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第一章 大陸編
第309話 転生者、暇だから調査に出る
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街道がひとまず完成した。
次は宿場町の建設なので、土木部隊に対して俺が指示を出そうと思ったのだが、帝国内のことなら私に任せろとエイミーが出しゃばってきた。なので、俺は暇になってしまった。
皇帝も忙しそうにしているので、はっきり言って俺は完全に暇になってしまった。さて、何をしようかな。
いろいろ考え込んだ俺だったが、とあることを思いついたのでそれを実行に移すことにした。
そうやってやって来たのは、東方帝国に初めてやって来た時に出てきた湖だった。
ああ、ここに向かう前に、ちゃんと宮殿内の使用人たちに伝言はしてきたぞ。いきなりいなくなったら心配させるからな。
なぜここにやって来たかというと、隠し洞窟について調べるためだ。
俺にしか見えないというのがとても気にかかるからだ。
俺は早速自分を空気の球で包み込んで、湖へと飛び込む。
魔法を操作して湖底へと向かっていくと、早速穴をひとつ見つけた。
「うん、これはここに来た時の穴だな」
最初に見つけたのは、魔王領内の湿地帯とつながっている洞窟だった。
いや、ここを抜けるのって何日かかったっけかなぁと、今さらながらに思い返してしまう。
ひとまず、ここは調査済みということで、入口を塞いでしまわないように気を付けながら魔法を使って印をつける。
この湖はかなり広いので、もしかしたら他にもあるかもしれないよな。そう考えて、俺は最初の穴を起点に反時計回りに探ってみることにした。
南側をぐるっと回ってみたものの、特に変わった点は見受けられなかった。
しかし、この穴というのは不思議なもので、獣人の勘でも気が付けないという特徴がある。
獣人というのは感覚に優れているので、ちょっとした魔力の違いでも感じ取れる特徴があるのだ。
しかし、あの洞窟に関してはまったくその勘が働かない。
以前に試練を受けたあの洞窟だってそうだ。この目で見るまでまったく認識できなかったんだからな。
なので、ここでは視覚に頼らざるを得ないのだ。
南側を見終わって、どんどんと東側へと回っていく。
そろそろ最初の穴からちょうど百八十度回転した頃だろうか。俺はついに目的のものを発見した。
「あった、二つ目の洞窟だ」
最初の洞窟の位置からほぼ反対側に、目的のものを見つけたのだ。
当然ながら、俺は迷うことなく洞窟へと入っていく。この先がどこに通じているのか楽しみで仕方ないからな。
もしかしたら、今いる大陸の外に繋がっているかも知れない。
そう思える根拠が、魔王領の湿地帯に生息する魚の生態だ。
内陸の湿地帯であるなら、通常生息するのは淡水の魚たちのはず。だけど、あそこの魚は海水の魚も混ざり込んでいた。
そうなると、推測として海とつながっている可能性が浮上してくるというわけだ。
俺が立てた仮説を立証できるかもしれない。その可能性を秘めた洞窟が、今俺の目の前にある。
「よし、進むぞ」
デザストレのうろこにしまい込んだ空気草の数を確認した俺は、覚悟を決めて洞窟へと飛び込んだ。
洞窟の中を進んでいく俺だが、さすがに洞窟の中は真っ暗だ。
獣人の能力をもってしても、周囲の様子を知ることはできないようだ。
やむなく明かり取りの魔法を使う。
洞窟の中が一気に照らし出され、なんとも不思議な光景が一気に目の前に広がった。
「すげえ、光に照らされて、壁が色とりどりに光ってやがる……」
どうやらこの辺りの地中には宝石の類が埋まっているようで、俺の使った魔法で照らし出されて光っているようだ。
なんとも神秘的で美しいものだな。
だが、今はそれよりも先に進むことを優先させよう。
この洞窟がどこまでつながっているのか、それが今の最優先事項だ。
しばらく進んでいくと、さっきまで人一人ほどの大きさがあった洞窟が一気に広がる。
狭まるというのはよくある話だが、逆に広がるというのはなかなかない。海中ならなおさらというもの。まだ先が見えない場所で、波による浸食というのも考えにくいからな。
とはいえ、一度休憩を入れるには十分な広さだ。
水の流れに任せるように、俺は広い空間で漂っている。
しばらく休んでいると、いきなり目の前に光の球が現れる。これは以前にも経験したやつだ。
予測した通り、光が弾けて現れたのは命を司るレーヴェンだった。
「どうした、レーヴェン。こんなところにまでやって来て」
『私は問います。あなたはこのまま進むおつもりですか?』
俺の質問には答えず、逆に質問をぶつけてきた。一体どういうつもりだ?
