異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第368話 転生者、懐かしの純魔族の集落へ

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 俺はキリエに、東の大陸で会ったマーシャルとこのケオス大陸に渡ってきたネラールという魔族について話をした。
 ケオス大陸以外で人や魔族が生きていることも意外だったが、自分の先祖もいるとは信じられない様子だった。
 ケオス大陸に生きる連中は、ことごとく外の世界には興味を持たないみたいだし、そこにはおそらくレーヴェンたちの意思が働いていたのかもしれないな。

「そのマーシャルとかいう魔王を名乗る人物が、私たち純魔族の祖先ですか」

「ああ、ネラールという名前に聞き覚えは?」

 キリエに確認を取るが、キリエにはどうも覚えがないような感じだ。

「純魔族の屋敷にいた時、私は書物にネラールの名前は見つけたわよ。純魔族の長の血筋であるみたいな記述はあったけれど、詳しいことは載っていなかったわね」

「そうですか。申し訳ありません、どうも私には覚えのない名前のようです」

 キリエはまったく思い当たらないようだった。
 でも、キリエの顔を見れば見るほど、確かにどことなくマーシャルの面影があるような感じを受けた。

「バフォメットとクローゼたちに城のことは任せて、俺たちは純魔族の集落に向かうか」

「魔王様?!」

 ここで話をしていてもらちが明かないと思ったので、俺はいっそのこと純魔族の集落で調べ物をすることに決める。そこで解決しなければ、魔王城の中もひっくり返してでも探すとしよう。
 なんで純魔族の集落の方が先かというと、ピエラの証言があるからだ。
 見たという確実な情報があるので、もっと調べれば更なる情報が見つかる可能性があり得るってわけだな。

「あっ、それでしたら、私も聖国に戻って調べてみます。もしかしたら、この大陸に移って来た頃の記録があるかもしれません。聖国はそういう記録はしっかり残す習慣がありますのでね」

 俺の話に便乗するように、デイジーも聖国に戻って調べ物をしてくると言い出した。
 確かに、聖国は記録の管理に関してはしっかりしてそうだし、俺はデイジーの申し出を受け入れることにした。

「セイ太、悪いがデイジーに付き合ってやってくれ」

「私がですか?」

「ああ、移動手段としてもそうだし、デイジーはまだまだ幼いから、何かあった時に身が守れるかどうかという不安があるからな」

「もう、お姉様ってば子ども扱いしないで下さいよ」

 俺がセイ太に話した内容に、デイジーは怒っているようだ。
 だが、聖王とも約束した通り、デイジーに何かあっては困るからな。
 それに、外の世界でレーヴェンの樹を定着させるための唯一の存在だ。何があっても守り抜かないといけないんだよ。
 現状では俺たちの誰が欠けても、外での世界の活動がままならなくなる。
 しっかりと説明すると、デイジーは理解してくれた。これでひと安心だろう。

 早速俺たちは活動を始める。
 俺とピエラ、それとキリエの三人はデザストレで純魔族の集落へ。デイジーはセイ太と一緒に聖国へと戻っていく。
 純魔族の集落は聖国方面の街道の最初の街だから、そこまでは一応同じ方向だ。ただ、移動手段が地上と空中なので、話ができるというわけではなかったがな。
 とりあえずデイジーには、聖王はもちろん、緩衝地帯にいるデイジーの父親やスコールとリールの夫婦たちにもよろしく伝えてもらう様に頼んでおいた。

「さて、ここに来るのも久しぶりだな」

「まったくね。外の世界に向かうようになってから、大陸の中はあまり移動してないものね」

 やって来た純魔族の集落は、不思議と懐かしく感じてしまうものだ。
 魔王になりたての頃には、純魔族たちになめられて戦いになったっけかな。その時にヒョウムを殴り飛ばしたのも今もいい思い出だ。
 今の純魔族の集落は、厄災であるデザストレと、ヒョウムの子どもの一人であるコモヤによって治められている。
 二人とも統治は苦手らしいので、獣人の集落で統治に携わったことのあるピエラが力を貸している状態だった。

「それじゃ、長の屋敷に行くとするか。ピエラ、ネラールの名前の載っていた記録のある場所は覚えているか?」

「ええ、ばっちり覚えているわよ。案内するわ」

 ピエラは胸を張って言い切っていた。これは期待していいようだな。
 久しぶりにやって来た純魔族の集落。俺たちが長の屋敷に向かって歩いていると、道行く魔族たちが挨拶をしてくれている。
 一般の魔族からすると、俺はちゃんと魔王だし、デザストレも統治者として認識されているらしい。
 俺たちは適当に挨拶をしながら、ようやく長の屋敷へとやって来た。
 コモヤが治めるようになってから、屋敷の雰囲気はだいぶ変わったようだな。ヒョウムの時は近づくだけでも圧倒させるような雰囲気が漂ってたのにな。すっかり柔らかくなったものだよ。

「コモヤ、帰ったぞ」

「お帰りなさい、デザストレ。って、魔王様、キリエ姉様。ピエラさんまで」

「よっ」

 俺たちの姿を見たコモヤがすごく驚いていた。

「どうなされたのですか。ここにこられるなんて何か問題であったのでしょうか」

「いや、ただの調べものだ。あとで食事の時にでも詳しい話をさせてもらうよ。今はやって来たから挨拶に来ただけだ」

「そうでございますか。あっ、デザストレは残って下さい。あなたにはやってもらう仕事がありますからね」

「うへっ。魔王に押し付けられた武闘大会の仕事が終わったとこなのに、まだ何かさせるのかよ」

「当たり前です。実質の統治者はあなたなんですからね!」

 コモヤに怒られているデザストレの姿に、俺たちはつい笑ってしまう。

「それじゃ、俺たちは調べ物に行くから、二人で仕事にあたってくれ」

「お、おい!」

 何か言いたげなデザストレを置いて、俺たちはピエラが記録を見たという場所へと向かうことになった。
 はたして、どんな記録が見つかるのだろうか。ひそかに楽しみになってきたぜ。
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