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新章 青色の智姫
第27話 戴冠式の翌日
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戴冠式の翌日も、当日に捌き切れなかった国内外の貴族からの挨拶が絶えないとあって、シルヴァノとペシエラは忙しそうにしていた。
そこにあの男もやって来ていた。
「あら、ニーズヘッグではありませんの。あなたも挨拶に来たのかしら?」
「久しぶりだな、ペシエラ……王妃殿下」
「いいですわよ、今は呼び捨てでも。部屋の中に入れるのは限られていますもの」
コーラル領内のカイス付近で暴れまわるはずだった厄災の暗竜ことニーズヘッグである。滅びをもたらすと恐れられたドラゴンだが、その正体は幻獣の一体。今は神獣使いベルの子孫であるアイリスの夫となり、コーラル伯爵を継ぐ予定になっている。
「アイリスは来られておりませんのね」
「ああ、今は身重だからな」
「あら、もう四人目ですの?」
「……ノーコメントだ」
驚いて質問をするペシエラに、ニーズヘッグはあからさまに不機嫌な顔をしていた。ロゼリアとチェリシアの協力があったとはいえ、まだ幼いペシエラに神聖魔法で焼かれたトラウマがあるので、正直ニーズヘッグはペシエラが苦手なのである。
「それはそれとして、お前が王妃とは正直驚いたな」
「そうですわね。ロゼリアは譲ってくれましたし、お姉様は最初から興味ありませんでしたもの。となれば、逆行前に一度経験のあるわたくしがやらざると得ないというわけですわ」
「なるほどなぁ……」
得意げな表情をするペシエラに、ニーズヘッグは苦笑いをしていた。
「正直、ペシエラの相手は大変かもしれないが、まあ頑張ってくれ」
「ああ、そのための努力はしてきたつもりだからね。新しいアイヴォリーの国王として成し遂げてみせるよ」
シルヴァノは笑顔でニーズヘッグに返していた。
「そうか。幻獣の一体としてこの国の行く末を見守らせてもらうぞ」
ニーズヘッグはそういって、挨拶を終えて部屋を出ていった。
その間のシアンたちは、シルヴァノとペシエラの子どもの相手をしていた。
ちょうどシアンとモーフの間に挟まるとあって、年の近い三人はとても仲がよさそうにしている。
(ロゼ……お母様の子どもの頃より元気ですね)
アイヴォリーの王子ライトと王女ダイアの相手をしていたシアンは、中身の年齢がずば抜けて離れていることもあって、その相手に苦戦をしているようである。
なにぶん、シアンの実年齢を考えれば孫みたいなものである。見た目の年齢が近いとはいえ、子ども同士という感覚にはまったくならなかった。
「ふふ、なかなか元気がいいですね」
「ああ、シルヴァノというよりは、ペシエラの方の性格を引き継いでいるかな」
ロゼリアとペイルは相手をしながらそのように思っているようだ。ペシエラが居たら間違いなくツッコミが飛んできただろう。だが、そのペシエラは現在貴族たちの挨拶を受けている真っ最中である。
「子どもたちのこの様子なら、十三歳でアイヴォリーの学園に通わせても問題なさそうですね」
「俺のように留学をさせるつもりなのか?」
ロゼリアの言葉に、ペイルが反応する。その質問に対して、ロゼリアは無言で頷いていた。
モスグリネ王国にも、一応貴族が通う学園はある。だが、ペイルの時にはアイヴォリー王国との間の取り決めで、学園に通う六年間の前半三年間をアイヴォリー王国内の学園に通わせる事になっていたのだ。
ロゼリアの提案は、自分たちの子どもにもそれをしようというわけである。
「悪くはないとは思うが、父上たちにも意見を求めないと、俺たちだけでは決められないな」
ペイルがこう言うので、この話は一度保留となったのだった。
お昼頃にはようやく挨拶が一段落をして、シルヴァノたちと一緒に食事をする事となったペイルたち。
その席で、ロゼリアは先程の提案を言い出していた。
「それでしたら、わたくしたちも賛成ですわよ。せっかくですから、後半の三年間はそちらに留学させたいですわね」
すると、ペシエラからは思わぬ反応が返ってきた。
「そうだね。お互いに友好国であるということを印象付けるのであるならば、この留学生制度をいっその事、定着させてしまってもいいかもしれないね」
シルヴァノの方も乗り気である。これは実に意外な話だった。
「ということは、王族だけじゃなくて、一般貴族にも広げるってことでいいわけかな」
「そういうことだね。他国の教育を受けることでお互いいい刺激にはなるだろうしね」
「まぁそれは納得するな。唯一の経験者である俺が言うんだからな」
ロゼリアの提案に他のみんなも乗り気らしく、あれよあれという間に留学の話がまとまっていく。どうやらシアンは将来的にアイヴォリー王国の学園で三年間は学ぶことになりそうだった。
極めつけは、シアン以外の子どもたちも楽しみな反応をしている事だ。こうあっては、シアン一人が異を唱えたところでどうにもならないだろう。
モスグリネ王国の方はまだ国王の承認が得られていないが、ペイルの留学という実績がある以上は受け入れられるのは間違いない。
