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優しい嘘は永遠に
しおりを挟む「わかれましょう」
その一言に戸惑った、なんで別れるのか?自分が何か悪かったのか?それとも別の男を好きになったのかと考えを巡らせる、次第に頭は冷静になり、考えるのをやめ真剣な表情、だけどどこか悲しそうな面持ちをしている彼女に質問をする
どうして?
ただ一言、だけどその言葉には先ほど考えていた想いより、彼女のことを離したくない、離れたい思いが込められていた、自分で言うのもなんだけど相当に彼女を愛していたらしい、そして彼女は閉じていた口を開き言葉を紡ぐ
「あなたの事が嫌いになった、ただそれだけよ」
この瞬間僕は悟った、他の理由でもなんでもなく、ただ単純に嫌いになった、理由もなく、そういうことなのだろう、だけどそれを言っている彼女の顔は今にも泣き出しそうで、それを必死に仮面をかぶってるように感じられた
結局、彼女とは別れることになった、理解はしたが納得はしていない、でも彼女もまた新しい人を見つけ、家庭を築いていくのだろう
僕はもう人間不信とは行かないまでも、彼女は一生作らないだろう、それだけ今の心境は歪に入り組んでいて、誰かに救われないと、いや、彼女じゃないとこれは戻らないだろう、でもその彼女は僕が嫌いで去って言った、本当に理解はしてても納得はしていない、改めて思った
とりあえず寝よう、そしたら忘れているだろう、彼女のことも、このモヤモヤした気持ちも、自分自身を偽って、いつも通りに過ごせるのだろう、確信すらもない、ただ悲しみと歪な心が残っただけ、そうしながら意識は暗闇の中に沈む
「わかれましょう」
私はその言葉を口にする、悲しみすら押し殺して、彼のためと自分自身に言い聞かせて心を殺す、だけど殺しきれてなかったのだろう、ほんの少しだけど顔に出ている、結局は最後まであなたと別れたくないと思っているんでしょうね、納得しても理解はできない、これは私たちがよく喧嘩した時に使う言葉だったわね
どうして?と理由を聞かれた時に、今までより、心の負担が減る、それは押し殺していた感情が、心がちょっとでもまだ間に合うと言っているのだろう、本心はそうしたい、だけどそれをしたら何もかも終わってしまうから、そう言い聞かせる、泣きそうになっても、あとで自分自身に怒りを募らせることもあるだろう
これが一番の正念場だ、1回目ならまだしも二回目、それも嫌いというのは自分自身を殺したくなるほどに怒りが湧いてくる、それほどに彼のことを愛しているのだ、でもまだこの演技を本当に思っているように思わせなければいけない
「あなたのことが嫌いになった、ただそれだけよ」
言ってしまった、心は握りつぶされそうなほどに苦しく、思わず本音が漏れてしまいそうだった、だがここで弱音は吐いてはいけない、吐いたら泣いちゃうから、彼に頼っちゃうから
そして私は彼に背を向けて歩き出す、歩く音が誰もいない公園に響いて、心の叫びを表しているようだった
あれから1ヶ月が経つ、未だに僕は彼女のことを忘れられない、今でさえ昨日のことに感じ、心が締め付けられるように苦しくなる、彼女から別れを告げられて半月はご飯も通らないし、仕事にすら行けなかった、そして毎日泣いて、泣いて、涙が枯れそうなほど出ても、止まらなかった、今ではちょっと恥ずかしいが後悔はしていない、彼女のことは今でも大事で、もし困ってることがあれば助ける、嫌われていようとね、彼女には色々なものをもらったから恩返しみたいなものだろう
そして僕は黒色の高級品と思えるスーツを着る、一応大企業の社長だからね、服装をちゃんとしていないとあの子に笑われる、あと僕は今年で24だ、会社は2年でここまで大きくした、自分でも異常だと思うが、運と人に助けられたのがほとんどだからあまり自惚れはしない
部屋に鍵をかけ、マンションの最上階から最下層に繋がるエレベーターに乗る、やはり何度乗っても怖い、後ろはガラス張りになっているので高所恐怖症な僕からしたら死にそうなのだ、なら何故ここにしたかというと、一年前に彼女と付き合ってから彼女と住むなら一番上がいいと見栄を張った結果だ、過去の自分を呪うよ
最下層に着き、迎えが来るであろう時間を腕時計で確認する、そして時間になり、一台の車が来る、その車は黒色、そしてなにより車の横側に紋章が付いている、僕は厨二くさいから嫌と言ったんだが、あの子は絶対に聞いてくれなかった、これも厳しく言えない性格のせいだろう
周りの目が集まる中、車の助手席に乗り、シートベルトを締める、そして隣の女性は何の言葉を発することなく、車をマンションの前から移動し、僕の会社の本社までの道のりに入る
本社についてからも彼女は一言も発せず、会社の入り口から進みエレベーターに乗り最上階、執務室まできてようやく口を開く
