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第16話 お祭りハプニング
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いよいよ小学生と幼稚園児だけで引くお神輿が神社を出発する。
わっしょいという掛け声とともに、生活道路をゆっくりと練り歩いていく。この声が聞こえてくると、町の人たちは秋が来たんだと実感するらしい。
神輿を引いていると、あちこちに警察の姿も見える。午後の大人たちの神輿担ぎに備えて交通整理があるとのことだそうだ。なんともご苦労なことだと思う。
私自身が初参加で珍しい髪色をしているものだから、子どもたちも引率の大人たちもちらちらと視線を向けてくる。でも、今はお祭りの最中だからって、そっちに集中してくれている。なんともいい子たちだ。
だけど、やっぱり途中の休憩の時には子どもたちは私たちに群がってきていた。
「変な髪色~」
「お姉ちゃん、どこから来たの?」
こんなことを言ってくるのならまだ可愛い方。幼稚園ぐらいの子ともなれば遠慮なく抱きついてくる。
「海のにおいがする」
さすがにこの感想には笑えなかった。マーメイドだってバレたんじゃないかって、心配になっちゃったわよ。
ちなみに抱きついてきた子は、すぐに大人の人によって引きはがされていたわ。
「ごめんなさいね。あなたは、初めての参加だったわよね。どこの子かしら」
「あっ、おじいちゃんのところ……じゃなかった、波白医院に住んでいます」
「あら、波白先生のところの子なのね。お孫さんかしら」
「はい、そうです」
子どもの面倒を見ている付き添いの女性が声をかけてきたので、私は応対している。さすがに大人だと事情を知っていそうなので、最低限しか答えない。おじいちゃん先生に迷惑をかけるわけにはいかないものね。
だけど、私に話しかけてきた女性もあんまり踏み込もうとしないのか、それ以上のことを聞いてくることはなかった。私の気持ちを察してくれたっていうことなのかな。
適当にやり過ごしている間に、休憩は終わり、神社に向けて戻っていく。
休憩を挟んで一時間くらいの練り歩きだっただろうか、私たちは出発した神社の駐車場に戻ってきた。
参加賞をもらって他の子どもたちが帰っていく中、私は気になってお神輿の方をじっと見ている。
(やっぱりただのお神輿よね。出発前に聞こえたあの声は何だったのかしら)
どれだけ見つめていても、ただのお神輿だったようなので、私は平川さんたちを手伝おうと出店の方へと向かうことにした。
神社の境内の中には思ったよりも出店が並んでいる。年一回ある秋祭りということもあってか、とてもにぎわっているようだった。
しばらく歩いていると、私はかなり注目を集めているようだった。やっぱり、ピンクの髪の毛って目立つみたいだわ。
「あっ、波白さーん!」
私を呼ぶ声が聞こえてくる。顔を向けると、そこには平川さんの姿があった。
「平川さん」
私は呼ぶ声に反応して、平川さんのところに駆け寄っていく。
「手伝いに来てくれたの?」
「う~ん。どんな感じなのか見に来ただけという方が正解かな?」
私は正直に答えていた。
「おう、彩菜。知り合いかい?」
「うん、お父さん。ほら、話していた転校生の子だよ」
「おう、そうかそうか。彩菜が仲良くしてもらってるみてえだな。そうだ、ちょうどお昼だし、食ってくかい?」
「えっ、いいんですか?」
どうやら出店の男性は、平川さんのお父さんらしい。なんとも似てない。
私が平川さんと友だちだからっていうと、どうやらお昼をおごってくれるらしい。いいのかなと思いつつも、私はごちそうになることにした。
奥のスペースに移動して、私は平川さんと話をしている。
「どうだった、波白さん。お祭りに初めて参加してみて」
「う~ん、思ってたよりは地味だったかな?」
「そっかぁ。まあそうだよね」
私が素直に感想を漏らしていると、平川さんは納得したような感じだった。
「ただお神輿を引いて回るだけだし、どういう意味があるのかよく分からないのよね。神社があるから、まあ伝統かなっていうだけで、私もあまり深く考えたことはないんだ」
「そうなんだ。真面目そうだから、意味を知ってると思ったんだけど」
「なんていうかな。お父さんがちょっと適当なところがあるから、私がしっかりしなきゃなって感じになっただけだよ」
「おい、彩菜。言ってくれるな」
平川さんが話している内容が、おじさんに聞こえていたらしい。しっかりと突っ込まれてしまっていた。
怒られているというのに、平川さんは舌を出して可愛く笑っていた。おそらく普段からこんな感じなのだろう。
私が焼きそばを食べながら平川さんと話をしていると、後ろの方で聞いた声が聞こえてきた。
「おじさん、焼きそばふたつな」
「あいよ。なんでえ、渡んとこの兄妹じゃねえか。海斗、今日は神輿でも担ぐのかい?」
「ええ、そのつもりですよ。結構鍛えられますからね」
「おいおい、神輿でトレーニングすんじゃねえよ。神輿ってのはそういうもんじゃねえんだからな?」
なんということだろうか。私たちのいるタイミングで、海斗たちがちょうどお店に寄ったらしい。
私は見つからないように、視線に入らないように動く。
「ちょっと、波白さん、どうしたの?」
「うん?」
ところが、平川さんが私の苗字を呼んでしまい、海斗が反応してしまった。
「そこのピンク髪……。そっか、マイもお祭りに参加してたのか。先生、そういえばお祭りの医療担当だからな」
