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第22話 復活
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アーツが目を覚まさないまま、二晩の時が過ぎた。
結局、アーツが目覚めない間は誰も動こうとはせず、ただ沈んだ一日が過ぎていった。
その間もニックはずっと閉じこもったままで、まるで死んだかのような空間が広がっていた。
「う……、ん……」
なにやら声が聞こえてくる。
「あれ、ここは……?」
上半身を起こしたアーツは、頭に手を当てながら、寝ぼけた様子であたりを見回している。
「ん……」
アーツの声に反応したのか、横たわるベッドから離れずにいたクロノが目を覚ます。
クロノが動く様子が見えたアーツは、思わず声をかけてしまう。
「よう、クロノ。おはよう」
「アー……ツ……?」
アーツが体を起こして声を発している。
目の前で起きているできごとに理解が追いつかず、クロノは目を丸くして言葉を失っている。
「お、おい、クロノ?」
あまりにも反応がおかしいので、アーツは思わず体をクロノの方へと動かす。
あれだけの重傷を負ったはずのアーツだというのに、痛みなくその体をクロノの方へと寄せることができた。
「アーツ、本当に目を覚ましたのね。一日以上目を覚まさないから、すごく心配になったのよ?」
「……嘘だろ?」
クロノから飛び出た言葉に、アーツは驚きをまったく隠せていない。
それもそうだ。自分が丸一日以上眠っていたなんて、そう簡単に信じられる気がないのだ。
「とりあえずアーツ、もう少し休んでて。今すぐみんなを呼んでくるから」
「あ、ああ……」
アーツが呆然とする中、クロノは部屋を出て行ってみんなを叩き起こしにいった。
しばらく待つと、全員がアーツが寝ていた部屋に集まってくる。
「アーツが目覚めたって本当か!」
レンクスの大きな声が響き渡る。
「おう、レンクス。この通りすっかりいい感じだぜ」
レンクスの声に、アーツは力こぶを作りながら答えている。
アーツの元気そうな姿を見て、レンクスたちはほっとひと安心だった。
「まったく、クロノが傷を治してくれたっていうのに、目を覚まさないもんだからものすごく心配したんだぜ?」
「悪いな。多分、死ぬかもって思ったのが影響してるのかもな。心配かけてすまなかった」
レンクスがバンバンとアーツの背中を叩いている。
「お前な。怪力に目覚めてるのに、思い切り叩くやつがあるかよ。それに、俺は病み上がりだぞ」
「そうだよ、レンクス。加減してよね」
「ああ、すまん」
アーツとブランに怒られて、レンクスはアーツから離れる。
それを見ながら、クロノは笑っている。
「ニック、どうしたんだ」
盛り上がっている三人とは対照的に、離れた場所で一人静かに立っているニックが気になったようだ。
「……なんでもないよ」
不機嫌そうに答えるニックに、アーツがイラッとくる。
「お前な、なんでそう……」
「ちょっと待ってよ」
アーツが怒鳴ろうとしたところに、ブランが割って入る。
「どうしたんだよ、ブラン」
慌てたように飛び込んでくるものだから、アーツは不思議そうな顔でブランを見ている。
「ニック、ちょうどいい機会だからこれを見てもらってもいいかな」
「僕に?」
ブランから声をかけられると、ふて腐れながらも反応をしている。
だが、ブランが取り出したものを見るや否や、ニックの表情が少し明るくなった気がした。
「ブラン、これは一体?」
「アーツがあたしの代わりに巨大なトカゲと戦ってくれたところで、その直前に見つけたものなの。ニック、調べてもらってもいいかしら」
ブランがその手に持っているのは、巨大トカゲに襲われる直前にノワールが見つけて拾ってきた謎の金属だった。
「確かに、あたしたちと違って特殊な能力に目覚めていないけれど、これを調べられるのはニックしかいないわ。お願い、ニック。これの詳細を調べてもらってもいいかしら」
ブランがずいっとさらに金属を差し出す。
さすがにここまで迫られてしまえば、嫌とは言えないものだ。
それに、ニックにとっては専門分野だ。航宙船の装置を使えるのも実質ニックだけなのだから。
「分かりました。これは見慣れないものですね。この世界で拾ったとするならば、間違いなくオーパーツです」
ブランから受け取った金属をまじまじと見つめるアーツ。さっきまで死んでいた目がまるで嘘のように、その輝きを取り戻していた。
アーツたちもニックの変化にはようやくほっとしたようだ。
アーツが目を覚まし、ニックもすっかり元気を取り戻したことで、航宙船の中の雰囲気はすっかり元のように戻っていった。
これにはブランに付き添っていたノワールとヴェールもひと安心である。
「よーし、アーツは目を覚ましたし、ニックは元気になった。早速楽しく朝食としようじゃねえか」
「ええ、賛成だわ」
「それじゃ、あたしが用意してくるね」
「私も手伝うわよ、ブラン」
ちょうど朝食前ということもあって、女性陣二人が率先して食事の準備を始める。
わいわいがやがやと楽しく食べる食事は、ちょうど二日ぶりだ。
ただ、一度死の淵を味わっただけに、アーツたちの食事をする心構えに、少しだけ変化があったようだ。
