Dream Mythology

序章

始まり

世界を創造したという神ウラノス。そのウラノスを父とするクロノスは、父を倒し、妻のレアとともに宇宙の主となった。しかし、ウラノスを倒す際、「おまえも息子によって王位を奪われるだろう。」と予知されたクロノスは、レアとの間に子供が産まれると次々に飲み込んでしまった。六番目の子供であるゼウスは、母親レアと共謀してクロノスに飲み込まれた子供たちを吐かせ、打倒クロノスと反旗を翻した。天地を揺るがす戦いは十年以上続いたが、ゼウスの勝利で幕を閉じた。こうしてゼウスは最高神となった。天界には神々や天使が住み、下界には人間や動物が平穏に暮らしていた。全てが平和だった。

天界の夜はどこか不思議な静けさがあった。最高神ゼウスの妻であるヘラは、ある事件をきっかけにゼウスの神殿の横に小さな神殿を建て、そこで暮らしていた。ヘラはいつになく眠れず、自分の身体を起こして大きな鏡の前に立った。そっと鏡に手を伸ばすと、鏡の中の手がヘラのそれに合わさる。手が合わさったとき、映っているのは自分に似ているが自分ではない姿だった。鏡の自分は確かにこう言った。

＜ごめんなさい…あなたを裏切るつもりはなかったの…。でも私はあの人を好きになってしまった…。ごめんなさい。＞

ヘラは驚いて手を離し、鏡をじっと見た。そこにはいつもと同じ自分の姿が映っている。

（今のは…幻？そうよ、あなたは…もうここにはいない。）

ヘラは再びベッドに戻り、深い眠りについた。