目立つ髪の毛のせいで、あっさり海斗に見つかっちゃった。
思わぬ事態に、私は焼きそばをすすりながら固まってしまったのだった。
わっしょいという掛け声とともに、生活道路をゆっくりと練り歩いていく。この声が聞こえてくると、町の人たちは秋が来たんだと実感するらしい。
神輿を引いていると、あちこちに警察の姿も見える。午後の大人たちの神輿担ぎに備えて交通整理があるとのことだそうだ。なんともご苦労なことだと思う。
私自身が初参加で珍しい髪色をしているものだから、子どもたちも引率の大人たちもちらちらと視線を向けてくる。でも、今はお祭りの最中だからって、そっちに集中してくれている。なんともいい子たちだ。
だけど、やっぱり途中の休憩の時には子どもたちは私たちに群がってきていた。
「変な髪色~」
「お姉ちゃん、どこから来たの?」
こんなことを言ってくるのならまだ可愛い方。幼稚園ぐらいの子ともなれば遠慮なく抱きついてくる。
「海のにおいがする」
さすがにこの感想には笑えなかった。マーメイドだってバレたんじゃないかって、心配になっちゃったわよ。
ちなみに抱きついてきた子は、すぐに大人の人によって引きはがされていたわ。
「ごめんなさいね。あなたは、初めての参加だったわよね。どこの子かしら」
「あっ、おじいちゃんのところ……じゃなかった、波白医院に住んでいます」
「あら、波白先生のところの子なのね。お孫さんかしら」
「はい、そうです」
子どもの面倒を見ている付き添いの女性が声をかけてきたので、私は応対している。さすがに大人だと事情を知っていそうなので、最低限しか答えない。おじいちゃん先生に迷惑をかけるわけにはいかないものね。
だけど、私に話しかけてきた女性もあんまり踏み込もうとしないのか、それ以上のことを聞いてくることはなかった。私の気持ちを察してくれたっていうことなのかな。
適当にやり過ごしている間に、休憩は終わり、神社に向けて戻っていく。
休憩を挟んで一時間くらいの練り歩きだっただろうか、私たちは出発した神社の駐車場に戻ってきた。
参加賞をもらって他の子どもたちが帰っていく中、私は気になってお神輿の方をじっと見ている。
(やっぱりただのお神輿よね。出発前に聞こえたあの声は何だったのかしら)
どれだけ見つめていても、ただのお神輿だったようなので、私は平川さんたちを手伝おうと出店の方へと向かうことにした。
神社の境内の中には思ったよりも出店が並んでいる。年一回ある秋祭りということもあってか、とてもにぎわっているようだった。
しばらく歩いていると、私はかなり注目を集めているようだった。やっぱり、ピンクの髪の毛って目立つみたいだわ。
「あっ、波白さーん!」
私を呼ぶ声が聞こえてくる。顔を向けると、そこには平川さんの姿があった。
「平川さん」
私は呼ぶ声に反応して、平川さんのところに駆け寄っていく。
「手伝いに来てくれたの?」
「う~ん。どんな感じなのか見に来ただけという方が正解かな?」
私は正直に答えていた。
「おう、彩菜。知り合いかい?」
「うん、お父さん。ほら、話していた転校生の子だよ」
「おう、そうかそうか。彩菜が仲良くしてもらってるみてえだな。そうだ、ちょうどお昼だし、食ってくかい?」
「えっ、いいんですか?」
どうやら出店の男性は、平川さんのお父さんらしい。なんとも似てない。
私が平川さんと友だちだからっていうと、どうやらお昼をおごってくれるらしい。いいのかなと思いつつも、私はごちそうになることにした。
奥のスペースに移動して、私は平川さんと話をしている。
「どうだった、波白さん。お祭りに初めて参加してみて」
「う~ん、思ってたよりは地味だったかな?」
「そっかぁ。まあそうだよね」
私が素直に感想を漏らしていると、平川さんは納得したような感じだった。
「ただお神輿を引いて回るだけだし、どういう意味があるのかよく分からないのよね。神社があるから、まあ伝統かなっていうだけで、私もあまり深く考えたことはないんだ」
「そうなんだ。真面目そうだから、意味を知ってると思ったんだけど」
「なんていうかな。お父さんがちょっと適当なところがあるから、私がしっかりしなきゃなって感じになっただけだよ」
「おい、彩菜。言ってくれるな」
平川さんが話している内容が、おじさんに聞こえていたらしい。しっかりと突っ込まれてしまっていた。
怒られているというのに、平川さんは舌を出して可愛く笑っていた。おそらく普段からこんな感じなのだろう。
私が焼きそばを食べながら平川さんと話をしていると、後ろの方で聞いた声が聞こえてきた。
「おじさん、焼きそばふたつな」
「あいよ。なんでえ、渡んとこの兄妹じゃねえか。海斗、今日は神輿でも担ぐのかい?」
「ええ、そのつもりですよ。結構鍛えられますからね」
「おいおい、神輿でトレーニングすんじゃねえよ。神輿ってのはそういうもんじゃねえんだからな?」
なんということだろうか。私たちのいるタイミングで、海斗たちがちょうどお店に寄ったらしい。
私は見つからないように、視線に入らないように動く。
「ちょっと、波白さん、どうしたの?」
「うん?」
ところが、平川さんが私の苗字を呼んでしまい、海斗が反応してしまった。
「そこのピンク髪……。そっか、マイもお祭りに参加してたのか。先生、そういえばお祭りの医療担当だからな」
目立つ髪の毛のせいで、あっさり海斗に見つかっちゃった。
思わぬ事態に、私は焼きそばをすすりながら固まってしまったのだった。
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