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SCENE124 思わぬ激痛
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僕は目を疑った。
必死な願いを込めて放ったとはいえ、まさか画面の向こう側に僕の魔法が届くなんて思ってもみなかった。
「ねえ、バトラー。あれってもしかして……」
「間違いないですな。プリンセスの放ったシャドウランスでございます。まさか、距離を無視して魔法を発動させるとは……。やはり、こちらの世界の人間だったからでしょうか。不思議なことが起こるものですな」
僕がおそるおそる確認してみると、バトラーはすんなりと断定していた。ただ、信じられないことには変わりがないようで、あごに手を当てて首を捻っているようだった。
ただ、次の瞬間、僕の体に異変が起きる。
「あだ、あだだだだ……」
突然、体に痛みが走り始めた。
「ウィンク様?!」
ラティナさんが大慌てで僕に駆け寄ってくる。
だけど、バトラーは落ち着いていた。
「ご心配なく、プリンセス。ガルムを倒したことによるレベルアップでございます。今回は相手が強力なモンスターだったために、プリンセスのレベルが一気に上がったのです。そのため、一気に押し寄せるレベルアップの変化によって、そのような痛みに襲われているのですよ」
「あだだだだ……。レベルアップって、こんなに、痛みを伴う、の?」
相変わらず冷静に振る舞いバトラーに対して、僕は耐えながら質問をする。
「いえ、一つずつ上昇するのであれば、まったくといっていいほど痛みもありません。先程も申した通り、プリンセスのレベルアップが異常ですので、変化が大きすぎるためにそのように痛みが発生しているのです」
「そ、それじゃ、どのくらいで、おさまる?」
バトラーの説明を聞いて、僕はどのくらいの時間持続するのか尋ねてみる。だけど、バトラーから返ってきた答えは非情なものだったよ。
「分かりません。我も経験したことがありませんからね。ただ、過去にはそのような方がいたということを伝え聞いている程度でございます」
「そ、そんな……」
僕はさっきから襲ってくる痛みに、もう涙目だよ。バトラーの無慈悲な答えで、本当に泣いちゃうよ。
結局僕は、ラティナさんに見守られながら、体の痛みが治まるのをひたすら待った。本当に動けないんだもん。
僕が動けない間、バトラーは代わりに衣織お姉さんの配信の様子を見守っていた。
「おや、終わってしまいましたね」
衣織お姉さんの配信は、シャボテンダンジョンを出たところで終わってしまったそうだ。
まあ、それもそうか。配信用のドローンは、ダンジョン内のマナで動いているんだもんね。だから、外に出るとエネルギーの供給減を失って、勝手に配信が終わるようになっている。
もちろん、ダンジョンの外に出たら通常の電池パックで動くドローンもあるけどね。それでも、マナによる稼働に比べたら持続時間が短いのが問題なんだよね。
「そういえば、衣織殿は配信用ドローンを持っておりませんでしたよね。では、これは誰のドローンで行われた配信だったのでしょうか」
バトラーがここで冷静に疑問を訴えている。
確かに、衣織お姉さんは壊しちゃうからっていう理由で配信用のドローンを持っていない。
「衣織お姉さんの、ギルドの人だよ。今日も、同行者が、いたでしょ?」
僕は痛みに耐えながら、バトラーの疑問に答えている。
「なるほどですな。それで配信ができていたのですね。納得がいきました」
バトラーは意外とすんなり納得してくれたみたいだ。
話をしている間に、僕の体の痛みはどんどんと弱まっていっている。よかった、もうレベルアップが落ち着いてきたってことなんだろうね。
「プリンセス。痛みが完全に消えたら、レベルを確かめてみましょうぞ」
