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第二章「信じる者、欺く者」
冬の準備 ーレオヴィク視点ー
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あの日以来、俺は自分の屋敷に帰っている。
作戦会議もこちらで行っていて、祖父の手記はここで厳重に保管している。
やつら、ノーバイデン教が手記を狙っているという情報を聞きつけ、餌を巻いてやろうとヨハン、アレンとともに話をした。
その時、囮をかって出てくれたのがヨハンだった。
ヨハンは「先行き短い老いぼれにお任せください」と一言いい、俺も思うところはあったのだが、一番狙いやすいだろうというところも含め、ヨハンにお願いすることにした。
そして、その時に逆にお願いされたことがあった。
孫のノエルの事だった。
ノエルは、度々あの場所にある庭の整備をしに来てくれている。
元々庭師ではないのだが、体が弱い事、ヨハンが昼間家にいないことなどから、ヨハンから打診があり、庭師として雇うことにした。
そして、ノエルはリオと出会い、今ではリオの話し相手になってくれているようだった。
ヨハンから話しか聞いていないため、どんな話をしているのか、二人で話をしているときのリオがどういう表情をしているのか、俺にはわからない。
そんなリオの友達、ノエルと頼むと言ってきたのだ。
俺は、「死なせるわけないだろう」とヨハンに言ったが、「何が起こるかわからいませんからな」と言い、自身の髭を撫でつけていた。
ヨハンが危ない目に合うということは、確定なのだが、必ず助けるつもりでいた。
そして、あの日。ヨハンの戻りが遅かったため、もしやと思い迎えに行きつつ、安全を確認するため、リオがいる部屋に向かったのだが、そこには倒れたヨハンと、ヨハンの体を心配しているリオがいた。
ヨハンは、おそらくノーバイデン教のやつらに攻撃されたのであろうとは思っていたが、あの後、医師に見せても特に異常はないといわれるほど、ヨハンの回復は早かった。
いったい、あそこで何があったのか。ヨハンも分からないという。
そして俺は今日、ある部屋を整えようと、小脇に布団を抱え部屋の入口で部屋の中を眺めているところだ。
「おや、レオヴィク様いかがされました?」
その時、背後から声がかかり、振り返るとヨハンがいた。
もうすっかり健康的な体になっており、普通に歩き回っている。
「あぁ、ヨハンか。今日はこちらに来る日だったか」
「ええ、本日は、アレン様も含めての話し合いをこちらで行う予定でしたが……。ご都合が悪くなれましたか?」
「いや、そういうわけではないんだが……」
「その手に持っているものは…?」
「これは。その、……」
ヨハンに手に持っているものを見られ、少し恥ずかしくなり隠そうとするが、なんせ布団は人間一人で隠せるサイズではない。もたもたと手元の布団を握ったり、動かしたり、変な動きをしてしまう。
「もしや、リオ様、ですか?」
「……」
ヨハンは無言を肯定と取ったようだった。
「私も賛成でございます。リオ様をこちらのお屋敷に連れてくること」
ヨハンが言う言葉に、わたわたしていた手を止め、布団を広げる。
そして、元々ベッドが置いてあったところの隅の方に布団を敷き、リオ専用の寝床を作る。
恐らく、リオはまだベッドで眠れるようにはなっていない。
特に、この前のヨハンの事があってから、なおさらベッドでは寝なくなってしまっているのではと。
一番安心できる、今までと同じ場所で、猫のように丸まって寝ているのだろうなと考えた。
あの日、ヨハンを囮に使ったということを聞いて、リオは異様なほど動揺していた。
本人は隠しているようだったが、本人も気づかないほど小さく手が震えていたのだ。
それについて、こちらから何か言えるような状況でもなく、あれ以来、リオと全く話ができていない。
「私も、リオ様とはあの後から、今まで通りの会話ができておりませんで」
ヨハンは、俺の雰囲気を感じ取って返答をしてくる。
たまに騎士団のやつらから「団長は術師だ!俺たちの心を読む!」と騒いでいることがあるが、俺からするとヨハンの方が術師だろうと思ってしまう。
いや、実は本当に術師なのではないか?
