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第二章 外側の世界
第356話 転生者、過去語りを聞く(1)
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マーシャルは静かに語り出した。
それは、今からはるか昔の一千年以上昔の話だった。
外の世界は青色と緑にあふれた、それは活気のある世界だった。
一見平和そうに見える世界ではあるが、人間と魔族は仲が悪く、互いの間で血なまぐさい戦いを繰り広げていた。
これは、セイたちが経験したケオス大陸の状況と変わらないものだった。
だが、その戦いは思わぬ形で終結を迎える。
「魔王様、大変でございます!」
「なにごとだ!」
ある時、中央の大陸に控えていたマーシャルは、部下からの報告を受ける。
「大陸の中央部から、奇妙な霧が発生して周辺の者たちが次々と苦しんで死んでいっているのです」
「なんだと?! 発生場所は!」
「中央の都市エリーテでございます」
「くそっ、わしらの支配地のど真ん中ではないか。何が原因だ!」
「分かりません。ですが、地面からどす黒いの霧が噴出したかと思えば、巻かれた同胞たちが次々と倒れていったのです。どうにか引き離したものも、すでに息絶えておりましたので、おそらくは……」
「くそっ!」
ある時、マーシャルが支配する中央の大陸のど真ん中から、毒素を含んだ緑色の霧が噴き出した。
霧に包まれたものは魔族、人間、魔物、動物、植物関係なくすべてが死に絶えていく。
さすがに由々しき事態と判断したマーシャルは、中央の大陸を捨て、前線となるこの東の大陸へと渡ってきた。
なぜ簡単に捨てられたかというと、もう手が付けられないくらいどす黒い霧が大陸を覆ってしまっていたのだ。
マーシャルはできる限りの魔族を連れて大陸を脱出し、東へとやって来た。
だが、そこも平和だったのはしばらくの間だった。
「魔王様、すべての大陸で猛毒の霧の発生が確認されました。このままでは、すべてが飲み込まれて、死の世界に変わるのを待つだけです!」
「なんだと?! 原因は分からないのか?」
「分かりません。発生個所の情報は得られました」
「申せ!」
「はっ! 地面に亀裂が生じ、そこからどす黒い霧が噴出して、吸った者が次々と倒れていったとのことでございます」
「どこからの報告だ」
「神聖国、セーリンでございます」
「あの国か。そうか、神の加護とやらがあるから、少し耐えられたのか」
マーシャルは報告を聞いてすぐにピンときたようだった。
「よし、今は緊急事態だ。このサージェントの地下に逃げ込む空間を構築する。お前たちは人間たちに働きかけて、無事なやつらを全員連れてこい」
「し、しかし……」
今まで敵対していたのだ。マーシャルの部下は人間たちを連れ込むことに躊躇している。
「よい、わしが自ら行く。サージェントの地下に避難スペースを作るのは、息子のネラールに任せるぞ」
「は、はっ!」
マーシャルは決意して、自らが各国に出向き、自分たちの作る避難場所に集まるように各国の人員を説得して回った。
さすがに最初は魔族のいうことなど、人間たちは相手にしなかった。
だが、毒霧に巻かれていずれ死んでしまうという状況と、魔王の必死に頭を下げる姿を見て、話に段々と応じるようになっていった。
魔王がサージェントへと戻って来た時に、地上のほとんどが毒素に覆われた状態になっていた。
だが、マーシャルの息子のネラールの頑張りによって、地下空間は完成していた。
連れてきた人間と家畜たちを連れて地下空間へと入っていくと、マーシャルは自らの魔力でもって、地下空間を地上と隔離したのだ。
地下空間で暮らすようになってからしばらくの間も、人間と魔族との隔たりは大きく、なじむまでには時間を要した。
時折、地上の様子を見に行く偵察隊を派遣したが、偵察隊は誰一人として戻ってくることはなかった。
全員が地上に出たところで倒れ、息絶えていたのだ。
マーシャルは嘆いた。
魔王だというのに、この状況にまったくもって無力だったのだから。
そんなある日のことだった。
地下空間に明るい光が降りてきた。
「な、なんじゃ、この光は」
「この光は、リヒテル様の光ですね」
「リヒテル? わしら魔族と敵対関係にある光の使徒か」
『その通りです、魔王よ』
リヒテルは、マーシャルに語りかけていた。
『よく、これだけの者を救ってくれました。その行いに感謝します』
「ふん、人間が全員死んでしまっては、遊び相手がいなくなるであろう。ただの気まぐれじゃ」
マーシャルはリヒテルに言い返している。
『いえ、あなたのおかげで地上の命は死に絶えずに済みました。まずは、そのお礼をさせて頂きます』
「お礼じゃと?」
リヒテルが光り、地下空間の空気が穏やかになったように感じた。
『地上と同じような感覚で住めるようにさせて頂きました。あと、外の毒素が侵入できないように保護をかけさせて頂きました』
「それはありがたい」
思わずマーシャルもお礼を言ってしまうくらいだった。そのくらいに、精神的に参っていたようだ。
『ですが、このままでは地上は毒素に満ちたままです。なんとしても、地上からこの世界を取り戻す方策を考えませんと……』
地下生活の環境は整備されつつあったが、マーシャルたちの最終的な目的は、地上を、元の生活を取り戻すこと。
リヒテルもそれを十分理解していたのだ。
『そこでお願いがあるのです。お力をお貸し願えませんでしょうか』
