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新章 青色の智姫
第265話 夏休みを前に
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時はあっという間に進み、前期の期末試験の時期を迎える。何かと緊張したものだったが、万全の態勢でシアンたちは試験に臨む。
結果といえば、当然ながら、シアンは余裕のクリアである。
シアンの付き人となったヒスイも、すっかりシアンの指導で魔法の腕前を上げており、座学はそもそもできていたために、なんと前期末試験の魔法クラスの主席に輝いていた。
今日は、学園の休みの日。
今日はヒスイをお城に招いてのお茶会である。
「なんとか前期が終わりましたね」
「はい。これで来週一週間を過ごせば、夏休みに入ります」
ほっとした様子を見せるシアンに対し、ヒスイは淡々とした様子を見せている。なんとも対照的な姿である。
「モスグリネの学園は、夏休みは特に行事はありませんでしたね」
「そうですね。アイヴォリーでは夏の合宿があると聞きます。どのようなものなのでしょうか」
ヒスイはサンフレア学園の夏合宿のことを知っているようだった。
去年まで体験しているシアンに、夏合宿について尋ねてきた。
「そうですね。アクアマリン子爵領のサファイア湖というところで合宿をします。アクアマリン子爵は魔法が得意な一族でして、辺りは魔法結界で安全だということで毎年そこで行われるようです」
「ほうほう。魔法が得意な一族……。私のネフライト家と似たようなものですかね」
「そういう感じですね。魔法に関する研究は今でこそ控えめですが、書庫に向かえばいろんな魔法の書物が収められておりますよ」
「……実に興味深い」
ヒスイも魔法に関しては、血筋のせいかかなり興味を惹かれてしまうようだ。
その様子を見ながら、シアンはにこにことした笑顔を絶やさずに見せている。
「そうです。よかったら行ってみませんか? サファイア湖はきれいですし、今なら私が去年まで付き合っていた学生たちも多数参加されていると思いますからね」
シアンは何気にヒスイをアイヴォリー王国へと誘っている。
以前ならアイヴォリー王国とのつながりは拒否しただろうが、シアンを通じてかなり興味を持っている。
ましてや、魔法に長けた一族の領地となれば、同じように魔法が得意な一門として興味を抱かないわけがなかったのだ。
「……考えておきましょう。さすがに私の一存では決められぬことですのでね」
「分かりました。では、お返事をお待ちしています」
今日のところは、結論を見送ったヒスイだった。
ヒスイが帰ろうとしたその時だった。
お茶会の場に予想もしなかった人物が飛び込んできた。
「姉上」
「モーフ?!」
中庭で茶会をしているシアンのところに、三つ下の弟であるモーフがやって来た。
今年で十三歳だというのに、まったく姉離れのできない可愛い弟である。
シアンに駆け寄ってきたモーフだったが、隣にいたヒスイに気が付いたらしく、突然態度をころっと変えている。
「これは、姉上のご友人ですか。本日はなにゆえにここにいらっしゃるのですか」
さっきまでのゆるっとした表情はどこへやら。冷静な王子モードになって、じっとヒスイへと視線を向けている。
「これはモーフ殿下。すでに何度かお会いしておりますが、改めて挨拶をさせていただきます。私はヒスイ・ネフライト。ネフライト侯爵家の長女にして、シアン様の付き人でございます」
ヒスイは丁寧に挨拶をしている。
シアンに呼ばれた際に何度となく顔を合わせているのに、モーフときたらシアン以外はまったく視界に入っていなかったようだ。やれやれ、困ったものである。
「そうか。姉上と付き合って頂き、感謝する」
どことなく冷徹に振る舞うモーフである。だが、先程のゆるっとした様子を見てしまっている以上、ヒスイにはそっちのイメージが強く印象づいてしまっているようだ。
「それにしても、姉上は一体何を話しされていたのですか」
「なんでもいいではないですか。それより、モーフは王家の試練については順調なのですか?」
「うぐっ……」
モーフはなぜか黙り込んでしまった。
どうやら、あまり順調とは言えないようだった。シアンに魔法の面倒を見てもらっているというのに、これはなんとも困ったものである。
「ダメですよ、モーフ。今年の夏に受けると仰っていたのは、他でもないモーフ自身。しかと準備をなさって下さい。こればかりは私でも手伝えませんのでね」
「わ、分かりました……」
シアンから強く言われて、モーフはしゅんと落ち込んだように黙り込んでしまった。
モーフも黙らせたことだ。シアンはヒスイを見送るために城門まで移動することにする。
「シアン様、モーフ殿下のことはよろしいのですか?」
「構いません。ここからはあの子の問題ですから。それよりも友人のお見送りの方が今は大事ですよ」
「ゆ、友人だなんてそんな……」
シアンに友人といわれて、ヒスイはちょっと照れているようだ。
時折お茶会に誘って話をする間柄なのだ。この状況では、友人という認識を持って当然と言えよう。
「それでは、お出かけに関しては、お互いの両親と話をしてからということで」
「分かりました。同じ魔法一門の家と聞いて、なんだか胸が躍ってきます」
「ふふっ、本当に魔法がお好きなのですね」
シアンが笑うと、ヒスイは当然という表情を浮かべていた。
