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オーダー・巫女の妹の命を救え
13 猛者
「あーっと。その、味見ってのはやっぱり?」
「たぶんセックスですねえ。エロ系のステータスとか、それを上げれば支配度を上げやすくなるとか。それに初回と開発ボーナスの仕様とか考えるとそれしかないかと」
「そんな。そんなラッキーな事があるのか? いや待て、昨日今日は休日にしたから財布には稼ぎがないぞ。急いで冒険者ギルドに行って預金を下ろしてこないと」
「ちょ、ちょっと待ってください。ツッコミどころしかなくって訳わかんないですって。なんでお金が要るんですか?」
「こんな若くていい男とセックスするなら対価となる金が必要だろうが。当り前だろうって」
「いやいやなんで? もしかして夜神教の神官さんってセックスでお布施とか集めてたりするの?」
「使徒様。こちらの世界では、体を売る仕事に就くのは男性の方が多いと聞きます。女性は魔法を使う仕事が多く、MPの消費が多いほど給金も上がってゆく傾向にありますので。特に冒険者はそういった稼げる仕事の代名詞でもありますし」
「MPの消費。……もしかして、MP回復ポーションにも男の人の精液を使うけど」
「はい。性行為でも、特に異性の体液を粘膜から吸収する事でMPは回復します。経口投与するMP回復ポーションは本来、男性を連れて行けない場所でMPを回復する代替手段ですね。そして高給取りの女性はだいたいが仕事でMPを消費してしまうので、仕事帰りにお酒を一杯というような感覚で男性を買ったりするのも珍しくはない話だそうで」
「ほえー」
仕事の帰りに夜のお店に入って、とりあえず生。
生は生でもセックスの方でって?
僕、こっちの世界ならいくらでもお金を稼げるのかも。
「持ち運べる方の神器で調べ物ですか、使徒様?」
「あ、うん。もし僕が自分にも使徒オーダーを出せるんなら、お金とステータスポイントめっちゃ稼げそうだなあって。……あー、でもダメっぽい。使徒オーダーは信徒にしか出せないらしいや」
「ではジーンさん」
「お、おう」
「私は席を外しますので、ご存分に」
「いやニルちゃんが席を外しちゃダメでしょ」
「どうしてですか?」
「いやだって、ねえ。ジーンさん?」
「お、おいおい。ニルはアタシの恩人であり師であり、カマラ神様の巫女だったニウさんの娘だぞ。それにアタシは12の頃から四季休暇になるとこの家に通ってレベル上げをしたから、6つくらいのニルとはよく遊んだもんだ。そんな相手と、その、あれはなあ」
「すいません。まったく話が見えないのですが」
これは。
僕もしかして盛大にミスった?
そんな事を考えながらジーンさんに視線を向ける。
「ま、まああれだ。タダ酒タダチンが大好物ってバカにされる冒険者って人種にだって、多少の見栄ってのはあるからな。はいそうですかとパンツを脱いで美少年に跨るのはカッコがつかんって話だ。覚悟を決めるまでは待ってくれるとありがたい」
「あー。……とりあえずニルちゃん。ジーンさんがお酒好きならあっちの部屋からお盆ごと持ってきてもらえる? まだお酒かなり残ってたでしょ。今日のうちに味見のオーダーを片付けるかは、飲みながら考えてみればいいさ」
「それもそうですね。すぐにお持ちします」
ニルちゃんがソファーから立って応接室を出てゆく。
そしてドアが静かに閉まると同時に、ジーンさんはこれ以上ないほど大きな溜め息を吐いた。
「あのなあ、使徒様よ」
「ほんっとごめんなさい。性癖が見えてるのって僕だけなんですよね。すっかり忘れてました」
「済んだ事だしそりゃもういいが、なんだって性癖なんてもんが見えちまうんだか」
「僕が聞きたいですって。でもね、ジーンさん」
「おう」
「さっき話した初回ボーナス。おそらくだけどレズプレイでも出ますよ」
「なんっ!?」
ジーンさんはかなり驚いたようだけど、数秒後にはそれもそうかと呟きながら豆茶を口に運ぶ。
「ジーンさんの魅力も40台の後半だけど、ニルちゃんもそのくらいあります。そして誰がどう見ても美少女だし。おっぱいおっきいし。嫌じゃないなら試さないと、その、言い方は悪いけど……」
「まあもったいないし、試さなきゃ損だよなあ」
「はい。で、ニルちゃんにレズプレイの初回ボーナスか開発ボーナスが出ればジーンさんにもステータスポイントが付与されるし、もし3Pの初回ボーナスもあれば3人全員にステータスポイントが入るんですよ」
「むむむ……」
さて、どうなるか。
性癖に『レズプレイ・レベル3』なんてのがあるジーンさんだから、本当はまんざらでもないはず。
別に僕が正統派美少女とクール系美女と3Pがしたいだとか、初回ボーナスのおかげでニルちゃんと本番ができないからジーンさんに跨って腰を振りたいだとかはないけれど、了承してくれたら楽しい事になりそうだ。
