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26 マミ 街を歩く (1)

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 「あー、ごめーん!!、
ちょっと、いろいろ連絡取ってたら時間掛かっちゃって!!」と、マリンが、
純白短めのスポーツタンクトップに、ブラは着けてなく、
紺色デニムのホットパンツで、
合間で心持ち元気良く可愛らしいお腹と可愛らしい臍が見えている姿で、
マミ達の部屋に入って来て、「…何かあったの…?」と、
微妙な雰囲気に少し首をかしげる。
「…特に何かあったってわけでもないんだけど…」と、苦笑気味なマミに、
マリンが、「ま、いっか。ね、みんなで街の様子観に行かない!?、
ネットばっかりじゃなくって直に戦争しなくて済んだ街の雰囲気
観ときたいし!」と。
 
マミが、「…うん、そうだな。じゃ、みんなで行くか!」と、
微笑み、「…っと、その前に…!」無造作に髪の色を紅紫に変化させる。
フレナが、「髪の色変えちゃうの!?」と、ちょっと目を丸くし、
マミが、「…おれの画像ネットで何時の間にか拡散してて、
正体気付かれない様にしとかないと騒がれそうな雰囲気だし…。
ほんと何時の間にどこで撮影されてたんだかなあ…」と、ぼやき気味に。
「別に気にしなきゃいい様な気もするけど。」と、
のほほんと微笑むフレナに、
「…おれ、騒がれたりするの苦手だし。」と、マミが、髪の色の
変化ばかりでなく、さりげなく認識阻害効果も発揮していたりしつつ。
 
 メイド姿で出ようとしたフィリスだったが、さすがに少し目立ち過ぎるので
淡い水色で太股が殆ど露わなミニのパフスリーブワンピースを
身に着ける事に。
 
 ちなみに、マミ以外の5人に与えられているガッディスジュエルは、
今は超次元空間で待機している状態で隠れていて、
何らかの危機が発生した瞬間に通常空間に復帰する様になっている。
待機状態のガッディスジュエルでも、
素性を明かさない為の認識阻害効果は問題無く発揮出来る。
 
 
 
 空は限り無く澄んで青く、白い雲が所々、その空を彩っている。
「…こんなに気持ちいい日の光、久しぶりだな…」と、
街を歩いているマミが、ふと立ち止まり、空を見上げて、無垢に微笑む。
「…日本って晴れないの?」と、ふと、フレナがたずねて、
マミが、「…夏とか無茶苦茶暑くなったりしてさ…、つらいんだけど、
こっちの日差しは穏やかで…、空気も美味しいし。魔法科学文明って、
公害とか全然無くて自然と共存出来るっていうの、ほんといいなって、
なんかこう、風に触れて実感出来るって感じかな。」と、
ほのかに苦く、そしてまたおだやかに、微笑む。
 
 「…それにしても…、」と、ほのかに頬を染めつつ、マミが、
道行く人々を眺めつつ、「…こっちの世界って、ほんと、女の子がみんな
可愛いんだよな。」と。
「そこはそれ、女神ヴェリアの加護が行き届いてますから。」と、フレナが。
「…みんなの表情が明るくて良かった。」と、しみじみと言うマミに、
ふと、ミーユが、色々と複雑な表情を面差しに過ぎらせつつも、
微笑んで、「…徴兵されてた家族が戻ってくる目処が立ってますし、
それに、これからは生活も良くなってくる、っていうのが、
見えて来てますから…」と。
マリンが呼応する様に、「…今まで何でも軍事優先だったけど、
これからは、政府も財界も、景気を立て直す為に本腰入れますから。
明日が明るいってなったら、みんなも、
『頑張ろう』って、なりますよ。」と、決意を込めた笑顔で。
 
 永世中立であるはずの交易都市、アルステリアですら、
洗脳波動の影響下で戦争準備最優先の人間族の方針に屈し、
実質的支配下で徴兵に応じざるを得なかった、
その屈辱を吹き飛ばそうとする精神的活力が、
行き交う民の面差しに宿っている。
 
 
実の所、マミの居住地を決定する際安易にアルステリアに
定まらなかったのも、洗脳波動影響下とはいえ一時は
人間族支配下に置かれていたという事情が影響している。
しかし他の候補地の諸条件やデメリットを分析した結果
アルステリアに勝る候補地をついに見出せず、
「ベストよりはベター」という形で最終決定に至ったというのが
実情である。
 
 
 幾つも屋台が並んでいる。人間族、竜族、妖精族、暗黒魔族、獣人族、
中には強大な超能力を有する亜人族と呼ばれる種族もいて、
多彩な種族の多彩な商品やサービスがやりとりされている。
「…ほんといろんなのがあるなあ…」と、
物珍しげにきょろきょろしているマミに、
マリンが、「ここは交易都市だから、種族間交流が活発なんです。
商売人の人達ってとにかく動きが早いから、人間族と竜族の対立が
終わったってなった途端に、人間族のものに餓えてた竜族の流入に
即時対応して竜族向けに力入れたりとか、
ビジネスチャンスは逃さないってノリで。」と、少し不敵に微笑みつつ。
「…なるほどねえ。」と、マミが、わずかばかり苦笑気味に微笑んで。
 
 ふと、スパイスを効かせた地鶏の肉の炙り串焼きの屋台に、
マミが、「あ、あれうまそう!」と、目をつけて、
マリンが、「あ、わたしも!」と、勢いづき、
フレナが、「わたしはフルーツミックスアイスにしよっかなー、」と、
別の屋台に目を向けつつ、「フィリスちゃんはどうする?」と、声を掛けて、
フィリスが、「!っ、あの、えと、わたしは、
ブラックベリーにします!」といささかあせって、
クレイアが、「…わたし、チーズケーキ味にしとく…」と、ぼそっと応じ、
ミーユが、「…フェアリーオレンジジュースにしとく…」と、
おとなしい口調で。
 
 惑星エルクヴェリアの生き物や食べ物などには、
地球とは異なるものも幾つもあるが、地球と同じものも幾つもある。
ガッディスブレインでその事を知り少し不思議に感じているマミではあるが、
(まあそういうものか)と、大して気にしていない。
 
 「んー、うま―…」と、無邪気に地鶏の肉にかぶりつくマミの笑顔は、
元は30歳の男だったはずなのに、まるで子供に戻ったみたいに、
何だかとても幼く、とてつもなく可愛らしくて、
道行く人達が、思わず見惚れてしまっていて、
マミ自身はその事に気付いていない。
 
 マミ達の前方を母親に連れられた6歳ぐらいの女の子が歩いている。
手にはデフォルメされたふわふわもこもこの竜の風船が。
 
ふと、その風船をつないでいる糸が女の子の手を離れてしまって、
「あ」と、女の子が悲しげな表情に。
 
 「!」無造作に、マミが、2メートルばかり上空に翔んで、
風船の糸を捕まえて、舞い降り、
マミのタンクトップブラウスが風に舞って、
危うくノーブラの豊満な乳房が見えそうになり、
乳房の柔肌に直接風を感じて、
「!!」思わずブラウスは押さえたが、
マミのミニスカートが風に舞って、純白の可愛らしいパンツが、
思いっ切り周囲の人達の視線に晒され、
「!!!」女の子の服に慣れていないのが明らかな有様で、
真紅に頬を染めたマミが、あわててスカートの裾を押さえて、
少し気まずそうに、それでも、「はい。」と、女の子に微笑み、
風船の糸を手渡す。
 
 「…ありがとー。」うれしそうに、女の子がマミに微笑む。
 
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