ラミアプリンセスは配信者

未羊

文字の大きさ
19 / 142

SCENE018 兄妹

しおりを挟む
 翌日のこと、再びダンジョンへの侵入者を知らせる合図があった。

「あ、この感じは谷地さんたちだね」

「そうですな。マナの揺らぎというのがこれほどまでに違うとは、新発見ですぞ」

 バトラーでも知らなかったみたいだ。
 でも、谷地さんたちが来た時と、昨日の探索者たちとでは、僕たちに伝わってきた波動というものが明らかに違っている。敵意のあるなしっていうのは、大きく影響するみたいだ。
 とりあえず僕とバトラーは、二人を出迎えるためにダンジョンの入口までどうしていった。

 入口に近付くと、ダンジョンに入ってすぐのところに谷地さんと日下さんが立っていた。

「すみません、お呼び出ししてしまって」

「いえ、いいんですよ。僕たちの方も伝えたいことがありましたから」

「あれ、どうかされたのですか?」

「実はですね……」

 僕は昨日、探索者がダンジョンに侵入してきたことを伝えておいた。
 それを聞いたお二人は、頭を抱えて首を横に振っていた。

「ありがとうございます。早急にダンジョンのゲートを設置するように上司に説得します。ただでさえ、私たちに場を提供して下さるというのですから、このダンジョンはすぐにでも保護しませんとね」

「お願いしますね」

 ひとまず、すぐさま他のダンジョン同様にゲートを設置することを了承してくれた。

「それで、谷地さんと日下さんは、どうしてこちらに?」

「はい、先日のお約束を果たしに来ました」

 僕の問い掛けに答えが返ってくると、日下さんの後ろから、ひょっこりと誰かの姿が飛び出してきた。

「瞳!」

 見た瞬間に僕は思わず駆け寄ろうとしてしまう。

「ダメですぞ、プリンセス!」

 バトラーがそう叫ぶけれど、それと同時に、僕はダンジョンの入口でバンと弾き返されてしまった。

「あたっ!」

 思わずおしりを打ってしまい、痛くてさすってしまう。うろこまみれの感触が、まだ慣れないなぁ……。

「お兄……ちゃん?」

 おそるおそる声を出しているのが伝わってくる。今の僕の姿は、元の姿とまったく違ったラミアの姿だ。服装だって女性ものだし、面影があるなら顔くらいだろう。
 それでも、瞳は僕のことをお兄ちゃんと呼んでくれている。

「そうだよ、瞳。ごめんね、心配かけちゃって。お父さんとお母さんも、元気にしているかな?」

「本当にお兄ちゃん、モンスターになっちゃってるんだ……。でも、なんだか可愛いな」

「へ?」

 瞳から思いも寄らない言葉が出てきた。

「瞳、お前まで僕のことを可愛いっていうの?」

「うん、可愛いよ、お兄ちゃん」

 はっきり言われちゃったなぁ……。なんだろう、こうなるとプリンセスって言われていることに違和感なくなっちゃうじゃないか。
 僕は恥ずかしくなって頬をかいてしまう。

「はっはっはっはっ、これは正直な妹様ですな。プリンセスの魅力、よく分かっていただき、感謝申し上げますぞ」

「ひゃうっ!」

 僕の後ろから出てきたバトラーに、瞳はものすごく驚いている。
 まあ、蛇顔の二足歩行の人物がいきなり出てきたら、普通は驚くよね。ダンジョンに慣れていない子どもなら、なおさらってところ。僕もすごく驚いたし。

「はっはっはっ、いい反応ですな。我を初めて見た時のプリンセスを思い出しますな」

 バトラーは、瞳の反応を笑い飛ばしていた。
 さすがは強者の余裕といったところだろうか。

「初めまして、プリンセスの妹君。我はプリンセスにお仕えするバトラーという者。種族はパイソニアという蛇亜人でございます」

「は、初めまして、三枝瞳です。お兄ちゃんのふたつ下の妹です」

 服装を正しながら、瞳はバトラーに挨拶をしている。

「ふむふむ。こうやって見てみますと、プリンセスとよく似ていらっしゃる。これは、将来は美人になりますな」

「へへっ、そうですかね」

 美人になると言われて、瞳が照れてる。ちょろいなぁ……。

「ささっ、谷地殿、日下殿。ここはプリンセスたち二人にして、我々は中でお話をしようではありませんか」

「そうですね。一応見張りはつけておりますし、具体的な運用について話をしませんとね」

 バトラーは僕たちを二人きりにして、管理局の人たちと部屋の中へと入っていった。
 でも、久しぶりに会ったとはいっても、どういったことを話せばいいのやら……。

「あっ、そうだ。お兄ちゃんの携帯を持ってきたよ。何もないとつまらないと思ったから。これがあれば、連絡くらい取れるでしょ?」

「わっ、ありがとう、瞳。境界部分に気をつけて、こっちに差し出してくれる?」

「う、うん」

 僕はダンジョンの境界部分に注意して、携帯電話を瞳から受け取る。

「ありがとう、瞳」

 携帯電話を受け取った僕は、早速、瞳に電話をかけてみる。

「わわっ、お兄ちゃん?!」

「うん、つながってるね。これで、いつでも話ができるね」

「うん、お兄ちゃん」

 なんだろう……。なんか涙があふれて来ちゃうな。
 これは目の前の瞳も同じらしくて、携帯電話を持ったまま、目の辺りを手でこすっていた。

「プリンセス、もうよいのですかな?」

 しばらくすると、僕はバトラーを呼んだ。

「うん、姿が見れただけでも、十分だよ。連絡手段も手に入ったし、まだ十三歳の瞳を、危険な場所に置いておくつもりはないよ」

「そうですか」

 バトラーは管理局の二人を呼んで、瞳を連れて帰ってもらう。
 涙を浮かべながらも、笑顔で手を振っていた瞳の姿はとても印象的だった。
 瞳の姿が見えなくなると、僕の目からは大粒の涙がこぼれ始める。
 自分が違う世界の住民になってしまったことを、いやでも自覚しなきゃいけないんだもん。
 僕はバトラーに胸を貸してもらい、しばらくの間泣き続けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】身代わりとなります

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
レイチェルは素行不良の令嬢として悪名を轟かせている。しかし、それはレイチェルが無知ゆえにいつも失態をしていたためで本人には悪意はなかった。 レイチェルは家族に顧みられず誰からも貴族のルールを教えてもらわずに育ったのだ。 そんなレイチェルに婚約者ができた。 侯爵令息のダニエルだ。 彼は誠実でレイチェルの置かれている状況を知り、マナー講師を招いたり、ドレスを作ってくれたりした。 はじめは貴族然としている婚約者に反発していたレイチェルだったがいつのまにか彼の優しさに惹かれるようになった。 彼のレイチェルへの想いが同情であっても。 彼がレイチェルではない人を愛していても。 そんな時、彼の想い人である隣国の伯爵令嬢フィオラの国で革命が起き、彼女は隣国の貴族として処刑されることが決まった。 そして、さまざまな思惑が交錯する中、レイチェルは一つの決断を下し・・・ *過去と未来が行ったり来たりしながら進行する書き方にチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんがご了承ください。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

緑の指を持つ娘

Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。 ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・ 俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。 第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。 ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。 疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。

kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

処理中です...