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第一章 大陸編
第311話 転生者、外の世界を知る
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山の外側には、思ったよりも陸地があった。
しかし、俺たちの国を取り囲む山々は想像以上の絶壁だったので、その威圧感が半端ない。
それこそ、いつ崩れてもおかしくないかというような形状だった。
山から海岸までの間は、俺が勝手に絶壁だと思い込んでいたから思ったよりと表現しただけで、数十分も歩けば十分双方を行き来できるくらいの距離しかなかった。
「この狭いスペースにも森があるんだな。それに、崖による段差もあるし、意外と変化に富んでいるな」
ぶっちゃけ、湿地帯以外の地形はすべて存在していそうだ。
ただ、建物の形跡はおろか、人や生物が生息していそうな気配は感じられない。なんというか、忘れ去られた土地っていう感じの寂しさが漂っている。
歩いても歩いても、本当に何も感じられない。
「くそう、これじゃまるで本当に箱庭みてぇじゃねえか。外の世界は滅んでしまっているのか?」
だが、俺は諦めることなく大陸の外周を歩いていく。
あてがあるわけではないが、とにかく何かしらの発見がないかと、ただやみくもに歩き続けた。
俺は歩き続けたが、植物が生い茂っているものの、動物に関してはまったく発見できなかった。
そういえば、水中洞窟から抜け出した時も魚の一匹すら見なかったし、今だって空に鳥が飛ぶ姿もまったく見かけない。
「おかしい……。植物以外の生物がまったくいない。虫すら見ねえってどういうことだよ」
歩きながら、薄気味悪く感じ始めていた。
俺が大陸の外周を南方向に歩き始めてから、数日が経過した時だった。
「あれは……」
何か見たことのあるものを発見したのだ。
俺の勘が正しければ、この辺りは南方王国のの東側になるはず。
だからだろう、見たことのあるそれがここに存在している理由にはなる。
「……間違いない、レーヴェンの樹だ」
南方王国で見た、命を司る存在レーヴェンと出会った時に見かけた木と同じもので間違いなかった。
まさか大陸の山の外側にもあるとは思わなかった。
だが、これがあるということは、ここが中とつながっている可能性がある。
俺は、もしやの可能性にかけて、木へと急いだ。
目の前に立つと、やっぱり不思議な木だった。
さっきまで少し息苦しかったのだが、それもかなり落ち着いた。やはり、この樹が命を生み出しているとみて間違いないだろう。
だが、外の世界には動物の気配がやっぱりない。ここまで四日間は間違いなく歩いている。
これだけ移動しても、鳥や小動物はおろか、虫すらも一切見なかったのはさすがに異常すぎた。
「この樹に賭けてみるか……」
さすがにこの異常事態には、俺の精神も少し参り始めていた。
俺は一抹の望みを胸に、目の前に見える不思議な木に触れる。
すると、どうしたことだろうか。
木が光り輝き、俺はあっという間に光に飲まれてしまう。
気が付くと、真っ白な空間の中に立たされていた。
「ははっ。やっぱりこの空間に飛ばされたか」
さすがに二度目ともなれば、俺はどこか慣れてしまっていた。
「よくここにたどり着きましたね、転生せし者よ」
「レーヴェン。やっぱりあんたの樹だったんだな、あれは」
「はい、その通りです」
俺が尋ねれば、レーヴェンはあっさりと肯定していた。
「あんたの言っていた覚悟という言葉の意味が、よく分かった気がするよ。植物こそ生えてはいるが、外の世界はまるで死の世界だな。動物が何もいやしない」
「そこに気が付くとはさすがでね」
レーヴェンは俺の言葉を受けて、俺のことを褒めてくる。
いや、さすがに数日間なにも見なかったら、どんなに鈍いやつだろうとうすうす感じ取るだろうよ。
「やっぱり、あの場所は『箱庭』だったんだな。外の世界の感じからすると、山を障壁として外の空気から守っているってところだ」
「……数日間の探索でそこまで分かるとは、やはりあなたは他の方とは違いますね。他の世界から渡ってきた魂というものが、ここまで特殊だとは思ってもみませんでした」
かなり驚いた様子を見せている。
異世界からの転生者だとは知っているようだが、ここまで驚くのはどうしてなのだろうか。
「実は、あの外側の世界というのは、空気がよどんでいて毒化しているのです。あなたはその空気の中を実に四日間も耐えているのです」
「ははっ、それは恐ろしい話だな」
笑っちゃいるけど、笑えない話だな。
レーヴェンに言わせれば、外の世界は大昔にあった大きな戦争によって空気が汚染されていて、猛毒と化しているらしい。
次々と生き物たちが死に絶えていく惨状に心を痛めたレーヴェンが、生き残っている者たちを集めて住まわせたのが、今のあの大陸だというのだ。
植物たちが無事なのは、レーヴェンが少しずつ改良していったおかげらしいのだが、動物たちはどうして外気に耐え切れなかったそうだ。
なるほど、中にいる連中が外にまったく興味を示さないのは、死なせないためか。いろいろと合点がいったというものだ。
「さすがにこれ以上外にいては、あなたもそのうち蝕まれてしまいます。ですが、このまま中に帰せば、蓄積した毒素がまき散らされかねません。しばらくここで毒抜きをさせて頂きますので、ご理解下さい」
「分かったよ。さすがにあいつらを死なせるわけにはいかないからな、頼む」
「はい。終わりましたら、南方王国のあの場所に転移させます。私の使徒を遣わせますので、その協力で帝国までお戻り下さい」
俺はこくりと頷いて了承する。
