~ん、この手触り、感触、たまらないわ~」
「おい、ピエラ」
「ひうっ!」
聞こえて来た俺の声に、ピエラは体を跳ねさせて反応している。
「せ、セイ……。早かったわね、もう話は終わったの?」
「ああ、終わったさ。リールからヘルプがあって駆けつけたら、お前がクルクーをもふりまくってたってわけだよ」
「あは、あはははは……」
この時ばかりは、普段とは逆の立場だな、ピエラ。
「とりあえず、クルクーを放してやってくれ。羽毛に卵を利用させてもらってるんだからな。もっと大事にしてやれよ」
「ごめんなさい……」
俺が耳としっぽをピンと立てて叱ると、ピエラはその場に正座をしてしゅんと縮こまっていた。
時折こういう可愛い姿を見せるもんだから、扱いには困るってもんだな。だが、元婚約者で今は部下だからな、ちゃんと叱る時は叱ってやらないとな。
「お前たちも悪かったな。ピエラはちゃんと見張っておくべきだったよ」
俺が撫でてやると、クルクーは俺に頭をこすりつけてきた。
うん、くすぐったいぞ。
ちなみにピエラは、俺がクルクーに戯れられる姿を指をくわえて羨ましそうに眺めていた。
お前、今年いくつだよ。
口に出すとビンタが飛んできそうなので、俺は心の中でツッコミを入れておいた。
再びスコールの屋敷に移動すると、改めて二人と話をする。
「なるほど、いよいよ魔王城と真っすぐここが街道で結ばれるのですね」
「ああ、最大の障害だった純魔族の集落が、ヒョウムの没落で賛成に回ったからな。今、魔王城の方から土木班が頑張ってくれてるところだよ」
「土木班ですか。所属していた頃が懐かしいですな」
「そういえば、スコールは土木班の出身だったな」
「はい、その通りですよ」
本当に懐かしそうに笑っている。
「あの面々ですと、もう四、五日もあるとここまで到達するんじゃないですかね」
「ああ、多分な。俺はこれからフラウゼル伯爵の方にも報告に行くところだ。スコールは受け入れ態勢を整えておいてくれ」
「承知致しました。リール、すぐに取り掛かろうか」
「承知致しました」
スコールが残り、リールは部屋を出ていく。
魔王城と緩衝地帯の間の街道が整備されれば、この大陸の交流はより活発になっていくだろうな。
まあ、まだ東方帝国が残っちゃいるが、いいことだ。
スコールとの話もそこそこに打ち切る。
ピエラを連れて、俺は北方聖国側の緩衝地帯に移動したのだった。
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