「あ、そういえばジーンさん」
「ん?」
「この神器でジーンさんのステータスって見てもいいんですか? かなりの個人情報が覗かれる事になっちゃうんですけど」
「いいに決まってる。使徒様、じゃなくってユウキはアタシの上官みたいなものだし、使徒オーダーというのを出すには部下の能力を知るのが必須だろう。まあ、性癖なんかを見られるのが恥ずかしくないとは言わんが」
「助かります。それにしても、ポンチョの下すんごいですね」
「なにがだよ?」
「マイクロビキニみたいな黒い、水着でも下着でもないっぽいの。乳輪がギリギリ隠れてるくらいでしょう、それ」
「まあそうだが、冒険者が好んで着けるありふれたレザーアーマーだぞ。アタシのこれは先代の巫女がエンチャントをしてくれた特注品だが、見た目は普通の店売り品と変わらん」
「まさか冒険者さんってみんなマイクロビキニなんですかっ!?」
冒険者ギルド天国じゃん。
「だからビキニじゃなくってレザーアーマーだっての。MPは寝て起きれば時間に応じて回復するし、男の体液を粘膜で吸収すれば一気に回復してくれる。でもこうやって肌の露出を可能な限り多くしとけば、ほんのちょっとずつだけど歩きながらだって回復するんだよ」
「ほえー。アーマーって言うくらいなのに防御力とかいらないんですか?」
「魔法があるのにモンスターに接近戦を挑むかっての。遠距離攻撃をしてくるモンスターなんて稀だし、そんなのに備えて普段から重装備をしとくのも効率が悪いだろ」
「なるほどー」
という事は、モンスターとの戦闘は魔法で遠距離攻撃がメインか。
じゃあスキルがあったって縄も鞭も使えないじゃん。
やっぱり近い将来メインオーダーを終えた僕がレベルを上げようと思ったら、ステータスポイントを使って戦闘に向いたクラスを取得するしかないのか。
「しかしその神器を操る姿は見るからに怪しいな。外ではやめておけよ?」
「りょーかいです。っていうか、今クラスなんて見ても仕方ないか」
「そういやステータスポイントってので取れるって言ってたな」
「はい。お値段それなりにしますけどねえ」
「まあ与えてもらえるだけラッキーさ。普通ならクラスってのは安全な街を出てモンスターを狩ってレベルを上げて、最低でも5種ほどの魔法やスキルを揃えてやっと得られるもんなんだ」
「なるほど」
ジーンさんは冒険者。
つまりモンスターを狩って生計を立てている専門家だ。
ならばいい今が機会だと街の外の事やモンスターの事、特にレベルを上げる方法なんかを質問してみる。
当たり前だけどその説明はすぐには終わらず、運ばれてきたお酒を数杯飲んでようやく一区切りがついた。
「懐かしいなあ。レベルが2に上がった時の興奮は今でも覚えてるよ」
「私もです」
「こっちの世界って13歳で義務教育が終わって、15歳で成人でしょ。ならみんなその2年でレベル上げ?」
「そもそも最初から魔法を使える女はどうにでもなるが、男の子はなあ」
「レベルを2に上げる定番のウサギやネズミやカニのモンスターでも、遠距離攻撃スキルがなくては逆に狩られるのがオチです。男の子でそれを持って生まれるのは全体の1割もいればいい方でしょう」
「こっちの男の人って、ほんっと大変だねえ」
「昔は男も武器を担いで狩りに出たらしいけどな。今じゃそんな気概のある男なんてこの王都にも数人しかいないぞ」
「へえ。でもいるにはいるんですね、男の冒険者さんも」
「まあな」
そういえば、夜神教の信徒の男の人はどうやって支配度を上げればいいんだろう。
……まさかだよねえ。
「使徒様、大丈夫ですか? 顔色が急に」
「う、ううん。なんでもない。嫌な想像をしちゃっただけ」
「自分の事となるとそれかよ。アタシ達にはさせようとするくせに」
「させる、ですか? ………………あ。もしかして」
ニルちゃんが頬を染めて俯く。
「無理強いはしないって。たださっき、レズプレイでもたぶん初回ボーナスが入るよねって話してただけ」
「それはそうかもしれませんが、無関係のジーンさんにそんな事をお願いする訳には」
「無関係ではないだろニル。信徒が使徒の世話をする巫女を助けるのは当然だ」
「で、でも」
「アタシは相手がニルなら異存はないぞ。ニルはどうなんだ?」
「それは、その…… 嫌ではないです。でも」
「嫌じゃないならそれでいい。ほら、おいで」
「えっ」
ジーンさんが隣に座っているニルちゃんの肩に手を回して抱き寄せる。
さすがレズプレイ・レベル3の猛者。
判断が早い。
いいぞ、もっとやれ。
でも雰囲気に流されてファーストキスを奪おうとしたら、遠慮なく縄術スキルを試させてもらおう。
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