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SCENE118 サンダーウルフ
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コツン……。
俺が放り投げた小石が、地面に落ちる。
「ガルッ?」
雷をまとった狼であるサンダーウルフが、その音を拾う。
その向けた視線の先に何がいるか……。
「ひっ!」
「兄貴、どうなってるんですかい?」
パラダイスの連中が慌て始めた。
「知るか! だが、奴らは俺らに狙いを定めた。ならば、やってやろうじゃねえか」
リーダーにあたる男は、やる気十分のようだ。さすがに威張り散らすだけあって、それなりに自信があるみたいだな。
俺は姿と気配を消して、岩陰からその様子をじっと見つめている。
それにしても驚いた。俺の隠密はにおいですら断ち切れるみたいだ。嗅覚の鋭いサンダーウルフから逃げられるなんて、考えてもみなかった。
「これも、君のおかげかな。ラティナさん」
俺はポケットにしまっていたラティナさんからもらった護石を握りしめていた。
「てめえら、しっかり援護しろよ?」
「へいっ、兄貴!」
俺がラティナさんに感謝いている間も、パラダイスの三人はサンダーウルフと向かい合っている。ただ、その様子は予想外の展開に慌てている感じだった。
おそらくあいつらは、さっき俺にやったように、他の探索者をおとりにしていたのだろう。気を取られている間に不意打ちをして、モンスターたちを討伐してきたということだ。なんとも胸くそ悪い話だ。
衣織さんやダンジョン管理局の睨んだ通りの連中だったってことだね。
少なくともさっきの様子は、百鬼夜行の色さんっていう探索者のドローンによって、百鬼夜行と浮島さんたちには目撃されているはずだ。
この結果がどっちに転んだとしても、きっとあいつらはもう終わりに違いない。
「ガアアアアッ!」
サンダーウルフが大きく吠え、バチバチという音を立て始める。
「おい、雷が来るぞ。しっかりと構えろ」
「合点でさ、兄貴!」
リーダーの男の合図に、取り巻きが返事をして何かをし始めた。
「はっ! 予想外なことがあっても、俺たちの力をなめてくれんじゃねえぞ。俺様がいかにここまで上り詰めてきたか、モンスターに見せつけてやるぜ!」
リーダーの男は、大きな斧を構えている。一体どこから取り出したんだよ、あれ。
次の瞬間、サンダーウルフから雷がほとばしる。ものすごい勢いでパラダイスの連中に向かっている。
「やれっ!」
「合点承知!」
手下の男の両手から、円形の盾のようなものが飛び出す。
なんだ、あれは。あれがあいつのスキルなのか?
パキンッ!
何かが割れるような音が響く。よく見ると、手下がスキルで出した円形の盾が真っ二つになっていた。でも、放たれた雷を打ち消すことができていた。
「かはっ!」
威力を潰せなかったのか、男は吹き飛ばされて地面に叩きつけられていた。
「よし、よくやった」
リーダーの男は飛び出し、サンダーウルフに迫っていく。
「雷をまとってようが、わんこはわんこなんだよ! 食らいやがれっ!」
リーダーの男が斧を振りかぶって、サンダーウルフに襲い掛かる。
ものすごい跳躍力だ。
この勢いなら、サンダーウルフは食らえばひとたまりもないだろう。
「ガアッ!」
だけど、このサンダーウルフも反応が早かった。
雷が打ち消されて驚いた様子は見せたが、切り替えが早く、パラダイスの連中の動きをよく見ていた。
跳びあがった男に顔を向け、口を大きく開ける。
バリバリバリッ!
サンダーウルフの口から雷が吐き出される。
「ぐわあああっ!」
跳びあがった男は、躱せるわけもなくまともに食らってしまう。
俺をおとりにしようとしていたのでざまあみろと言いたいところだが、目の前でこんな目に遭っているのを見ると、大丈夫かという気持ちの方が勝ってしまう。
どさっという音が響き、男が地面に落ちる。
うめき声が聞こえるので、まだ生きているみたいだ。でも、あれだけまともに食らったんじゃ、ただじゃすまないだろう。
「ひい! 兄貴がっ!」
「くそっ! 兄貴はやらせやしねえ!」
手下の二人は逃げるかと思ったら、逆に飛び出してきた。これは予想外だった。
「てめえら、出てくるんじゃねえ……っ!」
リーダーの男は、ずいぶんと黒焦げになりながらも手下たちのことを気遣っているようだった。これが仲間内の絆ってやつなんだな。
だけど、リーダーの声は届いてないのか、手下の二人はサンダーウルフの前に無策で飛び出してくる。
仲間思いってやつなんだろうけど、さすがにこれは危険すぎる。
バチバチッとサンダーウルフの体から雷が発生し、手下二人に向けて放たれる。
さすがにこれはやばいと思った時だった。
二人のさらに後方から、影がひとつ飛び出てきた。
「槍破衝!」
「ギャウンッ!」
槍から一閃が放たれ、サンダーウルフの雷を、サンダーウルフごと貫いていた。あまりの強力な一撃だったのか、サンダーウルフはそのまま倒れて動かなくなってしまった。
誰が現れたのかと思って入口の方をよく見てみると、そこにいたのは紛れもなく頼れる人物だった。