「まだ、あの人のこと考えてるんですか?」
「ッ?!…あぁ、そうだね」
その言葉に心臓が跳ねる、やはりこの子は恐ろしいほどに頭が回る、天才すら赤子と言えるほどだろう、そして僕は突然のことで頭が回らず、動揺して単調な言葉を返すだけ
その子は何もなかったように執務室の扉を閉め、資料を渡して来る、仕事にかかれということだろう、やはり厳しい
あの子とのいつもの仕事を終わらせ、僕はあの子にマンションに送ってもらっていた、いや僕免許は持ってるんだよ、でも運転怖いから自分で運転できないんです、臆病と言われても高いところ苦手な時点で散々彼女にからかわれたのでもう慣れてますはい
僕は自室に戻ってきたわけだが、風呂入って寝ることしかやることがない、彼女がいた時は二人でゲームやったり、夜遅くまで夜更かしして翌日仕事がきつかったっけなぁ、そんなことを考えているとやはりいつものように顔に水が滴る、これももう毎日だ、まだ以前よりは良くなったが、家に帰って来ると彼女との思い出も思い出してしまう、でもそれでも僕はこの思い出は悪くないと思ってしまう、やはり甘いのだろうか、突然嫌いと言われ理由もなく別れた彼女にこの接し方は、もっと怒れと、大半の人は思うだろう、だけどそれでも愛している。いつまでも
そして時は流れ、一年が経とうとしていた、僕の会社も超大手といっていいほどに成長していた、でも心の傷は治る兆候を見せたが、12月に入り、速度を増して心を蝕み、傷つけていった、結局は忘れられない、彼女も多分新しい彼氏でも作っているのだろうか?それはちょっと悲しいなぁ
そして今日は12月31日、僕と彼女が付き合った日、そして…一年越しの彼女との再会の日だった、彼女から直接言われたわけでは勿論ない、あれだけ嫌われていたのだ、誘って来るわけがない、だが驚いたことに彼女の両親が合わせたいといってきた、でも彼女の両親達は何故か悲しそうな顔をしていた
僕は雪が降る中歩く、歩くたびに雪が潰れ、そしてまた新しい雪が入り穴を時間をかけて埋めていく
僕の目の前には懐かしい彼女の家…ではなく、葬式場のようだった、彼女に会いにきたのだが、何故だろうか?理由もないのに涙が出そうになる、これが嫌な予感というやつだろうか?
そして僕は靴を脱ぎ、式場の床を踏んで葬式場を目指す、彼女と別れた時以降姿を見せなかったモヤモヤとした感情に気づかないまま
やがて僕は式場に着き、彼女の姿がないことに気づく、僕が入ってきたことに気づいた彼女の両親が近付いてきて、頭を下げる、両親の目には大量の涙が、何故だろうか、大事な人が死んだのだろうかと、僕は式場の前の写真を見て唖然とする、、理解を拒む、納得も拒む、そして自分の顔には一年前に彼女と別れた時からずっと理性で抑えていた涙が紐が千切れた反動のように流れ出て来る
そして僕は何も聞こえないし、聞きたくもない、彼女が死んだ、それだけで僕の意識は手放される、意識を失ったわけではなく、頭の中で現実逃避をしている、それだけだ
何分?いや何十分だろうか?そんな中頭の中で多少冷静になり、現実逃避から現実に帰ってくる
彼女の両親に説明を求めようと口を開こうとすると、それよりも先に彼女の母親が理由を説明してくれる
「娘が死んだことへの説明ですよね、その前に一つ言わなければいけないことがあります」
言わなければいけないこと?何だろうか?考えてもよくわからないから頷く
「あの子は貴方のためを思って行動してました」
理解できないまま唖然としていると彼女の母親は話を続ける
「貴方の感情は理解できます、何故一年前、娘が貴方を理由もなく突き放したのか、それは、娘が不治の病のにかかっていたからです」
ッ?!瞬間僕は全てを納得した、いや正確には納得させられた、あの人行動、理由もなく振った理由、あぁ、そうか、彼女は、全て僕のために、一年前振った時から各国の医療機関を周り、治療法を探す、それは勿論僕には会えない、しかも迷惑を掛ける、見つからなかった時、死を待つしかなく、同時に僕に多大なる喪失感をもたらして来る、これを予期して彼女は一年前に僕のために振った
これを理解した瞬間、さっきよりも涙が溢れてくる、死んだという悲しみと、僕のためという嬉しさ、それが涙となって一緒に出て来る
僕は君を誤解していたのかもしれないね、愛していると、別れた後でも言っていたけど、多分憎んでいたんだと思う、何で理由もなく捨てたのかって、自分を偽っていたんだろうね、でもありがとう、醜さを気付かせてくれて、僕に気を使ってくれて、僕の彼女は最後に優しい嘘を永遠に遺してくれました、君とは永遠に会えないけど、それでもありがとう、さようなら
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