実に楽しそうな様子を見せて、ヒスイは家へと戻っていった。
モスグリネ王国に戻ってきたというのに、結局今年の夏もアクアマリン子爵領で過ごすことになりそうなシアンなのであった。
結果といえば、当然ながら、シアンは余裕のクリアである。
シアンの付き人となったヒスイも、すっかりシアンの指導で魔法の腕前を上げており、座学はそもそもできていたために、なんと前期末試験の魔法クラスの主席に輝いていた。
今日は、学園の休みの日。
今日はヒスイをお城に招いてのお茶会である。
「なんとか前期が終わりましたね」
「はい。これで来週一週間を過ごせば、夏休みに入ります」
ほっとした様子を見せるシアンに対し、ヒスイは淡々とした様子を見せている。なんとも対照的な姿である。
「モスグリネの学園は、夏休みは特に行事はありませんでしたね」
「そうですね。アイヴォリーでは夏の合宿があると聞きます。どのようなものなのでしょうか」
ヒスイはサンフレア学園の夏合宿のことを知っているようだった。
去年まで体験しているシアンに、夏合宿について尋ねてきた。
「そうですね。アクアマリン子爵領のサファイア湖というところで合宿をします。アクアマリン子爵は魔法が得意な一族でして、辺りは魔法結界で安全だということで毎年そこで行われるようです」
「ほうほう。魔法が得意な一族……。私のネフライト家と似たようなものですかね」
「そういう感じですね。魔法に関する研究は今でこそ控えめですが、書庫に向かえばいろんな魔法の書物が収められておりますよ」
「……実に興味深い」
ヒスイも魔法に関しては、血筋のせいかかなり興味を惹かれてしまうようだ。
その様子を見ながら、シアンはにこにことした笑顔を絶やさずに見せている。
「そうです。よかったら行ってみませんか? サファイア湖はきれいですし、今なら私が去年まで付き合っていた学生たちも多数参加されていると思いますからね」
シアンは何気にヒスイをアイヴォリー王国へと誘っている。
以前ならアイヴォリー王国とのつながりは拒否しただろうが、シアンを通じてかなり興味を持っている。
ましてや、魔法に長けた一族の領地となれば、同じように魔法が得意な一門として興味を抱かないわけがなかったのだ。
「……考えておきましょう。さすがに私の一存では決められぬことですのでね」
「分かりました。では、お返事をお待ちしています」
今日のところは、結論を見送ったヒスイだった。
ヒスイが帰ろうとしたその時だった。
お茶会の場に予想もしなかった人物が飛び込んできた。
「姉上」
「モーフ?!」
中庭で茶会をしているシアンのところに、三つ下の弟であるモーフがやって来た。
今年で十三歳だというのに、まったく姉離れのできない可愛い弟である。
シアンに駆け寄ってきたモーフだったが、隣にいたヒスイに気が付いたらしく、突然態度をころっと変えている。
「これは、姉上のご友人ですか。本日はなにゆえにここにいらっしゃるのですか」
さっきまでのゆるっとした表情はどこへやら。冷静な王子モードになって、じっとヒスイへと視線を向けている。
「これはモーフ殿下。すでに何度かお会いしておりますが、改めて挨拶をさせていただきます。私はヒスイ・ネフライト。ネフライト侯爵家の長女にして、シアン様の付き人でございます」
ヒスイは丁寧に挨拶をしている。
シアンに呼ばれた際に何度となく顔を合わせているのに、モーフときたらシアン以外はまったく視界に入っていなかったようだ。やれやれ、困ったものである。
「そうか。姉上と付き合って頂き、感謝する」
どことなく冷徹に振る舞うモーフである。だが、先程のゆるっとした様子を見てしまっている以上、ヒスイにはそっちのイメージが強く印象づいてしまっているようだ。
「それにしても、姉上は一体何を話しされていたのですか」
「なんでもいいではないですか。それより、モーフは王家の試練については順調なのですか?」
「うぐっ……」
モーフはなぜか黙り込んでしまった。
どうやら、あまり順調とは言えないようだった。シアンに魔法の面倒を見てもらっているというのに、これはなんとも困ったものである。
「ダメですよ、モーフ。今年の夏に受けると仰っていたのは、他でもないモーフ自身。しかと準備をなさって下さい。こればかりは私でも手伝えませんのでね」
「わ、分かりました……」
シアンから強く言われて、モーフはしゅんと落ち込んだように黙り込んでしまった。
モーフも黙らせたことだ。シアンはヒスイを見送るために城門まで移動することにする。
「シアン様、モーフ殿下のことはよろしいのですか?」
「構いません。ここからはあの子の問題ですから。それよりも友人のお見送りの方が今は大事ですよ」
「ゆ、友人だなんてそんな……」
シアンに友人といわれて、ヒスイはちょっと照れているようだ。
時折お茶会に誘って話をする間柄なのだ。この状況では、友人という認識を持って当然と言えよう。
「それでは、お出かけに関しては、お互いの両親と話をしてからということで」
「分かりました。同じ魔法一門の家と聞いて、なんだか胸が躍ってきます」
「ふふっ、本当に魔法がお好きなのですね」
シアンが笑うと、ヒスイは当然という表情を浮かべていた。
実に楽しそうな様子を見せて、ヒスイは家へと戻っていった。
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