どうやらシアンは、アイヴォリー王国の学園に二度目の入学をする事が確実なりそうだった。
そこにあの男もやって来ていた。
「あら、ニーズヘッグではありませんの。あなたも挨拶に来たのかしら?」
「久しぶりだな、ペシエラ……王妃殿下」
「いいですわよ、今は呼び捨てでも。部屋の中に入れるのは限られていますもの」
コーラル領内のカイス付近で暴れまわるはずだった厄災の暗竜ことニーズヘッグである。滅びをもたらすと恐れられたドラゴンだが、その正体は幻獣の一体。今は神獣使いベルの子孫であるアイリスの夫となり、コーラル伯爵を継ぐ予定になっている。
「アイリスは来られておりませんのね」
「ああ、今は身重だからな」
「あら、もう四人目ですの?」
「……ノーコメントだ」
驚いて質問をするペシエラに、ニーズヘッグはあからさまに不機嫌な顔をしていた。ロゼリアとチェリシアの協力があったとはいえ、まだ幼いペシエラに神聖魔法で焼かれたトラウマがあるので、正直ニーズヘッグはペシエラが苦手なのである。
「それはそれとして、お前が王妃とは正直驚いたな」
「そうですわね。ロゼリアは譲ってくれましたし、お姉様は最初から興味ありませんでしたもの。となれば、逆行前に一度経験のあるわたくしがやらざると得ないというわけですわ」
「なるほどなぁ……」
得意げな表情をするペシエラに、ニーズヘッグは苦笑いをしていた。
「正直、ペシエラの相手は大変かもしれないが、まあ頑張ってくれ」
「ああ、そのための努力はしてきたつもりだからね。新しいアイヴォリーの国王として成し遂げてみせるよ」
シルヴァノは笑顔でニーズヘッグに返していた。
「そうか。幻獣の一体としてこの国の行く末を見守らせてもらうぞ」
ニーズヘッグはそういって、挨拶を終えて部屋を出ていった。
その間のシアンたちは、シルヴァノとペシエラの子どもの相手をしていた。
ちょうどシアンとモーフの間に挟まるとあって、年の近い三人はとても仲がよさそうにしている。
(ロゼ……お母様の子どもの頃より元気ですね)
アイヴォリーの王子ライトと王女ダイアの相手をしていたシアンは、中身の年齢がずば抜けて離れていることもあって、その相手に苦戦をしているようである。
なにぶん、シアンの実年齢を考えれば孫みたいなものである。見た目の年齢が近いとはいえ、子ども同士という感覚にはまったくならなかった。
「ふふ、なかなか元気がいいですね」
「ああ、シルヴァノというよりは、ペシエラの方の性格を引き継いでいるかな」
ロゼリアとペイルは相手をしながらそのように思っているようだ。ペシエラが居たら間違いなくツッコミが飛んできただろう。だが、そのペシエラは現在貴族たちの挨拶を受けている真っ最中である。
「子どもたちのこの様子なら、十三歳でアイヴォリーの学園に通わせても問題なさそうですね」
「俺のように留学をさせるつもりなのか?」
ロゼリアの言葉に、ペイルが反応する。その質問に対して、ロゼリアは無言で頷いていた。
モスグリネ王国にも、一応貴族が通う学園はある。だが、ペイルの時にはアイヴォリー王国との間の取り決めで、学園に通う六年間の前半三年間をアイヴォリー王国内の学園に通わせる事になっていたのだ。
ロゼリアの提案は、自分たちの子どもにもそれをしようというわけである。
「悪くはないとは思うが、父上たちにも意見を求めないと、俺たちだけでは決められないな」
ペイルがこう言うので、この話は一度保留となったのだった。
お昼頃にはようやく挨拶が一段落をして、シルヴァノたちと一緒に食事をする事となったペイルたち。
その席で、ロゼリアは先程の提案を言い出していた。
「それでしたら、わたくしたちも賛成ですわよ。せっかくですから、後半の三年間はそちらに留学させたいですわね」
すると、ペシエラからは思わぬ反応が返ってきた。
「そうだね。お互いに友好国であるということを印象付けるのであるならば、この留学生制度をいっその事、定着させてしまってもいいかもしれないね」
シルヴァノの方も乗り気である。これは実に意外な話だった。
「ということは、王族だけじゃなくて、一般貴族にも広げるってことでいいわけかな」
「そういうことだね。他国の教育を受けることでお互いいい刺激にはなるだろうしね」
「まぁそれは納得するな。唯一の経験者である俺が言うんだからな」
ロゼリアの提案に他のみんなも乗り気らしく、あれよあれという間に留学の話がまとまっていく。どうやらシアンは将来的にアイヴォリー王国の学園で三年間は学ぶことになりそうだった。
極めつけは、シアン以外の子どもたちも楽しみな反応をしている事だ。こうあっては、シアン一人が異を唱えたところでどうにもならないだろう。
モスグリネ王国の方はまだ国王の承認が得られていないが、ペイルの留学という実績がある以上は受け入れられるのは間違いない。
どうやらシアンは、アイヴォリー王国の学園に二度目の入学をする事が確実なりそうだった。
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