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第71話 謎の霧
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翌朝、目を覚ました私は窓を開ける。
「うわぁ、真っ白。これって霧かしら」
驚いたことに、外の景色が真っ白な霧で覆われていた。
ただ、家の周りは前の持ち主の残した結界のおかげか視界がはっきりしている。
「うん~……? なんだろう、変な霧ね」
じっと目を細めてみるが、なんにしても妙な違和感しかなかった。
私は魔導書を呼び寄せる。ふわっと舞う様に魔導書が私のところにやって来る。ついでにティコも。
ところが、やってきたティコの様子を見て、私は異変を感じた。
「うー……」
「ティコ?」
やって来るなりずっと唸っているのだ。
ティコは小さいとはいえマンティコア。何かしら感じ取っているのだろう。
「えっと、魔力感知?」
魔導書が開いたページを見る。自分から魔力の波動を起こして、周囲の生物や魔法を感知する魔法だった。
とりあえずわざわざ見せてくれたので、私はその魔法を使ってみる。
水に落ちた水滴が広がっていくような感じで、自分から魔力が広がっていくのがよく分かる。
(うん、これは……?)
変な感じがする。
妙な魔力の持ち主が、数人ばかりこの家を取り囲んでいるようだった。
まったく、お兄ちゃんとの件を解決して戻ってきたばかりなのに、今度は一体何なのかしらね。
「ティコ、ひとまずこのまま様子を見ましょう。この家は簡単には見つからないわ。この家の周りだけ霧がかかっていないのは、私たちにしか見えないものかもしれないし」
「ぐるるっ」
険しい表情のままではあるものの、ティコは私の言葉にこくりと頷いてくれた。
ひとまず、自分たちに害がない間は気にしないで普段通りに生活を送ることにする。
(本当にどこの誰だか知らないけれど、いい迷惑だわね。これじゃ近くの町に納品にも行けないじゃないのよ)
心の中でそう思いながら、とりあえず家から一歩も出ないように心掛けた。
昨日帰ってくる前に集めておいて正解だったわね。
その日は結局霧が晴れることはなく、翌日に目が覚めてもやっぱり変わらない光景が広がっていた。ただ、昨日と比べてなんだか色が変わっているようだった。
「白から紫に変わっている……。もう、一体誰なのかしらね。魔導書、これを鑑定しても大丈夫かしら」
私が確認を取ると、くるりと回って表紙を私に向けたまま前に傾いた。問題ないみたい。
ならばと、私は霧に向かって鑑定魔法をかける。
「なに、この結果……」
目の前に鑑定の結果が浮かんでくる。
『捕縛の霧
特定の魔力を選んで捕まえる特殊な霧
色によって捕縛対象が変わる
紫は魔族を対象としている』
「魔族を対象……。つまり、この魔力の霧は私がターゲットというわけか。ティコは……」
「にゃう」
「そっか、魔物も魔族扱いになるのね。まったく困ったわね。これじゃ外に出られないわ……」
不安になって、私はティコを抱きかかえる。
外に出られないと悟った私は、しばらく家の中で適当に過ごす。ポーションを作ったり茶葉を作ったり、とにかく時間を潰して過ごす。
そうやっていると、ふと魔力の変化を感じ取る。
「あら、何が起きているのかしらね」
「にゃうにゃう」
「ティコ?」
立ち上がると、ティコが騒いでいる。これは、どことなく嬉しそうな反応なので私の知り合いが来たということだろう。
様子を見ていると、家の扉が叩かれた。
「あれ、クルスさん?」
「よっ、帰っていたか」
玄関を開けて出てみると、そこにはクルスさんが立っていた。
「外に変なのがいたからちょっと気絶させてきたんだが、なんだこの霧は」
「魔族を捕縛するために霧みたい。つまり、私を狙った行動だと思われるわ」
「なるほどな」
クルスさんは何かを察したようだった。
「それよりも、どうしてここに来たの?」
「なにって、一昨日にティコの姿が見えたのに昨日来なかったから、俺が代表して様子を見に来たんだよ。俺ならこの家に入れるからな」
「ああ、そういうことですか」
どうやら、戻ってきた合図がありながらも姿を見せなかったことを不審に思い、私の様子を確認しに来たとのことのようだ。
「この不審者のおかげで、来れなかった理由がはっきりしてよかったよ。にしても、酷い霧だな」
「ええ、おかげで私もティコも外に出られないわ」
「そっか、近くまでマリエッタも来てるから、ひとまず全部倒して町に連行するとしよう。場所は分かるか?」
「それなら感知魔法を使ったので把握済み。全部で八人いるわ」
「町から近い場所の三人は倒しているから、あとは五人か。よし、おおよその場所を教えてくれ」
クルスさんが真剣に尋ねてくるので、私はテーブルの上に適当なものを使って大体の位置を示す。
「なるほどな。これが町だとするなら、こいつとこいつとこいつは既にいない。ちょっと待ってろ、すぐに片付けてくるから」
「え、ええ……。お願いします」
私が困惑する中、クルスさんはとっとと家から飛び出していった。
私は心配になってティコをぎゅっと抱き締めてしまう。
「もう三人は捕まえたっていうから、大丈夫よね。きっと、大丈夫よね」
「にゃうん」
私が不安そうに言うと、ティコは力強く鳴いていた。まるで信じなさいといわんばかりの声だった。
それからしばらくすると、家を囲んでいた霧がさっと晴れていったのだった。
「うわぁ、真っ白。これって霧かしら」
驚いたことに、外の景色が真っ白な霧で覆われていた。
ただ、家の周りは前の持ち主の残した結界のおかげか視界がはっきりしている。
「うん~……? なんだろう、変な霧ね」
じっと目を細めてみるが、なんにしても妙な違和感しかなかった。
私は魔導書を呼び寄せる。ふわっと舞う様に魔導書が私のところにやって来る。ついでにティコも。
ところが、やってきたティコの様子を見て、私は異変を感じた。
「うー……」
「ティコ?」
やって来るなりずっと唸っているのだ。
ティコは小さいとはいえマンティコア。何かしら感じ取っているのだろう。
「えっと、魔力感知?」
魔導書が開いたページを見る。自分から魔力の波動を起こして、周囲の生物や魔法を感知する魔法だった。
とりあえずわざわざ見せてくれたので、私はその魔法を使ってみる。
水に落ちた水滴が広がっていくような感じで、自分から魔力が広がっていくのがよく分かる。
(うん、これは……?)
