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SCENE076 百鬼夜行のダンジョン攻略
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決行当日、問題の山中のダンジョンの前に、私たち百鬼夜行のメンバーが二十人ほど集結する。大体、四分の一から五分の一の勢力だ。
横浜から電車を乗り継ぎ、目的地へとやってきた。だが、乗り継ぎがよろしくなかったおかげで、もう夕方になってしまっていた。そもそも集合からして遅かったからな。
出鼻をくじかれた感じになってしまったが、私たちは宿を取った上で周辺の状況をできる限り調べてみることにした。
分かりやすかったのはやっぱり川だ。土の魔力が分かりやすく漏れ出しており、赤茶色に水が染まり始めていた。土の色とは明らかに違う光沢を放っている。
「川が完全に汚染されていますね。このままでは川の流れに沿って下流に広がるのも時間の問題ですよ」
様子を見ていた色が指摘している。後方支援系の能力持ちだから、こういうことには実に聡い奴なんだよ。
でも、これはさすがに私でも分かるぞ。私は川へと降りて、出どころを確認しに走る。
「お、おい、衣織!」
色が声をかけてくるが、私は気にしない。
「こ、これは……」
問題の場所は意外とすぐに見つかった。
川の岸壁に大きな亀裂が入っていて、そこからこの土の魔力が流れ出ているのだ。
「まったく、衣織さんはすぐに突っ走るんだから」
「本当に鉄砲玉のようだな。って、これは酷いな」
一部のギルドメンバーが追いかけてきたが、場の状況を見て驚きを隠せないようだった。
「どう見ても普通の亀裂じゃないな」
「ダンジョンの中から破られたような亀裂ですね、どう見ても」
誰の目にも異様な亀裂だというのは明らかだ。なにせ、まったく地層に沿っていないのだからな。
何がどうなって、このような亀裂が入っているのか。これはあまりにも時間的な余裕がないようにも思える。
「みんな、剛力さんに伝えてくれ」
「衣織さん、どうするつもりですか?」
「私と色の二人ですぐに突っ込んでいく。これはあまり時間的な余裕がなさそうだからな。身内用の配信で状況を伝えるから、みんなは剛力さんの判断があるまで待機をしていてほしい」
あまり予断を許されないと判断した私は、配信を担当してもらえる色を連れてダンジョンに突撃することにした。
「あと、ここにも何人か待機してほしい。モンスターが出てこないとも限らないからな」
「分かりました」
「それはいいが、あまり無茶すんじゃねえぞ。勝手にクリアするようだったら、剛力さんに叱ってもらうぜ」
「協調性は確かに必要だが、状況が差し迫っている。クリアして怒られるのなら、それは甘んじて受ける。そのための色だ」
「俺を勝手に巻き込まないでくれ!」
ギルドメンバーと衣織のやり取りを聞いていた色は、勝手に巻き込まれていることに対して怒っているようだった。
だがな、私は配信用のドローンは持っていないのだから、誰かを連れていくしかないだろう。悪いが一番付き合いの長いお前に付き合ってもらうぞ、色。
私の無言の主張を受けて、色は目を丸くしながら、最終的には大きなため息をついていた。意図を理解したようだな。時には諦めも感じだぞ、色。
「では、行ってくる。色、最初から配信をしてくれ。パスワードをつけて身内以外に見れないようにしてな」
「分かりましたよ。その代わり、許可が出たら公開アーカイブにしていいですかね」
「一向に構わん」
私が笑顔で答えると、色は再び大きなため息をついていた。
こうして、私たちは他のギルドメンバーと別れて、この廃鉱山ダンジョンへと向かう。
観光地となっている廃鉱山だが、ここも例に漏れずダンジョン化していた。途中からは空間が捻じ曲がり、本来の廃鉱山よりもかなり奥が複雑に拡張されてしまっている。
ここは鉱石系のドロップが入るので、装備の加工をしたい連中には人気だが、とあるモンスターだけはとても嫌われている。まあ、入口付近では出くわさないがな。
入口で管理局の人たちに話をした私と色は、ダンジョンの中へと入っていく。
廃鉱山のダンジョンの中のモンスターは、虫系と岩石系の二種類だ。入口からすぐは、虫系のモンスターが襲い掛かってくる。
「うげぇ、気持ちわりぃ……」
「色、何を怖気づいているんだ。この程度のモンスターなど、よそでも見るだろう。撮影しながらちゃんと援護しろ」
「わ、分かりましたよ……」
私が強く迫ると、色は渋々従ってくれたようだ。まったく、同じギルドのメンバーなんだから、協力してくれなければ困るというものだぞ。
「刃衝斬!」
迫りくる虫どもに、私は太刀の衝撃波を飛ばす。
衝撃の走った地面は土がめくりあがり、衝撃波とともに虫どもを飲み込んでいく。
「ちょっと、地面を壊さないで下さいよ。歩きづらいじゃないですか!」
「ああ、悪い。だが、こうでもしないとこの気持ち悪い連中を始末できなかったんでな」
でこぼこした地面を見ながら、私は太刀を鞘に納める。
改めて見てみると、確かに少しやりすぎたかもしれないな。
「色、悪いがお前のスキルできれいにしておいてくれ」
「なんで俺が後始末を!」
「お前が怖がるからだろうが。つい力が入ってしまってこうなったのだからな」
「俺のせいじゃないじゃないですか!」