「うん、そうだね。これだけ痛いんだもの。結構上がっているよね」
「ですな。ガルムはレベルが58くらいありますからな。以前の衣織殿であれば、きっとまったく歯が立たなかったと思いますぞ」
「うへぇ、そんな強いモンスターを、僕が魔法で倒しちゃったの?」
「ガルムは闇が弱点ですからな。不意を打てたことも大きかったでしょう」
「なるほど……」
完全な格上狩りじゃないか。本当に不意を突けたとしても、僕のレベルの魔法でよく倒せたなぁ……。
僕が呆然としている中、ようやく体の痛みが完全におさまる。起きても大丈夫みたいだ。
「ウィンク様、もう大丈夫なのですか?」
「はい、もう大丈夫です。もうこんなの勘弁してもらいたいな」
ようやく痛みから解放された僕は、本気でそう思ったよ。
ずっと隣にいてくれたラティナさんに感謝しながら、僕はステータスを開く。
真っ先に飛び込んできたのはやっぱり大幅に上がったレベルだった。
「わわっ、23になってる」
「まあ、ずいぶんと上がりましたわね。それでも私よりも低いんですが……」
僕はラティナさんに褒められるも、すぐに現実を思い知らされた。僕はラティナさんよりも低いらしい。
「仕方ありませんな。プリンセスは3でしたからな」
「えっ……?」
バトラーがばらしてしまった、僕のさっきまでのレベルの数値に、ラティナさんは絶句していた。
そうだよ、魅了で少しずつ稼いでいたけど、僕のレベルは3だったんだよ。
それが一気に20も跳ね上がったんだから、うん、成長期に体が痛いとかいうあの状態を経験してしまったというわけだね。いやまぁ、まさかこんな形で経験するとはね……。
「ふぅ、落ち着いたらなんだかお腹が空いちゃった。何か食べよっか」
「そうですね。そうしましょう」
衣織お姉さんたちも無事で、ギルドの問題も証拠が挙がった状態だ。レベルアップの痛みもおさまって、僕はすっかりお腹が空いてしまったようだよ。
まだ問題は完全には解決してないけれど、あとは衣織お姉さんの報告を待つことにした僕たちだった。
必死な願いを込めて放ったとはいえ、まさか画面の向こう側に僕の魔法が届くなんて思ってもみなかった。
「ねえ、バトラー。あれってもしかして……」
「間違いないですな。プリンセスの放ったシャドウランスでございます。まさか、距離を無視して魔法を発動させるとは……。やはり、こちらの世界の人間だったからでしょうか。不思議なことが起こるものですな」
僕がおそるおそる確認してみると、バトラーはすんなりと断定していた。ただ、信じられないことには変わりがないようで、あごに手を当てて首を捻っているようだった。
ただ、次の瞬間、僕の体に異変が起きる。
「あだ、あだだだだ……」
突然、体に痛みが走り始めた。
「ウィンク様?!」
ラティナさんが大慌てで僕に駆け寄ってくる。
だけど、バトラーは落ち着いていた。
「ご心配なく、プリンセス。ガルムを倒したことによるレベルアップでございます。今回は相手が強力なモンスターだったために、プリンセスのレベルが一気に上がったのです。そのため、一気に押し寄せるレベルアップの変化によって、そのような痛みに襲われているのですよ」
「あだだだだ……。レベルアップって、こんなに、痛みを伴う、の?」
相変わらず冷静に振る舞いバトラーに対して、僕は耐えながら質問をする。
「いえ、一つずつ上昇するのであれば、まったくといっていいほど痛みもありません。先程も申した通り、プリンセスのレベルアップが異常ですので、変化が大きすぎるためにそのように痛みが発生しているのです」
「そ、それじゃ、どのくらいで、おさまる?」
バトラーの説明を聞いて、僕はどのくらいの時間持続するのか尋ねてみる。だけど、バトラーから返ってきた答えは非情なものだったよ。
「分かりません。我も経験したことがありませんからね。ただ、過去にはそのような方がいたということを伝え聞いている程度でございます」
