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第四章『運命のいたずら』
裏切り、そして
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玉座を中心として床が光り出す。よく見ると魔法陣が浮かんでいた。
「これは、封魔の陣!? ディラン、あなたはこの魔法を使えたのですか?」
魔法に関してそこそこ精通しているルナルは、すぐさまそれが何か分かったのだ。これにはディランは感心した表情を浮かべている。
「ほう、この魔法陣を知っているのか。この魔法陣は、俺の先祖であるデュークが所属していた騎士団で使われていたものだ。まあ、騎士が使うものゆえに簡易的なものだがな」
ディランは静かに語り出す。
「俺は長年の努力の末に、魔法使いどもが使うレベルの魔法陣を動作させる事に成功したのだよ」
ディランの語りを、ルナルは槍を杖代わりにしながらどうにか持ちこたえた状態で聞いている。
「ここまで言えば分かるだろうが、俺に逆らった連中はみんなこの魔法陣で消えてもらった。だが、安心しろ。魔族となった俺の魔力ではそう長くは封印できない。そのうち魔法が解けて戻ってくるさ」
一歩、また一歩とディランがルナルへと近付いてくる。
「だがな、俺の野望のためにはルナル、お前が邪魔なんだよ」
だが、ディランはルナルを警戒して半分ほど距離を詰めたところで立ち止まり、そう叫びながら剣を再びルナルへと向ける。それに対し、ルナルは魔法陣の魔力に抵抗しながら、ディランを睨み付けている。
「はっ! さすがは魔王というところか。いくら俺の魔法陣が未熟とはいえ、封じられる事なく抵抗を続けられるとはな!」
ディランは必死の抵抗を続けるルナルを鼻で笑っていた。
「魔界のあちこちで騒ぎを起こしておいて正解だったな。アカーシャとソルトの二人は居ては、この計画は実行できなかったのだからな」
「くっ、あの騒ぎはあなたが起こしたというわけなのですか……」
ルナルの反応を見て満足げに笑うディランである。ルナルたちを出し抜けた事を心から喜んでいるようだ。
「ああ、そうだ。魔界の重役であり、なおかつハンターをしているお前たちなら、必ず動くと考えたからな。……案の定、城を離れてくれたからな、おかげで事はやりやすかったよ」
ディランは笑いが止まらないのか、さっきからずっと顔を、剣を持っていない手で覆っていた。
「さて、おしゃべりも終わりだ。いい加減にお前にも消えてもらわないとな。古き者が去り、新たな魔王が誕生するのだ!」
「そうは、いくものですか!」
ディランの高笑いにいよいよ我慢できなくなったか、ルナルは必死に立ち上がろうとする。
だが、そこへ突如として激痛が襲い掛かった。
「なっ!?」
痛みに反応して視線を向けた先に、ルナルは信じられない姿を見てしまった。
「ミン……ト?」
しゅたっとディランの隣に立ったのは、ルナルに仕える猫人三姉妹の長女ミントだった。今の一撃はミントが入れたものなのである。
ルナルは攻撃によるダメージと精神的なダメージでその場に膝をついてしまう。
「ミント、あなたが私を、裏切ったと、いうのですか?」
ルナルの問い掛けに、ミントは一切答えない。ただ、つらそうな表情をしながら視線を逸らしているのだけが分かった。
「くくくっ、ミントは俺の下に寝返ったのだ。残念だったな、無能な魔王よ」
ディランはさらに大声で笑っている。
「さあ、ミントよ。この無能な魔王にとどめの一撃を食らわせてやれ!」
「……畏まりました」
ミントがディランの隣からすっと姿を消す。そして、ルナルへと打撃を加えていった。
「……申し訳、ございません。ルナル様……」
攻撃の際に、ミントの謝罪の声が小さく聞こえてきた。