さすがに毒を吸い込んでいたと聞かされると、今さらながらにどっと疲れが来るな。
せっかくだから、しばらくこのまま休ませてもらうぜ。
俺は真っ白な不思議な空間の中で、大の字になって寝転がるのだった。
しかし、俺たちの国を取り囲む山々は想像以上の絶壁だったので、その威圧感が半端ない。
それこそ、いつ崩れてもおかしくないかというような形状だった。
山から海岸までの間は、俺が勝手に絶壁だと思い込んでいたから思ったよりと表現しただけで、数十分も歩けば十分双方を行き来できるくらいの距離しかなかった。
「この狭いスペースにも森があるんだな。それに、崖による段差もあるし、意外と変化に富んでいるな」
ぶっちゃけ、湿地帯以外の地形はすべて存在していそうだ。
ただ、建物の形跡はおろか、人や生物が生息していそうな気配は感じられない。なんというか、忘れ去られた土地っていう感じの寂しさが漂っている。
歩いても歩いても、本当に何も感じられない。
「くそう、これじゃまるで本当に箱庭みてぇじゃねえか。外の世界は滅んでしまっているのか?」
だが、俺は諦めることなく大陸の外周を歩いていく。
あてがあるわけではないが、とにかく何かしらの発見がないかと、ただやみくもに歩き続けた。
俺は歩き続けたが、植物が生い茂っているものの、動物に関してはまったく発見できなかった。
そういえば、水中洞窟から抜け出した時も魚の一匹すら見なかったし、今だって空に鳥が飛ぶ姿もまったく見かけない。
「おかしい……。植物以外の生物がまったくいない。虫すら見ねえってどういうことだよ」
歩きながら、薄気味悪く感じ始めていた。
俺が大陸の外周を南方向に歩き始めてから、数日が経過した時だった。
「あれは……」
何か見たことのあるものを発見したのだ。
俺の勘が正しければ、この辺りは南方王国のの東側になるはず。
だからだろう、見たことのあるそれがここに存在している理由にはなる。
「……間違いない、レーヴェンの樹だ」
南方王国で見た、命を司る存在レーヴェンと出会った時に見かけた木と同じもので間違いなかった。
まさか大陸の山の外側にもあるとは思わなかった。
だが、これがあるということは、ここが中とつながっている可能性がある。
俺は、もしやの可能性にかけて、木へと急いだ。
目の前に立つと、やっぱり不思議な木だった。
さっきまで少し息苦しかったのだが、それもかなり落ち着いた。やはり、この樹が命を生み出しているとみて間違いないだろう。
だが、外の世界には動物の気配がやっぱりない。ここまで四日間は間違いなく歩いている。
これだけ移動しても、鳥や小動物はおろか、虫すらも一切見なかったのはさすがに異常すぎた。
「この樹に賭けてみるか……」
さすがにこの異常事態には、俺の精神も少し参り始めていた。
俺は一抹の望みを胸に、目の前に見える不思議な木に触れる。
すると、どうしたことだろうか。
木が光り輝き、俺はあっという間に光に飲まれてしまう。
気が付くと、真っ白な空間の中に立たされていた。
「ははっ。やっぱりこの空間に飛ばされたか」
さすがに二度目ともなれば、俺はどこか慣れてしまっていた。
「よくここにたどり着きましたね、転生せし者よ」
「レーヴェン。やっぱりあんたの樹だったんだな、あれは」
「はい、その通りです」
俺が尋ねれば、レーヴェンはあっさりと肯定していた。
「あんたの言っていた覚悟という言葉の意味が、よく分かった気がするよ。植物こそ生えてはいるが、外の世界はまるで死の世界だな。動物が何もいやしない」
「そこに気が付くとはさすがでね」
レーヴェンは俺の言葉を受けて、俺のことを褒めてくる。
いや、さすがに数日間なにも見なかったら、どんなに鈍いやつだろうとうすうす感じ取るだろうよ。
「やっぱり、あの場所は『箱庭』だったんだな。外の世界の感じからすると、山を障壁として外の空気から守っているってところだ」
「……数日間の探索でそこまで分かるとは、やはりあなたは他の方とは違いますね。他の世界から渡ってきた魂というものが、ここまで特殊だとは思ってもみませんでした」
かなり驚いた様子を見せている。
異世界からの転生者だとは知っているようだが、ここまで驚くのはどうしてなのだろうか。
「実は、あの外側の世界というのは、空気がよどんでいて毒化しているのです。あなたはその空気の中を実に四日間も耐えているのです」
「ははっ、それは恐ろしい話だな」
笑っちゃいるけど、笑えない話だな。
レーヴェンに言わせれば、外の世界は大昔にあった大きな戦争によって空気が汚染されていて、猛毒と化しているらしい。
次々と生き物たちが死に絶えていく惨状に心を痛めたレーヴェンが、生き残っている者たちを集めて住まわせたのが、今のあの大陸だというのだ。
植物たちが無事なのは、レーヴェンが少しずつ改良していったおかげらしいのだが、動物たちはどうして外気に耐え切れなかったそうだ。
なるほど、中にいる連中が外にまったく興味を示さないのは、死なせないためか。いろいろと合点がいったというものだ。
「さすがにこれ以上外にいては、あなたもそのうち蝕まれてしまいます。ですが、このまま中に帰せば、蓄積した毒素がまき散らされかねません。しばらくここで毒抜きをさせて頂きますので、ご理解下さい」
「分かったよ。さすがにあいつらを死なせるわけにはいかないからな、頼む」
「はい。終わりましたら、南方王国のあの場所に転移させます。私の使徒を遣わせますので、その協力で帝国までお戻り下さい」
俺はこくりと頷いて了承する。
さすがに毒を吸い込んでいたと聞かされると、今さらながらにどっと疲れが来るな。
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