だが、冷静に考えると神にも等しいような存在からこのように問いかけられるということは、ここから先はこの世界の根幹にかかわる何かがあるということではないのだろうか。
「引き返すという選択肢はないな。どのようなことが待っているかは分からないが、俺はこの先を知りたい」
『そうですか。後悔はありませんね?』
「そうだな。この世界が壊れるというのなら後悔はするかもしれない。そうでないなら、俺を止めることはできないぜ」
『……あなたの意志、確かに受け取りました。大丈夫ですよ、今までの世界が壊れることはありません。真理を求めし者よ、そのまま進むといいでしょう』
レーヴェンはそうとだけ言い残すと、俺の目の前から姿を消した。
一体何だったのだろうか。
気にはかかるものの、俺は休憩を終えて洞窟の中をさらに進んでいった。
次は宿場町の建設なので、土木部隊に対して俺が指示を出そうと思ったのだが、帝国内のことなら私に任せろとエイミーが出しゃばってきた。なので、俺は暇になってしまった。
皇帝も忙しそうにしているので、はっきり言って俺は完全に暇になってしまった。さて、何をしようかな。
いろいろ考え込んだ俺だったが、とあることを思いついたのでそれを実行に移すことにした。
そうやってやって来たのは、東方帝国に初めてやって来た時に出てきた湖だった。
ああ、ここに向かう前に、ちゃんと宮殿内の使用人たちに伝言はしてきたぞ。いきなりいなくなったら心配させるからな。
なぜここにやって来たかというと、隠し洞窟について調べるためだ。
俺にしか見えないというのがとても気にかかるからだ。
俺は早速自分を空気の球で包み込んで、湖へと飛び込む。
魔法を操作して湖底へと向かっていくと、早速穴をひとつ見つけた。
「うん、これはここに来た時の穴だな」
最初に見つけたのは、魔王領内の湿地帯とつながっている洞窟だった。
いや、ここを抜けるのって何日かかったっけかなぁと、今さらながらに思い返してしまう。
ひとまず、ここは調査済みということで、入口を塞いでしまわないように気を付けながら魔法を使って印をつける。
この湖はかなり広いので、もしかしたら他にもあるかもしれないよな。そう考えて、俺は最初の穴を起点に反時計回りに探ってみることにした。
南側をぐるっと回ってみたものの、特に変わった点は見受けられなかった。
しかし、この穴というのは不思議なもので、獣人の勘でも気が付けないという特徴がある。
獣人というのは感覚に優れているので、ちょっとした魔力の違いでも感じ取れる特徴があるのだ。
しかし、あの洞窟に関してはまったくその勘が働かない。
以前に試練を受けたあの洞窟だってそうだ。この目で見るまでまったく認識できなかったんだからな。
なので、ここでは視覚に頼らざるを得ないのだ。
南側を見終わって、どんどんと東側へと回っていく。
そろそろ最初の穴からちょうど百八十度回転した頃だろうか。俺はついに目的のものを発見した。
「あった、二つ目の洞窟だ」
最初の洞窟の位置からほぼ反対側に、目的のものを見つけたのだ。
当然ながら、俺は迷うことなく洞窟へと入っていく。この先がどこに通じているのか楽しみで仕方ないからな。
もしかしたら、今いる大陸の外に繋がっているかも知れない。
そう思える根拠が、魔王領の湿地帯に生息する魚の生態だ。
内陸の湿地帯であるなら、通常生息するのは淡水の魚たちのはず。だけど、あそこの魚は海水の魚も混ざり込んでいた。
そうなると、推測として海とつながっている可能性が浮上してくるというわけだ。
俺が立てた仮説を立証できるかもしれない。その可能性を秘めた洞窟が、今俺の目の前にある。
「よし、進むぞ」
デザストレのうろこにしまい込んだ空気草の数を確認した俺は、覚悟を決めて洞窟へと飛び込んだ。
洞窟の中を進んでいく俺だが、さすがに洞窟の中は真っ暗だ。
獣人の能力をもってしても、周囲の様子を知ることはできないようだ。
やむなく明かり取りの魔法を使う。
洞窟の中が一気に照らし出され、なんとも不思議な光景が一気に目の前に広がった。
「すげえ、光に照らされて、壁が色とりどりに光ってやがる……」
どうやらこの辺りの地中には宝石の類が埋まっているようで、俺の使った魔法で照らし出されて光っているようだ。
なんとも神秘的で美しいものだな。
だが、今はそれよりも先に進むことを優先させよう。
この洞窟がどこまでつながっているのか、それが今の最優先事項だ。
しばらく進んでいくと、さっきまで人一人ほどの大きさがあった洞窟が一気に広がる。
狭まるというのはよくある話だが、逆に広がるというのはなかなかない。海中ならなおさらというもの。まだ先が見えない場所で、波による浸食というのも考えにくいからな。
とはいえ、一度休憩を入れるには十分な広さだ。
水の流れに任せるように、俺は広い空間で漂っている。
しばらく休んでいると、いきなり目の前に光の球が現れる。これは以前にも経験したやつだ。
予測した通り、光が弾けて現れたのは命を司るレーヴェンだった。
「どうした、レーヴェン。こんなところにまでやって来て」
『私は問います。あなたはこのまま進むおつもりですか?』
俺の質問には答えず、逆に質問をぶつけてきた。一体どういうつもりだ?
だが、冷静に考えると神にも等しいような存在からこのように問いかけられるということは、ここから先はこの世界の根幹にかかわる何かがあるということではないのだろうか。
「引き返すという選択肢はないな。どのようなことが待っているかは分からないが、俺はこの先を知りたい」
『そうですか。後悔はありませんね?』
「そうだな。この世界が壊れるというのなら後悔はするかもしれない。そうでないなら、俺を止めることはできないぜ」
『……あなたの意志、確かに受け取りました。大丈夫ですよ、今までの世界が壊れることはありません。真理を求めし者よ、そのまま進むといいでしょう』
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