この声にルナルは悟った。おそらくミントは他の魔族たちが魔法陣に消えていくのを目撃したのだろう。そして、妹たちが心配のあまり、やむなくディランへと寝返ったのだと。
ルナルは、ぐっと歯を食いしばった。
「よし、そのくらいでいいだろう。戻れ、ミント!」
その声に、ミントはルナルから離れ、ディランの元へと戻った。
「さあ、おとなしく消え去れ、最も愚かな魔王よ!」
ディランが魔法陣にさらに魔力を込めようとしたその時だった。
激しい音を立てて、魔王城の壁に大穴が開いたのだ。
「な、何事だ?!」
あまりに突然の出来事に、ディランは動揺して大声を出している。
「ふん、こいつに勝ち逃げされるわけにはいかねえんだよ! マスター様の命令で見張っていて正解だったぜ!」
魔王城へ乱入してきた何者かは、何かを大声で喚いていた。
「誰かと思えば……、アイオロスですか」
「おうよ! 俺様が来たからには安心しな!」
アイオロスはルナルを掴むと、そのまま開けた大穴へ向けて飛び去ろうとする。
「こいつが五色龍か。たかがトカゲごときに、この俺の計画を邪魔されてなるものか!」
ディランはすぐさまアイオロスに向けて剣を向けた。
「聖破斬!」
神聖属性をまとった斬破を放つディラン。だが、素早さ自慢のアイオロスに当たるわけもなかったのである。聖破斬の衝撃波は、アイオロスの遥か後方に置き去りにされてしまったのだ。
ディランが次の攻撃を放とうとした時には、アイオロスはルナルを連れてすでに大穴から飛び去った後だった。
「くそっ、逃がしたか!?」
ディランは悔しがって床を思い切り踏みつける。
「ルナルを逃がしてしまったのは誤算だが、この俺の計画に変更はない。すぐに次の行動に移る、ついて来い」
「……畏まりました」
ディランはミントを連れて謁見の間を後にした。
アイオロスの乱入で最大の危機を逃れたルナルだが、ディランの計画は着実に進行していた。
はたして、ディランの野望を阻止する事はできるのだろうか。
「これは、封魔の陣!? ディラン、あなたはこの魔法を使えたのですか?」
魔法に関してそこそこ精通しているルナルは、すぐさまそれが何か分かったのだ。これにはディランは感心した表情を浮かべている。
「ほう、この魔法陣を知っているのか。この魔法陣は、俺の先祖であるデュークが所属していた騎士団で使われていたものだ。まあ、騎士が使うものゆえに簡易的なものだがな」
ディランは静かに語り出す。
「俺は長年の努力の末に、魔法使いどもが使うレベルの魔法陣を動作させる事に成功したのだよ」
ディランの語りを、ルナルは槍を杖代わりにしながらどうにか持ちこたえた状態で聞いている。
「ここまで言えば分かるだろうが、俺に逆らった連中はみんなこの魔法陣で消えてもらった。だが、安心しろ。魔族となった俺の魔力ではそう長くは封印できない。そのうち魔法が解けて戻ってくるさ」
一歩、また一歩とディランがルナルへと近付いてくる。
「だがな、俺の野望のためにはルナル、お前が邪魔なんだよ」
だが、ディランはルナルを警戒して半分ほど距離を詰めたところで立ち止まり、そう叫びながら剣を再びルナルへと向ける。それに対し、ルナルは魔法陣の魔力に抵抗しながら、ディランを睨み付けている。
「はっ! さすがは魔王というところか。いくら俺の魔法陣が未熟とはいえ、封じられる事なく抵抗を続けられるとはな!」
ディランは必死の抵抗を続けるルナルを鼻で笑っていた。
「魔界のあちこちで騒ぎを起こしておいて正解だったな。アカーシャとソルトの二人は居ては、この計画は実行できなかったのだからな」
「くっ、あの騒ぎはあなたが起こしたというわけなのですか……」
ルナルの反応を見て満足げに笑うディランである。ルナルたちを出し抜けた事を心から喜んでいるようだ。
