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第43話 騒がしいメイドに鉄槌を
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メイドはギャーギャーと私に対してわめいてくる。はっきりいって耳が痛い。どうしてここまでうるさくできるのか、まったく理解ができないというものだった。
「ほら、そのくらいにしておけ。クビと告げられたと言っていたが、俺たちはピゲストロ殿たちに町に人を送るように頼んだだけだぞ」
「クビってはっきり言われたわよ。間違いないわ」
クルスさんに言われてもまだうるさく喋るメイドだわ。あまりのうるささに耳を塞ぎたくなる。
そんな中、メイドが私のことを知っていると分かったのか、クルスさんは私の方をじっと見てくる。
「なあ、アイラ。こいつについて教えてくれ。役に立つのかどうかはいいとして、どういうことが得意なのかだけでもいいからさ」
ええ……、名前を呼ばないでくれないかな。
とはいえ、ここは答えないといけないかなと思う。
なんともいえない気持ちではあるけれど、ひとまず落ち着くために大きく呼吸をする。
よしっ。私は気合いを入れた。
「その方は、私の元同僚。仕事のほとんどを私に押し付けた酷い人ですよ」
「なっ!」
私が正直に言うと、メイドは引きつった表情をしている。
なによ、その顔。私は正直に言っているだけだ。悪いのは私ではなくあなただ。
むむっと膨れた顔をしながら私を見てくるので、さすがにここはひとつ言ってあげなきゃいけないかな。
両手を腰に当てて、顔を突き出してしっかりと目を向ける。
「この際だからはっきり言わせてもらうわ。あなたってば毎日毎日ちょこっとだけやって、あの広い屋敷のほぼすべてを私に押し付けてたじゃないの。私ほとんど魔法が使えなかったのに、お屋敷の中はもちろん外壁、お庭、ついでに食事まで作らされて……。もう毎日くたくたになるまで働いていたのよ。それを告げ口されて身代わりに追い出されたっていうのにあなたはっ!」
長いお説教が始まる。
いけないいけない。ふつふつと怒りの感情が湧いてきて、思わず手を出してしまいそうになったわ。うん、さすがにそれだけは我慢しなきゃね。
「それで、私が追い出された後にその苦労がよく分かったかしら。反省したのならここで新たにやり直しなさい。さぼったらどうなるかは、先日体験したでしょう?」
「む、むぅぅ……」
目の前のメイドはまだ私を睨んでいる。これだけ言われてもまだ反省がないのかしら。だとしたら、相当に図太いというものだ。
あまりの態度の変わらなさに、思わずため息が出てしまう。
「まぁいいわ。もう私には関係ないものね。クルスさん、その子を頼んでいいかしら」
「えっ、そいつは困るな……」
露骨に困っているクルスさんである。表情を見るとかなり怖がっているようなので、この短時間でいろいろあったというのはすぐに想像がついてしまう。
「ちょっと、そんなところで何をしていますの」
マリエッタさんの声が聞こえてくる。
「あら、アイラ。今日は予定の日じゃなかったんじゃないの?」
部屋の中を見たマリエッタさんが私に気が付く。
「ええ、ちょっといろいろあって、今日やって来たんです」
私がちらっと視線を動かすと、マリエッタさんもつられて視線を向ける。
眉がぴくりと動いたので、マリエッタさんはどうやら察したようである。
「なるほど、新しい住人ですか。女性なのでわたくしが預かりましょう」
「いいのですか? 彼女、結構面倒くさがりですよ?」
私が念のために確認するも、マリエッタさんの決意は変わらなかった。
貴族のお嬢様とはいっても自警団という組織の中で育ってきたせいか、多少のことでは動じないようだった。尊敬しちゃうな。
男爵様とクルスさんにも確認を取って、メイドの子はマリエッタさんに預けられることとなった。
「さて、早速今から働いてもらいましょうか。メイドの格好をしているということは、メイドの仕事を心得ていらっしゃるのでしょう?」
マリエッタさんの圧が強い。
この圧力に、さすがのメイドもたじたじになっていた。
「な、な、な、なによ、この人……」
メイドはマリエッタさんを前に、じりじりと下がっていく。本当に怖がっているのがよく分かる。
「では、お父様、この方はわたくしが預かって参りますわね」
「あ、ああ。あまりいじめてやるなよ」
「分かりましたわ。さあ、参りますわよ」
「た、助けてよ。ねえ、ねえってば!」
メイドはマリエッタさんに腕をつかまれて、ずるずると連れ去られてしまった。
私やクルスさんは、その様子をただ見守ることしかできなかった。さて、マリエッタさんの手によって、彼女はどういった風に生まれ変わるのかしらね。
やれやれといった感じで、私は大きなため息をついたのだった。
マリエッタさんのおかげで静かになったので、私は男爵様とようやく取引を終える。
「この茶葉で淹れたお茶は本当においしい。これからもよろしく頼むよ」
「はい、お任せ下さい」
私はしっかりと頭を下げて、その申し出を快く引き受けた。頑張って作った茶葉を褒められるというのは、とても気持ちいいというものだった。
