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第一話 百月探偵事務所
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百華が目を開け顔を上げると、そこは探偵事務所にある自分のデスクだった。
(私ったら⋯眠ってしまっていたのですね)
百華は立ち上がると背後にあった窓の鍵を下げガラガラと開けた。眼下には、 クリスマスにむけてか電球が巻き付けられているのが見える。ふわりと冷たい風がポニーテールを揺らした。その時、ピンポンと事務所のチャイムが鳴った。
「あら。お客さまでしょうか。はーい」
百華は足早に向かい扉を開けると、そこには茶色のロングコートを着た、長い黒髪を肩までのばした色白の女性が戸惑ったような様子で白い息を吐いて立っていた。
「あの・・・|百月探偵事務所はここですか?」
百華なニコリと笑みを浮かべた。
「えぇ。ここは寒いわ。中へどうぞ」
百華は中に招き入れると、ソファに座らせ、暖かいお茶を用意した。
「どうぞ。これ飲んで暖まってくださいまし」
「ありがとうございます」
そう言うと彼女は1口飲むと顔を上げ百華を見た。
「申し遅れました。私の名前は吾妻 凛と申します。今日はその・・・行方不明になった家族を探して欲しくて来たんです」
「詳しく教えていただいてもよろしいかしら」
百華の言葉に吾妻凛は頷き話を続けた。
「今月の1日に弟の光輝がいなくなったと両親から連絡が私に来たんです。光輝は真面目な高校生で家出なんかするような子ではないんです。だから何かあったのかと行きそうなところや友人のところとか探したんですがいなくて・・・。それからしばらくしたら、両親とも連絡が取れなくなってしまって・・・。警察の方だけでなく私も探そうと思って今日はこちらに·····」
「警察の方ということは相談なさったんですのね?」
「はい。捜索願も出しましたが、まだ何も·····」
「それはお辛いですわね」
「はい⋯」
彼女の返答は泣くのを我慢するように震えていた。
「そうですわねぇ。何か手がかりになりそうな物はあるかしら」
「そういえば・・・」
吾妻凛は声を上げると、手提げカバンから1冊の最近発売されたハードカバーの推理小説と手紙を取り出した。
「これが光輝から届いて⋯。そしたら届いたその日にいなくなったって両親から連絡があったんです」
「そうでしたの⋯。ちょっと見てもよろしくて?」
「あ、はい」
小説と手紙を受け取ると、百華は「あら」と声をあげ微笑んだ。
「私もこの小説、気になってましたのよ。吾妻さん⋯凛さんでもよろしいかしら?」
「はい」
「ならば凛さん、凛さんも推理小説はお読みになりますの?」
すると、吾妻凛は首を横に振った。
「私はどちらかというとファンタジーな物が好きで推理物はあまり。光輝もそれを知っているはずなのになんで⋯」
「んー。手紙も見せていただいても?」
「もちろんです」
吾妻凛から手紙を受け取ると百華は開いた。手紙にはこう書かれていた。
『姉ちゃんへ。姉ちゃんが好きそうな小説を見つけたから買っといたよ。良かったらあとで感想聞かせてよ、僕のお気に入りは1番最後だよ。光輝』
(凛さんが推理小説を読まないことを知っているのにわざわざ送るかしら⋯)
訝しげに百華はパラパラめくっていくと見返しの部分に下地とに同じ色の紙についていることに気づいた。
「あら?」
呟くと百華が紙を剥がすとそこから小さな封筒が現れた。百華は封筒を開けた。すると中から小さな鍵が出てきた。
「鍵⋯みたいですわね。これがどこの鍵かおわかりになりまして?」
百華が鍵を手のひらにのせ吾妻凛に見せた。
「あっ!たぶんそれ光輝の部屋の鍵です。でもなんで・・・」
鍵を見た凛は首を傾げた。
「何かお姉様にお伝えしたいことがあったのでしょうか⋯」
「それなら直接話してくれればいいのに⋯」
俯き呟く吾妻凛に百華はそっと近づき背中に手置いた。
「⋯私には兄弟はおりませんが、まわりの方のお話を聞いていると、兄弟でも直接だと話しづらいという内容もあるようですわよ。でも⋯光輝さんは凛さんが大好きだったのでしょうね。でなければ、贈り物をしようとは思いませんわ」
泣きそうな表情を浮かべる吾妻凛に百華が本をわたすと、吾妻凛はぎゅっと本ん抱きしめた。
「ならば余計⋯知りたいです。光輝に、父と母になにがあったのか」
顔をあげた吾妻凛の顔には決意と意志の強さが見えてとれた。
「はい。私もそれに協力させていただきますわ」
「ありがとうございます。あのよかったら光輝の部屋に行ってみますか?もしかしたら何か手がかりがあるかもしれませんし」
「それは助かりますわ」
百華はニコリと笑みを浮かべた。
「なら今からでも大丈夫ですの?」
「もちろんです」