「ああ、そうだ。魔界の重役であり、なおかつハンターをしているお前たちなら、必ず動くと考えたからな。……案の定、城を離れてくれたからな、おかげで事はやりやすかったよ」
ディランは笑いが止まらないのか、さっきからずっと顔を、剣を持っていない手で覆っていた。
「さて、おしゃべりも終わりだ。いい加減にお前にも消えてもらわないとな。古き者が去り、新たな魔王が誕生するのだ!」
「そうは、いくものですか!」
ディランの高笑いにいよいよ我慢できなくなったか、ルナルは必死に立ち上がろうとする。
だが、そこへ突如として激痛が襲い掛かった。
「なっ!?」
痛みに反応して視線を向けた先に、ルナルは信じられない姿を見てしまった。
「ミン……ト?」
しゅたっとディランの隣に立ったのは、ルナルに仕える猫人三姉妹の長女ミントだった。今の一撃はミントが入れたものなのである。
ルナルは攻撃によるダメージと精神的なダメージでその場に膝をついてしまう。
「ミント、あなたが私を、裏切ったと、いうのですか?」
ルナルの問い掛けに、ミントは一切答えない。ただ、つらそうな表情をしながら視線を逸らしているのだけが分かった。
「くくくっ、ミントは俺の下に寝返ったのだ。残念だったな、無能な魔王よ」
ディランはさらに大声で笑っている。
「さあ、ミントよ。この無能な魔王にとどめの一撃を食らわせてやれ!」
「……畏まりました」
ミントがディランの隣からすっと姿を消す。そして、ルナルへと打撃を加えていった。
「……申し訳、ございません。ルナル様……」
攻撃の際に、ミントの謝罪の声が小さく聞こえてきた。
この声にルナルは悟った。おそらくミントは他の魔族たちが魔法陣に消えていくのを目撃したのだろう。そして、妹たちが心配のあまり、やむなくディランへと寝返ったのだと。
ルナルは、ぐっと歯を食いしばった。
「よし、そのくらいでいいだろう。戻れ、ミント!」
その声に、ミントはルナルから離れ、ディランの元へと戻った。
「さあ、おとなしく消え去れ、最も愚かな魔王よ!」
ディランが魔法陣にさらに魔力を込めようとしたその時だった。
激しい音を立てて、魔王城の壁に大穴が開いたのだ。
「な、何事だ?!」
あまりに突然の出来事に、ディランは動揺して大声を出している。
「ふん、こいつに勝ち逃げされるわけにはいかねえんだよ! マスター様の命令で見張っていて正解だったぜ!」
魔王城へ乱入してきた何者かは、何かを大声で喚いていた。
「誰かと思えば……、アイオロスですか」
「おうよ! 俺様が来たからには安心しな!」
アイオロスはルナルを掴むと、そのまま開けた大穴へ向けて飛び去ろうとする。
「こいつが五色龍か。たかがトカゲごときに、この俺の計画を邪魔されてなるものか!」
ディランはすぐさまアイオロスに向けて剣を向けた。
「聖破斬!」
神聖属性をまとった斬破を放つディラン。だが、素早さ自慢のアイオロスに当たるわけもなかったのである。聖破斬の衝撃波は、アイオロスの遥か後方に置き去りにされてしまったのだ。
ディランが次の攻撃を放とうとした時には、アイオロスはルナルを連れてすでに大穴から飛び去った後だった。
「くそっ、逃がしたか!?」
ディランは悔しがって床を思い切り踏みつける。
「ルナルを逃がしてしまったのは誤算だが、この俺の計画に変更はない。すぐに次の行動に移る、ついて来い」
「……畏まりました」
ディランはミントを連れて謁見の間を後にした。
アイオロスの乱入で最大の危機を逃れたルナルだが、ディランの計画は着実に進行していた。
はたして、ディランの野望を阻止する事はできるのだろうか。
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