そう、ギルド『百鬼夜行』の一員で、ウィンクさんが慕うお姉さんである鬼百合の衣織さんだった。
俺が放り投げた小石が、地面に落ちる。
「ガルッ?」
雷をまとった狼であるサンダーウルフが、その音を拾う。
その向けた視線の先に何がいるか……。
「ひっ!」
「兄貴、どうなってるんですかい?」
パラダイスの連中が慌て始めた。
「知るか! だが、奴らは俺らに狙いを定めた。ならば、やってやろうじゃねえか」
リーダーにあたる男は、やる気十分のようだ。さすがに威張り散らすだけあって、それなりに自信があるみたいだな。
俺は姿と気配を消して、岩陰からその様子をじっと見つめている。
それにしても驚いた。俺の隠密はにおいですら断ち切れるみたいだ。嗅覚の鋭いサンダーウルフから逃げられるなんて、考えてもみなかった。
「これも、君のおかげかな。ラティナさん」
俺はポケットにしまっていたラティナさんからもらった護石を握りしめていた。
「てめえら、しっかり援護しろよ?」
「へいっ、兄貴!」
俺がラティナさんに感謝いている間も、パラダイスの三人はサンダーウルフと向かい合っている。ただ、その様子は予想外の展開に慌てている感じだった。
おそらくあいつらは、さっき俺にやったように、他の探索者をおとりにしていたのだろう。気を取られている間に不意打ちをして、モンスターたちを討伐してきたということだ。なんとも胸くそ悪い話だ。
衣織さんやダンジョン管理局の睨んだ通りの連中だったってことだね。
少なくともさっきの様子は、百鬼夜行の色さんっていう探索者のドローンによって、百鬼夜行と浮島さんたちには目撃されているはずだ。
この結果がどっちに転んだとしても、きっとあいつらはもう終わりに違いない。
「ガアアアアッ!」
サンダーウルフが大きく吠え、バチバチという音を立て始める。
「おい、雷が来るぞ。しっかりと構えろ」
「合点でさ、兄貴!」
リーダーの男の合図に、取り巻きが返事をして何かをし始めた。
「はっ! 予想外なことがあっても、俺たちの力をなめてくれんじゃねえぞ。俺様がいかにここまで上り詰めてきたか、モンスターに見せつけてやるぜ!」
リーダーの男は、大きな斧を構えている。一体どこから取り出したんだよ、あれ。
次の瞬間、サンダーウルフから雷がほとばしる。ものすごい勢いでパラダイスの連中に向かっている。
「やれっ!」
「合点承知!」
手下の男の両手から、円形の盾のようなものが飛び出す。
なんだ、あれは。あれがあいつのスキルなのか?
パキンッ!
何かが割れるような音が響く。よく見ると、手下がスキルで出した円形の盾が真っ二つになっていた。でも、放たれた雷を打ち消すことができていた。
「かはっ!」
威力を潰せなかったのか、男は吹き飛ばされて地面に叩きつけられていた。
「よし、よくやった」
リーダーの男は飛び出し、サンダーウルフに迫っていく。
「雷をまとってようが、わんこはわんこなんだよ! 食らいやがれっ!」
リーダーの男が斧を振りかぶって、サンダーウルフに襲い掛かる。
ものすごい跳躍力だ。
この勢いなら、サンダーウルフは食らえばひとたまりもないだろう。
「ガアッ!」
だけど、このサンダーウルフも反応が早かった。
雷が打ち消されて驚いた様子は見せたが、切り替えが早く、パラダイスの連中の動きをよく見ていた。
跳びあがった男に顔を向け、口を大きく開ける。
バリバリバリッ!
サンダーウルフの口から雷が吐き出される。
「ぐわあああっ!」
跳びあがった男は、躱せるわけもなくまともに食らってしまう。
俺をおとりにしようとしていたのでざまあみろと言いたいところだが、目の前でこんな目に遭っているのを見ると、大丈夫かという気持ちの方が勝ってしまう。
どさっという音が響き、男が地面に落ちる。
うめき声が聞こえるので、まだ生きているみたいだ。でも、あれだけまともに食らったんじゃ、ただじゃすまないだろう。
「ひい! 兄貴がっ!」
「くそっ! 兄貴はやらせやしねえ!」
手下の二人は逃げるかと思ったら、逆に飛び出してきた。これは予想外だった。
「てめえら、出てくるんじゃねえ……っ!」
リーダーの男は、ずいぶんと黒焦げになりながらも手下たちのことを気遣っているようだった。これが仲間内の絆ってやつなんだな。
だけど、リーダーの声は届いてないのか、手下の二人はサンダーウルフの前に無策で飛び出してくる。
仲間思いってやつなんだろうけど、さすがにこれは危険すぎる。
バチバチッとサンダーウルフの体から雷が発生し、手下二人に向けて放たれる。
さすがにこれはやばいと思った時だった。
二人のさらに後方から、影がひとつ飛び出てきた。
「槍破衝!」
「ギャウンッ!」
槍から一閃が放たれ、サンダーウルフの雷を、サンダーウルフごと貫いていた。あまりの強力な一撃だったのか、サンダーウルフはそのまま倒れて動かなくなってしまった。
誰が現れたのかと思って入口の方をよく見てみると、そこにいたのは紛れもなく頼れる人物だった。
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