368 / 431
第二章 外側の世界
第368話 転生者、懐かしの純魔族の集落へ
しおりを挟む
俺はキリエに、東の大陸で会ったマーシャルとこのケオス大陸に渡ってきたネラールという魔族について話をした。
ケオス大陸以外で人や魔族が生きていることも意外だったが、自分の先祖もいるとは信じられない様子だった。
ケオス大陸に生きる連中は、ことごとく外の世界には興味を持たないみたいだし、そこにはおそらくレーヴェンたちの意思が働いていたのかもしれないな。
「そのマーシャルとかいう魔王を名乗る人物が、私たち純魔族の祖先ですか」
「ああ、ネラールという名前に聞き覚えは?」
キリエに確認を取るが、キリエにはどうも覚えがないような感じだ。
「純魔族の屋敷にいた時、私は書物にネラールの名前は見つけたわよ。純魔族の長の血筋であるみたいな記述はあったけれど、詳しいことは載っていなかったわね」
「そうですか。申し訳ありません、どうも私には覚えのない名前のようです」
キリエはまったく思い当たらないようだった。
でも、キリエの顔を見れば見るほど、確かにどことなくマーシャルの面影があるような感じを受けた。
「バフォメットとクローゼたちに城のことは任せて、俺たちは純魔族の集落に向かうか」
「魔王様?!」
ここで話をしていてもらちが明かないと思ったので、俺はいっそのこと純魔族の集落で調べ物をすることに決める。そこで解決しなければ、魔王城の中もひっくり返してでも探すとしよう。
なんで純魔族の集落の方が先かというと、ピエラの証言があるからだ。
見たという確実な情報があるので、もっと調べれば更なる情報が見つかる可能性があり得るってわけだな。
「あっ、それでしたら、私も聖国に戻って調べてみます。もしかしたら、この大陸に移って来た頃の記録があるかもしれません。聖国はそういう記録はしっかり残す習慣がありますのでね」
俺の話に便乗するように、デイジーも聖国に戻って調べ物をしてくると言い出した。
確かに、聖国は記録の管理に関してはしっかりしてそうだし、俺はデイジーの申し出を受け入れることにした。
「セイ太、悪いがデイジーに付き合ってやってくれ」
「私がですか?」
「ああ、移動手段としてもそうだし、デイジーはまだまだ幼いから、何かあった時に身が守れるかどうかという不安があるからな」
「もう、お姉様ってば子ども扱いしないで下さいよ」
俺がセイ太に話した内容に、デイジーは怒っているようだ。
だが、聖王とも約束した通り、デイジーに何かあっては困るからな。
それに、外の世界でレーヴェンの樹を定着させるための唯一の存在だ。何があっても守り抜かないといけないんだよ。
現状では俺たちの誰が欠けても、外での世界の活動がままならなくなる。
しっかりと説明すると、デイジーは理解してくれた。これでひと安心だろう。
早速俺たちは活動を始める。
俺とピエラ、それとキリエの三人はデザストレで純魔族の集落へ。デイジーはセイ太と一緒に聖国へと戻っていく。
純魔族の集落は聖国方面の街道の最初の街だから、そこまでは一応同じ方向だ。ただ、移動手段が地上と空中なので、話ができるというわけではなかったがな。
とりあえずデイジーには、聖王はもちろん、緩衝地帯にいるデイジーの父親やスコールとリールの夫婦たちにもよろしく伝えてもらう様に頼んでおいた。
「さて、ここに来るのも久しぶりだな」
「まったくね。外の世界に向かうようになってから、大陸の中はあまり移動してないものね」
やって来た純魔族の集落は、不思議と懐かしく感じてしまうものだ。
魔王になりたての頃には、純魔族たちになめられて戦いになったっけかな。その時にヒョウムを殴り飛ばしたのも今もいい思い出だ。
今の純魔族の集落は、厄災であるデザストレと、ヒョウムの子どもの一人であるコモヤによって治められている。