変な感じがする。
妙な魔力の持ち主が、数人ばかりこの家を取り囲んでいるようだった。
まったく、お兄ちゃんとの件を解決して戻ってきたばかりなのに、今度は一体何なのかしらね。
「ティコ、ひとまずこのまま様子を見ましょう。この家は簡単には見つからないわ。この家の周りだけ霧がかかっていないのは、私たちにしか見えないものかもしれないし」
「ぐるるっ」
険しい表情のままではあるものの、ティコは私の言葉にこくりと頷いてくれた。
ひとまず、自分たちに害がない間は気にしないで普段通りに生活を送ることにする。
(本当にどこの誰だか知らないけれど、いい迷惑だわね。これじゃ近くの町に納品にも行けないじゃないのよ)
心の中でそう思いながら、とりあえず家から一歩も出ないように心掛けた。
昨日帰ってくる前に集めておいて正解だったわね。
その日は結局霧が晴れることはなく、翌日に目が覚めてもやっぱり変わらない光景が広がっていた。ただ、昨日と比べてなんだか色が変わっているようだった。
「白から紫に変わっている……。もう、一体誰なのかしらね。魔導書、これを鑑定しても大丈夫かしら」
私が確認を取ると、くるりと回って表紙を私に向けたまま前に傾いた。問題ないみたい。
ならばと、私は霧に向かって鑑定魔法をかける。
「なに、この結果……」
目の前に鑑定の結果が浮かんでくる。
『捕縛の霧
特定の魔力を選んで捕まえる特殊な霧
色によって捕縛対象が変わる
紫は魔族を対象としている』
「魔族を対象……。つまり、この魔力の霧は私がターゲットというわけか。ティコは……」
「にゃう」
「そっか、魔物も魔族扱いになるのね。まったく困ったわね。これじゃ外に出られないわ……」
不安になって、私はティコを抱きかかえる。
外に出られないと悟った私は、しばらく家の中で適当に過ごす。ポーションを作ったり茶葉を作ったり、とにかく時間を潰して過ごす。
そうやっていると、ふと魔力の変化を感じ取る。
「あら、何が起きているのかしらね」
「にゃうにゃう」
「ティコ?」
立ち上がると、ティコが騒いでいる。これは、どことなく嬉しそうな反応なので私の知り合いが来たということだろう。
様子を見ていると、家の扉が叩かれた。
「あれ、クルスさん?」
「よっ、帰っていたか」
玄関を開けて出てみると、そこにはクルスさんが立っていた。
「外に変なのがいたからちょっと気絶させてきたんだが、なんだこの霧は」
「魔族を捕縛するために霧みたい。つまり、私を狙った行動だと思われるわ」
「なるほどな」
クルスさんは何かを察したようだった。
「それよりも、どうしてここに来たの?」
「なにって、一昨日にティコの姿が見えたのに昨日来なかったから、俺が代表して様子を見に来たんだよ。俺ならこの家に入れるからな」
「ああ、そういうことですか」
どうやら、戻ってきた合図がありながらも姿を見せなかったことを不審に思い、私の様子を確認しに来たとのことのようだ。
「この不審者のおかげで、来れなかった理由がはっきりしてよかったよ。にしても、酷い霧だな」
「ええ、おかげで私もティコも外に出られないわ」
「そっか、近くまでマリエッタも来てるから、ひとまず全部倒して町に連行するとしよう。場所は分かるか?」
「それなら感知魔法を使ったので把握済み。全部で八人いるわ」
「町から近い場所の三人は倒しているから、あとは五人か。よし、おおよその場所を教えてくれ」
クルスさんが真剣に尋ねてくるので、私はテーブルの上に適当なものを使って大体の位置を示す。
「なるほどな。これが町だとするなら、こいつとこいつとこいつは既にいない。ちょっと待ってろ、すぐに片付けてくるから」
「え、ええ……。お願いします」
私が困惑する中、クルスさんはとっとと家から飛び出していった。
私は心配になってティコをぎゅっと抱き締めてしまう。
「もう三人は捕まえたっていうから、大丈夫よね。きっと、大丈夫よね」
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それからしばらくすると、家を囲んでいた霧がさっと晴れていったのだった。
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