ひと口ひと口しっかりと、アーツたちはかみしめるように朝食を味わったのだった。
結局、アーツが目覚めない間は誰も動こうとはせず、ただ沈んだ一日が過ぎていった。
その間もニックはずっと閉じこもったままで、まるで死んだかのような空間が広がっていた。
「う……、ん……」
なにやら声が聞こえてくる。
「あれ、ここは……?」
上半身を起こしたアーツは、頭に手を当てながら、寝ぼけた様子であたりを見回している。
「ん……」
アーツの声に反応したのか、横たわるベッドから離れずにいたクロノが目を覚ます。
クロノが動く様子が見えたアーツは、思わず声をかけてしまう。
「よう、クロノ。おはよう」
「アー……ツ……?」
アーツが体を起こして声を発している。
目の前で起きているできごとに理解が追いつかず、クロノは目を丸くして言葉を失っている。
「お、おい、クロノ?」
あまりにも反応がおかしいので、アーツは思わず体をクロノの方へと動かす。
あれだけの重傷を負ったはずのアーツだというのに、痛みなくその体をクロノの方へと寄せることができた。
「アーツ、本当に目を覚ましたのね。一日以上目を覚まさないから、すごく心配になったのよ?」
「……嘘だろ?」
クロノから飛び出た言葉に、アーツは驚きをまったく隠せていない。
それもそうだ。自分が丸一日以上眠っていたなんて、そう簡単に信じられる気がないのだ。
「とりあえずアーツ、もう少し休んでて。今すぐみんなを呼んでくるから」
「あ、ああ……」
アーツが呆然とする中、クロノは部屋を出て行ってみんなを叩き起こしにいった。
しばらく待つと、全員がアーツが寝ていた部屋に集まってくる。
「アーツが目覚めたって本当か!」
レンクスの大きな声が響き渡る。
「おう、レンクス。この通りすっかりいい感じだぜ」
レンクスの声に、アーツは力こぶを作りながら答えている。
アーツの元気そうな姿を見て、レンクスたちはほっとひと安心だった。
「まったく、クロノが傷を治してくれたっていうのに、目を覚まさないもんだからものすごく心配したんだぜ?」
「悪いな。多分、死ぬかもって思ったのが影響してるのかもな。心配かけてすまなかった」
レンクスがバンバンとアーツの背中を叩いている。
「お前な。怪力に目覚めてるのに、思い切り叩くやつがあるかよ。それに、俺は病み上がりだぞ」
「そうだよ、レンクス。加減してよね」
「ああ、すまん」
アーツとブランに怒られて、レンクスはアーツから離れる。
それを見ながら、クロノは笑っている。
「ニック、どうしたんだ」
盛り上がっている三人とは対照的に、離れた場所で一人静かに立っているニックが気になったようだ。
「……なんでもないよ」
不機嫌そうに答えるニックに、アーツがイラッとくる。
「お前な、なんでそう……」
「ちょっと待ってよ」
アーツが怒鳴ろうとしたところに、ブランが割って入る。
「どうしたんだよ、ブラン」
慌てたように飛び込んでくるものだから、アーツは不思議そうな顔でブランを見ている。
「ニック、ちょうどいい機会だからこれを見てもらってもいいかな」
「僕に?」
ブランから声をかけられると、ふて腐れながらも反応をしている。
だが、ブランが取り出したものを見るや否や、ニックの表情が少し明るくなった気がした。
「ブラン、これは一体?」
「アーツがあたしの代わりに巨大なトカゲと戦ってくれたところで、その直前に見つけたものなの。ニック、調べてもらってもいいかしら」
ブランがその手に持っているのは、巨大トカゲに襲われる直前にノワールが見つけて拾ってきた謎の金属だった。
「確かに、あたしたちと違って特殊な能力に目覚めていないけれど、これを調べられるのはニックしかいないわ。お願い、ニック。これの詳細を調べてもらってもいいかしら」
ブランがずいっとさらに金属を差し出す。
さすがにここまで迫られてしまえば、嫌とは言えないものだ。
それに、ニックにとっては専門分野だ。航宙船の装置を使えるのも実質ニックだけなのだから。
「分かりました。これは見慣れないものですね。この世界で拾ったとするならば、間違いなくオーパーツです」
ブランから受け取った金属をまじまじと見つめるアーツ。さっきまで死んでいた目がまるで嘘のように、その輝きを取り戻していた。
アーツたちもニックの変化にはようやくほっとしたようだ。
アーツが目を覚まし、ニックもすっかり元気を取り戻したことで、航宙船の中の雰囲気はすっかり元のように戻っていった。
これにはブランに付き添っていたノワールとヴェールもひと安心である。
「よーし、アーツは目を覚ましたし、ニックは元気になった。早速楽しく朝食としようじゃねえか」
「ええ、賛成だわ」
「それじゃ、あたしが用意してくるね」
「私も手伝うわよ、ブラン」
ちょうど朝食前ということもあって、女性陣二人が率先して食事の準備を始める。
わいわいがやがやと楽しく食べる食事は、ちょうど二日ぶりだ。
ただ、一度死の淵を味わっただけに、アーツたちの食事をする心構えに、少しだけ変化があったようだ。
ひと口ひと口しっかりと、アーツたちはかみしめるように朝食を味わったのだった。
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