二人とも統治は苦手らしいので、獣人の集落で統治に携わったことのあるピエラが力を貸している状態だった。
「それじゃ、長の屋敷に行くとするか。ピエラ、ネラールの名前の載っていた記録のある場所は覚えているか?」
「ええ、ばっちり覚えているわよ。案内するわ」
ピエラは胸を張って言い切っていた。これは期待していいようだな。
久しぶりにやって来た純魔族の集落。俺たちが長の屋敷に向かって歩いていると、道行く魔族たちが挨拶をしてくれている。
一般の魔族からすると、俺はちゃんと魔王だし、デザストレも統治者として認識されているらしい。
俺たちは適当に挨拶をしながら、ようやく長の屋敷へとやって来た。
コモヤが治めるようになってから、屋敷の雰囲気はだいぶ変わったようだな。ヒョウムの時は近づくだけでも圧倒させるような雰囲気が漂ってたのにな。すっかり柔らかくなったものだよ。
「コモヤ、帰ったぞ」
「お帰りなさい、デザストレ。って、魔王様、キリエ姉様。ピエラさんまで」
「よっ」
俺たちの姿を見たコモヤがすごく驚いていた。
「どうなされたのですか。ここにこられるなんて何か問題であったのでしょうか」
「いや、ただの調べものだ。あとで食事の時にでも詳しい話をさせてもらうよ。今はやって来たから挨拶に来ただけだ」
「そうでございますか。あっ、デザストレは残って下さい。あなたにはやってもらう仕事がありますからね」
「うへっ。魔王に押し付けられた武闘大会の仕事が終わったとこなのに、まだ何かさせるのかよ」
「当たり前です。実質の統治者はあなたなんですからね!」
コモヤに怒られているデザストレの姿に、俺たちはつい笑ってしまう。
「それじゃ、俺たちは調べ物に行くから、二人で仕事にあたってくれ」
「お、おい!」
何か言いたげなデザストレを置いて、俺たちはピエラが記録を見たという場所へと向かうことになった。
はたして、どんな記録が見つかるのだろうか。ひそかに楽しみになってきたぜ。
ケオス大陸以外で人や魔族が生きていることも意外だったが、自分の先祖もいるとは信じられない様子だった。
ケオス大陸に生きる連中は、ことごとく外の世界には興味を持たないみたいだし、そこにはおそらくレーヴェンたちの意思が働いていたのかもしれないな。
「そのマーシャルとかいう魔王を名乗る人物が、私たち純魔族の祖先ですか」
「ああ、ネラールという名前に聞き覚えは?」
キリエに確認を取るが、キリエにはどうも覚えがないような感じだ。
「純魔族の屋敷にいた時、私は書物にネラールの名前は見つけたわよ。純魔族の長の血筋であるみたいな記述はあったけれど、詳しいことは載っていなかったわね」
「そうですか。申し訳ありません、どうも私には覚えのない名前のようです」
キリエはまったく思い当たらないようだった。
でも、キリエの顔を見れば見るほど、確かにどことなくマーシャルの面影があるような感じを受けた。
「バフォメットとクローゼたちに城のことは任せて、俺たちは純魔族の集落に向かうか」
「魔王様?!」
ここで話をしていてもらちが明かないと思ったので、俺はいっそのこと純魔族の集落で調べ物をすることに決める。そこで解決しなければ、魔王城の中もひっくり返してでも探すとしよう。
なんで純魔族の集落の方が先かというと、ピエラの証言があるからだ。
見たという確実な情報があるので、もっと調べれば更なる情報が見つかる可能性があり得るってわけだな。
「あっ、それでしたら、私も聖国に戻って調べてみます。もしかしたら、この大陸に移って来た頃の記録があるかもしれません。聖国はそういう記録はしっかり残す習慣がありますのでね」
俺の話に便乗するように、デイジーも聖国に戻って調べ物をしてくると言い出した。
確かに、聖国は記録の管理に関してはしっかりしてそうだし、俺はデイジーの申し出を受け入れることにした。