リヒテルはマーシャルたちに相談を持ち掛けてきた。
光の使徒から相談。まったく内容に想像がつかないだけに、マーシャルはつい身構えてしまったのだった。
それは、今からはるか昔の一千年以上昔の話だった。
外の世界は青色と緑にあふれた、それは活気のある世界だった。
一見平和そうに見える世界ではあるが、人間と魔族は仲が悪く、互いの間で血なまぐさい戦いを繰り広げていた。
これは、セイたちが経験したケオス大陸の状況と変わらないものだった。
だが、その戦いは思わぬ形で終結を迎える。
「魔王様、大変でございます!」
「なにごとだ!」
ある時、中央の大陸に控えていたマーシャルは、部下からの報告を受ける。
「大陸の中央部から、奇妙な霧が発生して周辺の者たちが次々と苦しんで死んでいっているのです」
「なんだと?! 発生場所は!」
「中央の都市エリーテでございます」
「くそっ、わしらの支配地のど真ん中ではないか。何が原因だ!」
「分かりません。ですが、地面からどす黒いの霧が噴出したかと思えば、巻かれた同胞たちが次々と倒れていったのです。どうにか引き離したものも、すでに息絶えておりましたので、おそらくは……」
「くそっ!」
ある時、マーシャルが支配する中央の大陸のど真ん中から、毒素を含んだ緑色の霧が噴き出した。
霧に包まれたものは魔族、人間、魔物、動物、植物関係なくすべてが死に絶えていく。
さすがに由々しき事態と判断したマーシャルは、中央の大陸を捨て、前線となるこの東の大陸へと渡ってきた。
なぜ簡単に捨てられたかというと、もう手が付けられないくらいどす黒い霧が大陸を覆ってしまっていたのだ。
マーシャルはできる限りの魔族を連れて大陸を脱出し、東へとやって来た。
だが、そこも平和だったのはしばらくの間だった。
「魔王様、すべての大陸で猛毒の霧の発生が確認されました。このままでは、すべてが飲み込まれて、死の世界に変わるのを待つだけです!」
「なんだと?! 原因は分からないのか?」
「分かりません。発生個所の情報は得られました」
「申せ!」
「はっ! 地面に亀裂が生じ、そこからどす黒い霧が噴出して、吸った者が次々と倒れていったとのことでございます」
「どこからの報告だ」
「神聖国、セーリンでございます」
「あの国か。そうか、神の加護とやらがあるから、少し耐えられたのか」
マーシャルは報告を聞いてすぐにピンときたようだった。
「よし、今は緊急事態だ。このサージェントの地下に逃げ込む空間を構築する。お前たちは人間たちに働きかけて、無事なやつらを全員連れてこい」
「し、しかし……」
今まで敵対していたのだ。マーシャルの部下は人間たちを連れ込むことに躊躇している。
「よい、わしが自ら行く。サージェントの地下に避難スペースを作るのは、息子のネラールに任せるぞ」
「は、はっ!」
マーシャルは決意して、自らが各国に出向き、自分たちの作る避難場所に集まるように各国の人員を説得して回った。
さすがに最初は魔族のいうことなど、人間たちは相手にしなかった。
だが、毒霧に巻かれていずれ死んでしまうという状況と、魔王の必死に頭を下げる姿を見て、話に段々と応じるようになっていった。
魔王がサージェントへと戻って来た時に、地上のほとんどが毒素に覆われた状態になっていた。
だが、マーシャルの息子のネラールの頑張りによって、地下空間は完成していた。
連れてきた人間と家畜たちを連れて地下空間へと入っていくと、マーシャルは自らの魔力でもって、地下空間を地上と隔離したのだ。
地下空間で暮らすようになってからしばらくの間も、人間と魔族との隔たりは大きく、なじむまでには時間を要した。
時折、地上の様子を見に行く偵察隊を派遣したが、偵察隊は誰一人として戻ってくることはなかった。
全員が地上に出たところで倒れ、息絶えていたのだ。
マーシャルは嘆いた。
魔王だというのに、この状況にまったくもって無力だったのだから。
そんなある日のことだった。
地下空間に明るい光が降りてきた。
「な、なんじゃ、この光は」
「この光は、リヒテル様の光ですね」
「リヒテル? わしら魔族と敵対関係にある光の使徒か」
『その通りです、魔王よ』
リヒテルは、マーシャルに語りかけていた。
『よく、これだけの者を救ってくれました。その行いに感謝します』
「ふん、人間が全員死んでしまっては、遊び相手がいなくなるであろう。ただの気まぐれじゃ」
マーシャルはリヒテルに言い返している。
『いえ、あなたのおかげで地上の命は死に絶えずに済みました。まずは、そのお礼をさせて頂きます』
「お礼じゃと?」
リヒテルが光り、地下空間の空気が穏やかになったように感じた。
『地上と同じような感覚で住めるようにさせて頂きました。あと、外の毒素が侵入できないように保護をかけさせて頂きました』
「それはありがたい」
思わずマーシャルもお礼を言ってしまうくらいだった。そのくらいに、精神的に参っていたようだ。
『ですが、このままでは地上は毒素に満ちたままです。なんとしても、地上からこの世界を取り戻す方策を考えませんと……』
地下生活の環境は整備されつつあったが、マーシャルたちの最終的な目的は、地上を、元の生活を取り戻すこと。
リヒテルもそれを十分理解していたのだ。
『そこでお願いがあるのです。お力をお貸し願えませんでしょうか』
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