色が騒いでいるが、とりあえず無視しておこう。
それよりも久しぶりのダンジョン攻略だ。さっさとボスを倒して、起きている異変を収束させねばな。
後ろでぶつぶつと文句を言う色に構わず、私は奥へと突き進んでいった。
横浜から電車を乗り継ぎ、目的地へとやってきた。だが、乗り継ぎがよろしくなかったおかげで、もう夕方になってしまっていた。そもそも集合からして遅かったからな。
出鼻をくじかれた感じになってしまったが、私たちは宿を取った上で周辺の状況をできる限り調べてみることにした。
分かりやすかったのはやっぱり川だ。土の魔力が分かりやすく漏れ出しており、赤茶色に水が染まり始めていた。土の色とは明らかに違う光沢を放っている。
「川が完全に汚染されていますね。このままでは川の流れに沿って下流に広がるのも時間の問題ですよ」
様子を見ていた色が指摘している。後方支援系の能力持ちだから、こういうことには実に聡い奴なんだよ。
でも、これはさすがに私でも分かるぞ。私は川へと降りて、出どころを確認しに走る。
「お、おい、衣織!」
色が声をかけてくるが、私は気にしない。
「こ、これは……」
問題の場所は意外とすぐに見つかった。
川の岸壁に大きな亀裂が入っていて、そこからこの土の魔力が流れ出ているのだ。
「まったく、衣織さんはすぐに突っ走るんだから」
「本当に鉄砲玉のようだな。って、これは酷いな」
一部のギルドメンバーが追いかけてきたが、場の状況を見て驚きを隠せないようだった。
「どう見ても普通の亀裂じゃないな」
「ダンジョンの中から破られたような亀裂ですね、どう見ても」
誰の目にも異様な亀裂だというのは明らかだ。なにせ、まったく地層に沿っていないのだからな。
何がどうなって、このような亀裂が入っているのか。これはあまりにも時間的な余裕がないようにも思える。
「みんな、剛力さんに伝えてくれ」
「衣織さん、どうするつもりですか?」
「私と色の二人ですぐに突っ込んでいく。これはあまり時間的な余裕がなさそうだからな。身内用の配信で状況を伝えるから、みんなは剛力さんの判断があるまで待機をしていてほしい」
あまり予断を許されないと判断した私は、配信を担当してもらえる色を連れてダンジョンに突撃することにした。
「あと、ここにも何人か待機してほしい。モンスターが出てこないとも限らないからな」
「分かりました」
「それはいいが、あまり無茶すんじゃねえぞ。勝手にクリアするようだったら、剛力さんに叱ってもらうぜ」
「協調性は確かに必要だが、状況が差し迫っている。クリアして怒られるのなら、それは甘んじて受ける。そのための色だ」
「俺を勝手に巻き込まないでくれ!」
ギルドメンバーと衣織のやり取りを聞いていた色は、勝手に巻き込まれていることに対して怒っているようだった。
だがな、私は配信用のドローンは持っていないのだから、誰かを連れていくしかないだろう。悪いが一番付き合いの長いお前に付き合ってもらうぞ、色。
私の無言の主張を受けて、色は目を丸くしながら、最終的には大きなため息をついていた。意図を理解したようだな。時には諦めも感じだぞ、色。
「では、行ってくる。色、最初から配信をしてくれ。パスワードをつけて身内以外に見れないようにしてな」
「分かりましたよ。その代わり、許可が出たら公開アーカイブにしていいですかね」
「一向に構わん」
私が笑顔で答えると、色は再び大きなため息をついていた。
こうして、私たちは他のギルドメンバーと別れて、この廃鉱山ダンジョンへと向かう。
観光地となっている廃鉱山だが、ここも例に漏れずダンジョン化していた。途中からは空間が捻じ曲がり、本来の廃鉱山よりもかなり奥が複雑に拡張されてしまっている。
ここは鉱石系のドロップが入るので、装備の加工をしたい連中には人気だが、とあるモンスターだけはとても嫌われている。まあ、入口付近では出くわさないがな。
入口で管理局の人たちに話をした私と色は、ダンジョンの中へと入っていく。
廃鉱山のダンジョンの中のモンスターは、虫系と岩石系の二種類だ。入口からすぐは、虫系のモンスターが襲い掛かってくる。
「うげぇ、気持ちわりぃ……」
「色、何を怖気づいているんだ。この程度のモンスターなど、よそでも見るだろう。撮影しながらちゃんと援護しろ」
「わ、分かりましたよ……」
私が強く迫ると、色は渋々従ってくれたようだ。まったく、同じギルドのメンバーなんだから、協力してくれなければ困るというものだぞ。
「刃衝斬!」
迫りくる虫どもに、私は太刀の衝撃波を飛ばす。
衝撃の走った地面は土がめくりあがり、衝撃波とともに虫どもを飲み込んでいく。
「ちょっと、地面を壊さないで下さいよ。歩きづらいじゃないですか!」
「ああ、悪い。だが、こうでもしないとこの気持ち悪い連中を始末できなかったんでな」
でこぼこした地面を見ながら、私は太刀を鞘に納める。
改めて見てみると、確かに少しやりすぎたかもしれないな。
「色、悪いがお前のスキルできれいにしておいてくれ」
「なんで俺が後始末を!」
「お前が怖がるからだろうが。つい力が入ってしまってこうなったのだからな」
「俺のせいじゃないじゃないですか!」
色が騒いでいるが、とりあえず無視しておこう。
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