「おそらくノーバイデン教団もなりふり構ってる場合じゃなくなっているのかもしれません」
「あぁ。あそこが一番安全だと思っていたんだがな。まさか部屋まで来ているとは」
「早急に、リオ様にはこちらに移動していただきましょう」
「そうだな。ところで、ヨハン」
「はい?」
早速準備を!と動こうとしていたヨハンを呼び止める。
「あの日、致命傷とまではいかないが、確実にノーバイデン教のやつに怪我を負わされていたと思うが…」
「えぇ、私もそれについては、不可解な部分が多く。何せ、結構な衝撃だったもの、この老いぼれが耐えられるはずもなく……。しっかり気を失っておりました」
「俺はヨハンが戻らなかったから、まさかと思ってあの部屋に向かっていたのだが、結局、お前とリオは無事だった」
「一体、何があったのでしょうか……」
「俺にもわからん」
「あれー?団長とヨハンさんどうしたんですかー?」
俺とヨハンであの時の事を思い出していると、後ろから間延びした、何とも気の抜けた声が聞こえてくる。
「これはこれは、アレン様」
「団長もヨハンさんも暗い顔して……なんですか、寝不足なんですかー?」
その言葉に、一気に拍子抜けしてしまい、一発だけアレンを殴り、俺はリオを迎えるための部屋を出る。
後ろからは「いってー」と言いながら頭をさするアレンと、「あらあら」と心配しているようで心配していないヨハンがついてくる。
「今日の会議が終わったら、リオを迎えに行く」
俺はそれだけ告げると、会議をするための部屋に入り、二人も各々返事をしつつ部屋に入ってくる。
「……迎えってなんでですか?」
アレンがぼそっとつぶやいた言葉に、なんだか無性にイラっとして、一発だけと思っていたが、もう一発だけ殴っておいた。
作戦会議もこちらで行っていて、祖父の手記はここで厳重に保管している。
やつら、ノーバイデン教が手記を狙っているという情報を聞きつけ、餌を巻いてやろうとヨハン、アレンとともに話をした。
その時、囮をかって出てくれたのがヨハンだった。
ヨハンは「先行き短い老いぼれにお任せください」と一言いい、俺も思うところはあったのだが、一番狙いやすいだろうというところも含め、ヨハンにお願いすることにした。
そして、その時に逆にお願いされたことがあった。
孫のノエルの事だった。
ノエルは、度々あの場所にある庭の整備をしに来てくれている。
元々庭師ではないのだが、体が弱い事、ヨハンが昼間家にいないことなどから、ヨハンから打診があり、庭師として雇うことにした。
そして、ノエルはリオと出会い、今ではリオの話し相手になってくれているようだった。
ヨハンから話しか聞いていないため、どんな話をしているのか、二人で話をしているときのリオがどういう表情をしているのか、俺にはわからない。
そんなリオの友達、ノエルと頼むと言ってきたのだ。
俺は、「死なせるわけないだろう」とヨハンに言ったが、「何が起こるかわからいませんからな」と言い、自身の髭を撫でつけていた。
ヨハンが危ない目に合うということは、確定なのだが、必ず助けるつもりでいた。
そして、あの日。ヨハンの戻りが遅かったため、もしやと思い迎えに行きつつ、安全を確認するため、リオがいる部屋に向かったのだが、そこには倒れたヨハンと、ヨハンの体を心配しているリオがいた。
ヨハンは、おそらくノーバイデン教のやつらに攻撃されたのであろうとは思っていたが、あの後、医師に見せても特に異常はないといわれるほど、ヨハンの回復は早かった。
いったい、あそこで何があったのか。ヨハンも分からないという。
そして俺は今日、ある部屋を整えようと、小脇に布団を抱え部屋の入口で部屋の中を眺めているところだ。
「おや、レオヴィク様いかがされました?」
その時、背後から声がかかり、振り返るとヨハンがいた。
もうすっかり健康的な体になっており、普通に歩き回っている。
「あぁ、ヨハンか。今日はこちらに来る日だったか」
「ええ、本日は、アレン様も含めての話し合いをこちらで行う予定でしたが……。ご都合が悪くなれましたか?」
「いや、そういうわけではないんだが……」
「その手に持っているものは…?」
「これは。その、……」
ヨハンに手に持っているものを見られ、少し恥ずかしくなり隠そうとするが、なんせ布団は人間一人で隠せるサイズではない。もたもたと手元の布団を握ったり、動かしたり、変な動きをしてしまう。
「もしや、リオ様、ですか?」
「……」
ヨハンは無言を肯定と取ったようだった。
「私も賛成でございます。リオ様をこちらのお屋敷に連れてくること」
ヨハンが言う言葉に、わたわたしていた手を止め、布団を広げる。
そして、元々ベッドが置いてあったところの隅の方に布団を敷き、リオ専用の寝床を作る。
恐らく、リオはまだベッドで眠れるようにはなっていない。
特に、この前のヨハンの事があってから、なおさらベッドでは寝なくなってしまっているのではと。
一番安心できる、今までと同じ場所で、猫のように丸まって寝ているのだろうなと考えた。
あの日、ヨハンを囮に使ったということを聞いて、リオは異様なほど動揺していた。
本人は隠しているようだったが、本人も気づかないほど小さく手が震えていたのだ。
それについて、こちらから何か言えるような状況でもなく、あれ以来、リオと全く話ができていない。
「私も、リオ様とはあの後から、今まで通りの会話ができておりませんで」
ヨハンは、俺の雰囲気を感じ取って返答をしてくる。
たまに騎士団のやつらから「団長は術師だ!俺たちの心を読む!」と騒いでいることがあるが、俺からするとヨハンの方が術師だろうと思ってしまう。
いや、実は本当に術師なのではないか?
「おそらくノーバイデン教団もなりふり構ってる場合じゃなくなっているのかもしれません」
「あぁ。あそこが一番安全だと思っていたんだがな。まさか部屋まで来ているとは」
「早急に、リオ様にはこちらに移動していただきましょう」
「そうだな。ところで、ヨハン」
「はい?」
早速準備を!と動こうとしていたヨハンを呼び止める。
「あの日、致命傷とまではいかないが、確実にノーバイデン教のやつに怪我を負わされていたと思うが…」
「えぇ、私もそれについては、不可解な部分が多く。何せ、結構な衝撃だったもの、この老いぼれが耐えられるはずもなく……。しっかり気を失っておりました」
「俺はヨハンが戻らなかったから、まさかと思ってあの部屋に向かっていたのだが、結局、お前とリオは無事だった」
「一体、何があったのでしょうか……」
「俺にもわからん」
「あれー?団長とヨハンさんどうしたんですかー?」
俺とヨハンであの時の事を思い出していると、後ろから間延びした、何とも気の抜けた声が聞こえてくる。
「これはこれは、アレン様」
「団長もヨハンさんも暗い顔して……なんですか、寝不足なんですかー?」
その言葉に、一気に拍子抜けしてしまい、一発だけアレンを殴り、俺はリオを迎えるための部屋を出る。
後ろからは「いってー」と言いながら頭をさするアレンと、「あらあら」と心配しているようで心配していないヨハンがついてくる。
「今日の会議が終わったら、リオを迎えに行く」
俺はそれだけ告げると、会議をするための部屋に入り、二人も各々返事をしつつ部屋に入ってくる。
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