吾妻凛が二つ返事をすると百華は「では」と言いコートを手にし、吾妻凛と共に事務所をあとにした。
(私ったら⋯眠ってしまっていたのですね)
百華は立ち上がると背後にあった窓の鍵を下げガラガラと開けた。眼下には、 クリスマスにむけてか電球が巻き付けられているのが見える。ふわりと冷たい風がポニーテールを揺らした。その時、ピンポンと事務所のチャイムが鳴った。
「あら。お客さまでしょうか。はーい」
百華は足早に向かい扉を開けると、そこには茶色のロングコートを着た、長い黒髪を肩までのばした色白の女性が戸惑ったような様子で白い息を吐いて立っていた。
「あの・・・|百月探偵事務所はここですか?」
百華なニコリと笑みを浮かべた。
「えぇ。ここは寒いわ。中へどうぞ」
百華は中に招き入れると、ソファに座らせ、暖かいお茶を用意した。
「どうぞ。これ飲んで暖まってくださいまし」
「ありがとうございます」
そう言うと彼女は1口飲むと顔を上げ百華を見た。
「申し遅れました。私の名前は吾妻 凛と申します。今日はその・・・行方不明になった家族を探して欲しくて来たんです」
「詳しく教えていただいてもよろしいかしら」
百華の言葉に吾妻凛は頷き話を続けた。
「今月の1日に弟の光輝がいなくなったと両親から連絡が私に来たんです。光輝は真面目な高校生で家出なんかするような子ではないんです。だから何かあったのかと行きそうなところや友人のところとか探したんですがいなくて・・・。それからしばらくしたら、両親とも連絡が取れなくなってしまって・・・。警察の方だけでなく私も探そうと思って今日はこちらに·····」
「警察の方ということは相談なさったんですのね?」
「はい。捜索願も出しましたが、まだ何も·····」
「それはお辛いですわね」
「はい⋯」
彼女の返答は泣くのを我慢するように震えていた。
「そうですわねぇ。何か手がかりになりそうな物はあるかしら」
「そういえば・・・」
吾妻凛は声を上げると、手提げカバンから1冊の最近発売されたハードカバーの推理小説と手紙を取り出した。
「これが光輝から届いて⋯。そしたら届いたその日にいなくなったって両親から連絡があったんです」
「そうでしたの⋯。ちょっと見てもよろしくて?」
「あ、はい」
小説と手紙を受け取ると、百華は「あら」と声をあげ微笑んだ。
「私もこの小説、気になってましたのよ。吾妻さん⋯凛さんでもよろしいかしら?」
「はい」
「ならば凛さん、凛さんも推理小説はお読みになりますの?」
すると、吾妻凛は首を横に振った。
「私はどちらかというとファンタジーな物が好きで推理物はあまり。光輝もそれを知っているはずなのになんで⋯」
「んー。手紙も見せていただいても?」
「もちろんです」
吾妻凛から手紙を受け取ると百華は開いた。手紙にはこう書かれていた。
『姉ちゃんへ。姉ちゃんが好きそうな小説を見つけたから買っといたよ。良かったらあとで感想聞かせてよ、僕のお気に入りは1番最後だよ。光輝』
(凛さんが推理小説を読まないことを知っているのにわざわざ送るかしら⋯)
訝しげに百華はパラパラめくっていくと見返しの部分に下地とに同じ色の紙についていることに気づいた。
「あら?」
呟くと百華が紙を剥がすとそこから小さな封筒が現れた。百華は封筒を開けた。すると中から小さな鍵が出てきた。
「鍵⋯みたいですわね。これがどこの鍵かおわかりになりまして?」
百華が鍵を手のひらにのせ吾妻凛に見せた。
「あっ!たぶんそれ光輝の部屋の鍵です。でもなんで・・・」
鍵を見た凛は首を傾げた。
「何かお姉様にお伝えしたいことがあったのでしょうか⋯」
「それなら直接話してくれればいいのに⋯」
俯き呟く吾妻凛に百華はそっと近づき背中に手置いた。
「⋯私には兄弟はおりませんが、まわりの方のお話を聞いていると、兄弟でも直接だと話しづらいという内容もあるようですわよ。でも⋯光輝さんは凛さんが大好きだったのでしょうね。でなければ、贈り物をしようとは思いませんわ」
泣きそうな表情を浮かべる吾妻凛に百華が本をわたすと、吾妻凛はぎゅっと本ん抱きしめた。
「ならば余計⋯知りたいです。光輝に、父と母になにがあったのか」
顔をあげた吾妻凛の顔には決意と意志の強さが見えてとれた。
「はい。私もそれに協力させていただきますわ」
「ありがとうございます。あのよかったら光輝の部屋に行ってみますか?もしかしたら何か手がかりがあるかもしれませんし」
「それは助かりますわ」
百華はニコリと笑みを浮かべた。
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「もちろんです」
吾妻凛が二つ返事をすると百華は「では」と言いコートを手にし、吾妻凛と共に事務所をあとにした。
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