彼は今日も私に嘘をつく

こんなことってある？

「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
行ってきますって言ったら行ってらっしゃいって返ってくるって、すごい幸せなことだよね。…無視されることなんてないしね。


「愛梨！おはよ！」
そう言って突進してきたのがもうわかるよね？夏波だよ。
「痛いって…夏波、おはよ！…今日はね、私もう1回ちゃんと別れを告げようと思う」
「そっか。私は愛梨の味方だよ！何回も聞いてる、しつこいなんて言わないでよね？」
｢そんな訳ないじゃん。夏波の言葉に私どんだけ助けられてると思ってるの。｣
「よかったよ…私も愛梨の存在だけでも助けられてる」
「ありがとう、じゃあ行こっか」
「うん」

教室に着くと、まだ彼は来てなかった。朝に言いたかったのにまた後に言うことになりそうかな。
結局彼は、予鈴が鳴ってから来た。彼は、こっちを見ようともしなかった。
「えーっと、今日は転校生がいる！入ってきて！」
ガラガラガラ
転校生が入ってきた瞬間、私は目を疑った。こんなことってある？だってその人は…
「自己紹介お願いします」
「朱羽 葵月 （アカバ ハヅキ）です。よろしく」

朱羽くんと目が合った。あっちもびっくりしてる。目を逸らそうにも逸らせない。 
こんなこともあるんだね。夏波もびっくりしてるわ。もう会えるなんてわからなかったのに、今目の前にいるから。
だって彼は、前にショッピングモールでぶつかった、あの人なんだから。