「セイ太、悪いがデイジーに付き合ってやってくれ」
「私がですか?」
「ああ、移動手段としてもそうだし、デイジーはまだまだ幼いから、何かあった時に身が守れるかどうかという不安があるからな」
「もう、お姉様ってば子ども扱いしないで下さいよ」
俺がセイ太に話した内容に、デイジーは怒っているようだ。
だが、聖王とも約束した通り、デイジーに何かあっては困るからな。
それに、外の世界でレーヴェンの樹を定着させるための唯一の存在だ。何があっても守り抜かないといけないんだよ。
現状では俺たちの誰が欠けても、外での世界の活動がままならなくなる。
しっかりと説明すると、デイジーは理解してくれた。これでひと安心だろう。
早速俺たちは活動を始める。
俺とピエラ、それとキリエの三人はデザストレで純魔族の集落へ。デイジーはセイ太と一緒に聖国へと戻っていく。
純魔族の集落は聖国方面の街道の最初の街だから、そこまでは一応同じ方向だ。ただ、移動手段が地上と空中なので、話ができるというわけではなかったがな。
とりあえずデイジーには、聖王はもちろん、緩衝地帯にいるデイジーの父親やスコールとリールの夫婦たちにもよろしく伝えてもらう様に頼んでおいた。
「さて、ここに来るのも久しぶりだな」
「まったくね。外の世界に向かうようになってから、大陸の中はあまり移動してないものね」
やって来た純魔族の集落は、不思議と懐かしく感じてしまうものだ。
魔王になりたての頃には、純魔族たちになめられて戦いになったっけかな。その時にヒョウムを殴り飛ばしたのも今もいい思い出だ。
今の純魔族の集落は、厄災であるデザストレと、ヒョウムの子どもの一人であるコモヤによって治められている。
二人とも統治は苦手らしいので、獣人の集落で統治に携わったことのあるピエラが力を貸している状態だった。
「それじゃ、長の屋敷に行くとするか。ピエラ、ネラールの名前の載っていた記録のある場所は覚えているか?」
「ええ、ばっちり覚えているわよ。案内するわ」
ピエラは胸を張って言い切っていた。これは期待していいようだな。
久しぶりにやって来た純魔族の集落。俺たちが長の屋敷に向かって歩いていると、道行く魔族たちが挨拶をしてくれている。
一般の魔族からすると、俺はちゃんと魔王だし、デザストレも統治者として認識されているらしい。
俺たちは適当に挨拶をしながら、ようやく長の屋敷へとやって来た。
コモヤが治めるようになってから、屋敷の雰囲気はだいぶ変わったようだな。ヒョウムの時は近づくだけでも圧倒させるような雰囲気が漂ってたのにな。すっかり柔らかくなったものだよ。
「コモヤ、帰ったぞ」
「お帰りなさい、デザストレ。って、魔王様、キリエ姉様。ピエラさんまで」
「よっ」
俺たちの姿を見たコモヤがすごく驚いていた。
「どうなされたのですか。ここにこられるなんて何か問題であったのでしょうか」
「いや、ただの調べものだ。あとで食事の時にでも詳しい話をさせてもらうよ。今はやって来たから挨拶に来ただけだ」
「そうでございますか。あっ、デザストレは残って下さい。あなたにはやってもらう仕事がありますからね」
「うへっ。魔王に押し付けられた武闘大会の仕事が終わったとこなのに、まだ何かさせるのかよ」
「当たり前です。実質の統治者はあなたなんですからね!」
コモヤに怒られているデザストレの姿に、俺たちはつい笑ってしまう。
「それじゃ、俺たちは調べ物に行くから、二人で仕事にあたってくれ」
「お、おい!」
何か言いたげなデザストレを置いて、俺たちはピエラが記録を見たという場所へと向かうことになった。
はたして、どんな記録が見つかるのだろうか。ひそかに楽しみになってきたぜ。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる