ラミアプリンセスは配信者

未羊

文字の大きさ
116 / 142

SCENE115 キーアイテム

しおりを挟む
 セイレーンの下僕くんを連れて、私は瞬のダンジョンまでやって来ていた。
 ダンジョンの入口には職員と一緒に冒険者が立っている。どうやらこの冒険者が雇った護衛のようだな。

「これは、衣織さん。どうしてこちらに?」

「瞬に用事があって来たんだ。それで、入っても大丈夫か?」

「はい。衣織さんでしたら安心ですからね。ささっ、どうぞお通り下さい」

「悪いな」

 私は職員にあっさりと通してもらう。だが、この時、私の隣には下僕くんがいたんだが、隠密が発動しているために誰も気が付かなかった。私はうっすら気配を感じているのだが、さすがスキルレベルが高いだけあるな。
 途中にいるキラーアントも、私がひと睨みを利かせれば襲ってこない。レベル差というものがあるからだろう。いちいち睨むのもだるいが、こうしないと襲い掛かってくるんだよ。あのモンスターは頭が悪いからな。
 そうして、私たちは無事にボス部屋へと到着した。

「あっ、衣織お姉さん」

「こんにちはです、衣織様」

 ボス部屋に入ると、瞬とラティナの二人が出迎えてくれた。うん、相変わらず可愛いな。

「よっ、元気そうでなによりだ。ところで、バトラーはどこにいる?」

「こちらにおりますぞ、衣織殿」

 私が奥の方を見ると、テーブルやら椅子やらをセッティングしているバトラーの姿があった。私たちが来たと分かって準備をしていたようだな。

「おや、ちゃんと椅子が四脚あるな」

「はい。高志殿が来られておるのも、重々把握しておりますからね」

「えっ、高志さんが来てるの? どこどこ?」

 バトラーとの会話を聞いていた瞬が、あちこちを見ている。
 いや、この下僕くんの隠密は強力だな。瞬はもちろんだが、ラティナにも通じている。
 レベル差がありすぎると、見破ることはどうにも不可能らしい。バトラーには通じてないようだし、私もうっすらとながら気配を感じ取れるようになっている。
 バトラーたちに見えるレベルというのは、一体いくらくらいなんだろうな。実に興味があるな。
 だが、今日の訪問の目的はそれじゃない。一刻でも早くパラダイスを潰すために、ラティナの協力を仰がねばな。

「とりあえずおかけになって下さい。プリンセスはとにかくレベルを上げて下され」

「はぁい……」

 バトラーは私たちに着席するように勧めると同時に、瞬に対して強くなるようにとお小言を言っていた。
 普段ならバトラーに対して文句を言うところだろうが、今回ばかりは意見が一致する。なので、素直に頷いておこう。

 私たちは用意された椅子に座る。
 ラティナの岩石まみれの体でも壊れないくらい、この異界の椅子は頑丈だ。これなら探索者として強くなりすぎた剛力さんたちでも使えそうだな。だが、私はくれというつもりはない。
 普通に考えれば、異界の連中は侵略者だからな。それを考えると、物をねだるのは正直気が進まないというものだ。
 だが、今回ラティナに強力を取りつけるのは、瞬やラティナたちの安全を守るためでもある。私は声をかけるタイミングを計っていた。

「ねえ、衣織お姉さんたちはどうして今日はここに来たの?」

 本題に入ろうとすると、瞬が単刀直入に質問を飛ばしてきた。さすが瞬、空気を読まずにストレートにくるな。この時ばかりは、この瞬の性格にお礼が言いたいものだ。

「実はな。先日ここに押し入ってきた連中の所属するギルドを処罰しようという流れになってな。元々疑いの多いギルドだったが、瞬たちに危害を加えようとしたことでダンジョン管理局からも見限られたようだ」

「えっ、そんなことになってるんですか?」

 私が話をすると、瞬は思いっきり驚いていた。自分のやったことを自覚していないようだな。

「やはり、あれは配信して正解でしたな。まったく、品のない無礼な連中でございました。我のプリンセスを手にかけようとは、万死に値しますぞ」

「うん、そうだね」

 なんだ、あの配信にはバトラーの発言も関わっていたのか。だが、瞬は私のものであってお前のものじゃないぞ。そこは認めないからな。
 まあ、それは今は置いておこう。張り合って話が長引いてしまうのはよくないからな。

「ここだけの話なのだが、パラダイスの連中を罠にかけようという話が出てな。そこで、この下僕くんのスキルに頼ることになったのだが、そこに保険をかけようと思ってここに来たんだ」

「保険を?」

「ああ、そうだ」

 瞬が首を傾げるものだから、私は強く念押しをしておく。

「瞬に押し付けられた三人がいるだろう。その三人に渡したものと同様のものをこの下僕くんにも持たせたいのだ」

「ラティナさんの護石か。もしかして、スキル封じを警戒してるってこと?」

「さすが瞬だな。その通りだ」

 そう、この作戦の成否は、この下僕くんの隠密スキルにかかっている。ターゲットになっていても隠密スキルは発動できることが分かっているわけだし、この作戦がうまくいかない理由があるとすれば、隠密スキルの不発だ。それを防ぐために、ラティナの力を借りに来たというわけだ。

「ラティナさん、用意できるかな?」

「はい、問題ないです。すぐにご用意できますので、少々お待ち下さい」

 瞬が話を振ると、ラティナは両手を握って力を込め始める。手の中から光を放つではなく、周囲から光が収束していくようにラティナの手の中に光が集まっていく。

「できました」

 ラティナがそう言って手を開くと、そこには確かに輝く石が転がっていた。

「悪いな。ダンジョンの平和と探索者の安全のためだ。これを十分に役立たせてもらうぞ」

「はい。どうぞ悪いお方を懲らしめて下さい」

 両手を握りしめて、ラティナは気合いたっぷりの表情で話している。
 目的のものを手に入れた私たちは、少しだけ話をしてから、瞬のダンジョンを後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】身代わりとなります

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
レイチェルは素行不良の令嬢として悪名を轟かせている。しかし、それはレイチェルが無知ゆえにいつも失態をしていたためで本人には悪意はなかった。 レイチェルは家族に顧みられず誰からも貴族のルールを教えてもらわずに育ったのだ。 そんなレイチェルに婚約者ができた。 侯爵令息のダニエルだ。 彼は誠実でレイチェルの置かれている状況を知り、マナー講師を招いたり、ドレスを作ってくれたりした。 はじめは貴族然としている婚約者に反発していたレイチェルだったがいつのまにか彼の優しさに惹かれるようになった。 彼のレイチェルへの想いが同情であっても。 彼がレイチェルではない人を愛していても。 そんな時、彼の想い人である隣国の伯爵令嬢フィオラの国で革命が起き、彼女は隣国の貴族として処刑されることが決まった。 そして、さまざまな思惑が交錯する中、レイチェルは一つの決断を下し・・・ *過去と未来が行ったり来たりしながら進行する書き方にチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんがご了承ください。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

緑の指を持つ娘

Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。 ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・ 俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。 第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。 ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。 疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。

kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。

処理中です...