用事を終えた私は、マリエッタさんに連れていたメイドのことを忘れてさっさと家に戻っていったのだった。
これで少しは凝りてくれるといいのだけれど、あんまり期待できないかなと思う私なのである。
「ほら、そのくらいにしておけ。クビと告げられたと言っていたが、俺たちはピゲストロ殿たちに町に人を送るように頼んだだけだぞ」
「クビってはっきり言われたわよ。間違いないわ」
クルスさんに言われてもまだうるさく喋るメイドだわ。あまりのうるささに耳を塞ぎたくなる。
そんな中、メイドが私のことを知っていると分かったのか、クルスさんは私の方をじっと見てくる。
「なあ、アイラ。こいつについて教えてくれ。役に立つのかどうかはいいとして、どういうことが得意なのかだけでもいいからさ」
ええ……、名前を呼ばないでくれないかな。
とはいえ、ここは答えないといけないかなと思う。
なんともいえない気持ちではあるけれど、ひとまず落ち着くために大きく呼吸をする。
よしっ。私は気合いを入れた。
「その方は、私の元同僚。仕事のほとんどを私に押し付けた酷い人ですよ」
「なっ!」
私が正直に言うと、メイドは引きつった表情をしている。
なによ、その顔。私は正直に言っているだけだ。悪いのは私ではなくあなただ。
むむっと膨れた顔をしながら私を見てくるので、さすがにここはひとつ言ってあげなきゃいけないかな。
両手を腰に当てて、顔を突き出してしっかりと目を向ける。
「この際だからはっきり言わせてもらうわ。あなたってば毎日毎日ちょこっとだけやって、あの広い屋敷のほぼすべてを私に押し付けてたじゃないの。私ほとんど魔法が使えなかったのに、お屋敷の中はもちろん外壁、お庭、ついでに食事まで作らされて……。もう毎日くたくたになるまで働いていたのよ。それを告げ口されて身代わりに追い出されたっていうのにあなたはっ!」
長いお説教が始まる。
いけないいけない。ふつふつと怒りの感情が湧いてきて、思わず手を出してしまいそうになったわ。うん、さすがにそれだけは我慢しなきゃね。
「それで、私が追い出された後にその苦労がよく分かったかしら。反省したのならここで新たにやり直しなさい。さぼったらどうなるかは、先日体験したでしょう?」
「む、むぅぅ……」
目の前のメイドはまだ私を睨んでいる。これだけ言われてもまだ反省がないのかしら。だとしたら、相当に図太いというものだ。
あまりの態度の変わらなさに、思わずため息が出てしまう。
「まぁいいわ。もう私には関係ないものね。クルスさん、その子を頼んでいいかしら」
「えっ、そいつは困るな……」
露骨に困っているクルスさんである。表情を見るとかなり怖がっているようなので、この短時間でいろいろあったというのはすぐに想像がついてしまう。
「ちょっと、そんなところで何をしていますの」
マリエッタさんの声が聞こえてくる。
「あら、アイラ。今日は予定の日じゃなかったんじゃないの?」
部屋の中を見たマリエッタさんが私に気が付く。
「ええ、ちょっといろいろあって、今日やって来たんです」
私がちらっと視線を動かすと、マリエッタさんもつられて視線を向ける。
眉がぴくりと動いたので、マリエッタさんはどうやら察したようである。
「なるほど、新しい住人ですか。女性なのでわたくしが預かりましょう」
「いいのですか? 彼女、結構面倒くさがりですよ?」
私が念のために確認するも、マリエッタさんの決意は変わらなかった。
貴族のお嬢様とはいっても自警団という組織の中で育ってきたせいか、多少のことでは動じないようだった。尊敬しちゃうな。
男爵様とクルスさんにも確認を取って、メイドの子はマリエッタさんに預けられることとなった。
「さて、早速今から働いてもらいましょうか。メイドの格好をしているということは、メイドの仕事を心得ていらっしゃるのでしょう?」
マリエッタさんの圧が強い。
この圧力に、さすがのメイドもたじたじになっていた。
「な、な、な、なによ、この人……」
メイドはマリエッタさんを前に、じりじりと下がっていく。本当に怖がっているのがよく分かる。
「では、お父様、この方はわたくしが預かって参りますわね」
「あ、ああ。あまりいじめてやるなよ」
「分かりましたわ。さあ、参りますわよ」
「た、助けてよ。ねえ、ねえってば!」
メイドはマリエッタさんに腕をつかまれて、ずるずると連れ去られてしまった。
私やクルスさんは、その様子をただ見守ることしかできなかった。さて、マリエッタさんの手によって、彼女はどういった風に生まれ変わるのかしらね。
やれやれといった感じで、私は大きなため息をついたのだった。
マリエッタさんのおかげで静かになったので、私は男爵様とようやく取引を終える。
「この茶葉で淹れたお茶は本当においしい。これからもよろしく頼むよ」
「はい、お任せ下さい」
私はしっかりと頭を下げて、その申し出を快く引き受けた。頑張って作った茶葉を褒められるというのは、とても気持ちいいというものだった。
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