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36 マミ マリンに戦いを挑まれる (1)

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***
 
 
 マミが、「…ガッディスブレインだけじゃ、ない…?」と、
怪訝そうな表情になり、
ピクシーが、「…ガッディスバディの放つ神界波動を制御する事によって
行使する神界魔術、特殊な技、その他の様々な奇跡、etc.、
マミさんはありとあらゆる事を行う事が可能です。
可能な事のバリエーションは無限といっても良いでしょう。
それだけに、マミさん自身が、自分に何が出来るのか、
完全に認識乃至感知する事は不可能となってしまう、という事です。
自分に何が出来るのか知ろうとすればするほど無限の情報量に
触れてしまって、精神や自我に負荷が掛かる前に
リミッターに遮られてしまいますから。」と、いささかため息混じりに。
 
 「…それじゃおれ何もかも訳が分からないままで
勇者の力を使わないといけないのか…。」と、マミが、頭を抱える。
 
 ピクシーが、苦笑気味に、「…全く何もかも訳が分からない、
という事はないと思いますよ。現に今までの戦いでも、
マミさんは必要な状況で必要な能力を適切に引き出してますから。
無限から最低限必要な有限を引き出して適切に処理する、そういった能力は
ガッディスブレインとガッディスバディに本来備わっていますし、
情報不足が原因で発生する能力行使時のトラブル発生を
事前にストップさせるのもリミッターの役割ですから。
現状データからの推測の範囲内でしかわたしには言えませんけれど、
マミさんが能力を行使する事で想定外のトラブルが発生する可能性は
限り無くゼロに近いと推定されます。」と。
 
 マミが、かなり深刻な表情で、「…まあそれでも、おれの能力は
慎重に使わなきゃいけない、って事だよな。一歩間違えたら、
みんなをとんでもなく不幸にしてしまう能力でもあるんだから。」と。
 
 ミーユが、「…マミ様……」と、言葉を失った表情になり、
フレナが、「…そんなに心配しなくてもいいと思うんだけど…」と、
なだめる様に。
 
 暫し、沈黙が流れて、
 
 「…もう一つ心配があるんだけど…、」と、マミが。「…ピクシー、
このまま女の子でいたら、おれの元の男性としての人格は崩壊して
しまうんだろうか…?」
 
 「!!!!」ミーユが、酷く震えて、
「……」フレナが、どうしようもなく、うつむく。
 
 なだめる様に苦笑しつつ、ピクシーが、「…その可能性は
ほとんどゼロだとわたしは予測します。…30年間男性として生きてきた
記憶というものが健在である限り、マミさんの男性の心というものが
消え去る事はまずあり得ません。…少女の肉体で生きていれば
男性の心が表面的には表れにくくなるかもしれませんが、たとえ
潜在化し無意識化に追いやられたとしても、消滅はしないでしょうし、
意識的に男性の心を表面化させる様にすれば、
問題は起きないでしょう。」と。
 
 フレナが、苦笑気味に、「・・良かったね、ミーユ。」と、微笑み、
「……!!!!」安心したのか、ミーユが、幼い頬を真紅に染める。
 
 「…まあ、余計な心配はしない事にしよっか。」と、マミも苦笑する。
 
 
 
 マミ以外の5人が、それぞれの所属勢力や関連勢力との定期連絡で
一旦個室に戻り、(…さて、どうしたものか……)と、何となく散歩気味に
庭を歩くマミの背後から、
 
 「…あの、マミさん…!」と、思い詰めたマリンの声が。
 
 「…何?」と、少したじろぎつつ振り向くマミに、
 「……わたしと、戦ってもらえませんか…!?」と、マリンが、
決意を宿した瞳で。
 
 「!!!!?っ、戦う…!!!!?」思い切り戸惑うマミに、
「お願いします…!!!」と、マリンが、思い切り深く頭を下げる。
 
 「ちょ!!!!?、そんな、頭下げなくていいから…!!!!、
…突然一体どしたの…!!!!?」心配になるマミに、
 
 「…どうしても一度、自分で自分を試してみたいんです。
…わがまま言ってるって解ってます!、すみません…!!、
でも、わたし、どうしても…!!!」と、マリンが、必死に。
 
 「…マリン……」マリンの瞳に、マミが、言葉を失う。
 
 マリンが、うつむいて、「…マミさんのおかげで、わたし、
凄い力をもらって…、凄く、有り難い事だって、解ってるんです…!、
でも、何だか、自分だけで身に付けた自分の本当の力が、
解かんなくなって…、…何だか、急に、格闘家としての自分が、
揺らいじゃった気がして、…不安に、なっちゃって…。
…だからってマミさんと戦ったからって、何が解るのか、あても無くて…、
…すみません、わたし、自分でも、何言って何やってるのか、
何だかよく解かんなくなっちゃってて、…でも…!!!!」と、
精一杯、不安で満ちた瞳を上げる。
 
 「…ごめん……」深い陰を過らせた面差しで、マミが、
うつむく。「…おれ、マリンの誇りを傷付ける様な事、しちゃって……」
 
 「!!!!っ、あやまらないで下さい…!!!!」マリンが、あわてて、
酷く申し訳無さそうに、「…マミさんが意図してこうなった訳じゃないし、
マミさんのおかげで凄く強くなれて、
とても感謝しなくちゃいけない事なのに、わたし、こんな、
わがまま、言っちゃって…、…すみません……」と、うつむく。
 
 「…マリンがあやまる事ないよ。」と、マミが、
苦く微笑む。「…カオスグリフォンと戦ってた時のマリン観てて、
格闘家として凄く努力してたんだなって、感じたし…、
…それに比べたらおれの力なんてたまたまもらったってだけだし…、
…何だか、申し訳無い様な気がする……」と、うつむき気味に。
 
 マリンが、「!!!!っ、そんな、申し訳無いなんて…!!!!、
マミさんはみんなを救ったヒーローじゃないですか…!!!!!」と、
懸命に。
 
 「…おれが、ヒーロー、か…、…何だかピンと来ないけど……」と、
マミが、苦く。
 
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