異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第343話 転生者、変なやつに遭遇する

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 一か月もしないうちに人が集まり、武闘大会が開かれることになった。
 北方聖国からやって来た神官たちが、致命的状況を回避するための結界を作り上げ、いよいよ準備万端といったところだ。
 俺は最初に挨拶をしに顔を出すと、そのままこっそりと抜け出す。
 ピエラとデイジー、それとセイ太のいつものメンバーだ。

「セイ、本当に大丈夫なのですか?」

「なあに、血の気の多い奴らが暴れられるって張り切ってるんだ。少なくても十数日間はごまかせるさ」

「だから、参加人数に制限を設けなかったのね」

「そういうこった」

 ピエラは俺が事前に伝えていた、制限なしという条件に納得がいったようだった。
 終わった後で騒げるように料理にお酒も用意させたから、まあずいぶんと目くらましにはなるだろう。

「神官たちも日頃の魔法鍛錬の結果を発揮できると張り切っています。本当にいい機会になりそうですね」

「で、その発案者はその騒ぎに乗じて脱走ってわけね」

「うぐっ!」

 ピエラのやつはまったく遠慮がなかった。
 その通りといえばその通りだが、こうでもしないとあとでいろいろ文句を言われるんだよな。
 ピエラからはあれこれと言われ続けたものの、セイ太に乗って外の世界を目指した。

 今回レーヴェンの樹で飛んだ先は、いつもの場所ではなかった。

「ここは、東の諸島部に向かった時に植えた樹か」

 そう、すぐ目の前には海が広がっている。

「いつもの場所じゃないって、何かあったのかしらね」

「分からん。だが、とりあえず植樹に向かうしかない。セイ太、西に向かってくれ」

「分かりました」

 セイ太に指示をして、北部をぐるっと回って西へと向かう。
 西に到着すると、今回も海を渡る前にレーヴェンの樹を植えておく。
 ケオス大陸に植えておけば、まるでワープポイントのような役目を果たしてくれるみたいだしな。

「今回は西に向かって、地図の東側にある大陸を目指す。ケオス大陸より小さいし、これなら時間もあまりかからずに済むだろう」

「地図の西側って、行き止まりよ?」

「世界ってのは、ぐるっと一周できるようになってるんだよ。平面か曲面かは知らないがな。前世と同じならば世界は球体になっているはずだから、西に向かえば東に出るし、北に向かえば裏の北側に出るはずだ。南に出たらまるでゲームの世界だよ」

「げえむ? なにそれ」

「ああ、分からなくていいよ。前世の話だからな」

 とりあえず話を打ち切って、俺は西に向かって海へと出て行く。
 ケオス大陸の中では、もう一発で木が成長しきるようになっていた。なので、出発の日に木を定着させて出て行くことができるようになっていた。
 デイジーの成長は著しいものだ。体はあまり変わらないんだけどな。
 セイ太で海を移動している間に、デイジーの体力は回復してしまう。本当にちょうどいい休養が取れるというものだぜ。
 海を行くこと四日間。ようやく目の前に陸地が見えてきた。
 地図を広げて照合すると、あれは東の大陸ではなく、その手前にある大きな島のようだった。

「一度あの島で休憩を取ろうか。いくらレーヴェンの使徒だからといっても、泳ぎっぱなしだと疲れるだろうしな」

「お気遣いなく。この程度で疲れる私ではないですよ」

「無茶はいけませんよ、セイ太様」

 セイ太は平気そうなことを言っていたものの、デイジーに咎められてしまい、仕方なく休憩を挟むことにした。

「では、やってみますね」

 上陸してしばらくすると、デイジーがいつものように木を成長させる。
 結果として、一段階目で既にいままの二段階目までを迎えてしまう程になっていた。

「相変わらずすげえな。一発でここまで成長するとはな……」

「この分なら、もう一回で定着しそうね」

「ああ、そのようだ……」

 ピエラの言葉に同意しようとした時だった。何か妙な気配を感じる。

「誰だ!」

 俺は虚空に空気弾を放つ。

「おっと、気付かれてしまったか」

 空気弾は弾かれてしまったが、弾かれた位置から変なやつが現れた。

「やっと、近付くことができたぜ。ようこそ、そしてさらばだ!」

 挨拶をするなり、変なやつが襲い掛かってきた。
 まずいな。今はデイジーが疲れてしまっているから、こういうやつに有効な魔法が使えない。

「まったく、誰に手をあげようとしているのですか!」

 セイ太が怒っている。
 犬の姿のままだったので、口から魔法を吐き出そうとしている。

「うおっ!」

 変なやつはセイ太から放たれた魔法に驚いているが、簡単に躱してしまっていた。

「でかい犬ころの割にやりやがるな。だが、この程度では俺には当てられないぜ」

 余裕の笑みを見せてセイ太を笑っている。
 次の瞬間、俺の渾身の右ストレートが怪しい奴の左頬に命中していた。

「おぶぅっ!」

 そのまま派手に吹き飛び、地面にめり込んでいる。

「何をするか、美しい女!」

 平然と起き上がってきた。本気でぶっ飛ばしたはずなんだが、全然ダメージが入っていないようだった。

「まったく、ようやくお近づきになれたというのに、とんだ挨拶だな」

「お前は自分がしたことを思い出せ」

 自分が先に襲い掛かってきながら、何を言ってやがるんだ。こういうのは反吐が出るってもんだ。
 レーヴェンの樹を植えに来た俺たちの前に、なにやら変なやつが現れた。
 魔物を除いては、外の世界で初めて見る生命体だ。
 一体この変態は何者なんだ。俺たちはますます警戒を強めていった。
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