「そ、そんな……」
僕はさっきから襲ってくる痛みに、もう涙目だよ。バトラーの無慈悲な答えで、本当に泣いちゃうよ。
結局僕は、ラティナさんに見守られながら、体の痛みが治まるのをひたすら待った。本当に動けないんだもん。
僕が動けない間、バトラーは代わりに衣織お姉さんの配信の様子を見守っていた。
「おや、終わってしまいましたね」
衣織お姉さんの配信は、シャボテンダンジョンを出たところで終わってしまったそうだ。
まあ、それもそうか。配信用のドローンは、ダンジョン内のマナで動いているんだもんね。だから、外に出るとエネルギーの供給減を失って、勝手に配信が終わるようになっている。
もちろん、ダンジョンの外に出たら通常の電池パックで動くドローンもあるけどね。それでも、マナによる稼働に比べたら持続時間が短いのが問題なんだよね。
「そういえば、衣織殿は配信用ドローンを持っておりませんでしたよね。では、これは誰のドローンで行われた配信だったのでしょうか」
バトラーがここで冷静に疑問を訴えている。
確かに、衣織お姉さんは壊しちゃうからっていう理由で配信用のドローンを持っていない。
「衣織お姉さんの、ギルドの人だよ。今日も、同行者が、いたでしょ?」
僕は痛みに耐えながら、バトラーの疑問に答えている。
「なるほどですな。それで配信ができていたのですね。納得がいきました」
バトラーは意外とすんなり納得してくれたみたいだ。
話をしている間に、僕の体の痛みはどんどんと弱まっていっている。よかった、もうレベルアップが落ち着いてきたってことなんだろうね。
「プリンセス。痛みが完全に消えたら、レベルを確かめてみましょうぞ」
「うん、そうだね。これだけ痛いんだもの。結構上がっているよね」
「ですな。ガルムはレベルが58くらいありますからな。以前の衣織殿であれば、きっとまったく歯が立たなかったと思いますぞ」
「うへぇ、そんな強いモンスターを、僕が魔法で倒しちゃったの?」
「ガルムは闇が弱点ですからな。不意を打てたことも大きかったでしょう」
「なるほど……」
完全な格上狩りじゃないか。本当に不意を突けたとしても、僕のレベルの魔法でよく倒せたなぁ……。
僕が呆然としている中、ようやく体の痛みが完全におさまる。起きても大丈夫みたいだ。
「ウィンク様、もう大丈夫なのですか?」
「はい、もう大丈夫です。もうこんなの勘弁してもらいたいな」
ようやく痛みから解放された僕は、本気でそう思ったよ。
ずっと隣にいてくれたラティナさんに感謝しながら、僕はステータスを開く。
真っ先に飛び込んできたのはやっぱり大幅に上がったレベルだった。
「わわっ、23になってる」
「まあ、ずいぶんと上がりましたわね。それでも私よりも低いんですが……」
僕はラティナさんに褒められるも、すぐに現実を思い知らされた。僕はラティナさんよりも低いらしい。
「仕方ありませんな。プリンセスは3でしたからな」
「えっ……?」
バトラーがばらしてしまった、僕のさっきまでのレベルの数値に、ラティナさんは絶句していた。
そうだよ、魅了で少しずつ稼いでいたけど、僕のレベルは3だったんだよ。
それが一気に20も跳ね上がったんだから、うん、成長期に体が痛いとかいうあの状態を経験してしまったというわけだね。いやまぁ、まさかこんな形で経験するとはね……。
「ふぅ、落ち着いたらなんだかお腹が空いちゃった。何か食べよっか」
「そうですね。そうしましょう」
衣織お姉さんたちも無事で、ギルドの問題も証拠が挙がった状態だ。レベルアップの痛みもおさまって、僕はすっかりお腹が空いてしまったようだよ。
まだ問題は完全には解決してないけれど、あとは衣織お姉さんの報告を待つことにした僕たちだった。
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